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武器管制システム英語: Weapon Direction System, WDS)は、アメリカ海軍が開発した艦載用情報処理システムの一種。オペレーターや海軍戦術情報システムによって目標の脅威度判定がなされたのち、それぞれに対して適切な攻撃を実施するよう管制するもので、C3Iのうちの統制に主眼を置いたシステムである。

また初期には、同種の機能を備えたシステムとしてTDS: Target Designation System)なども開発・運用されており、これらものちにWDSの系統に統合された。

目次

来歴編集

アメリカ海軍は1933年より、目標指示装置(TDS)と呼ばれるシステムの開発に着手した。これは、射撃指揮装置に付属して、目標情報を管理するための簡易的なアナログコンピュータであり、第二次世界大戦を通じて運用された。これらは間もなく射撃指揮装置に組み込まれるようになり、Mk.51/52/63/70はTDS Mk.1と統合されて就役した。

第二次世界大戦中のセンサー・兵器システムの多様化に応じて、より強力なシステムとしてWDSの開発が着手された。かつては、砲熕兵器が対空・対水上火力を兼ね、対潜火力は爆雷のみであったし、センサーも目視が基本であった。このため、同時に捕捉しておくべき目標の数は比較的少なく、また、その目標情報に対するニーズも限定的なものであった。

しかし第二次世界大戦中からその直後にかけて、長射程の防空火力として艦対空ミサイル、対潜前投兵器として対潜迫撃砲が開発され、またレーダーソナー、ESM装置の装備が一般的になった。特に艦対空ミサイルの開発による防空火力の長射程化とレーダーの発達による経空脅威の探知距離の延伸、そして航空機の発達による経空脅威の急速な増大は、膨大な航空目標の情報を管理する必要性を現出させた。

1940年代前半の時点で、既に目標情報の管理という課題は出現しており、アメリカ・イギリス海軍では、これに対処するためにCICコンセプトを創出した。これは、航海についての統制中枢である艦橋から切り離して、戦闘についての統制中枢を設置し、ここに戦闘に関連する情報を集中させるというものである。しかし、この時点では、CIC内での情報処理は、わずかに計算尺が使われている程度で、ほとんどすべてが手動(紙と人と声)に頼っていた。また、他艦との情報伝達も、発光信号や手旗信号、原始的な無線機程度であった。

1948年に行われたイギリス海軍のシミュレーションで、この方式の限界点が明らかになった。このときには、熟練のオペレーターを配したにもかかわらず、同時に処理できる目標はせいぜい12機程度が限界で、20機の目標に対しては、完全に破綻してしまったのである。

そしてまた、太平洋戦争の末期において日本軍が実施した特別攻撃が、艦隊の対空防御に重大な問題を提起していた。このとき、艦隊の防空システムはおおむね良好に働いたとはいえ、その対処能力は飽和寸前であり、より高速の機体が同様の攻撃をかけてきた場合、システムの破綻は不可避と考えられた。しかもジェット機の登場により、航空機の速度は戦後5年で倍増し、なお急速に増加しつづけていた。

「紙と人と声」に頼っているかぎり、これ以上の対応速度の向上は困難であり、情報の処理に自動化を導入する必要性は明らかであった。

開発と発展的解体編集

WDSは、この問題に対するもっとも初期の解決策として開発されたものである。これは、レーダーやソナーで探知したり、他の艦艇や航空機などから通報された目標の情報(三次元的な位置や速度、脅威度など)を記憶・管理するとともに、攻撃を行う際にはオペレーターの操作にしたがって、その目標情報を射撃指揮装置に提供するためのアナログコンピュータであった。これにより、様々な情報源から提供される様々な目標についての情報が統合され、情報管理が大幅に合理化されることとなった。WDSは、WDE: Weapon Direction Equipment)を中核として、いくつかの付随的なシステムによって構成されていた[1]

最初のMk.1型は、1955年より再就役したボストン級ミサイル巡洋艦において、テリア・システムの一環として搭載されて運用を開始した。のちに意思決定支援システムとしての機能を備えた海軍戦術情報システムが開発されると、WDEは、これとの連接に対応して、WDSと改称された。1964年には、デジタルコンピュータを導入したWDS Mk.11の配備が開始された。

しかし、情報系グリッドの中核的な機能であるTEWA(Threat evaluation and weapons assignment)機能が、NTDSとWDSという2つの異なる系列に基づいているということは、システム統合上、多大な困難をもたらすこととなった。このことから、次世代の統合艦載戦闘システムとして開発されたイージスシステムにおいては、NTDSに相当する部分はC&Dシステム、WDSに相当する部分はWCS(Weapon Control System)として、統合されて開発されることとなった。そして、分散処理の導入などアーキテクチャを一新したイージスシステム ベースライン7、そして艦艇自衛システムにおいて、完全な統合が達成されている。これらのシステムにおいては、WDSが担っていた武器管制機能は、各武器システムにおいて分散して統合されているのである。

 
ペリー級のシステム構成。武器管制プロセッサ(WCP)上でWDS Mk.13プログラムが動作している。


バージョンと搭載艦編集

Mk.1
テリア・システムの一環として、ミサイル巡洋艦向けに開発されたものである。
Mk.3
Mk.1の軽量版として、ミサイル・フリゲート向けに開発されたものである。
Mk.4
ターター・システムの一環として開発されたものである。
Mk.5
航空母艦戦闘指揮所に装備されるために開発されたものである。
Mk.6
Mk.7
Mk.1, Mk.3の後継として開発されたもので、テリア・システムの一環として配備された。
Mk.9
Mk.11
1960年代初頭、デジタルコンピュータ化するとともにNTDSとの連接を重視して開発されたものである。
Mk.13
ターター-D・システムとの連接・統合を重視して開発されたものである。
Mk.14
NTU改修において搭載されたもので、限定的な同時多目標交戦を可能とするものである。


参考文献編集

  • Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. http://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC.