レイピアミサイルシステム

レイピア・ミサイル・システム英語: Rapier missile system)は、イギリスブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション (BAC) 社が開発した短距離防空ミサイル・システム。この記事では、両者を一括して扱う。

レイピア
スイス軍で運用されるレイピアシステム
種類 短距離防空ミサイル
原開発国 イギリスの旗 イギリス
運用史
配備期間 1971
配備先 #運用国参照
関連戦争・紛争 フォークランド紛争
開発史
開発期間 1963
製造業者 BAC, BAe, MBDA
製造期間 1969
製造数 ミサイル 25,000発弱
発射機 600基
レーダー 350基
派生型 Mk.1 ("Hittile"), Mk.2B (Missile)
諸元
重量 45 kg
全長 2.235
直径 0.133 m

射程 400 - 6,800 m
弾頭 HE破片効果

エンジン 固体ロケット
翼幅 0.138
最大高度 3,000 m
誘導方式 自動/半自動指令照準線一致誘導方式(ACLOS/SACLOS)
操舵方式 操縦翼面
発射
プラットフォーム
自走式 / 可搬式
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来歴 編集

レイピア・システムの開発は、1961年よりBAC社がプライベート・ベンチャーとして開始したサイトライン計画に由来する。これは、低空域を超音速で敏捷に機動する攻撃機と交戦するためのもので、光学的な手段により管制することとしていた。[1]

一方、1950年代後半より、イギリス陸軍は、アメリカ陸海軍とともに、モーラー・ミサイル・システムの開発を進めていた。これは、極めて先進的なコンセプトを採用した短距離防空ミサイル・システムであったが、1961年ごろより、いくつかの問題に直面していた。この計画の前途に不安を抱いたイギリス陸軍は、万一に備えてサイトラインに対して資金を提供し、ET.316プロジェクトとして推進することとした。

1963年、モーラー計画は1960年代中に配備に至らないことが明確になり、イギリス陸軍は、ET.316プロジェクトを本命に切り替えた。1966年に最初の試射が成功したのち、ET.316は正式にレイピアと命名された。[1] 全規模試作は1968年に行なわれ、1969年には正式な契約が結ばれた。イギリス陸軍には1971年、イギリス空軍には1974年に就役した。

この間、BAe社の誘導兵器部門(マトラ BAe ダイナミクス)は、MBDA社によって引き継がれた。

設計と配備 編集

ミサイル 編集

レイピア・ミサイルは、無線による半自動指令照準線一致誘導方式を採用している。ミサイルの後尾には4つのフレアが設置されており、オペレータは、テレビ・システムによってこれを追尾しつつ、誘導信号を送る。レイピア・ミサイルは低空目標の迎撃を主眼としており、近接信管ではなく直撃による撃墜を狙っていることから、弾頭は、1.4キログラムと小型である。

その後、1989年には、信管と弾頭を改良したレイピアMk.1Eが生産されはじめた。また、1992年には、ミサイルの制御ソフトウェアを改良したMk.2の生産について、イギリス陸軍が契約を調印した。

発射機と光学追尾装置 編集

 
シンガポール空軍の運用する牽引式発射機。

レイピア・システムは、基本的には、牽引式発射機を採用している。発射機は、円筒形の中央ユニットの両側に2発ずつのミサイルを装填し、また中央ユニットの上部には捜索レーダーと敵味方識別装置が、正面にはミサイル誘導用のパラボラアンテナが設置されている。捜索レーダーは15キロメートルの有効距離を持つパルス・ドップラー・レーダーである。当初のレイピア・システムは、4連装発射機と光学管制装置、発電機と予備弾、その要員が、2台のランドローバーに搭載された、可搬式のシステムであった。

このような可搬式システムを自走化し、機動運用を可能にしたモデルも開発された。試作車は1974年に完成し、自走式は1979年よりイラン陸軍に配備されはじめる計画であったが、イラン革命によってこれはキャンセルされた。その後、イギリス陸軍が採用を決定し、1983年より配備されはじめた。これは、M113装甲兵員輸送車の派生型であるM548貨物輸送車をベース車体としていた。

その後、オリジナルの光学追尾装置を新型化し、赤外線暗視装置を追加したモデルとして、レイピア・ダークファイアが開発された。これはFS2B(Field Standard 2B; 通称レイピア90)構成として、1990年よりイギリス陸軍に配備されはじめた。

レーダーとレーザー 編集

 
ブラインドファイア追跡レーダー

1970年代初頭より、目標捜索能力を強化するため、新たに独立したマルコーニ DN-181「ブラインドファイア」捜索レーダーが開発された。このレーダーは、1973年にイラン陸軍によって購入されたのち、1979年からイギリス陸軍において配備されはじめたFSA(Field Standard A)構成において導入された。また、これが配備されはじめた直後から、さらに対レーダーミサイルへの対抗策を講じたFSB(Field Standard B)構成が開発され、これはフォークランド紛争において実戦投入された。イギリス海兵隊第3コマンドー旅団の有するレイピアFSBシステムは、おそらく4機を撃墜したものと考えられている。

これらの改良を重ねたことによって、レイピア・システムのコストは上昇を続けていた。このことから、輸出向けにより単純化したシステムとして、目標追尾にレーザーを採用したモデルも開発され、これはレーザーファイアと呼ばれた。

1992年、レイピア90(FS2B)の配備が開始され、Mk.2ミサイルの生産が開始された直後、全面的に改良されたレイピア2000(FSC: Field Standard C)が発表され、1996年より配備されはじめた。レイピア2000では、新型のダガー目標捕捉レーダーを追加した。ダガー・レーダーはJバンドを利用する3次元パルス・ドップラー・レーダーで、回転数は60rpmから30rpm、最大探知距離は32キロメートル、高度は5キロメートルで、同時に75個の目標を追尾できる。

運用国 編集

2005年11月に退役。

脚注 編集

  1. ^ a b "Rapier 2000/Jernas", Jane's Strategic Weapon Systems, 15 February 2008

参考文献 編集