ロシア系アメリカ人英語: Russian Americanロシア語: Русские американцы)はロシアに出自を持つアメリカ合衆国市民である。民族的なロシア人以外に、ロシア国内で生まれたユダヤ人ウクライナ人ベラルーシ人アルメニア人などもこのグループに含まれる場合がある。

ロシア系アメリカ人
Russian Americans
Русские американцы
ロシアの旗アメリカ合衆国の旗
総人口
3,152,959人が自己申告
アメリカ合衆国の人口の1%
言語
アメリカ英語ロシア語
宗教
東方正教古儀式派を含む)、ユダヤ教モロカン派ドゥホボール派ペンテコステ派
関連する民族
ユダヤ系アメリカ人ウクライナ系アメリカ人ベラルーシ系アメリカ人

ロシア系アメリカ人の人口は、およそ300万人。2000年の米国国勢調査によると、706,242人がロシア語を話せる。

歴史 編集

1862年ホームステッド法で、19世紀後半にはヨーロッパからの移民が多数アメリカへ押し寄せたが、この中には多くのロシア人がいた。最初のロシア人移民の大波は19世紀から20世紀初頭までに起こった。ロシア帝国ユダヤ人は、アレクサンドル3世による虐殺(ポグロム)を逃れてアメリカへ入国し、ニューヨークなどに住んだ。この期間に移住した最も突出したロシアからの移住者のグループは、宗教的な自由を求めているグループであった。モロカン派ロスアンゼルスサンフランシスコに移住し[1][2]古儀式派も東海岸や西海岸に移住した[2]

ロシア革命に続く十月革命ロシア内戦により、1917年から1922年の短い期間にロシアからの移民の大きな波が起きた(白系ロシア人)。その移民は大きくアメリカの科学と文化に関与した。発明者ウラジミール・ツヴォルキンはこの際に到着した。セルゲイ・ラフマニノフイゴール・ストラビンスキーはこれまでにアメリカ合衆国に住んでいる最も偉大な作曲家であると考えられている。

冷戦時代、ソビエト連邦では移住は違法で、この時期のロシア人移民は、政治理由のためにアメリカ合衆国と他の西側諸国に移住した極めて少ない体制離反者と反体制派に限られていた。一方で、1960年以降、ブラジルを中心とする南米諸国及びルーマニアからロシア系の古儀式派が移住してきた[2]。 1970年代には一時的に出国規制が緩和され、25万人ほどのソ連国民が政治的抑圧や反ユダヤ主義を逃れ国外へ出た[3]。1970年代のブレジネフによるソビエト経済停滞と1980年代のペレストロイカは経済的な理由でのアメリカ合衆国への入国者の増加を促した。この時期に多くの芸術家やアスリートがアメリカへ流入している。

ソビエト連邦崩壊後は、旧ソ連諸国では市場経済化やハイパーインフレーションなどの経済難、民族同士の争いなどの政治的社会的混乱が起こり、この時期にロシアからの政治的および経済的な理由でのアメリカ移住の大きな波が起こった。ソ連崩壊直後のロシアからの移民で最も大きなグループは、迫害から逃れてきた政治亡命者であったが[4]、2000年代には大きく減少している[5]

また違法入国者も激増した。その代表的なものがアメリカ人男性と結婚して市民権を得ようとする「通信販売の花嫁英語版」(国際結婚斡旋所などのカタログやサイトを見た男性からの文通で結婚を決めてアメリカへ来る女性)で、1996年にアメリカに来た「通信販売の花嫁」のうち半分はロシアとウクライナ出身者であった[6]。違法な入国者とともに、ロシアン・マフィアの影響もアメリカ国内で大きくなった。

ソ連崩壊後にはロシア人科学者などのアメリカへの頭脳流出も起こった[7]。全米科学財団によると、2003年にはアメリカ合衆国では20,000人のロシア人科学者がおり[8]、2002年の発表では、マイクロソフト製品の30%はロシアのソフトウェアエンジニアによるものである[7]

著名なロシア系アメリカ人 編集

出典 編集

  1. ^ Chapter 1 - The Migration in Molokans in America by John K. Berokoff, 1969
  2. ^ a b c (ロシア語) Nitoburg, E. (1999). “Русские религиозные сектанты и староверы в США” (Russian). Новая И Новейшая История (3): 34–51. http://www.gumer.info/bogoslov_Buks/History_Church/Nitob_RusSektUSA.php 2008年5月8日閲覧。. 
  3. ^ History of Dissident Movement in the USSR by Ludmila Alekseyeva. Vilnius, 1992 (in Russian)
  4. ^ Fiscal Year 1999 Statistical Yearbook”. Department of Homeland Security, Office of Immigration Statistics. 2008年5月13日閲覧。
  5. ^ Refugees and Asylees: 2005”. Department of Homeland Security Office of Immigration Statistics. 2008年5月13日閲覧。
  6. ^ The "Mail-Order Bride" Industry and its Impact on U.S. Immigration”. U.S. Citizenship and Immigration Services. 2007年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月13日閲覧。
  7. ^ a b Brain Drain: history and present
  8. ^ (ロシア語) “"Утечка мозгов" - болезнь не только российская”. Экология И Жизнь. (2003). http://www.ecolife.ru/jornal/econ/2003-4-1.shtml 2008年5月9日閲覧。. 

関連項目 編集