初乳(しょにゅう、: colostrum)は、分娩後数日間に分泌される乳汁。ただし、初乳の期間は学術上明確になっておらず、分娩後最初の乳汁のみや、分娩後5日目まで、分娩後1週間以内、分娩後10日目までと様々な解釈があり明確な定義はない。初乳は生理的異常乳であり、その後に分泌される乳汁とは組成が異なり、固形分、タンパク質脂肪灰分が多く、乳糖は少ない。特に抗体IgGIgAIgM)や、IGFEGF、NGFなどの成長因子が多く含まれることが特徴となる。また、初乳はその後の乳汁と比較して熱による凝固を起こしやすい。日本では分娩後5日までの乳汁(種を問わず)は食品として流通させることを禁止されている。母体での乳汁合成は分娩前より開始されているが、エストロゲンプロゲステロンの作用により分泌が抑制されている。ヒトの初乳は、その後に分泌される母乳に比べて少し黄みがかっていて、量もわずかしか出ないが、この中には分泌型免疫グロブリンAラクトフェリンなどの成分が多く含まれ、新生児の消化器官免疫力や殺菌力を与える。

初乳中の抗体 編集

初乳の特徴となる抗体IgGIgAIgM)は、種による配合割合が変わり、胎盤におけるの抗体移行能の違いにより、以下のように分けることができる。

1. 胎盤を介して抗体(IgG)が胎子に移行できない。
ウシウマヒツジヤギブタパンダなどでは、初乳を介してIgG(移行抗体)が新生子に移行するため、初乳にはIgGが高含有されている。ウシでは初乳中の免疫グロブリンの吸収能力は生後24時間以内で100%であり、ブタでは生後0 - 3時間では100%、3 - 9時間では50%である。
2. 胎盤を介して低濃度の抗体(IgG)が胎児に移行する。
マウスラットイヌネコなどでは胎盤を介して低濃度のIgGが移行するが、多くは初乳を介して移行するため、初乳にはIgGが高含有されている。
3. 胎盤を介して高濃度の抗体(IgG)が胎児に移行する。
ヒトウサギモルモットなどでは、胎盤を介して充分な抗体(IgG)が移行する。

ウシ初乳の研究報告 編集

初乳は、ウシの初乳に対する研究が進んでおり、ヒトへの効果として以下のような報告があがっている。

日本では、初乳の成分であるラクトフェリン乳清、オリゴ糖の成分的研究や、初乳の活用法研究する産官学連携のコンソーシアム、食品として利用可能な6日目以降のウシの初乳の研究が報告されている。

サプリメント 編集

諸外国(アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア等)においては、ウシやヤギ、ウマなどの初乳をサプリメントとして商品化している。しかしながら、日本においては、初乳を使ったサプリメントは少なく、乳清ラクトフェリンなど、初乳に多く含まれる成分や類似したものが商品化されている。

牛の初乳を使ったサプリメントとして、米国でトランスファーファクターが作られており、日本でも販売されている。

また、犬や猫などペット向けの初乳サプリメントとして、日本ではペテルナが販売されている

関連項目 編集

参考文献 編集

  • 山内亮監修 『最新家畜臨床繁殖学』 朝倉書店 1998年 ISBN 4-254-46020-1
  • Kelly GS. Bovine colostrums: a review of clinical uses.Altern Med Rev. 2003 Nov;8(4):378-94.
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  • Cesarone MR, Belcaro G, Di Renzo A, Dugall M, Cacchio M, Ruffini I, Pellegrini L, Del Boccio G, Fano F, Ledda A, Bottari A, Ricci A, Stuard S, Vinciguerra G.Prevention of influenza episodes with colostrum compared with vaccination in healthy and high-risk cardiovascular subjects: the epidemiologic study in San Valentino.Clin Appl Thromb Hemost. 2007 Apr;13(2):130-6.
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  • Playford RJ, MacDonald CE, Calnan DP, Floyd DN, Podas T, Johnson W, Wicks AC, Bashir O, Marchbank T: Co-administration of the health food supplement, bovine colostrum, reduces the acute non-steroidal anti-inflammatory drug-induced increase in intestinal permeability. Clin Sci (Lond) 100(6): 627-33 (2001)
  • 乳清 - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所
  • 腸溶性ラクトフェリン研究会
  • 子どもの風邪予防と軽症化に効果。注目されるウシの“初乳”(ブレインヘルス協会)