男はつらいよ 純情篇

日本の映画作品、『男はつらいよ』シリーズ第6作

男はつらいよ 純情篇』(おとこはつらいよ じゅんじょうへん)は、1971年1月15日に公開された日本映画。『男はつらいよ』シリーズの6作目。同時上映は『やるぞみておれ為五郎』。

男はつらいよ 純情篇
監督 山田洋次
脚本 山田洋次
宮崎晃
製作 小角恒雄
製作総指揮 高島幸夫
小林俊一
出演者 渥美清
若尾文子
森繁久彌
音楽 山本直純
主題歌 渥美清『男はつらいよ』
撮影 高羽哲夫
編集 石井巌
製作会社 松竹
配給 松竹
公開 日本の旗 1971年1月15日
上映時間 89分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 2億3000万円[1]
前作 男はつらいよ 望郷篇
次作 男はつらいよ 奮闘篇
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あらすじ編集

「ふるさとは遠きにありて思うもの」、そんな寅次郎の独白から始まる。そして「行きずりの旅の女の面影に故郷に残した妹を思い出しては涙をこぼす意気地無し」と自らを評する。

寅次郎は、たまたまテレビでやっていた柴又の特集で、さくらを始めとらやの一家が映ったのを見て、故郷を思い出す。長崎の港に着いた寅次郎は、赤ん坊を背負い、五島行きの船を待っている女性・絹代(宮本信子)に声を掛ける。最終便が終わってしまい宿代のない絹代に懇願されて宿代を貸すが、絹代は甲斐性のない夫の愚痴を散々にこぼす。体で宿代を返そうとする絹代が、同じく赤ん坊を抱える同年代のさくらと重なって見え、寅次郎は深く同情する。

夫と駆け落ち同然に実家を出たため、今さら実家に帰りづらいという事情を聞き、寅次郎は福江島にある絹代の実家まで同行する。そこで出会った絹代の父の千造(森繁久弥)は血の通った人物であったが、絹代に夫の元に帰るように言う。一度は好きになった男なのだから、長所が必ずあるはずで、それを育ててあげなければいけないというのだ。寅次郎は千造の言葉を聞き、帰れるところがあると思うから、失敗すればまた故郷に帰ればいいと思ってしまう、それではいつまでも一人前になれないと理解する。しかし、「故郷はどこかな」という千造の言葉に、故郷柴又ととらや一家のことを思い出してしまい、最終便の汽笛を聞いて、矢も楯もたまらず帰郷を決意する。

旅から帰った寅次郎は、自分の部屋に下宿人が居ることに腹を立てるが、下宿人が飛び切りの美人の夕子(若尾文子)だと知ると態度を180度変える。寅次郎はなおももめ事を起こし続けるが、感情の発露のない小説家の夫との生活が嫌で別居していた夕子[2]はそんなとらやの環境を「人間が住んでいるところという気がする場所」と感じてくれ、まずは一件落着する。

その頃、博は、一職工として一生を終えたくはないとの思いから、父の退職金を借りて独立資金とし、朝日印刷を辞めることを検討していた。そのことを知ったタコ社長は、博に辞められては工場を続けられないと苦悩する。博・社長双方に相手を翻意させるための仲介を頼まれた寅次郎は安請け合いするが、双方の主張に感化されてしまい仲介に失敗。そのことがきっかけで、寅次郎も含めて一触即発の危機になるが、博の父から独立資金を貸す余裕がないとの手紙が来たことで博が独立をあきらめ、またも一件落着する。

それはさておき、寅次郎の夕子への想いは募るばかり。夕子の知るところとなり、夕子は遠回しに「ある男性が私にとても好意を寄せて下さっていて、嬉しいのだけれども、どうしてもその気持ちをお受けするわけにはいかないの」と寅次郎に告げる。しかし、寅次郎はそれを自分のことだと思わず、脳天気のまま。ところがある日、別居中の夫が夕子を迎えに来て、自分が悪かったところを謝罪したので、夕子も帰宅を決意する。これにて三たび一件落着する。

夕子との別れに顔で笑って心で泣いて、失意の寅次郎は柴又駅より旅立つ。見送りに来たさくらに、16歳の時の家出の際、泣いていつまでも追いかけてきたさくらの話をして、お互いに感慨にふける。発車間際、「つらいことがあったら、いつでも帰っておいでね」というさくらに対し、「そんな考えだから俺はいつまでも一人前に……」と言葉に詰まる寅次郎。「故郷ってやつはよ、故郷ってやつはよ」と言う寅次郎のその後の言葉は、電車のドアに阻まれてさくらには聞こえない。[3]

正月になり、絹代と赤ん坊に加え、その夫がとらやを訪れ、いつぞやの寅次郎の親切に対する礼を述べる。とらやからの絹代の電話に千造が出て、夫と復縁して一生懸命生活していると聞くと、うれしそうに涙ぐむ。千造のもとには、寅次郎から年賀状が届いていた。

  • 本作で騒々しい子供たちとともに登場したタコ社長の妻(水木涼子)は、本作の他シリーズ第1作(さくらの披露宴)、第13作(「夢」のシーンで一瞬だけ)にも出演している。2人いる女の子のうちの一人が後のあけみ(美保純)として登場する。
  • 源公が本作から見習い坊主になり、寺男として定着する。[4]

スタッフ編集

キャスト編集

ロケ地編集

記録編集

  • 観客動員:85万2000人[1]
  • 配給収入:2億3000万円[1]

受賞編集

脚注編集

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  1. ^ a b c 日経ビジネス』1996年9月2日号、131頁。
  2. ^ 寅次郎が婚姻中の女性に対し一定以上の恋愛感情を持つ作品は、シリーズ中唯一とされる(『男はつらいよ 寅さんの歩いた日本』p.23)。婚姻中の女性がマドンナである作品としては第34作(演:大原麗子)、第42作(演:檀ふみ)、第47作(演:かたせ梨乃)があるが、第42作・第47作は恋わずらいになるほどの感情は持たなかったし、第34作は自らを「醜い人間」として感情を抑え込もうと努力していた。なお、マドンナという枠を外れると、第13作の絹代(演:高田敏江)とは、夫が行方不明だったため、結婚まで考えている。
  3. ^ 「彼にとっての故郷とは何なのか。それはさくらの存在そのものと、深く関わっている気がしてならない。」(『キネマ旬報2008年9月下旬号』p.43)など、いろいろな推測を呼んでいる。もっとも、「故郷は寅を甘やかせるからもう帰ってこない、故郷にはさくらがいるからやはり近々帰ってくる、故郷は寅にとっては何物にも代えがたい財産だ、ふるさとは遠きにありて思うもの」といろいろ候補を挙げつつ、「どれもが適切でどれもぴったりしない」とし、「言葉では表せないものを明らかに映像は表現している」と評価する書物(『男はつらいよ魅力大全』p.52)もある。
  4. ^ もっともラストシーンでは、正月の浜名湖畔での寅次郎の啖呵売の手伝いをしている。

外部リンク編集