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痩身(そうしん)とは、痩せた身体[1](または引き締まった身体)のこと、そのような身体にすることである。また、そのような身体にすることの意味で「減量」という言葉が用いられることがある。「痩身」と「減量」、いずれも同じニュアンスで用いられやすい。

厳密に言えば「痩身と減量」は同義ではない。「減量」は、総体重に着目した概念である。身体から脂肪が減って筋肉量が増えると、体重は増えるが身体は引き締まる。

痩身や減量を行うには、内分泌学代謝栄養生化学に関する知識を身に付ける必要がある。

カロリー理論編集

身体が1日に消費するエネルギー量は、その人の体格や運動量によってひとりひとり異なっており[2]、その量は《基礎代謝量》と《身体活動レベル》を用いて概算できる[2]

自分の《基礎代謝量》に関しては「基礎代謝」を参照。

《身体活動レベル》については、次の表の右側を見て、左側から該当の数値を見つける。

身体活動レベル[2]
活動
レベル
身体活動
レベル
生活パターン
低い 1.50 生活の大部分で座っており(=座位)、(つまり、デスクワークなど)静的な活動が中心の場合
普通 1.75 座位中心の生活だが、仕事で立ったりすることもあり、あるいは通勤買い物家事、軽いスポーツをすることが含まれる場合
高い 2.00 仕事で移動することや立っていることが多い場合。あるいは日常的にスポーツや活発な活動を行う習慣がある場合。

次の式が成り立つ。

一日の基礎代謝量(kcal) × 身体活動レベル = 一日に消費されるカロリー

例えば年齢が30代で基礎代謝量が1,140kcalの女性で、通勤してデスクワーク中心の仕事をしている人(=身体活動レベルが普通、つまり数値が1.75)の女性ならば

一日に身体が消費するカロリーは、1,140(kcal) x 1.75 = 1995(kcal) となる。

口から入るカロリー < 身体が消費するカロリー

この不等式を成立させるためのポイントは「食事の制限」と「運動の実行」である。左辺を小さくするために「食事の制限」を行い、右辺を大きくするために「運動を実行」する。

  • 食事の制限:ビタミンやミネラルは摂取し食品のバランスは保ち健康に配慮しつつ、総カロリーを抑える食事制限(ダイエット)を行い、口から入るカロリーを制限する。
  • 運動の実行:運動(散歩、家事、身体を使った仕事、エクササイズ、筋力トレーニング 等々等々)を実行することによって消費カロリーを増やす。


と、されるが、実際のところ、このカロリー理論には何の根拠も無い。後述のとおり、「『食べる量を減らして運動量を増やす』は、「体重を減らす」という点においても、「病気を防ぐ」という点においても、「何の効果も無い」という結果が次々に出ている。

「カロリー」を体重の増減に絡めて初めて提唱したのはドイツ人の内科医カール・フォン・ノールデン( Carl von Noorden )であり、彼が1907年英語で発表した『Metabolism and Practical Medicine』(『代謝と実践医療』)の第3章『Obesity』(『肥満』)の中で、

The ingestion of a quantity of food greater than that required by the body leads to an accumulation of fat, and to obesity should the disproportion continued over a considerable period.」(「身体が必要としている以上の量の食べ物を摂取することが脂肪の蓄積をもたらし、その不均衡が長期に亘って続くと、肥満になるはずである」)

と記述している[3]。その後、このノールデンの主張は、体重を制御する方法やダイエットについて伝授する人間がほぼ必ずと言っていいほど口にするようになった。ノールデンによるこの著作物は、インターネットでも読むことが可能。

「ヒトは消費する以上に多くのカロリーを摂取するから太るのである」という考え方を概念や理論として広めた人物の元祖はノールデンということになる。

炭水化物を制限する編集

アトキンス・ダイエットができるまで編集

1972年アメリカ合衆国の医師ロバート・アトキンスRobert Atkins )は、著書『Dr. Atkins' Diet Revolution』(邦題:『アトキンス博士のローカーボ(低炭水化物)ダイエット』)を出版し、「アトキンス・ダイエット」を提唱した。これは「肥満を惹き起こすのは炭水化物であり、これを制限する代わりに、肉、魚、卵、ステーキ、バターのような、タンパク質と脂肪が豊富な食べ物は自由に食べてかまわない。炭水化物が多いものは可能な限り避けなさい」とする食事法である。本書は数百万部を超える売り上げを記録した[4]

開業したての頃のアトキンスの仕事はあまりうまくいかず、さらには身体が太り始めたことで、アトキンスは意気消沈していた。ある時、アトキンスは、デラウェア州にある会社、デュポン社DuPont )に所属していた、アルフレッド・W・ペニントン( Alfred W. Pennington )が研究し、従業員に提供していた食事法を発見した[5]

1940年代、ペニントンは、過体重か太り過ぎの従業員20人に、「ほぼ肉だけで構成された食事」を処方していた。彼らの1日の摂取カロリーは平均3000kcalであった。この食事を続けた結果、彼らは平均で週に2ポンド(約1㎏)の減量を見せた。この食事を処方された過体重の従業員には、「一食あたりの炭水化物の摂取量は20g以内」と定められ、これを超える量の炭水化物の摂取は許されなかった。デュポン社の産業医療部長、ジョージ・ゲアマン( George Gehrman )は、「食べる量を減らし、カロリーを計算し、もっと運動するようにと言ったが、全くうまくいかなかった」と述べた。ゲアマンは、自身の同僚であるペニントンに助けを求め、ペニントンはこの食事を処方したのであった[6]

アトキンスは、ペニントンが実践していたこの食事法からヒントを得て、患者を診療する際に「炭水化物が多いものを避けるか、その摂取量を可能な限り抑えたうえで、肉、魚、卵、食物繊維が豊富な緑色野菜を積極的に食べる」食事法を奨め、それと並行する形で『Dr. Atkins' Diet Revolution』を書いていた。

2002年、アトキンスは心臓発作を起こして倒れた。これについて、「高脂肪の食事が潜在的にどれほど危険であるかが証明された」という批判を数多く浴びた。しかし、複数のインタビューで、アトキンスは「私が心停止になったのは、以前から慢性的な感染症を患っていたからであって、脂肪の摂取量の増加とは何の関係も無い」と強く反論した[7][8][9]。なお、「食事に含まれる脂肪分(トランス脂肪酸を除く)の摂取と、肥満や各種心疾患とは何の関係も無い」というのは、炭水化物を制限する食事法を奨める人物に共通の見識である。

2003年4月、ニューヨークに大雪が降り、地面は凍結した。4月8日、アトキンスは通勤のため、凍った路上を歩いている途中、足を滑らせて転倒して頭部を強打し、意識不明の重体となり、集中治療室で手術を受けるも、意識が戻らないまま死亡している[10][11][12]

ウィリアム・バンティング編集

 
炭水化物を制限し、減量に成功したウィリアム・バンティング

炭水化物を避けるか、可能な限りその摂取を制限し、タンパク質脂肪を重点的に摂取する食事法の創始者は、ロバート・アトキンスが元祖というわけではない。前述した、デュポン社のアルフレッド・ペニントン以前に、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランJean Anthelme Brillat-Savarin, 1755~1826 )、ジャン=フランソワ・ダンセル( Jean-François Dancel )、ユストゥス・フライヘアー・フォン・リービッヒJustus Freiherr von Liebig. 1803~1873 )、ウィリアム・ハーヴェイ( William Harvey, 1807~1876 )、ウィリアム・バンティングWilliam Banting, 1796~1878 )、ジョン・ユドキンJohn Yudkin, 1910~1995 )といった、歴史上の様々な人物が実践してきた方法である[6]。彼らはいずれも、「肉のような栄養価の高い食べ物は、ヒトを太らせることはない」「ヒトを太らせるのは、小麦粉のような精製された炭水化物、とくに砂糖である」「食事に含まれる脂肪分は、肥満や各種心疾患とは何の関係も無い」と確信していた[6]。アトキンスも著書『Dr. Atkins' Diet Revolution』の中で、「砂糖は始末に負えない厄介な物体」と断じている。

ウィリアム・バンティングは、ロンドン生まれの葬儀屋であった。バンティングは、自身が太り過ぎていたことに悩んでいた。その彼に炭水化物の摂取を制限する食事法を奨めたのは、医師であり友人でもあったウィリアム・ハーヴェイであった。ハーヴェイがこの食事法を学んだのは、フランスの医師、クロード・ベルナールClaude Bernard, 1813~1878 )がパリで行った糖尿病についての講演を聴いたのがきっかけであった[13][14]

クロード・ベルナールの講演を聴く前までのハーヴェイは、「体重を減らすには、激しい身体活動に励めば良い」と考えており、バンティングに対してそうするよう伝えた。バンティングは「早朝に2時間、ボートを漕ぐ」ことにし、テムズ川でボートを漕ぎ続けた。彼の腕の筋力は強化されたが、それとともに猛烈な食欲が湧き、その食欲を満たさねばならなくなり、体重は減るどころかどんどん増えていった。ハーヴェイは友人に対し、「運動を止めなさい」と言った[6]。「運動には体重を減らす効果は無い」と悟ったためである。ハーヴェイから炭水化物の摂取を制限する食事法を教わり、実践したバンティングは、最終的に50ポンド(約23㎏)の減量に成功している。

1863年、バンティングは、減量に成功した食事法や、減量するにあたって試しては失敗を繰り返してきた方法をまとめた『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』(『市民に宛てた、肥満についての書簡』)を出版した。

バンティング自身、『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』の中で、「減量に対して何の効果も無い方法」の1つに、「食べる量を減らして運動量を増やす」を挙げている。イングランドの医師、トマス・ホークス・タナーThomas Hawkes Tanner, 1824~1871 )も、 著書『The Practice of Medicine』( ISBN 978-1377805573 )の中で、「肥満を治療するにあたっての『ばかげた』治療法」の1つに、「食べる量を減らす」「毎日多くの時間を散歩と乗馬に費やす」を挙げ、「これらの方法をどんなに辛抱強く続けたところで、望む目的が達成されることはない」と断じている[6]

Letter on Corpulence』はまもなくベストセラーとなり、複数の言語にも翻訳された。その後、「Do you bant?」(「ダイエットするかい?」)、「Are you banting?」(「今、ダイエット中なの?」)という言い回しが広まった。この言い回しは、バンティングが実践した食事法について言及しており、時にはダイエットそのものを指すこともある[13]。のちにバンティングの名前から、「Bant」は「食事療法を行う、ダイエットをする」という意味の動詞として使われるようになり、スウェーデン語にもこの言葉が輸入されて使われるようになった[6]

南ローデシア(現在のジンバブエ)出身の科学者ティム・ノークスTim Noakes )は、「低糖質・高脂肪ダイエット」と名付け、この食事法を普及させた[15]

サイエンス・ジャーナリストゲアリー・タウブスGary Taubes )による著書『Good Calories, Bad Calories』(2007年)では、「A brief history of Banting」(「バンティングについての簡潔な物語」)と題した序章から始まり、バンティングについて論じている[16]。炭水化物の摂取を制限する食事法についての議論の際には、しばしばバンティングの名前が挙がる[17][18][19][20][21]

なお、バンティングは、この食事法が広まった功績は、自分にではなく、「(この食事法を教えてくれた)ハーヴェイにある」と主張した。

ケトジェニック・ダイエット編集

1920年代前半には、ミネソタ州ロチェスター市にあるメイヨー・クリニックMayo Clinic )の医師、ラッセル・ワイルダーRussell Wilder, 1885~1959 )が『ケトン食』を開発し、肥満患者・糖尿病患者にこれを処方している。これは食事において、「摂取エネルギーの90%を脂肪から、6%をタンパク質から摂取し、炭水化物の摂取は可能な限り抑える」(極度の高脂肪・極度の低糖質な食事)というもの[22]。元々は癲癇を治療するための食事法であったが、「肥満糖尿病に対しても有効な食事法になりうる」としてワイルダーは開発した。炭水化物とタンパク質の摂取は可能な限り抑え、大量の脂肪分を摂取することで、身体は脂肪を分解して作り出す「ケトン体」( keto )をエネルギー源にして生存できる体質となる。この食事法は『ケトジェニック・ダイエット』( The Ketogenic Diet )として知られるようになる。

アトキンスも著書『Dr. Atkins' Diet Revolution』の中でケトン体について触れており、「炭水化物の摂取を極力抑え、脂肪の摂取量を増やすことで、身体はブドウ糖ではなく、脂肪をエネルギー源にして生存できる」という趣旨を述べ、体重を減らしたい人に向けて、炭水化物を避けるか、その摂取制限を奨めている。

炭水化物制限食の歴史編集

「太りたくないのなら、炭水化物を避けなさい」と指導する食事法は奇抜でも斬新でもなく、歴史上何度も登場している。方法論がどうであれ、「炭水化物を極力避ける」という点においては、バンティングを初め、過去の様々な人物が実践してきた食事法と同じである。なお、1960年代以降、「動物性脂肪を豊富に含む動物性食品は、健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と言われるようになると、栄養学者たちは、「動物の肉には、生命維持に欠かせない全ての必須アミノ酸、全ての必須脂肪酸、13種類ある必須ビタミンのうちの12種類がたくさん含まれている」という栄養学上の事実の指摘を控えるようになった[6]

「肉食動物は決して太らない」

「ヒトを肥満にさせるのは、日々の食事を構成するデンプン質と小麦粉であり、これに砂糖も組み合わせれば確実に肥満をもたらす」

「ヒトにおいても、動物においても、脂肪の蓄積はデンプン質と穀物によってのみ起こる、ということは証明済みである」

「ジャガイモ、穀物、小麦粉由来のモノを食べ始めた途端、瞬く間に肥え太っていく」

「デンプン質の食べ物を常食している動物の身体には、強制的に脂肪が蓄積していく。ヒトもまた、この普遍的な法則からは逃れられない」

「デンプン質・小麦粉由来のすべての物を厳しく節制すれば、肥満を防げるだろう」と明言している[23][6]

  • 1844年、フランスの外科医で退役軍医、ジャン=フランソワ・ダンセル( Jean-François Dancel )は、肥満に関する自身の考えをフランス科学アカデミーで発表した。その著書『Obesity, or Excessive Corpulence』は、1864年英語に翻訳され、出版された。ダンセルは、

「患者が主に『肉だけ』を食べ、それ以外の食べ物の摂取は少量だけにすれば、一人の例外もなく肥満を治癒できる」

と述べている[6]。「炭水化物を避け、肉だけを食べることで肥満を治癒できる」というダンセルの主張は、ドイツ人の化学者ユストゥス・フォン・リービッヒJustus von Liebig )による研究を根拠にしており、リービッヒもダンセルも、肉を中心に食べる食事法を信じていた。 ダンセルは、

「肉ではないすべての食べ物(炭素と水素が豊富な食物。つまり炭水化物)は、身体に脂肪を蓄積させるに違いない。肥満を治すためのいかなる治療法も、この原理に基づいている」

「肉食動物は決して太っていない一方で、草食動物は太っている。カバはかなりの量の脂肪のせいで不格好に見える。彼らは植物性の物質(米、キビ、サトウキビ・・・穀物全般)のみを餌にしている」

と述べた[6]

  • イングランドの医師、トマス・ホークス・タナーThomas Hawkes Tanner, 1824~1871 )は、「『炭水化物を断つこと』こそが、減量を成功させる唯一の方法である」と確信していた。肥満治療について、「減食」と「身体活動」(「運動」)を、「ridiculous」(「何の価値も無い」)と切り捨てている。
  • 1866年ベルリンで開催された内科学会にて、「人気のある食事療法」に関する討論会が開かれた。その際、ウィリアム・バンティングが実践した方法が、肥満患者を確実に減らせる3種類の食事法の1つとして取り上げられた。他の2種類はドイツ人の医師が開発したもので、方法は微妙に異なるが、いずれの食事法にも共通するのは以下の2つであった。

「肉は無制限に食べてかまわない」[6]

「デンプン質が豊富なものは完全に禁止とする」[6]

  • 1950年代、ミシガン州立大学栄養学部主任マーガレット・オールソン( Margaret Ohlson )は、過体重の学生に従来型の飢餓食(※極度のカロリー制限食)を与えた。彼らの体重はほとんど減らないばかりか、

「すっかり活気が失せ、空腹であることを常に意識し続け、やる気が無くなっている」

と報告した。一方、タンパク質と脂肪を大量に含む食事を摂らせると、平均で週に3ポンド(約1.4kg)減量し、

「食間の空腹感に悩まされることはなく、気分の良さと満足感に包まれた」

と報告した。この食事法を実践した者は、いずれも特別な努力をすることなく体重を減らし、空腹感に悩まされることもなかった[6]

  • オールソンの教え子でコーネル大学の臨床学教授シャーロット・ヤング( Charlotte Young )は、1973年10月アメリカ国立衛生研究所で開催された会議にて、食事療法に関する講演を行った。医者が肥満について重点的に話し合う会議を定期的に開くようになった1960年代の半ばまでには、食事療法に関する講演が必ず行われており、それらの講演の内容はいずれも「炭水化物を制限する食事法について」であった。これらの会議のうち、5回は、1967年1974年にかけて、アメリカ合衆国と、欧州各国で開催された。ヤングは、アルフレッド・ペニントンがデュポン社で実践した炭水化物を制限する食事法を研究し、自身の師匠であるオールソンの業績について、この会議で発表した。ヤングは「体重および体脂肪の減少、その割合は、食事に含まれる炭水化物の量と逆相関しているように見える」「炭水化物の摂取量を減らし、脂肪の摂取量を増やすと、体重も体脂肪も大幅に減った」と報告した。炭水化物を制限する食事法について、ヤングは

「空腹感からの解放、異常な疲労感の緩和、満足のいく減量、長期にわたる減量とその後の体重制御への順当さに対する評価において、いずれもすばらしい臨床的成果を見せた」

と述べた[6]

  • The Principles and Practice of Medicine』の1901年度版にて、ウィリアム・オスラー( William Osler )は、肥満体の女性に対して「食べ物を食べ過ぎないこと。とくに、デンプン質が豊富な食べ物と砂糖を減らすように」と述べている[6]
  • 1907年、『A Textbook of the Practice of Medicine』にて、ジェームズ・フレンチ( James French )は、「肥満体における過剰な脂肪について、その一部は食べ物に含まれていた脂肪でできているが、その大部分は炭水化物を食べたのが原因で蓄積する」と述べている[6]
  • 1925年ロンドンにある聖トマス病院医科大学( en:St Thomas's Hospital Medical School )のH. ガーディナー・ヒル( H. Gardiner-Hill )は、炭水化物を制限する食事法を奨めており、医学雑誌『ランセット』(『The Lancet』)の中で「どのようなパンであれ、45~65%の炭水化物を含んでおり、食パンに至っては最大で60%に達する可能性があり、これらは廃棄されねばならない」と述べている[6]
  • 1936年デンマークの医師ペール・ハンセン( Per Hansenn )は、「『制限すべきは炭水化物だけであり、身体に脂肪を蓄積させる作用が無いタンパク質と脂肪を、空腹を感じたらいつでも食べて構わない』という点が、この食事法の有利な点である」と述べた[6]
  • 第2次世界大戦終盤、アメリカ海軍が太平洋を西に向かっていたころ、『U.S. Force's Guide』の中で、

「ニューギニアの北東にある群島、カロリン諸島では胴回りの管理に苦労するかもしれない」

「現地人の食べている基本的な食物は、パンノキの実、タロイモ、ヤマノイモ、サツマイモ、クズウコン・・・デンプン質が豊富なものであるため」

と、兵士たちに警告している[6]

  • 1946年に初版が出版されたベンジャミン・スポック( Benjamin M. Spock )による子育てについて記した著書『Baby and Child Care』にて「体重の増減がどれほどになるかは、デンプン質の食べ物をどれぐらい摂取するかで決まる」と記述されている。この文章はその後の50年間、全ての版で使われ続けた[6]
  • 1963年、サー・スタンリー・ディヴィッドソン( Sir Stanley Davidson )と、レジナルド・パスモア( Reginald Passmore )の2人は、『Human Nutrition and Diabetes』を出版した。この本では、

「人気のある『痩せる方法』は、いずれも炭水化物の摂取を制限するものである」

「炭水化物の多いものを食べ過ぎることこそが、肥満の最大の原因であり、その摂取は徹底的に減らすべきである」

と記述されている。同年、パスモアは、イギリスで出版されている栄養学の雑誌『British Journal of Nutrition』にて、以下の宣言で始まる論文の共著者にもなっている。

「全ての女性は、炭水化物の摂取が身体に脂肪を蓄積させることを知っている。これは1つの常識であり、このことに異議を唱える栄養学者は存在しないであろう」[6]

  • 1958年にはリチャード・マッカーネスRichard Mackerness, 1916~1996 )による著書『Eat Fat and Grow Slim』(『脂肪を食べて細身になろう』)、1960年にはヘルマン・ターラー英語版Herman Taller, 1906~1984 )による著書『Calories Don't Count』(『カロリーは気にするな』)が出版されており、いずれも炭水化物の摂取制限を奨める内容である。
  • イギリス生理学者栄養学者ジョン・ユドキンJohn Yudkin )は、1972年に出版した著書『Pure, White and Deadly』の中で、「肥満や心臓病を惹き起こす犯人は砂糖であり、食べ物に含まれる脂肪分は、これらの病気とは何の関係も無い」と断じている。また、ユドキンは、「砂糖・小麦粉、その他炭水化物の含有量が多いもの全般を禁止する代わりに、肉・魚・卵・緑色野菜は自由に食べてよい」と主張している。

「体重を減らしたいのなら、炭水化物を食事から排除すれば成功する。これを守らなければ、減量は必ず失敗に終わる」

「炭水化物ではなく、タンパク質と脂肪の摂取を減らした場合、常に空腹感が付きまとい、その空腹が減量を失敗に導くであろう」

「炭水化物は人間の食事には必要ない。『必須炭水化物』なるものは存在しない」

と明言している[6]

「ヒトを病気にさせるのは動物性脂肪ではなく、炭水化物である」「今まで言われ続けてきた、『脂肪の摂取を減らしたり、低脂肪な食事をするように』という『伝統的な食事法』[24]は、何の役にも立たないが、炭水化物が少ない食事は肥満患者や糖尿病患者の健康を改善できるだろう」[25]と確信しており、「低脂肪の食事は、長期的に見ても『体重の減少に効果がある』との証明はされておらず、食事のあり方を変えるべきである」との立場を明確にしている[26]2008年にスウェーデンの保険福祉庁とアメリカ糖尿病学会が「炭水化物を制限する食事法は肥満や糖尿病治療に役立つ可能性がある」という評価をくだすも、ある5人のダイエットの専門家がそれを認めなかった。イーエンフェルトはこれに対して大いに疑問視した[27]2009年、イーエンフェルトは、スウェーデンの医療雑誌『Dagens Medicin』に、スウェーデン食糧庁による「動物性脂肪を避けるように」との警告には何の根拠も無いこと、国が推奨している現在の食事内容をただちに変えるべきであるという内容の記事を、12人の著者とともに共同で寄稿した[28]

2011年、イーエンフェルトは著書『Low Carb, High Fat Food Revolution: Advice and Recipes to Improve Your Health and Reduce Your Weight』を出版し、炭水化物を制限する食事法を奨めている[29]。本書は英語で書かれ、スウェーデン本国でベストセラーとなり、8つの言語に翻訳された[30]

  • イングランドの医師ジョン・ブリッファ( John Briffa )は、著書『Escape the Diet Trap』の中で、

「高糖質・低脂肪な食事に体重を減らす効果は無い」

「カロリー制限食は、体重を減らせないだけでなく、深刻な病気を患いやすくなる」

「体脂肪の蓄積を強力に推進する主要因子となるのはインスリンInsulin )である」

インスリン抵抗性Insulin Resistance )は、肥満および2型糖尿病と密接に関係している」

「インスリン抵抗性は、血糖値の乱高下、トライグリセライド(triglyceride, 中性脂肪値)の上昇で惹き起こされ、体内で発生する炎症作用の原因となり、これらはインスリンの大量分泌を促す食べ物の摂取で惹き起こされる。そのインスリンの大量分泌を惹き起こす食べ物は炭水化物である」

「食事に含まれる脂肪分の摂取と体重の増加には因果関係は無く、『脂肪の摂取を減らせば体重を減らせる』ことを示す証拠は無い」

「84時間に亘って生理食塩水のみの点滴を受け続け、絶食状態にあった被験者と、脂肪分だけを1日2000kcal供給された被験者の血中の状態は、まったく同じであった」

「炭水化物の摂取を減らし、脂肪の摂取を増やすほど体重も体脂肪も減っていく」

「食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌を全く促さない以上、太る原因にはなり得ない」

「動物性脂肪の摂取と、肥満および心臓病には何の因果関係も無い」

マーガリンのようなトランス脂肪酸は避けること」

「穀物の栄養価は極めて低い。穀物を動物に食べさせると、本来ならあり得ない速度で脂肪が蓄積していく。このことから、穀物は『食料』ではなく、『飼料』と呼ぶべきである」

「『タンパク質の摂取は腎臓に負担をかける』とする説には何の根拠も無い。体重1kgにつき、2.8gのタンパク質を摂取しても、腎機能に悪影響が出ることを示す証拠は見付からなかった」

「タンパク質は骨の原料でもあり、タンパク質の摂取を増やすことで骨折のリスクは低下する」

「タンパク質の摂取もインスリンの分泌を促すが、同時にグルカゴンの分泌も誘発し、インスリンによる脂肪蓄積作用を緩和する」

「食欲を満足させるのに最も効果的な食事と呼べるものは、タンパク質と脂肪が豊富で、炭水化物が極めて少ない食事である」

「有酸素運動に体重を減らす効果は無い」

と述べている[31]

「減食と運動は無意味」編集

「痩身や減量というのは、食事制限や運動をせずして成功しない」[32]と言われることが多い。「食べる量を減らして運動しろ」ということであるが、実際には、この言い分には何の根拠も無い。後述するが、アメリカ合衆国で何度となく行われた「減食と運動の組み合わせで肥満を防げるか」という実験は、「全て例外なく」失敗に終わっている。具体的には、参加者たちの全員が、「体重は減らず、身体から筋肉が減り、脂肪が増え、「実験開始前よりも肥満になった」。それだけでなく、「各種疾患の発症を防ぐ効果も無い」という結果に終わっている。

肥満患者を治療する臨床医の多くは、1960年代までは、「運動すれば減量できる」「座りっぱなしの生活をしていると太る」「食べ過ぎるから太る」といった考え方を「幼稚」として退けていた。メイヨー・クリニックの医師、ラッセル・ワイルダーもその1人である。1932年、肥満についての講演を行った際に、ワイルダーは以下のように述べている。

「肥満患者は、ベッドの上で安静にしていることで、より早く体重を減らせる。一方で、激しい身体活動は減量の速度を低下させる」「運動を続ければ続けるほどより多くの脂肪が消費されるはずであり、減量もそれに比例するはずだ、という患者の理屈は一見正しいように見えるが、体重計が何の進歩も示していないのを見て、患者は落胆する」[6]

ラッセル・ワイルダーのこの主張は、カール・フォン・ノールデンが唱えたカロリー理論を全否定するものである。メイヨー・クリニックで医師として働いていたワイルダーは主に糖尿病患者を担当していたが、糖尿病だけではなく、肥満の治療にも関心が高かった。前述のとおり、ワイルダーは「極度の低糖質・高脂肪な食事」であるケトン食を、肥満患者・糖尿病患者に処方し続けた。

「運動は減量に何の効果も無い」と明言している人物は何人もいる。ノールデンが「消費する以上のエネルギーを摂取するから太るのだ」と唱える遥か以前から、ウィリアム・ハーヴェイやウィリアム・バンティングはカロリー理論に相当するやり方を実践していた。ほどなくして、これは減量においては何の役にも立たないことに気付いたバンティングは、『市民に宛てた、肥満についての書簡』の中で「減量に対して何の効果も無い方法」の1つに、「食べる量を減らして運動量を増やす」を挙げている。バンティングに炭水化物制限を教える前のウィリアム・ハーヴェイも、「激しい身体活動に励めば痩せられるはずだ」と考えていた。

なお、トマス・ホークス・タナーも、著書『The Practice of Medicine』の中で、「肥満を治療するにあたっての『ばかげた』治療法」の1つに、「食べる量を減らす」「毎日多くの時間を散歩と乗馬に費やす」を挙げ、「これらの方法をどんなに辛抱強く続けたところで、望む目的が達成されることはない」と断じている。なお、タナーも「『炭水化物を断つこと』こそが、減量を成功させる唯一の方法である」と確信していた人物の1人であった。

1990年代初期、アメリカ国立衛生研究所The National Institutes of Health )は、『The Women's Health Initiative』(『女性の健康構想』)と題した、約10億ドルに及ぶ研究を行った[33][34]。この中で、「低脂肪の食事で心臓病や癌を本当に予防できるか」という研究も同時に行われた。5万人近くの女性を登録し、2万人をランダムに選び、果物・野菜・全粒穀物・食物繊維が豊富なもの・脂肪が少ないもの・・・これらを優先的に食べるよう指示した。この食事を続ける意欲を保つため、女性たちは定期的にカウンセリングを受けた。毎日の食事の摂取カロリーは360kcal分減らし、少ない量を食べ続けた。また、参加した女性たちは「少なく食べるように」「脂肪が少ないものを食べるように」「運動するように」という指示も与えられ、減食と運動を忠実にこなし続けた。この生活を8年間続けた結果、女性たちは(実験開始前と比べて)1人あたり平均で約1kg体重が減ったが、その腰回りは膨らんだ[6]。この事実が意味するところは、「彼女らの身体から減ったのは脂肪ではなく、筋肉である」ということである。また、研究者たちは「脂肪分の少ない食事は、心疾患、癌、その他の病気を予防できなかった」とも報告している。彼女らが受けたカウンセリングおよび食事の意味として、意識的か無意識的かを問わず、「少なく食べるよう心掛けた」ことである[6]。「消費カロリーが摂取カロリーを上回れば体重は減る」のが本当であるのなら、この試験に参加した女性たちが太った理由が説明できなくなる。脂肪は1kgにつき、約7000kcalのエネルギーに相当する。彼女らが、毎日の食事の摂取カロリーを360kcal減らしていたのなら、実験を開始して3週間で約1kgの脂肪が減っていたはずであり、1年続ければ約16㎏の脂肪が減る計算になる。試験開始の時点で、参加した女性たちの半数は肥満体であり、大多数は少なくとも過体重であった[6]

ハーバード大学の研究者ブルース・ビストリアン( Bruce Bistrian )は、「減食(食べる量を減らす)は、肥満に対する処置にも治療法にもならない。最も目立つ症状を一時的に緩和する方法でしかない。もしも減食が肥満に対する処置にも治療にもならないとするなら、これは『過食は肥満の原因ではない』ことを示す」と述べている[6]。「過食が肥満の原因である」という考えに疑問を投げかけるあらゆる理由の中で最も明確なものは、「肥満は、食べる量を減らしても治せない」という事実である。

1977年、アメリカ合衆国において、運動熱の高まりが強まっていたころ、アメリカ国立衛生研究所は、肥満および体重制御についての2度目の会議を主催した。この会議に集まった専門家たちは、「体重を制御するという点において、運動の重要性は、想像している以上に低い。ヒトは運動量を増やせば、同時に食べる量も増えがちになり、運動による消費エネルギーの増加が食べる量の増加に勝るのかどうか、それを予測するのは不可能である」という結論に達した[6]

カリフォルニア州ローレンスバークレー国立研究所( Lawrence Berkeley National Laboratory )の統計学者、ポール・ウィリアムズ( Paul Williams )と、スタンフォード大学の研究者ピーター・ウッド( Peter Wood )は、普段からよく走る習慣のある13000人を集め、これらのランナーたちの1週間の累計走行距離と、年ごとの体重の変化を比較する研究を行った。ピーター・ウッドは、運動が健康にどのような影響を及ぼすのかについて、1970年代から研究を行っていた人物でもある。この13000人のランナーについての研究では、最もたくさん走った人ほど最も体重が少ない傾向こそあったが、これらのランナー全員、「年を重ねるごとに体重が増えていく」傾向にあった[6]

2007年、ハーバード大学医学部長ジェフリー・フライアー( Jeffrey Flier )とその妻テリー・マラトス・フライアー( Terry Maratos-Flier )は、雑誌『Scientific American』に論文を寄稿し、その中で「ヒトの食欲とエネルギーの消費について、この2つは人間が意識的に変えられるような代物ではない」「この2つの要素のバランスの補正と結果が脂肪組織の増減につながるなどという、そんな単純な変数ではない」と述べている[6]

2007年8月、アメリカ心臓協会( The American Heart Association )とアメリカスポーツ医学会( The American College of Sports Medicine )は身体活動と健康に関するガイドラインを共同で発表した。この団体の専門家たちは、週に5日、1日に30分程度の精力的な運動が「健康を保ち、促進するために必要である」と述べた。しかし、「肥満になることや痩せたままでいることに対して、運動がどのような影響を与えるのか」という質問になると、彼らは以下のようにしか答えられなかった。

「1日あたりのエネルギー消費の多い人は、それが少ない人に比べて、時間とともに体重が増える可能性が低い、と仮定することは理にかなっている。これまでのところ、この仮説を支持する証拠となるものについては、『説得力がある』とは呼べない」[6]

ゲアリー・タウブスは、「We don't get fat because we overeat; we overeat because we're getting fat.」(「ヒトは過食するから太るのではなく、身体が今まさに太りつつあるから過食に走るのである」)と明言している[6]。また、「肥満は、エネルギーバランス、カロリー理論、過食、熱力学、物理法則とは、何の関係も無い」「『肥満』とは『栄養過剰』ではなく、『栄養失調』の一種である」と断じている[6]

過食実験編集

2013年、イングランド人のサム・フェルサム( Sam Feltham )は、1日に5000kcalを超えるエネルギーを摂取する過食実験を自らの身体で実施した。最初の21日間で栄養素の構成比を「脂肪53%(461.42g)、タンパク質37%(333.2g)、炭水化物10%(85.2g)」(「低糖質・高脂肪な食事」)に設定し、1日に「5794kcal」のエネルギーを摂取する生活を21日間続けた。21日後、フェルサムの体重は1.3kg増加したが、腰回りは3cm縮んだ。フェルサムの身体からは脂肪が減り、除脂肪体重が増加し、身体は引き締まった[35]

次に、フェルサムは摂取エネルギーの構成比を「炭水化物64%(892.7g)、タンパク質22%(188.65g)、脂肪14%(140.8g)」(「高糖質・低脂肪な食事」)に変え、1日の摂取エネルギーを「5793kcal」に調節し、再び21日間過ごした。21日後、フェルサムの体重は7.1kg増加し、腰回りは9.25cm膨らみ、顎の脂肪も膨らんでいた[36][37][38]。なお、この「炭水化物の摂取を増やし、脂肪の摂取を減らす食事」は、アメリカ糖尿病学会英語版The American Diabetes Association )やアメリカ心臓協会The American Heart Association )が推奨している「栄養バランスのとれた食事」である。

もう1つの実験として、フェルサムは「ヴィーガン食」(Vegan Diet, 完全菜食)による過食実験も実施した。ヴィーガン食は基本的に「高糖質・低タンパク・低脂肪」な食事である。1日の摂取エネルギーを「5794kcal」に調節したヴィーガン食で再び21日間過ごした。21日後、フェルサムの体重は4.7kg増加し、腰回りは7.75cm膨らみ、顎の脂肪も膨らみ、体脂肪率は12.9%から15.5%に上昇した[39]

ホルモン「インスリン」編集

「インスリンがヒトを太らせる」編集

体重を目標もしくはそれ以下まで落としたものの、その後再び体重が増えてダイエット開始前と同じ体重に戻ったり、以前よりも体脂肪率が増加する。これは俗にリバウンドと呼ばれている。減量とリバウンドを繰り返すと、痩せにくく、太りやすい状態となる。

体重のリバウンド現象については、膵臓から分泌されるホルモンインスリンInsulin )およびインスリン抵抗性Insulin Resistance )が原因と考えられている。カナダの腎臓内科医、ジェイスン・ファン( Jason Fung )は、「リバウンドとは、インスリンが設定した体重に戻ろうとすること」と述べている。「体重の『設定値』を決めるのはこのインスリンであり、インスリンが過剰に分泌される状態およびインスリン抵抗性が続くと、インスリンが『体重の設定値のつまみを回す』。こうなると、何をどうしようとも、身体はインスリンが設定した体重に戻ろうとする」「体重のリバウンドが起こるのは、あなたの意志が弱いわけでも、努力が足りないわけでもない。インスリンがその人の体重を決める」という[40]。また、身体活動および運動の効果に対しても、「体重を減らすことを目的に、食べる量を減らして運動をする習慣を付ける実験は、いずれも例外なく失敗に終わっている」「どれだけ運動を頑張ってこなし、食べる量を減らしたところで体重を減らす効果は無いことは証明済みである」「運動する人に比べて、運動しない人ほど痩せている[40]と結論付けている。「やろうと思えば誰でも太らせることが可能だ。インスリンを注射するだけでいい。インスリン濃度が高い状態が続く限り、どんどん太り続ける。何をどうしようとも無駄である」と述べ、「『肥満ホルモン』ことインスリンがヒトを太らせる」と結論付けている[40]。炭水化物の摂取制限を奨める人物も全員例外なく、「インスリンが出るから太る」という結論で一致しており、「過食や運動不足は肥満の原因ではなく、あくまで『結果』でしかない」と断じている。

1965年、医学物理学者のロザリン・サスマン・ヤロウRosalyn Sussman Yalow )と、医師で化学者のソロモン・アーロン・バーソン( en:Solomon Aaron Berson )の2人は、「脂肪を脂肪細胞から放出させ、それをエネルギーにして消費する」ためには、「“Requires only the negative stimulus of insulin deficiency.”」(「『インスリン不足』という負の刺激以外は必要ない」)と明言した[6]

ハーバード大学の元医学部長ジョージ・F・ケイヒル・ジュニア( en:George F. Cahill Jr., 1927~2012 )は、

Carbohydrates is driving insulin is driving fat.」(「脂肪を操るインスリンを、炭水化物が操る」)[6][41][42]との言葉を残している。

砂糖中毒編集

英語圏においては、『Sugar Addiction』(『砂糖中毒』『砂糖依存症』)という言い方が広まっており、「砂糖に対する欲求や、砂糖を多く含んだものが止められないという砂糖に対する渇望感は、中毒症状の一種であり、その中毒症状を惹き起こすのは砂糖である」という見方が広まっている。アメリカ合衆国の歯科医師ウェストン・プライスは、狩猟採集生活を送っているグループの食生活についての研究をまとめた報告書『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響』(1939年)の中で、「砂糖を食べるようになってから、虫歯を患ったり、栄養不足に伴う病気が増えた」と述べている。イギリス生理学者栄養学者ジョン・ユドキンは、著書『Pure, White and Deadly』(1972年)の中で、「肥満や心臓病を惹き起こす犯人は砂糖であり、食べ物に含まれる脂肪分は、これらの病気とは何の関係もない」と断じている。ユドキンの主張を支持する者の1人として、カリフォルニア大学神経内分泌学者ロバート・ラスティグRobert Lustig )がおり、カリフォルニア大学が製作・公開したラスティグによる講演『Sugar: The Bitter Truth』の中で、「砂糖は毒物であり、ヒトを肥満にさせ、病気にさせる」「砂糖の含有量が多いものには課税すべきだ」と断じており[43]、著書『Fat Chance』の中でもそのように主張している。

ゲアリー・タウブスは、2016年に出版した著書『The Case Against Sugar』(『砂糖に対する有罪判決』)の中で、「砂糖は『中毒性の強い薬物の一種』であり、ヒトを肥満にさせるだけでなく、心疾患の原因でもあり、健康を脅かす」「肥満とは、身体がホルモン障害を惹き起こした結果であり、そのスイッチを入れるのは砂糖である」と断じている[44]

ジェイスン・ファンも、「砂糖の摂取は、血糖値および血中のインスリン濃度を速やかに急上昇させ、その状態を長時間に亘って持続させ、さらにはインスリン抵抗性をも同時に惹き起こす」「砂糖や人工甘味料は、インスリン抵抗性を惹き起こす直接の原因となる」「『どれくらいの量なら砂糖を摂取してもいいか』というのは、『どれくらいの量ならタバコを吸ってもいいのか』という質問と同じである」「砂糖を食べると太る。この事実に異を唱える者はいないだろう」「太りたくない、体重を減らしたいのなら、真っ先にやるべきなのは、糖分を厳しく制限することである」と断じている[40]。食べ物に含まれる脂肪分に対しては、「脂肪はインスリンの分泌を促す力が最も弱い以上、太る原因にはなり得ない」「トランス脂肪酸以外の良質な脂肪はより多く摂取すべき」[40]としており、ジョン・ブリファも同様の趣旨を述べている[31]

断食・絶食療法編集

ジェイスン・ファンは「血中のインスリン濃度が低い状態を維持することにより、インスリン抵抗性と肥満を治療し、安定して体重を減らす」手段について、「間欠的に行う断食」( Intermittent fasting )を推奨している[40][45][46]

また、断食を382日間続け、456ポンド(約207㎏)あった体重を180ポンド(約82㎏)まで減らし、最終的に276ポンド(約125㎏)の減量に成功したスコットランド人、アンガス・バルビエーリAngus Barbieri )がいる。バルビエーリは一切の固形物を摂取することなく、水、茶、ブラックコーヒー、ビタミンとミネラルのみで生活することで、自分で肥満を治療した。バルビエーリが行った断食は、1971年版のギネスブックにも登録されている[47][48]

BMI編集

減量するべき場合と、するべきでない場合とがある。

あくまで目安ではあるが、BMIBody Mass Index, ボディマス指数と呼ばれる)の数値を見て判断する。BMIにより、「普通体重」と判定される範囲(18.5以上 ~ 25未満)であれば、体重の増減に囚われる心配は無用である。BMIによって「肥満」と判定された場合、とくにその数値がより高ければ高いほど(「肥満度数 2」と比較して「肥満度数 3」、「3」と比較して「肥満度数 4」など)、「減量を推進すべき」とみなされやすい。

BMIの数値が「18.5未満」の人の場合は「痩せすぎ」と判定され、その場合、それ以上体重を減らしてはいけない。見るからに異様に痩せているにもかかわらず、それでも減量を続行しようとして病気を患ったり、命を落とした事例もある(後述)。

手術編集

痩身を目的とした手術には以下のものがある。

なお、既述のとおり、「食べる量を減らしたところで痩せはしない」うえに、手術の結果次第では命を落とす場合もあり、非常に危険な手段となる。

痩せ薬編集

どうすれば痩せ、どうすれば太るのかを知らない人につけこんで、痩身にも減量にも何の役にも立たない商品やサービスを売りつける業者も存在する[32]アメリカ合衆国を例に挙げると、その市場規模は約330億ドルだという[49]。しかも、少女らによる減量目的のステロイド剤の使用が社会問題と化している。2005年に行われた報告によれば、女子高校生のおおよそ5%、女子中学生のおおよそ7%が、少なくとも一度はステロイド剤を使用した経験があるという[50]

種類編集

「痩せ薬」とされているものについては、以下の種類がある。

事例編集

ヨーロッパ各国で使われていたものとしてフェンフルラミンがある。脳内にあるセロトニン受容体に直接作用してセロトニンの濃度を高めることにより、食欲を抑制する作用がある。アメリカ合衆国では1996年に許可が下り、市場に出回った。しかし、その翌年に心臓弁膜症肺高血圧を誘発する危険性を指摘されたことで、FDAの要請に基づいて市場から回収された。日本でも、このフェンフルラミンや甲状腺ホルモンの混入した健康食品が、インターネットや口コミを通じて出回り、重大な健康被害を引き起こす例が多発して社会問題になった(2002年)。

EMEAやFDA、厚生労働省が承認した痩せ薬の多くは中枢神経に作用する薬物であり、日本においては本来は医師が処方するものである。日本で承認されているマジンドール処方箋医薬品であるが、これ以外の薬物は承認されておらず、その適応基準は厳格に設定されている。

EMEAあるいはFDAに認可されている痩せ薬は、BMI≧30の高度肥満症であるか、BMI≧27でかつ2型糖尿病や脂質代謝障害のような疾患を有している人が投与対象である[51][52][53][54]。日本における投与についてはBMI≧35か、70%以上の肥満度の高度肥満症であること(マジンドールの適用基準)が前提となっており、一段と厳しい基準を課している[55]

宣伝を行う業者編集

いずれも痩身効果が医学的に証明されたことはない。TVインターネットでしばしば紹介される減量法は、いずれも何の根拠も無いものであったり、実験データを捏造したり、不十分であったりして、健康被害が発生した例が報告されている[56])。

1. サプリメントを服用することにより、結果として食事の内容や量、バランスを変化させたのと同様の効果を期待するというもの。その類のサプリメントには、

  • 「通常の食事の代わりに服用して満腹中枢を刺激する(結果として摂食量の減少が期待できる)」と宣伝するもの
  • 「食事中に含まれる、熱量となる栄養素の一部吸収を阻害する」と宣伝するもの

が多い。

2. 「脂肪に対して物理的な刺激を加えることで体の一部を細くする(→「部分痩せ」)」というもの

  • 利用される方法は(「サウナスーツ」。 発汗作用により、一時的に体重を減らす)、高周波振動(電動式痩身ローラー・ベルト)、低周波振動(マッサージ器)、磁力 etc.
  • エステティックサロンなどで行われているマッサージによる「脂肪のもみ出し」 ・・・ これは脂肪の流動性を高める、あるいは脂肪細胞を破壊し血中に溶出させ脂肪量を減少させる、というもの。だが、脂肪細胞といえどあくまで他組織と密接に関係する生体組織であり、マッサージを受けることで温度が上昇し、一時的に柔らかくなることはあっても流動性が高くなったり移動したりするものではない(そのようなことで移動していては脂肪細胞のほとんどすべてが足に集まってしまう)。また、マッサージで実際に脂肪細胞を破壊するような力を加えたならば、周辺組織の破壊を伴う重傷を負うであろう
  • 補正下着ガードルボディスーツ) ・・・ 細身の外見に見せることが可能。だが、痩身効果や体型の補正効果が医学的に示されたことは1度もない。マルチ商法ネットワークビジネスで販売されることが多い

なお、これらはいずれも減量の効果は一切無い。

詐欺編集

どうすれば太るのか、どうすれば痩せるのかを知らない人に付けこむ形で、健康被害や詐欺の事例がしばしば発生する。例として、以下のようなものがあげられる。

  • 副作用が強い薬や、有害な成分を含む食べ物
  • 期待される効果やサービスの内容に対して著しく料金が高額なもの
  • 科学的に効果がそもそも期待できないもの
    • 波動アルカリ性食品など、オカルト疑似科学を理論の中心に据えているもの
    • テレビ番組「発掘!あるある大事典II」で行われたデータの捏造・・・信頼性がそもそも低い実験データを根拠としていたり、そもそも実験すら行っていなかった
    • 科学的な検証が不可能なアンケート結果や、「個人の体験談」を根拠としているもの(バイブル商法
  • 宣伝・勧誘の方法に問題があるもの
    • 不安や恐怖心を煽りながら勧誘を行うもの
    • 宣伝に登場する「専門家」の経歴が、ディプロマミルのように信用に値しないもの
    • クーリングオフに応じない
    • フィットネスクラブで、最初は低料金のコースで入会させ、後から高額のコースへの変更や別料金が必要なオプションの追加を行わせるもの
    • カルト宗教の団体が、美容や痩身を謳った本やサークルを勧誘の手段に用いる(法の華三法行

これらにも減量の効果は一切無い。

精神疾患編集

最初は美容の目的で手段として体重を減らしたが、次第に「手段の目的化」がおこり、体型を客観的に把握できず単純に体重の数値のみに拘泥する状態になることがある。これが行き過ぎると、自身が理想としている体型への強い渇望感が変質して生じる「神経性無食欲症」( Anorexia, 「拒食症」とも)と呼ばれる精神疾患に罹患することがある。ファッションモデルをやっていたアナ・カロリナ・レストンや、ルイゼル/エリアナ・ラモス姉妹は、体重の増減に憑りつかれた挙句、栄養失調が原因で死亡している。

脚注編集

出典編集

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関連項目編集