船外機(せんがいき、: outboard motor)とは、船に装着する、取り外し可能な推進機関。おもに小型ボートなどに用いられ、駆動装置・かじ・燃料タンクなどが一体となっている[1]

ボートの後部に船外機を装着した状態
多種多様な船外機の展示

船外機というのは、船内機(inboard motor。船体に組み込まれ一体化し、簡単には取り外しのできない推進機)と対比される機械・機構である。

船外機は、一般的には、燃料タンクエンジン、動力伝達系(ギアクラッチ、伝動シャフトなど)およびスクリュー等が一体化した(つまりユニット化した)機械・装置である。一般的には、小型の船舶の後部に取り付ける。推進力を生むことが主たる役割ではあるが、多くの場合、船外機自体が水平方向に回転する機構も備え、斜め方向に推力を伝えることでの役割も同時に果たす。

出力は、2馬力程度のものから627馬力まで様々である。

3台並べて装着した例。(3台並べて装着することを「3基掛け」と言う)

多くの場合、一台だけ装着して使う(「単機」と言う)が、1台で足りないほど大きな出力が必要な場合などには、複数台並べて装着する。

以前は2ストロークエンジンが圧倒的に主流だったが、環境汚染の問題や燃費の問題が考慮されるようになり4ストロークエンジンが主流になってきている。

ガソリンを燃料とするものが一般的であるが、一部にディーゼルエンジン式のものもあり、また電動で小型のトローリングモーター(での釣りバス釣りなどで用いられる)も船外機の一種である。

船外機をチルト(跳ね上げ)することで、プロペラを傷めずに舟をビーチング(砂浜へ上陸させる)ことができる。

船外機のメリットとしては、故障した場合やバージョンアップしたい場合などに簡単にとりはずし修理したり交換できること、(大抵は)「跳ね上げ(チルト)」できスクリューのプロペラを護りつつ浅瀬を進行したり砂浜に上陸できること、船体の外に設置できるので船室内の貴重な空間をエンジンや伝達系に奪われずに済むこと、船体がゆがんだ場合でもプロペラシャフトがゆがむような問題が起きないこと、船室内への浸水(水漏れ)の原因になりにくい、等々である。

歴史編集

知られている中では、最初の船外機は1870年ころにフランスの技術者・発明家のギュスターヴ・トルーヴェによって作られたものであり、小型で5kgほどの重さで電気式のものであった[2]、そして1880年5月に特許が取得された(特許番号136,560)[3]。 その後American Motors Coによってガソリン式の船外機が25台ほど製造された[2]。だがどちらに対しても人々はほとんど興味を示さなかった。

最初の実用的な船外機は1909年にノルウェー系アメリカ人オーレ・エヴィンルード(Ole Evinrude)により開発された。1909年から1912年にかけて、Evinrudeは数千台の、3馬力の船外機を製造し世界各地で売った。日本では、1956年に東京発動機(現:トーハツ)が初めて量産機を発売した[4]

歴史的に大抵の船外機は2ストロークエンジンを使用していた。2ストロークエンジンは構造がシンプルで信頼性が高く、コストが低くそして高いパワーウェイトレシオを誇った。特に重量面は非常に重要で、過大な重量は船の操縦性を妨げた。しかしながら高い排出ガス環境基準と燃料コストのために特にローエンド機種において4ストロークエンジンが次第に採用されるようになった。近年、ハイエンド機種では2ストロークのままでガソリン直噴エンジンにすることにより排ガス規制を満たし、燃費経済性との両立を目指したモデルや4ストロークエンジンにおいてはポート燃料噴射装置を使用した大排気量モデルが出現している。 中でも2004年に、マーキュリーマリーンから発表されたモデル「ベラード」は、4ストローク直列4気筒/6気筒DOHCエンジンに機械駆動式過給機(メカニカル・スーパーチャージャー)を組み合わせた、画期的な製品であった。

2000年代に入ってから、日本国内市場向けの2ストロークガソリンキャブレター仕様の船外機の製品数は減少してきている。

メーカー別に見てみると、ヤマハ発動機は、高圧気筒内直接噴射方式の2ストローク大排気量船外機を国内市場向けに投入するのを控え、4ストローク船外機に主力を移しつつある。スズキは、国内市場向けには、2ストローク船外機を投入せず、4ストローク船外機のみに絞っている。本田技研工業は、船外機開発の当初から4ストロークのみであった。 トーハツは、大排気量は、2ストローク低圧気筒内直接噴射方式で小排気量は4ストロークで対応している。

構造、材質編集

 
船外機の外観と各部の名称
 
パワーヘッドのフタを開けた状態
気筒数とシリンダー配置

概して言えば、小排気量・低出力のものは単気筒、大排気量・高出力のものは多気筒である。一般的には1気筒、2気筒、3気筒、4気筒で、まれに6気筒、ごくまれに8気筒がある。

シリンダー配置は、単気筒をはじめ、直列型(インライン)は2から4気筒V型では、4気筒6気筒が一般的であるが、大型モデルの中にはV型8気筒のモデルも存在する。

サイズ

250馬力以上になると、成人男性よりも全長は大きい。

2ストロークと4ストローク

以前はコンパクトで高出力な2ストロークエンジンが多く用いられていたが、2ストローク式は排出ガスに含まれるオイルが水質汚濁を引き起こし炭化水素の排出も多いので、規制されるようになり、環境により優しい4ストロークエンジンに転換しつつある。(中小型用の船舶用エンジンの大半はインボード・アウトボード問わず冷却用に吸水した海水を排気管から排出するため排水に排出ガスの成分が混ざってしまう。2ストロークガソリンエンジンでも生分解性のオイルを用いることで改善は可能。)特殊ではあるが、ヤンマーが製造している4ストロークディーゼルエンジン、ヤマト発動機が製造している競艇用2ストロークガソリンエンジンを使用しているものがある。

クランクシャフト配置

一般的にクランクシャフトを垂直に配したエンジン(バーチカルクランクシャフトエンジン)が用いられる。まれに水平にセットされるものもある。

冷却機構と排気機構の特徴

船外機はリコイルスターター又はスターターモーターを配備し、オルタネーターイグニッションなどがある、という点ではオートバイなどのエンジンとほぼ同じである。だが冷却についてはオートバイのエンジンとはやや異なっていて、ラジエーターは使わずプロペラ付近にある「冷却水取り入れ口」から「インペラ」と呼ばれるいわゆるウォーターポンプで水を吸い上げ、エンジン本体のウォータージャケットを通し、プロペラ中心の排気口から排気ガスと一緒に排出される。また、ジャケット内部に水が正常な循環がなされているか確認できるよう本体上部から冷却水の一部が排出される構造にもなっている。 また排気についても異なり、マフラー(やチャンバー)は存在せず、排気はプロペラ中心の排気管から排出され、触媒などもない。その結果、船外機では排ガスの質のコントロールが難しくなっている。排気管は水中にあるので排気音は抑えられている。

冷却水は船舶が航行している場所の水を直接吸入し、エンジン等を直接冷却し、使用後排出される。ポンプによって連続的に吸入・排出が行なわれ、閉域循環しない。このことはラジエターおよび冷却ファンを不要とし、重量とコストを陸上のエンジンよりも下げることに寄与する。

前進と後進の切り替えや、出力の調整

一般的には「前進」と「後退」を切り替えられるようになっている。メカニズム的には歯車機構でプロペラの回転方向が切り替わる。小馬力の船外機では「チラーハンドル」といい、エンジン本体から操作棒が出ておりこれで操舵とスロットルコントロールが出来る。高馬力の船外機では(重量が重く、チラーハンドルでの操舵には相当な腕力が必要なので)、コンソールからワイヤーや油圧システムで操舵しリモコンボックスでスロットルとギア操作を行う仕組みが採用されることが一般的である。

概ね75馬力以上のエンジンではワイヤーや油圧操舵システムを採用することが一般的である。ただし一部のメーカーでは200馬力程度まで対応可能な「パワーアシスト付き」のチラーハンドルを備えた船外機も製造・販売している。

錆対策、腐食対策

船外機は水面で使用され、金属が特に腐食しやすい海水塩水)中でも使用されるので、が発生しにくいことや腐食に強いことが求められ、特に腐食しやすい箇所の材質としてアルミニウムステンレスなどが用いられる。

プロペラ式とウォータージェット式

推進機構としては、スクリュー式(プロペラ式)が一般的である。

ウォータージェット方式の製品も登場した。ウォータージェット推進方式の船外機の日本国内での販売は2009年12月時点で存在していないが、スクリュープロペラ仕様の船外機をポンプユニットを装備したウォータージェット推進仕様に改造する部品が株式会社石垣より販売されている。

騒音編集

エンジンノイズについては、4ストローク船外機ではアイドリングの音が分からないくらい静かで全開時のノイズも疲れるような音圧ではない。しかし、2ストローク船外機は総じて大きくアイドリングの状態から音圧は大きい。さらに全開時のサウンドは非常にレーシーになる。スーパーチャージャー搭載モデルは使用している圧縮機の影響でジェット機のような高域を発する。

メンテナンス編集

使用後の真水洗浄

海面で使用する場合には、冷却水として海水が船外機内の流路を通り、使用後もそれが残留し、それをそのまま放置すると船外機を腐食させるので、使用後には真水で洗う必要がある。洗わずに放置するとの原因となったり、甚だしい場合は 塩が結晶化し流路に詰まってしまい次回の使用時にオーバーヒートを引き起こし深刻な故障となる。使用後は水洗キット(俗に「ヘッドフォン」とも言う)を使用し、(塩分の含まれない)水道水などを用いてアイドリング運転で概ね10分程度の水洗を行う。

2ストローク方式の場合

2ストローク方式の船外機の場合、当然ながらオイルの補給は必須で、以前は混合給油(使用者が、あらかじめガソリンとオイルを混ぜた上で燃料タンクに入れること)が行われていたが、現在では分離式がほとんどである(小型の物や特殊エンジンを除く)。スパークプラグの劣化も激しいので、その点検・交換にも気をつける必要がある。

4ストローク方式の場合

4ストローク船外機の場合、各メーカーごとにエンジン稼働時間によってオイル交換時期を指定している。潤滑方式にドライサンプ式を採用しているので、交換に必要なオイル量は排気量の割に多い。また、インペラの交換とギヤオイルの交換も毎年行う事が理想である。基本的にエアクリーナーはない事から、エンジンルーム内の清掃はまめに行う。


ギャラリー編集


市場、製造者、シェア編集

日系企業の世界シェアをみればヤマハ発動機が40%、スズキが15%、本田技研が6%であり[5]、日系のメーカーが大半を占める。

日系企業以外では、マーキュリーマリン、エビンルード(ボンバルディア)などの知名度が高い[要出典]

自動車用のエンジンと比べ生産数が少ないため船外機の価格は高額で過去[いつ?]は1馬力1万円というおおよその相場があったが、現在[いつ?]は1馬力1万5千円くらいに価格が上昇している。(マーキュリーベラード350馬力は1基あたり約450万円)[独自研究?]

製造者一覧

脚注編集

  1. ^ 大辞林第三版「船外機」
  2. ^ a b Olsson, Kent. “THE OUTBOARD MOTORS”. Säffle Marinmotor Museum. 2012年2月14日閲覧。
  3. ^ Desmond, Kevin. “A Brief History of Electric Water Speed Records”. electric record team. 2008年9月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年2月14日閲覧。
  4. ^ 「トーハツR&Dセンター」OPENについて”. トーハツ ホームページ (2018年9月20日). 2020年4月19日閲覧。
  5. ^ Response. 2014年7月16日

関連項目編集

外部リンク編集