AMDR対空・対ミサイル防衛レーダー、現在は公式にAN/SPY-6と呼ばれる)[1]は、アメリカ海軍向けに開発中のアクティブ・フェーズド・アレイ(AESA)[2]対空対ミサイル3次元レーダーである[3]。これは、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIIIに統合型対空・対ミサイル・潜望鏡探索能力を提供する[4]

開発編集

2013年10月10日、レイセオン(RTN)は、対空・対ミサイルSバンドレーダー(AMDR-S)およびレーダー制御装置(RSC)の技術生産開発(EMD)設計段階、開発、統合、テストおよび納入について、経費と手数料を合わせて3億8,574万2,176USドルで契約締結した[5]。2010年9月、海軍はノースロップ・グラマンロッキード・マーティン 、レイセオンの3社と、Sバンドレーダーとレーダー制御装置(RSC)の技術開発契約を結んだ。Xバンドレーダーの開発は、別契約で行われると報じられている。海軍は、2016年に開始予定でアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIIIにAMDR(Air and Missile Defense Radar,対空・対弾道ミサイル レーダー)としての搭載を希望している。これらの艦には現在、ロッキード・マーティンが製造したイージスシステムが搭載されている[6]

2013年に海軍は、将来的脅威を持つ小型で低能力のシステムを採用することにより、プログラム経費を100億ドル近く削減した[7]。2013年時点で、このプログラムは総コスト65億9,800万USドルで22台のレーダーを納入予定であり、1台あたり3億USドルのコストで継続的に生産予定である[8]。テストは2021年に計画され、初期作戦能力の獲得は2023年3月に計画されている 。その後、海軍はロッキードの異議申し立てを受けて契約を中止せざるを得なくなった[9]。2014年1月10日にロッキードは正式に抗議を取り下げ、海軍は作業停止命令を解除できるようになった[10]

 
AN/SPY-6の全体像

技術編集

AMDRシステムは、2つの主要なレーダーとセンサーを調整するためのレーダー制御装置(RSC)で構成されている。Sバンドレーダーはボリュームの探知、追跡、弾道ミサイル防衛類別、ミサイルとの通信を行い、Xバンドレーダーは水平的な探知、精密な追跡、ミサイルとの通信、終末標的照明を行う[6]。また、SバンドとXバンドセンサーは、レーダー航法、潜望鏡探索、ミサイル誘導、通信などの機能を共有する。AMDRは拡張可能なシステムとして計画されている。アーレイ・バーグの甲板は4.3m(14 ft)分しかないが、アメリカ海軍は将来の弾道ミサイルの脅威に対応するためには6.1m(20ft)以上のレーダーが必要と主張している[8]。このため新しい船の設計が必要となるだろう。インガルスは、6.1m(20ft)のAMDRを搭載した弾道ミサイル防衛巡洋艦のベースとして、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦を提案している。経費削減のため、最初の12セットのAMDRは、既存のSPQ-9B回転レーダーを基にしたXバンドコンポーネントを搭載し、後の13セットでは将来的脅威に対してより能力の高い新しいXバンドレーダーに換えられる予定。送受信モジュールには、新しい窒化ガリウム半導体技術が採用される。これにより、従来のガリウム砒素系レーダーモジュールよりも高い出力密度が得られる[11]。この新しいレーダーは、35倍以上のレーダー出力を発生させる一方、旧世代の2倍の電力を必要とする[12]

当初の要件ではなかったが、AMDRはAESAアンテナを利用した電子攻撃能力を持つかもしれない。F-22のAPG-77、F-35のAPG-81、F/A-18E/FEA-18GのAPG-79のようなAESAレーダーシステムがあり、電子攻撃が可能と実証されている。海軍の次世代ジャミング装置の候補は、いずれもEWシステムに窒化ガリウム(GaN)ベースの送受信モジュールを使用しており、フライトIIIに使用される高出力GaNベースのAESAレーダーでも作戦を実行できる可能性がある。正確なビーム操作により、航空機、船舶、ミサイルを電子的に見えなくするため、高出力の電波を厳密に指向したビームで航空および地表の脅威を攻撃することができる[13]

アメリカ海軍によると、従来のAN/SPY-1レーダーよりも半分の大きさの目標を2倍の距離で探知できるという[14]。また、アメリカ海軍からではないが、レーダーの感度は30倍に向上し、大規模で複雑な襲撃に対抗するよう、AN/SPY-1D(V)の30倍以上の目標を同時に処理することができるという報道もある[15]

派生型編集

AN/SPY-6(V)1
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIIIとDDG(X)用に37個のRMAモジュールを搭載。
AN/SPY-6(V)2
エンタープライズ対空監視レーダー(EASR)として知られる[16]サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦フライトII用に9個のRMAを搭載した回転式の縮小版。
AN/SPY-6(V)3
ジェラルド・R・フォード級航空母艦コンステレーション級ミサイルフリゲート 用の固定型EASR。9個のRMAを組み合わせたレーダー・アレイを3か所に固定配置。
AN/SPY-6(V)4
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フライトIIAに改装用の24個のRMAを搭載。

関連項目編集

参照資料編集

  1. ^ http://www.raytheon.com/capabilities/products/amdr/
  2. ^ http://www.navy.mil/navydata/fact_display.asp?cid=2100&tid=306&ct=2
  3. ^ AMDR Competition: The USA’s Next Dual-Band Radar”. 2010年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月1日閲覧。
  4. ^ Exhibit R-2A, RDT&E Project Justification: PB 2011 Navy” (2010年3月15日). 2010年10月1日閲覧。
  5. ^ Archived copy”. 2013年10月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月10日閲覧。
  6. ^ a b New Radar Development Continues for U.S. Navy”. Defense News. 2012年9月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年4月1日閲覧。
  7. ^ "NavWeek: Radar Shove."
  8. ^ a b GAO-13-294SP DEFENSE ACQUISITIONS Assessments of Selected Weapon Programs”. US Government Accountability Office. pp. 117-8 (2013年3月). 2013年5月26日閲覧。
  9. ^ Shalal-Esa (2013年10月23日). “U.S. Navy orders Raytheon to halt radar work after protest”. www.reuters.com. Reuters. 2013年10月23日閲覧。
  10. ^ LaGrone (2014年1月13日). “Lockheed Martin Drops Protest over Next Generation Destroyer Radar”. news.usni.org. US Naval Institute News. 2018年11月25日閲覧。
  11. ^ "The Heart of the Navy’s Next Destroyer."
  12. ^ Filipoff, Dmitry (2016年5月4日). “CIMSEC Interviews Captain Mark Vandroff, Program Manager DDG-51, Part 1”. CIMSEC. http://cimsec.org/cimsec-interviews-capt-mark-vandroff-program-manager-ddg-51/25050 2016年5月5日閲覧。 
  13. ^ Navy’s Next Generation Radar Could Have Future Electronic Attack Abilities - News.USNI.org, 17 January 2014
  14. ^ 竹内修 (2020年8月21日). “レーダーに見るイージス・アショア断念の善後策 その切り札「AN/SPY-6」とは?”. 乗りものニュース. https://trafficnews.jp/post/99320 
  15. ^ http://defense-update.com/20150512_amdr_cdr.html
  16. ^ https://www.youtube.com/watch?v=FADAPPKXk40

外部リンク編集