HQ-16中国語: 紅旗-16, 拼音: Hong Qi-16)は、中華人民共和国で開発された艦対空ミサイル・システム[4][1]。輸出名はLY-80[1]ロシアブークM2リバースエンジニアリングに基づき開発されたとみられている[4]

HQ-16
HQ-16Aの地上型発射機
種類 艦対空ミサイル
製造国 中華人民共和国の旗 中国
性能諸元
ミサイル直径 340 mm[1]
ミサイル全長 5,010 mm[1]
ミサイル重量 615 kg[1]
弾頭 重量65 kg
射程 40 km (HQ-16),
70 km (HQ-16B/C)
推進方式 固体燃料ロケット
誘導方式 INSSARH[2]
飛翔速度 マッハ4.5[3]
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来歴 編集

本システムは、中国人民解放軍海軍ソヴレメンヌイ級駆逐艦に搭載されたシュチーリ艦対空ミサイル・システムのアップグレードを企図した中露共同開発の成果であるとされており[1]2000年頃にブークM1-2をロシアより購入したのち、2005年よりアルマズ・アンティ社の協力を受けて開発に着手した[4]

このような経緯もあってまず艦載版のHHQ-16が装備化され[1]、これを搭載した054A型フリゲート(江凱II型)は2008年より就役を開始した[3]。その後、2011年9月より陸軍向けの最初のバージョンであるHQ-16Aの配備が開始された[4]。また2016年にはHQ-16Bが公表され、2018年にはHQ-16C初期作戦能力を獲得したものとみられる[4]

設計 編集

ミサイル本体 編集

まず実用化されたHHQ-16のミサイルはロシアのシュチーリ-1で採用された9M317MEの中国版ともいわれており[2]、射程40キロとされる[4]。HQ-16Aの射程も同程度とされており、また巡航ミサイルを迎撃する場合の射程は12キロまで短縮するともされる[1]。一方、HQ-16B/Cはロケットモーターや翼面を改良し、射程を70キロに延伸した[4]ミサイルの誘導方式セミアクティブ・レーダー・ホーミングで、航空機に対しては85パーセント、巡航ミサイルに対しては60パーセントの単発撃破確率(SSKP)が見込まれている[4]

システム構成 編集

発射機は垂直発射方式を採用している[4][1]。054A型フリゲートに搭載された矩形のVLSは8セルで1つのモジュールを構成し[2]、形式名はH/AKJ-16とされる[5]。同型ではシュチーリと同じ「アリェーフ」(NATO名「フロント・ドーム」)火器管制レーダーが誘導を担当する[3]。またHHQ-9用のVLSを用いて052D型駆逐艦(昆明級)055型駆逐艦(南昌級)でも搭載可能とされる[6]

地上版の場合、ロシアのブークでは装軌式の自走発射機を用いていたのに対し、HQ-16ではTA5350 6×6高機動トラックをベースとした装輪式の自走発射機が採用された[4]。典型的な射撃中隊は、6セルのVLSを搭載した発射機4両、指揮統制ユニット、レーダー・ユニット2基(Lバンドを用いて探知距離85キロのものとSバンドを用いて探知距離140キロのもの)、発電機で構成される[4]

脚注 編集

出典 編集

参考文献 編集

  • MDAA (2018-06-20), HQ-16, Missile Defense Advocacy Alliance, https://missiledefenseadvocacy.org/missile-threat-and-proliferation/todays-missile-threat/china/china-anti-access-area-denial/hq-16/ 2024年4月9日閲覧。 
  • Saunders, Stephen (2015), Jane's Fighting Ships 2015-2016, Janes Information Group, ISBN 978-0710631435 
  • 多田智彦「世界の艦載兵器」『世界の艦船』第811号、海人社、2015年1月。 NAID 40020297435 
  • 多田智彦「現代の艦載兵器」『世界の艦船』第986号、海人社、2022年12月。CRID 1520012777807199616