Peace of Mind/The Candle Burns

1973年より広まった出所不明の楽曲

Peace of Mind」(または「The Candle Burns[1])は、1973年に発売されたビートルズ海賊盤に収録されている出どころ不明の楽曲に対して付けられた題名。「1970年にアップル・コアのゴミ箱から発見された楽曲」と報じられているものの、その真偽は不明となっている。

Peace of Mind
(不明なアーティスト)の楽曲
収録アルバムPeace of Mind
リリース1973年
時間3分9秒
作詞者不明
作曲者不明

来歴

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画像外部リンク
  本作の初出の1つである『Peace of Mind』のカバーアート

本作は、『Peace of Mind』や『Supertracks』をはじめとした1973年に発売されたビートルズの海賊盤の曲目に「Peace of Mind」と表記されたことが初出となっている[2][3]。以来10年にわたって12作を超える海賊盤に収録され、中には曲名が「The Candle Burns」と表記されることもあった[4]

楽曲に関する詳細はほとんどないものの、「1970年にアップル・コアのゴミ箱から発見された」楽曲という説が広く知られている[3]

ビートルズの楽曲である可能性

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ハリー・キャッスルマンとウォルター・J・ポドラジクが1975年に出版した『All Together Now』で、本作について「1967年中ごろに録音されたビートルズのスタジオ・アウトテイク」とし、「複雑なビートの変化を中心に魅力的な歌詞」で構成された楽曲と説明している[5]

本作がビートルズの楽曲とする証拠として、ボーカルと楽器編成の2点が挙げられている[6]。歴史家のデヴィン・マッキニーは本作のボーカルについて「確実にジョージ・ハリスンのそれやジョン・レノンのそれに近い」と述べ[7]、『Far Out』のポピー・バートンはリード・ボーカリストにレノンを挙げ、ポール・マッカートニーとハリスンのハーモニーを曲の特徴として挙げた[6]。バートンは歌詞についてレノンが書いた「シー・セッド・シー・セッド」や「トゥモロー・ネバー・ノウズ」を思い起こさせるとし、『リボルバー』時代のレノンの様式と調和すると評した[6]。曲の終わりにはハリスンがビートルズ時代にたびたび演奏していたシタールの音が聞こえることから、ハリスンを本作の作者とする説も浮上している[6][8]

ビートルズの作品や歴史を題材とした書籍が複数の伝記作家によって出版されているが、このうちマーク・ルイソン英語版の『The Complete Beatles Chronicle』やダグ・サルピーの『The 910's Guide to The Beatles Outtakes』では本作に関する記述がない[6]リッチー・アンターバーガー英語版は、著書『The Unreleased Beatles: Music & Film』の中で「驚くべき証拠が見つからないかぎり、"Peace of Mind"がビートルズの未発表曲ではないと仮定せざるを得ない―ただし疑いの余地がないわけではない」と述べている[9]。ジョン・ウィンはEMIのテープログや80時間にも及ぶゲット・バック・セッションなどで本作の存在が確認できないことや、メンバーや関係者のインタビューなどで本作についての言及がないことを引き合いに「この曲について驚くべき唯一の点は、ビートルズとの繋がりがまったくないにもかかわらず、多くの人がいまだにビートルズの曲かもしれないと考えていること」と述べた[6]

その他の可能性

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ビートルズ以外にも本作の出どころについては複数挙げられている。ジョン・ウィンは「テープ・レコーダーを所有していて、暇を持て余し過ぎた酔っ払いの海賊盤業者」と見なしている[10]。また本作はシド・バレットが制作した未発表のデモ音源として、ピンク・フロイドの海賊盤にも複数収録されている[11][6]

この他には「アップル・コアのゴミ箱(trash)から見つかった楽曲」ではなく、「トラッシュ英語版というバンドがアップル・レコードのために録音した楽曲」とする説も存在する[7][6]

関連項目

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脚注

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出典

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  1. ^ Wiener, Allen J. (1986). The Beatles: A Recording History. Jefferson, North Carolina: McFarland. p. 594. ISBN 978-0-899-50209-0 
  2. ^ Winn, John C. (2006). Beatlegmania. Multiplus Books. p. 25. ISBN 0-9728362-3-3 
  3. ^ a b Reinhart 1981, p. 152.
  4. ^ Reinhart 1981, p. 272.
  5. ^ Castleman, Harry; Podrazik, Walter J. (1975). All Together Now: The First Complete Beatles Discography 1961–1975. Ballantine Books. p. 258 
  6. ^ a b c d e f g h Burton, Poppy (23 August 2023). "'Peace of Mind': A lost anthem by The Beatles or an elaborate hoax?". Far Out. 2024年4月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月11日閲覧
  7. ^ a b McKinney 2003, pp. 303–304.
  8. ^ Unterberger 2006, pp. 359–360.
  9. ^ Unterberger 2006, p. 359-360.
  10. ^ Winn, John (May 1998). "WHO COULD ASK FOR MORE: The History of Beatles Bootlegs". About The Beatles. SMACKBOMB.com network. 2014年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月11日閲覧
  11. ^ Fields, Gaylord (29 July 2008). "Fake Beatles No. 15: The Mystery of 'Peace of Mind/The Candle Burns'". WFMU's Beware of the Blog. WFMU. 2009年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月11日閲覧

参考文献

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