中町信
1935年1月6日 - 2009年6月17日)は、日本の小説家・推理作家。群馬県沼田市生まれ。早稲田大学第一文学部独文科卒業。本名は同じ字であきらと読む[1][2]
(なかまち しん、中町 信 (なかまち しん) | |
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ペンネーム |
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誕生 |
1935年1月6日 日本・群馬県沼田市 |
死没 |
2009年6月17日(74歳没) 日本・埼玉県さいたま市見沼区 |
職業 | 小説家、推理作家 |
言語 | 日本語 |
国籍 | 日本 |
教育 | 学士(文学) |
最終学歴 | 早稲田大学第一文学部独文科卒業 |
活動期間 | 1967年 - 2008年 |
ジャンル | 推理小説 |
主な受賞歴 | 双葉推理賞(1969年) |
デビュー作 | 「偽りの群像」(1967年) |
ウィキポータル 文学 |
経歴
編集大学卒業〜就職
編集1959年、大学を卒業し教科書出版社に就職する[1]。この時の同僚に後に推理作家になる津村秀介がいる。1965年、「雀の涙さながらの低賃金と不逞な上司どもへの反撥心から」(双葉社『新人賞殺人事件』あとがきより)出版社を退職[1][3]。半年ほど失業保険と配送会社のアルバイトで暮らしながら、鮎川哲也やアガサ・クリスティなどのミステリーの古本を買って読み漁った[1]。その後医学書院で校閲の仕事をはじめる。この時の同僚に翻訳家の小鷹信光がいる[2]。
双葉推理賞への挑戦〜雑誌デビュー
編集1966年、教科書を売り込むセールスマンを描いた「闇の顔」で第1回双葉推理賞の最終候補4編に残る(受賞作は石沢英太郎「羊歯行」)[2]。1967年、同作を改題・改稿した「空白の近景」で第2回双葉推理賞の最終候補4編に残るも、同じ作品を改稿して投稿したことに否定的な意見が多く落選する(受賞作は大貫進「死の配達屋」)。しかし、同作は「偽りの群像」と改題され『推理ストーリー』1967年11月号(現在の『小説推理』)に掲載される[2]。1968年、「死んでもカラスしか泣かない」を第3回双葉推理賞に投稿するが、最終候補には残らなかった[2]。同年、原稿用紙約200枚の中編「湖畔に死す」を『推理ストーリー』1968年11月号に発表。同作を大幅に加筆・改稿し長編化したものが最後の作品となった『三幕の殺意』である[2]。1969年、「急行しろやま」で第4回双葉推理賞を受賞。
江戸川乱歩賞への挑戦〜単行本デビュー
編集1971年、「そして死が訪れる」で第17回江戸川乱歩賞の最終候補作に選ばれる。選考委員の仁木悦子は「卓抜な着想に感心させられた。アンフェアになりやすい構成なのだが、その点かなり工夫してある。私は受賞作にしてもよいのではないかという意見を出した」と肯定的な評価をしたが、高木彬光は「作者がデータ―をかくせばかくすほど結末の意外性は出て来るにもせよ、読者のほうでは不愉快な読後感をおさえることは出来ない」、中島河太郎は「トリックのおもしろさを過信して暴走してしまった」「この作品は単に読者をペテンにかけるだけにすぎない」と否定的な意見で、受賞作なしとなった[4]。
1972年、「そして死が訪れる」を「模倣の殺意」と改題し『推理』1972年9月号から3回に分けて連載する。1973年、同作が『新人賞殺人事件』と再改題して出版され単行本デビューする。江戸川乱歩賞にはその後も「空白の近景」(前述の短編とは別作品、1974年に『殺された女』と改題して刊行)と「教習所殺人事件」(1980年に『自動車教習所殺人事件』と改題して刊行)で二度最終候補になったが、受賞することはできなかった。
専業作家へ〜逝去
編集1989年、出版社を退職し専業作家になる。それまではほぼ1年に1作のペースだったが、1989年は4作、1990年は4作、1991年は6作、1992年は4作、1993年は4作と旺盛な創作活動を見せた[3]。
2009年6月17日、肺炎のため埼玉県さいたま市見沼区の病院で逝去[5]。
2012年末、文教堂が創元推理文庫版『模倣の殺意』を品切れ商品発掘企画の一冊に選んだところ、2013年7月までの半年で34万部を増刷するヒットとなった[6]。
文学賞受賞・候補歴
編集作品リスト
編集長編
編集- 新人賞殺人事件(1973年6月 双葉社)
- 殺された女(1974年2月 弘済出版社)
- 【改題】「心の旅路」連続殺人事件(1987年8月 徳間文庫)
- 殺戮の証明(1978年2月 日本文華社)
- 【改題】女性編集者殺人事件(1987年9月 ケイブンシャノベルス / 1989年7月 ケイブンシャ文庫)
- 自動車教習所殺人事件(1980年2月 トクマ・ノベルズ / 1988年2月 徳間文庫)
- 【改題】追憶の殺意(2013年8月 創元推理文庫)
- 高校野球殺人事件(1980年12月 トクマ・ノベルズ / 1989年2月 徳間文庫)
- 【改題】空白の殺意(2006年2月 創元推理文庫)
- 散歩する死者(1982年6月 トクマ・ノベルズ / 1989年10月 徳間文庫)
- 【改題】天啓の殺意(2005年4月 創元推理文庫)
- 田沢湖殺人事件(1983年3月 トクマ・ノベルズ / 1990年7月 徳間文庫)
- 【改題】死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#1 追憶(recollection) 田沢湖からの手紙(2022年1月 徳間文庫 トクマの特選!)
- 奥只見温泉郷殺人事件(1985年11月 トクマ・ノベルズ / 1991年6月 徳間文庫)
- 【改題】悲痛の殺意(2020年10月 徳間文庫)
- 十和田湖殺人事件(1986年5月 トクマ・ノベルズ / 1992年3月 徳間文庫)
- 【改題】死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#2 告発(accusation) 十和田湖・夏の日の悲劇(2022年12月 徳間文庫 トクマの特選!)
- 榛名湖殺人事件(1987年12月 トクマ・ノベルズ / 1993年1月 徳間文庫)
- 殺人病棟の女(1988年4月 青樹社)
- 【改題】悪魔のような女(1990年3月 ケイブンシャ文庫)
- 佐渡金山殺人事件(1988年5月 ケイブンシャノベルス / 1990年9月 ケイブンシャ文庫)
- 【改題】佐渡ケ島殺人旅情(1998年10月 青樹社)
- 阿寒湖殺人事件(1989年2月 トクマ・ノベルズ / 1994年2月 徳間文庫)
- 四国周遊殺人連鎖(1989年3月 立風ノベルス / 1991年9月 ケイブンシャ文庫)
- 山陰路ツアー殺人事件(1989年7月 ケイブンシャノベルス / 1992年9月 ケイブンシャ文庫)
- 下北の殺人者(1989年12月 講談社ノベルス / 1994年1月 講談社文庫)
- 南紀周遊殺人旅行(1990年2月 トクマ・ノベルズ)
- 草津・冬景色の女客(1990年3月 ケイブンシャノベルス / 1993年6月 ケイブンシャ文庫)
- 天童駒殺人事件(1990年7月 大陸書房 / 1993年10月 徳間文庫)
- 不倫の代償(1990年11月 ケイブンシャノベルス)
- 【改題】夏油温泉殺人事件(1994年12月 ケイブンシャ文庫)
- 飛騨路殺人事件(1991年2月 トクマ・ノベルズ)
- 新特急「草津」の女(1991年7月 ケイブンシャノベルス)
- 【改題】萩・津和野殺人事件(1995年10月 ケイブンシャ文庫)
- 津和野の殺人者(1991年7月 講談社ノベルス / 1996年7月 講談社文庫)
- 小豆島殺人事件(1991年9月 トクマ・ノベルズ)
- 社内殺人 課長代理深水文明の推理(1991年10月 徳間文庫)
- 推理作家殺人事件(1991年11月 立風ノベルス)
- 能登路殺人行(1992年4月 ケイブンシャノベルス)
- 湯煙りの密室(1992年8月 講談社ノベルス / 1995年7月 講談社文庫)
- 湯野上温泉殺人事件 課長代理・深水文明の推理(1992年9月 トクマ・ノベルズ)
- 奥信濃殺人事件(1992年9月 フタバノベルス)
- 越後路殺人行(1993年3月 ケイブンシャノベルス)
- 秘書室の殺人 課長代理・深水文明の推理(1993年4月 徳間文庫)
- 【改題】秘書室の殺意(2020年4月 徳間文庫)
- 人事課長殺し 課長代理・深水文明の推理(1993年6月 トクマ・ノベルズ)
- 奥利根殺人行(1993年12月 ケイブンシャノベルス)
- 目撃者 死角と錯覚の谷間(1994年3月 講談社ノベルス / 1997年3月 講談社文庫)
- 老神温泉殺人事件(1994年6月 トクマ・ノベルズ)
- 密室の訪問者(1994年10月 トクマ・ノベルズ)
- 信州・小諸殺人行(1995年4月 ケイブンシャノベルス)
- 浅草殺人案内(1995年5月 徳間文庫)
- 【改題】偶然の殺意 (2020年3月 徳間文庫)
- 五浦海岸殺人事件(1995年7月 トクマ・ノベルズ)
- 十四年目の復讐(1997年8月 講談社ノベルス)
- 浅草殺人風景(1998年5月 徳間文庫)
- 死者の贈物(1999年7月 講談社ノベルス)
- 錯誤のブレーキ(2000年6月 講談社ノベルス)
- 三幕の殺意(2008年1月 東京創元社 / 2012年5月 創元推理文庫)
中短編集
編集- Sの悲劇(1987年9月 青樹社)
- 収録作品:Sの悲劇 / 死の時刻表 / 裸の密室 / カブトムシは殺される / サンチョパンサは笑う / 312号室の女 / 動く密室
- 暗闇の殺意(2014年1月 光文社文庫)
- 収録作品:Sの悲劇 / 年賀状を破る女 / 濁った殺意 / 裸の密室 / 手を振る女 / 暗闇の殺意 / 動く密室
- 偽りの殺意(2014年10月 光文社文庫)
- 収録作品:偽りの群像 / 急行しろやま / 愛と死の映像
アンソロジー
編集「」内が中町信の作品
- 鉄道推理ベスト集成1(1976年11月 トクマ・ノベルズ)「急行しろやま」
- 復讐墓参 鉄道推理ベスト集成3(1977年9月 トクマ・ノベルズ)「偽りの群像」
- 犯罪交叉点 トラベル・ミステリー2(1983年3月 徳間文庫)「急行しろやま」
- 殺人列車は走る トラベル・ミステリー4(1983年5月 徳間文庫)「偽りの群像」
- 伊豆ミステリー傑作選(1986年10月 河出文庫)「旅行けば― 探偵役・解決編」(山村直樹とのリレー小説)
- 十二支殺人事件 干支アンソロジー(1991年11月 天山文庫)「切手収集事件」
- 日本列島殺人 トラベル推理傑作選(1992年2月 天山文庫)「傾いた風景」
- 真夜中の密室(1995年5月 飛天文庫)「動く密室」
- そして謎解きへ 小説推理傑作選(1996年11月 双葉社)「動く密室」
- 迷宮の旅行者 本格推理展覧会(1999年10月 青樹社文庫)「濁った殺意」
- 愛憎発殺人行 鉄道ミステリー名作館(2004年5月 徳間文庫)「急行しろやま」
映像化作品
編集テレビドラマ
編集脚注
編集- ^ a b c d 『模倣の殺意』創元推理文庫、解説(濱中利信)
- ^ a b c d e f 『三幕の殺意』創元推理文庫、解説(戸川安宣)
- ^ a b 『暗闇の殺意』光文社文庫、解説(山前譲)
- ^ a b 1971年 第17回 江戸川乱歩賞|日本推理作家協会
- ^ “中町信氏=推理作家:おくやみ”. 読売新聞. (2009年6月17日). オリジナルの2009年6月29日時点におけるアーカイブ。 2009年6月19日閲覧。
- ^ “【話題の本】『模倣の殺意』中町信著 - MSN産経ニュース”. 産経新聞. (2013年7月13日). オリジナルの2013年7月13日時点におけるアーカイブ。 2013年12月26日閲覧。
- ^ 1972年 第18回 江戸川乱歩賞|日本推理作家協会
- ^ 1979年 第25回 江戸川乱歩賞|日本推理作家協会
- ^ 1987年 第40回 日本推理作家協会賞|日本推理作家協会