その姿の消し方』(そのすがたのけしかた)は、日本の小説家堀江敏幸による小説

その姿の消し方
著者 堀江敏幸
発行日 単行本:2016年1月29日
文庫版:2018年8月1日
発行元 新潮社
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 単行本:四六判並製本
文庫版:文庫判
ページ数 単行本:174
文庫版:206
公式サイト 単行本:その姿の消し方 単行本 新潮社
文庫版:その姿の消し方 文庫版 新潮社
コード 単行本:ISBN 978-4-10-447105-8
文庫版:ISBN 978-4-10-129477-3
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2009年から2015年にかけて、『新潮』や『yom yom』などに掲載された作品群をまとめて、2016年1月29日に新潮社より単行本として刊行された[1][2]。単行本の装幀は、新潮社装幀室による[1]。2016年、第69回野間文芸賞を受賞する[3][4]2017年Twitter文学賞の国内編第3位に選ばれる[5]。文庫版は、2018年8月1日に新潮文庫より刊行された[6]

著者の堀江は、「『いつか王子駅で』のときと同じで、最初の一篇は読み切りのつもりで書きました。それが、なぜか続きものに似たかたちで、ゆっくり育っていった」[2]と述べている。

あらすじ 編集

〈私〉は留学生時代に、フランス西南部にある古物市で、1枚の古い絵はがきを手に入れる。その絵はがきには、廃屋にしか見えない建物の写真が印刷されており、裏側の通信欄には、10行からなる詩が筆記体で記されていた。消印は1938年6月15日で、差出人はアンドレ・Lとなっており、名宛人は北フランスに住む、ナタリー・ドゥパルドンという名の女性であった。しばらくの後、別の詩が記された、アンドレ・Lが差出人の絵はがきが見つかる。やがて、Lは「ルーシェ」の略であり、彼の職業が会計検査官であることがわかる。

主な登場人物 編集

〈私〉
語り手。
アンドレ・ルーシェ
会計検査官。

収録作品 編集

タイトル 初出
波打つ格子 yom yom』11号(2009年7月号)
欄外の船 新潮』2010年1月号
履いたままおまえはどこを 『yom yom』21号(2011年7月号)
デッキブラシを持つ人 『新潮』2012年6月号
ふいごに吹き込む息 『yom yom』15号(2010年5月号)
黄色は空の分け前 『新潮』2012年9月号
数えられない言葉 『新潮』2013年2月号
始めなかったことを終えること 芸術新潮』2012年7月号
発火石の味 『新潮』2013年8月号
その姿の消し方 『新潮』2014年1月号
打ち上げられる贅沢 文學界』2014年3月号
眼の葡萄酒 『新潮』2014年6月号
五右衛門の火 『新潮』2015年1月号

書評 編集

作家の大竹昭子は、「ミステリー的な要素があるし、差出人がどういう男なのかが少しずつ明らかにされるあたりはスリリングだが、ページを繰っているあいだ、変化する気圧のなかを潜(くぐ)り抜けているような奇妙な感覚が持続したのが気になった」[7]と述べている。大学教授の高遠弘美は、「深い思索を経て紡ぎ出される言葉や、饒舌(じょうぜつ)とは無縁の節制によって生まれる彫琢(ちょうたく)された文体からふと溢(あふ)れ出る豊かな情感とユーモア。それはまさに読者を再読にいざなう大きな要素にほかならない」[8]と評している。文芸評論家の八木寧子は、「はじめ、アンドレ・Lとしかわからなかったその『詩人』の輪郭が、少しずつ、本当に少しずつ形づくられていく様子が端正な文章でつづられる。それは本当に美しく、静かに呼吸する水鳥のような文章だ」[9]と評している。

脚注 編集

参考文献 編集

  • 堀江敏幸『その姿の消し方』新潮社、2016年。ISBN 978-4-10-447105-8