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特徴

アンズ
Apricot fruit.jpg
アンズの果実
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : サクラ亜科 Prunoideae
: サクラ属 Prunus
: アンズ P. armeniaca
学名
Prunus armeniaca L.
和名
アンズ(杏子/杏)
英名
Apricot

アンズ(杏子/杏、学名 Prunus armeniaca)は、バラ科サクラ属落葉小高木である。アプリコットと英名で呼ばれることもある。別名、カラモモ(唐桃)。中国北部で形成された東洋系の品種群には、ウメとの交雑の痕跡がある。原産地は諸説あるものの、中国の山東省河北省の山岳地帯から中国東北地方の南部とする説が有力とされる[1]。学名のPrunus armeniaca は、ヨーロッパにおいては近世にいたるまでアルメニア (Armenia) が原産地と考えられていたためつけられたもの(『産地』節も参照)[1]

特徴編集

アーモンドやウメ、スモモの近縁種であり、容易に交雑する。ただし、ウメの果実は完熟しても果肉に甘みを生じず、種と果肉が離れないのに対し、アンズは熟すと甘みが生じ、種と果肉が離れる(離核性)。またアーモンドの果肉は、薄いため食用にしない。耐寒性があり比較的涼しい地域で栽培されている。春(3月下旬から4月頃)に、桜よりもやや早く淡紅の花を咲かせ、初夏にウメによく似た実を付ける。美しいため花見の対象となることもある。自家受粉では品質の良い結実をしないために、他品種の混植が必要であり、時には人工授粉も行われる事がある。収穫期は6月下旬から7月中旬で、一つの品種は10日程度で収穫が終了する。果実は生食のほか、ジャムや乾果物などにして利用される。ヨーロッパ、中央アジアで発展したアプリコットは甘い品種が多く、東アジアで発展したアンズは酸味が強い品種が多い傾向がある[2]

種子は青酸配糖体や脂肪油、ステロイドなどを含んでおり、杏仁(きょうにん)と呼ばれる咳止めや、風邪の予防の生薬(日本薬局方に収録)として用いられている他、杏仁豆腐(今では「あんにん」と読まれる事が多くなった)の独特の味を出すために使用される。未成熟な種子や果実には、青酸配糖体の一種アミグダリンが含まれる。

名前編集

アンズ(杏)は、杏子の唐音とされている。[3]

古名は、カラモモである。[4][5][6][7][8][9][10]

育て方編集

病害虫に注意する。防除体系[11][12](防除暦)に基づき適切な農薬使用を行う[13]冷涼地乾燥地では無農薬栽培が可能。

一年生の植物と異なり、あんずなどの樹木に実る果実はその種を播いても同じ物は実らない。従って苗は接ぎ木によって増やされる。台木には、実生が用いられる。

肥料編集

ホウ素欠乏土壌ではの外観不良が発生しやすく、ホウ素欠乏抑制のため施肥管理が重要。成木ではカリ燐酸を多めにする。

産地編集

弥生時代以降の遺跡から出土している。[14]                                                      愛媛、広島など瀬戸内地方、青森県津軽地方が古い産地である。広島大実などの品種がある。[15]

ヨーロッパへはイタリア半島インドペルシアを通じて伝わった[16]古代ローマへは紀元前にすでに伝わっていたとも[16]、1世紀ごろにギリシャまたはアルメニア経由で伝わったともされる[1]。イギリスへは14世紀の中頃か16世紀の初めに伝わり[1]、フランスでは17世紀にようやく南部で栽培が始まった[16]。アメリカ大陸へはスペイン経由で18世紀に伝わった[1]

日本編集

世界編集

品種編集

  • 東洋系:平和、新潟大実、信州大実、広島大実、山形3号、八助、鏡台丸、信月、信山丸、さつき、昭和
  • 西洋系:ハーコット、ゴールドコット、プリン
主な品種の特性と長野県での収穫期
品種名 経歴 果重 主用途 収穫時期
山形3号 山形原産で昭和初期から生産される。 40 - 50g 干し杏やジャム 6月下旬
平和(へいわ) 大正時代の初期の偶発実生。第一次世界大戦の終結を記念して大正8年命名 50 - 70g 干し杏やジャム 6月下旬 - 7月上旬
幸福丸(こうふくまる) 長野県内生産者の畑で日本+欧州系アンズの偶発実生 70 - 80g 生食 6月下旬
信陽(しんよう) 「山形3号」と「甚四郎」の交雑実生 40 - 50g 干し杏やジャム、肉崩れしやすくシロップ漬け不向き 6月下旬 - 7月上旬
さつき 「平和」と「昭和」の選抜実生 50 - 60g シロップ漬、ジャム 6月下旬 - 7月上旬
昭和(しょうわ) 昭和15年頃、森地区の生産者の畑での偶発実生 30 - 40g シロップ漬、ジャム 7月上旬
ハーコット カナダ生まれ「モールデン604」と「NJAI」(フェルプス×パーフェクション)の
選抜実生で1979年長野県に導入された
50 - 140g 糖度が高く生食に適 7月上旬
信山丸(しんざんまる) 長野県果樹試験場による山形3号の実生選抜、1980年登録品種 40 - 50g 生食と加工 7月上旬
新潟大実(にいがたおおみ) 新潟原産で昭和初期から生産される 40 - 60g シロップ漬、ジャム、干し杏 7月上旬
信州大実(しんしゅうおおみ) 長野県果樹試験場が「新潟大実」と「アーリーオレンジ」を交配し作出、1980年登録品種 80 - 100g 生食と加工 7月中旬
信月(しんげつ) 1961年長野県果樹試験場が「新潟大実」と「チルトン」を交配し作出、1992年品種登録 70 - 90g シロップ漬に優れる 7月下旬
八助(はちすけ) 青森県南部地方および岩手県北部の在来種、通称八助梅 70 - 100g 梅漬、梅酒用
おひさまコット(旧名サニーコット) アンズ筑波五号(ニューキャッスルアーリー×甲州大実)にハーコットを交雑し作出。
農業食品産業技術総合研究所 果樹研究所育成種 2009品種登録
110 - 120g 糖度が高く生食に適 7月中旬
ニコニコット ライバルにアンズ筑波五号を交雑し作出。
農業食品産業技術総合研究所 果樹研究所育成種 2009品種登録
90g前後 糖度が高く生食に適 7月中旬

用途編集

薬用編集

  • 本種またはその他近縁植物の種子のことを、生薬キョウニン(杏仁)と言い、鎮咳去痰嘔吐に用いるほか、麻黄湯、麻杏甘石湯、杏蘇散などの漢方処方に用いられる。
  • キョウニンを水蒸気蒸留して精製したものがキョウニン水で、鎮咳に用いる。
  • あんず酢
  • ヘアオイル(髪油)

食用編集

かつて未熟果が『姫子』の名称で果実酒用や漬物用として販売されていたが、残留農薬基準の強化に伴う一律基準の導入により、販売されなくなった。

材木編集

  • 柱、敷居

脚注編集

  1. ^ a b c d e 小林幹夫 「恵泉果物の文化史(11):アンズ」 『恵泉女学園大学園芸文化研究所報告:園芸文化 (Bulletin of Keisen Institute of Horticulture)』 13巻 恵泉女学園大学園芸文化研究所、129-132頁、2017年https://ci.nii.ac.jp/naid/120006331091/ 
  2. ^ 講談社編『旬の食材:四季の果物』、講談社、2004年、p.35.
  3. ^ 牧野日本植物図鑑(1940) 唐音で杏は、アン 子は、ス
  4. ^ 小林幹夫 「恵泉果物の文化史(11):アンズ」 『恵泉女学園大学園芸文化研究所報告:園芸文化 (Bulletin of Keisen Institute of Horticulture)』 13巻 恵泉女学園大学園芸文化研究所、129-132頁、2017年https://ci.nii.ac.jp/naid/120006331091/ 
  5. ^ 牧野日本植物図鑑(1940) 唐音で杏は、アン 子は、ス
  6. ^ 本草和名(918頃)(1802校訂)に、杏 一名杏子 和名 加良毛〱とある。
  7. ^ 下学集(1444)(室町末期頃写)に、杏カラモ・とある。
  8. ^ 節用集(1469-87頃)(1496写)に、杏アンスとある。
  9. ^ 日仏料理協会編 『フランス 食の事典(普及版)』 株式会社白水社、2007年、17-18頁。ISBN 978-4-560-09202-6 
  10. ^ なお、『フランス 食の事典(普及版)』においては『和名類聚抄』に「唐桃(からもも)」と記載されているとあるが、国立国会図書館デジタルコレクションにて閲覧できる『倭名類聚鈔[1]』(1617年版) 20巻. (目次番号[9]、コマ番号10)には「杏子」「加良毛々」と記載されている。
  11. ^ ウメ・アンズの複合栽植園に対応した病害虫防除体系 (PDF)”. 青森県産業技術センター. 2015年6月17日閲覧。
  12. ^ ウメとアンズの複合栽植園に対応した病害虫防除体系 (PDF) 東北農業試験研究協議会
  13. ^ まちのみどりと園芸の相談Q&A - ウェイバックマシン(2015年6月17日アーカイブ分)千葉大学大学院
  14. ^ 国立歴史民俗博物館 日本の遺跡出土大型植物遺体データベース
  15. ^ 果樹全書クリ・クルミ・オウトウ・アンズ(1985)農山魚村文化協会
  16. ^ a b c d 日仏料理協会編 『フランス 食の事典(普及版)』 株式会社白水社、2007年、17-18頁。ISBN 978-4-560-09202-6 

画像編集

関連項目編集

外部リンク編集