アーティスティックスイミング
アーティスティックスイミング(英: artistic swimming)は、プール内で音楽に合わせて肉体を動かし、技の完成度、同調性、構成、芸術的な表現力などの得点で競う水泳競技の一種。ASと略される。2017年まではシンクロナイズドスイミング(英: synchronized swimming)と呼ばれていた。
2017年7月22日、国際水泳連盟(FINA)が種目名を「シンクロナイズドスイミング」から「アーティスティックスイミング」に変更すると発表した[1][2][3][4]。曲や人に同調することを意味する「シンクロナイズド」が芸術性を求める演技にふさわしくないため[5]。これに呼応して日本水泳連盟(JASF)も2018年4月1日から種目名等を「アーティスティックスイミング」に一斉に変更した。
ルール編集
アーティスティックスイミングにはフィギュアとルーティンと呼ばれる2つの競技がある。
フィギュア競技は技術の完成度を競うもので音楽は使用しない。ルールに規定された暗色の水着に白色のキャップと地味ないでたちで報道されることはほとんどない。
ルーティン競技は音楽に合わせて1人から10人までの人数で演技する。報道で注目されるのはこちらであり、アーティスティックスイミングと言えばルーティン競技を指すものと一般に認識されている。
イベントは、ソロ(1人)、デュエット(2人)、ミックスデュエット(男女ペア)、チーム(4〜8人)、フリーコンビネーション(8〜10人)、ハイライトルーティン(8〜10人)の6種目に分けられる。
ソロ、デュエット、チーム、ミックスデュエットでは、テクニカルルーティン(TR)と、フリールーティン(FR)が行われる。TRはあらかじめ決められた規定要素と呼ばれる技を演技に取り入れることが定めれており、競技者の技術力に重点をおいた採点が行われる。FRには規定要素はなく自由に演技する。リフトやジャンプといった大技が多く盛り込まれ、技術だけでなく構成力や芸術的な表現力が問われる。
テクニカルルーティンの採点編集
採点は以下三項目で審査される
- エクスキューション
- 総合的な演技の完遂度(スキルと同時性)を評価する。
- インプレッション
- 難易度/構成/音楽の解釈/プレゼンテーションなどの芸術性を評価する。
- エレメンツ
- 各規定要素の完遂度(専門スキルのレベル)
それぞれの評価の割合は以下のとおり
- エクスキューション 30%
- インプレッション 30%
- エレメンツ 40%
フリールーティンの採点編集
採点は以下三項目で審査される
- エクスキューション
- 総合的な演技の完遂度(スキルと同時性)を評価する。
- アーティスティック・インプレッション
- 構成/音楽の解釈/プレゼンテーションなどの芸術性を評価する。
- デイフィカルティー
- 難易度、難しさの度合い(動きの難しさ/同時性の難しさ)
それぞれの評価の割合は以下のとおり
- エクスキューション 30%
- アーティスティック・インプレッション 40%
- デイフィカルティー 30%
服装・頭髪・化粧編集
技術と同時に美や芸術性も競う競技であるため、ルーティン競技では演技に応じてデザインされた派手な衣装(水着)を使用することが多い。
ノーズクリップ編集
鼻に水が入るのを防ぐため、肺の空気が鼻から漏れることを防ぐために使用する。競技中に万が一外れたときのために予備を持っている。ノーズクリップを使用しないで演技可能な選手がわずかに存在する。
オリンピック編集
アーティスティックスイミングがオリンピック種目に正式採用されたのは1984年ロサンゼルスオリンピックからである(当時はシンクロナイズドスイミング)。現在まですべての大会で、女子のみが夏季オリンピック種目となっている(女子のみ実施なのはアーティスティックスイミングと新体操のみ)。
オリンピックでは、当初は1人で演技を行うソロ競技と2人で演技を行うデュエット競技の2種目で実施されていたが、1996年アトランタオリンピックよりソロ競技に代わって新たに8人で演技を行うチーム競技が採用され、現在はチーム競技とデュエット競技の2種目で実施されている。
2012年ロンドンオリンピックでは、NHKが開発し技術提供したツインズカムで、屈折率の異なる水中と水上の演技を1画面でとらえた公式映像が中継された。
男子の出場編集
国際水泳連盟は2014年11月の臨時総会(カタールのドーハ)の投票によって、「ミックスデュエット」をアーティスティックスイミングの新種目として導入することを正式決定し、2015年夏の世界選手権(ロシアのカザン)が、最初の実施大会となった[7][8][9][10]。
世界選手権以外では、ビル・メイ(米国)のように、女子と組んで大会に出場し優勝を果たした男子選手がいる[11]。
2017年4月29日、日本選手権において、フリーコンビネーションで、女子選手8人に交じって男子選手1人が史上初めて出場した[12]。
脚注編集
- ^ シンクロの名称変更=アーティスティックスイミングに-FINA
- ^ シンクロ、「アーティスティックスイミング」に変更へ
- ^ 「シンクロ」の名前が消える!?「アーティスティックスイミング」に種目名変更へ
- ^ シンクロ名称変更で競技人口は増えるか、男性離れ招くとの声も(字幕・31日)
- ^ 読売新聞 2017年7月23日 28面。
- ^ スポーツ古今東西 8月18日 - テレビ朝日 宮嶋泰子
- ^ シンクロに新種目「男女ミックスデュエット」導入 - レコードチャイナ・2014年12月6日
- ^ 男子のアーティスティックスイミング - ロシアの声・2014年12月19日
- ^ あの「ウォーターボーイズ」が現実に ついに男子シンクロ選手が世界水泳の舞台に立つ 日本代表の選考会は2月… - 産経ニュース・2015年1月7日
- ^ 世界目指すウオーターボーイ=混合デュエット採用で道-男子シンクロ - 時事ドットコム・2015年1月7日
- ^ シンクロで男女デュエット実施へ 来年の世界水泳で - 47NEWS(共同通信)・2014年10月18日
- ^ シンクロ日本選手権に男子選手が史上初出場 9人のフリーコンビネーションにスポニチ(2017年4月29日), 2017年5月1日閲覧。