コトウカンアオイ

ウマノスズクサ科の種

コトウカンアオイ学名: Asarum majale)は、ウマノスズクサ科カンアオイ属常緑多年草[2][3]。2006年新種記載の種[4]

コトウカンアオイ
三重県いなべ市 2021年6月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: コショウ目 Piperales
: ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae
: カンアオイ属 Asarum
: コトウカンアオイ A. majale
学名
Asarum majale T.Sugaw.[1]
和名
コトウカンアオイ

特徴 編集

地下の根茎は短く這い、その先端から毎年1枚のを出す。葉柄は長さ5-13cmになり、濃紫色で無毛。葉身は円形または広卵形で、長さ4-7cm、幅4-6cmになり、先端は鈍頭かいくらかとがり、基部は心形になる。葉の表面は光沢がなく、濃緑色から緑色、短毛が散生し、雲紋状の斑が入ることがあり、裏面は無毛[2][3][4]

花期は他のカンアオイ類と異なり5月中旬から下旬に開花する。花に花弁は無く、裂片が花弁状になる。花柄は長さ5-10mm、葉腋に単生する。萼筒は緑色を帯びた紫色、または淡褐色、鐘形で、長さ7.5-11mm、径9-13mmになり、喉部の口環の発達が弱く、萼口が広くなる。萼筒内壁には縦横に隆起した襞があって複雑な網目状になり、縦襞は15-21列、横襞は3-5列ある。萼裂片は卵状三角状で、長さ7-10mm、斜め方向に開き、先端はわずかに鋭形となる。萼裂片の表面は比較的滑らかで、裏面は無毛。雄蕊は12個あり、6個が2輪に配列し、葯は長さ2.5-3.5mmになり、外側を向いて縦に2-3mm開裂し、花糸は短く長さ0.5mm未満。花柱は6個が独立して直立し、先端が角条の突起となり、長さ1.2-2.2mmになり、萼口近くまで達するが萼筒を突出することはない。柱頭は楕円形で外側を向く[2][3][4]

分布と生育環境 編集

日本固有種。近畿地方の滋賀県三重県鈴鹿山脈にある藤原岳福王山日本コバの山麓に分布し、低山地の広葉樹林内に生育する[2][3][4]

名前の由来 編集

和名コトウカンアオイは、植物学者の菅原敬 (2006) による命名。本種の分布域は、滋賀県琵琶湖湖東地区である東近江市を含む[4]

種小名(種形容語) majale は、「5月に咲く」「5月の」の意味[5]

種の保全状況評価 編集

絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト


(2020年、環境省)[6]

滋賀県(2020年)、分布上重要種(BI) [6]

分類 編集

葉形はヒメカンアオイ Asarum takaoi var. takaoi に似るが、同種の花期は2-3月であり、本種の花期は5月と開花期が異なる[2]

また、分布地が三重県鈴鹿山脈の野登山であり、本種の分布地に近いスエヒロアオイ A. dilatatum とは、同種の花期は10-11月である違いのほか、同種の萼筒は上方に広がる短い筒形で、本種の萼筒は鐘形になり、萼筒の長さ、径、萼裂片の長さともに本種の方が大きい[2]

ギャラリー 編集

脚注 編集

  1. ^ コトウカンアオイ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f 菅原敬 (2015)「ウマノスズクサ科カンアオイ属」『改訂新版 日本の野生植物 1』pp.69-70
  3. ^ a b c d 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.163
  4. ^ a b c d e TAKASHI SUGAWARA and KAORI TANIWAKI, Asarum mnjale (Aristolochiaceae), a New Species from the Suzuka Mountain Range, Kinki District, Japan, Acta Phytotax. Geobot. Vol.57, Issue 3, pp.191-197, (2006)
  5. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1501
  6. ^ a b コトウカンアオイ、日本のレッドデータ検索システム-2022年2月26日閲覧

参考文献 編集