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ストラトフォード・フェスティバル

ストラトフォード・フェスティバル(英語: Stratford Festival)はトム・パターソンが創設した舞台芸術祭である。ストラトフォード・シェイクスピアリアン、シェイクスピア・フェスティバル、ストラトフォード・シェイクスピア・フェスティバルなどという旧称を経て現在の名称になった。国際的に有名なレパートリー・シアター・フェスティバルであり、4月から10月までカナダオンタリオ州にある都市ストラトフォードで開催される[1]。多数の観客、役者劇作家が参加し、カナダ、イギリスアメリカ合衆国の著名な役者がフェスティバルに出演している。カナダにおける最古にして今なお最も有名な芸術祭のひとつであり、ウィリアム・シェイクスピア戯曲の上演で世界的に知られている。

ストラトフォード・フェスティバル
Festival theatre, Stratford.jpg
フェスティバルシアター
ジャンル レパートリー・シアター・フェスティバル
日程 4月~10月
会場所在地 カナダオンタリオ州ストラトフォード
経年 1953–現在
設立 1952
ウェブサイト
stratfordfestival.ca

フェスティバルでは必ずシェイクスピア劇を上演するよう決まっているが、それ以外にもギリシャ悲劇からブロードウェイスタイルのミュージカル、現代の作品まで幅広い戯曲を上演している。最大の劇場であるフェスティバル・シアターで上演される作品の3分の1くらいがシェイクスピア劇であるという時代もあったが、減少傾向にある。

このフェスティバルが成功したためストラトフォードのイメージは劇的に変わり、芸術観光が経済的に大きな役割を果たす都市になった。イギリスやアメリカ合衆国などカナダ国外からも多くの観光客がフェスティバルを訪れており、ストラトフォードの観光部門において極めて重要なものになっている。

来歴編集

 
エイヴォン川から見えるフェスティバルシアター。

このフェスティバルは最初、ストラトフォード・シェイクスピアリアン・フェスティバル・オブ・カナダとして創設された。主な立役者はストラトフォード出身のジャーナリスト、トム・パターソンであった。パターソンは街がシェイクスピアの生地ストラトフォード=アポン=エイヴォンと同じ名前であるため、シェイクスピアの作品を上演する舞台芸術祭を創設することで街の経済を活性化させたいと考えていた。ストラトフォードは鉄道ジャンクション機関車の工場があったが、蒸気機関の全面廃止が迫っていたため雇用が壊滅的な打撃に直面していた[2]。パターソンは市長のデイヴィッド・シンプソンと市議会の支援を得てこの目的を達成した[2][3]。ストラトフォード・シェイクスピアリアン・フェスティバルは1952年10月31日に法的に発足した。

既にカナダの演劇において地位を確立していたドラ・メイヴァー・ムーアの助けにより、パターソンはイギリスの役者・演出家であるタイロン・ガスリーと大西洋をまたぐ国際電話で初めて話をした[4]。1953年7月13日にフェスティバルのこけら落としが行われ、最初に上演された戯曲『リチャード三世』で役者のアレック・ギネスが芝居の最初の台詞「今や我らの不満の冬も/このヨークの息子により栄光の夏となり…」を口にして幕が開いた[5][6]。。アレック・ギネスとアイリーン・ワースはこの『リチャード三世』に実費のみの支給で出演していた[2][7]。フェスティバルの開催は国際的にも重要性を持つ「カナダ演劇のモデル」として高く評価され、期待を集めた[8]

最初期の4シーズンでは、エイヴォン川の土手に巨大なキャンバステントを貼って覆ったコンクリートの円形劇場で上演が行われた。第一回のシーズンは1953年7月13日から6週間で、『リチャード三世』の後に『終わりよければ全てよし』が上演され、どちらもアレック・ギネスが主演した。1954年のシーズンは9週間で、ソフォクレスの『オイディプス王』とシェイクスピアの2作品、『尺には尺を』と『じゃじゃ馬ならし』が上演された。最初期の4シーズンに出演した若手の役者のなかにはのちに大きな成功を収めた役者にはダグラス・キャンベル、ティモシー・フィンドリー、ドン・ハロン、ウィリアム・ハット、ダグラス・レインなどがいる[9]

常設の劇場を作るための資金集めはなかなか進まなかったが、カナダ総督ヴィンセント・マッシーやパースミューチュアル保険会社から相当額の寄付があった。1800名以上を収容できる座席のついた新しいフェスティバルシアターは1957年6月30日にこけら落としした。いずれの座席も舞台から20メートル以下の距離であった。劇場は意図的に大きなテントに似せた設計であった[10]。1957年のシーズンの上演は『ハムレット』、『十二夜』、諷刺劇であるMy Fur Lady、『ねじの回転』、イプセンの『ペール・ギュント』であった。フェスティバルシアターの張り出し舞台はイギリスのデザイナー、ターニャ・モイセイビッチが古代ギリシア円形劇場とシェイクスピアの時代のグローブ座の両方に似せで設計したもので、北米やイギリスで他のステージのモデルになった[11][12]

クリストファー・ウォーケンは若く無名だった1968年にストラトフォード・フェスティバルの舞台で『ロミオとジュリエット』のロミオ役と『夏の夜の夢』のライサンダー役をそれぞれ演じたことがある[13]。この時の『ロミオとジュリエット』は、ダグラス・キャンベルが演出をつとめ、ジュリエットにはフランス系カナダ人のルイーズ・マルローをキャスティングしたが、マルローのフランス語訛りのため極めて台詞が聞き取りにくいと評された[14]トニー賞にノミネートされたことがあるスコット・ウェントワースは1985年の『ガラスの動物園』以降何度もストラトフォード・フェスティバルの上演に出演している[15]。サラ・トッパムは2000年から2011年までこのフェスティバルで演技のキャリアを積んだ[16]

2007年、14シーズンという長期にわたり芸術監督をつとめたリチャード・モネットが退任した。退任後は総監督アントニ・チモリノと芸術監督マーティ・マラデン、デス・マカナフ、ドン・シップリーからなるチームがかわりをつとめた。2008年3月12日にシップリーとマラデンが退職すると報じられ、マクナフが唯一の芸術監督となった[17]。2013年にデス・マクナフがアントニ・チモリーノにかわって芸術監督となった[18]

2012年にフェスティバルは340万カナダドルの赤字を計上したが、2015年にはチモリーノと業務監督アニタ・ギャフニーの管理下で310万ドルの剰余金を計上した。 以前に記録である50万枚のチケット売り上げという目標には達していなかったが、初めて劇場を訪れる観客の増加が達成できた[19]

2017年のシーズンでは幅広いプロダクションが提供されたが、演出家は全てカナダ人であった[20]。フェスティバルシアターでシェイクスピアの『十二夜』、『ロミオとジュリエット』、『じゃじゃ馬ならし』、モリエールの『タルチュフ』、ミュージカル『ガイズ&ドールズ』が上演され、他には『軍艦ピナフォア』、リチャード・ブリンズリー・シェリダンの『悪口学校』 、ロバート・ルイス・スティーヴンソン宝島』の新版などが上演された[20]

フェスティバルに参加した著名なパフォーマーとしてはアラン・ベイツジャッキー・バロウズゾーイ・コールドウェル(演出家としても参加)、レン・キャリオージョナサン・クロンビーヒューム・クローニンブライアン・デネヒーミーガン・フォローズコルム・フィオールモーリン・フォレスターローン・グリーンポール・グロスジュリー・ハリスジェームズ・メイソンエリック・マコーマックロリーナ・マッケニットジョン・ネヴィルアマンダ・プラマークリストファー・プラマーサラ・ポーリーダグラス・レインジェイソン・ロバーズポール・スコフィールドウィリアム・シャトナーマギー・スミスジェシカ・タンディピーター・ユスティノフなどがいる[1]

現況編集

フェスティバルは4月から10月まで行われ、フェスティバルシアター、エイヴォンシアター、トム・パターソンシアター、スタジオシアターという4つの常設劇場がある。フェスティバルでは必ずシェイクスピア劇を上演するよう決まっているが、それ以外にもさまざまな古典及び現代劇と、最低1本のミュージカルを上演する。舞台上演以外には音楽のコンサート、作家による朗読、講演、役者やマネジメントスタッフとのディスカッションセッションなども行われている。

ストラトフォード・フェスティバルはウォータールー大学と提携している[21]。大学とフェスティバルが共催でシェイクスピア学会をシーズン中に行うこともある[22]

芸術監督編集

  • タイロン・ガスリー(1953–1955)
  • マイケル・ランガム (1956–1967)
  • ジーン・ギャスコン (1968–1974)
  • ロビン・フィリップス (1975–1980)
  • ジョン・ハーシュ (1981–1985)
  • ジョン・ネヴィル (1985–1989)
  • デイヴィッド・ウィリアム (1990–1993)
  • リチャード・モネット (1994–2007)
  • マーティ・マラデン、デス・マクナフ、ドン・シップリー (2007–2008)
  • デス・マクナフ (2008–2012)
  • アントニ・チモリーノ (2013-)

メディア編集

1954年、NFBがフェスティバルの創設について、タイロン・ガスリーとアレック・ギネスが出演するドキュメンタリー番組The Stratford Adventureを作った。

2003年から2006年までカナダで放送されたテレビドラマシリーズ『スリングズ・アンド・アロウズ』はこのフェスティバルをモデルにした架空のシェイクスピアフェスティバルを舞台にしている。

2015年2月17日、AP通信はストラトフォード・フェスティバルがシェイクスピア劇を全て映像化することを計画していると報じた[23]

脚注編集

  1. ^ a b Canadian Encyclopedia - Stratford Festival
  2. ^ a b c “Obit: Tom Patterson”. Telegraph (London, UK). (2005年2月25日). http://www.telegraph.co.uk/news/obituaries/1484321/Tom-Patterson.html 2017年3月5日閲覧。 
  3. ^ Carolynn Bart-Riedstra and Lutzen H. Riedstra (1999). Stratford: Its Heritage and Its Festival. James Lorimer & Company. p. 57. 
  4. ^ THE UNLIKELIEST IDEA”. Stratford Festival (2016年). 2017年3月5日閲覧。
  5. ^ J. Alan B. Somerset. 1991. The Stratford Festival Story, 1st edition. Greenwood Press. ISBN 978-0-313-27804-4
  6. ^ Tom Patterson. 1987. First Stage. McClelland and Stewart. ISBN 978-0-7710-6949-9
  7. ^ Middleton, Lisa (2012年7月10日). “Celebrate our 60th season with 1953 pricing!”. 2017年6月13日閲覧。
  8. ^ Margaret Froome, "Stratford and the Aspirations for a Canadian National Theatre", Diana Brydon and Irena R. Makaryk, ed., Shakespeare in Canada: A World Elsewhere? (University of Toronto Press, 2002), 108 - 136, p. 127.
  9. ^ OUR TIMELINE”. Stratford Festival. Stratford Festival (2012年). 2017年3月6日閲覧。
  10. ^ OUR TIMELINE”. Stratford Festival. Stratford Festival (2012年). 2017年3月6日閲覧。
  11. ^ Tyrone Guthrie. 1959. A Life in the Theatre. McGraw Hill. ISBN 978-0-86287-381-3
  12. ^ Martin Hunter. Romancing the Bard: Stratford at Fifty. Dundurn Press. 2001. ISBN 978-1-55002-363-3
  13. ^ Webb, Rebecca (1998年2月18日). “Christopher Walken at Stratford”. 2017年6月13日閲覧。
  14. ^ C. E. McGee, "Shakespeare Canadiens at the Stratford Festival", Diana Brydon and Irena R. Makaryk, ed., Shakespeare in Canada: A World Elsewhere? (University of Toronto Press, 2002), 141-158, p. 124.
  15. ^ Urquhart, Bruce (2013年5月25日). “The challenges and rewards of repertory theatre”. The Beacon Herald. 2017年6月13日閲覧。
  16. ^ Wilson, Gemma (2011年2月10日). “Earnest Ingenue Sara Topham on the Generosity of Gavin Creel and Getting to Know All About Julie Andrews”. 2017年6月13日閲覧。
  17. ^ Posner, Michael (2008年3月14日). “All does not end well at Stratford”. The Globe and Mail. オリジナルの2008年3月15日時点によるアーカイブ。. https://archive.li/20080315235248/http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20080313.wstratford14/BNStory/Entertainment/home 
  18. ^ Stratford Festival vet Antoni Cimolino to take over for Des McAnuff
  19. ^ Nestruck, J. Kelly (2016年3月19日). “Stratford Festival ‘back on track’ with attendance boost, surplus in 2015”. Globe and Mail (Toronto). http://www.theglobeandmail.com/arts/theatre-and-performance/stratford-festival-back-on-track-with-attendance-boost-surplus-in-2015/article29292880/ 2017年3月6日閲覧。 
  20. ^ a b Nestruck, J. Kelly (2016年6月15日). “Stratford Festival’s all-Canadian roster to tackle European classics in 2017”. Globe and Mail (Toronto). http://www.theglobeandmail.com/arts/theatre-and-performance/stratford-festivals-all-canadian-roster-to-tackle-european-classics-in-2017/article30453202 2017年3月6日閲覧。 
  21. ^ Industry Partnerships”. University of Waterloo. 2014年4月24日閲覧。
  22. ^ Shakespeare Theatre Conference”. The University of Waterloo. 2017年6月13日閲覧。
  23. ^ Kennedy, Mark (2015年2月17日). “Stratford Festival plans to film all Shakespeare's plays”. AP News. http://apnews.excite.com/article/20150217/us--filming_shakespeares_canon-a78503fe86.html 2015年2月17日閲覧。 

参考文献編集

  • Brydon, Diana, and Irena R. Makaryk, ed., Shakespeare in Canada: A World Elsewhere? Toronto: University of Toronto Press, 2002. ISBN 0802036554.
  • Guthrie, Tyrone; Robertson Davies; Grant MacDonald (1953). Renown at Stratford: A Record of the Shakespeare Festival in Canada. Toronto: Clarke, Irwin & Company, Ltd.. 
  • Ouzounian, Richard (2002). Stratford Gold: 50 Years, 50 Stars, 50 Conversations. Toronto: McArthur & Company, Ltd.. ISBN 978-1-55278-271-2. 
  • Shaw, Grace Lydiatt (1977). Stratford Under Cover: Memories on Tape. NC Press. ISBN 978-0919600676. 
  • Sperdakos, Paula (1995). Dora Mavor Moore: Pioneer of the Canadian Theatre. ECW Press. ISBN 978-1550222470. 

外部リンク編集