テカギイカ科

頭足綱の科

テカギイカ科 (Gonatidae) はイカの下位分類群の一つ。太平洋の冷たい亜寒帯海域に広く分布し、豊富に生息している。少なくとも1種は南極海で、2種は北大西洋から知られる。ニセテカギイカ属は、ニセテカギイカ (Eogonatus tinro) のみが分類され、触腕に鉤がなく、歯舌に5列の歯があるため独自の属とされた。アロザイムミトコンドリアDNAの分子研究によると、テカギイカ属に分類されることが示されているが[3]、ヤワラタコイカのシノニムとする場合もある[4]

テカギイカ科
生息年代: 鮮新世 - 現世[1]
テカギイカ属の一種 Gonatus sp.
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 頭足綱 Cephalopoda
上目 : 十腕形上目 Decapodiformes
: 開眼目 Oegopsida
: テカギイカ科 Gonatidae
学名
Gonatidae
Hoyle, 1886[2]
タイプ属
Gonatus
Gray, 1849
英名
armhook squid

形態

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ドスイカの口と腕

形態学的に大きな違いは無い。腕の吸盤は一般的な2列ではなく4列に並んでいる。ほとんどの種で、中心の2列の吸盤は鉤状に変化しており、不規則な多数の小さな吸盤の列で覆われた触腕掌部には、中央に大きな鉤が付いている場合があるが、複数のより小さな鉤が付いている場合もある。ドスイカでは、雌のみが鉤を持つ。触腕を欠くものもいる。ヒカリテカギイカのみが発光器を持ち、眼の腹側周辺部に位置する[5]

筋肉質で円筒形の体を持ち、非常に柔らかく、赤茶色から紫がかった茶色の皮膚を持つ。腕は太く、鰭は菱形から心臓形で[5]、外套膜の長さの約 50 %から約30 %と、形や大きさは様々である。体長が11 - 40 cm、ほとんどの種は25 cm以下と、中型のイカである。雌の方が大型である。

生態

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水深1,328 mで撮影されたテカギイカ
 
ホッカイテカギイカ

遠洋性で、大陸棚に生息し、種によっては水深4,500 m以上の深さでも遊泳する。習性についてはあまり研究されていないが、日周鉛直運動を行うと考えられている。日中は深海に潜り、夜になると浮上して星の明かりを頼りに餌をとる。テナガタコイカは腕が奇妙に反り返っており、底生生物であると考えられる。

生殖周期についてはほとんどわかっていない。生殖が観察されている種のほとんどは、海底に卵を産みつけ、卵が自然に孵化するまで放置する。モントレー海底渓谷では、テカギイカの雌5匹が、成長中の卵2,000 - 3,000個が入った膜嚢を引きずっているのが観察されている。この行動がテカギイカ科の他の種にも当てはまるのか、この種に特有のものなのかは不明である。

獲物には底生生物と遠洋性生物が含まれ、カジカ上科ポラック属の幼魚などの小魚、オキアミ端脚類などの甲殻類、その他のイカなどを捕食する。共食いも知られる[6]

テカギイカ科は主にクジラに捕食され、ツチクジライッカクコビレゴンドウイシイルカマッコウクジラはテカギイカ科を捕食することが知られている。その他の捕食者には、大型の海鳥キタオットセイゾウアザラシソコダラ亜科オヒョウサケ科などの大型魚類が含まれる。南の海域では、ウェッデルアザラシニュージーランドオットセイ、ならびに数種のアホウドリペンギンに捕食される。

分類

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分類には混乱があるが、4または5属に19から21種が分類されている[5]

脚注

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  1. ^ Statoliths of Cenozoic teuthoid cephalopods from North America | The Palaeontological Association”. www.palass.org. 2024年6月11日閲覧。
  2. ^ MolluscaBase: “Gonatidae Hoyle, 1886”. World Register of Marine Species (2024年). 2024年6月11日閲覧。
  3. ^ P. Jereb; C.F.E. Roper, eds (2010). Cephalopods of the World an Annotated and Illustrated Catalogue of Cephalopod Species Known to Date Volume 2 Myopsid and Oegopsid Squids. Food and Agriculture Organization Rome. p. 222. ISBN 978-92-5-106720-8. http://www.fao.org/docrep/014/i1920e/i1920e.pdf 
  4. ^ Eogonatus Nesis, 1972.”. Tree of Life Web Project (2014年). 2024年6月12日閲覧。
  5. ^ a b c 奥谷喬司. “新編 世界イカ類図鑑”. 2024年6月12日閲覧。
  6. ^ Seibel, BA; Robison BH; Haddock SH (December 15, 2005). “Post-spawning egg care by a squid”. Nature 438 (7070): 929. Bibcode2005Natur.438..929S. doi:10.1038/438929a. PMID 16355206. 
  7. ^ Alexeyev, D. O.; Katugin, O. N.; Bizikov, V. A. (2022-04-01). “Taxonomic status of squids of the genus Berryteuthis Naef, 1921 (Gonatidae, Oegopsida) inhabiting the Sea of Japan”. Ruthenica, Russian Malacological Journal 32 (2): 53–59. doi:10.35885/ruthenica.2022.32(2).1. ISSN 2307-7336. https://www.biotaxa.org/Ruthenica/article/view/74757. 

外部リンク

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