マナス
キルギスの叙事詩
『マナス』(キルギス語: Манас)は、キルギスに伝わる民族叙事詩である。また、その主人公たる勇士の名でもある。
口承された数十万行にも及ぶ壮大な民族叙事詩で、ホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』、古代インドの『マハーバーラタ』などよりもはるかに長い。『ギネス世界記録』では世界で最も長い詩と認定され、50万行以上の長さがあると紹介されている。伝承では古くより存在したと言われているが、実際に現在の形に成立したのは18世紀ごろと考えられている。
内容編集
英雄マナスから始まり、その子セメテイ、孫セイテクと続く、計8代の事跡をうたう。
クタイ(中華系)人とカルマク(オイラト族)人との戦いが叙事詩の主要なテーマになっている。
成立編集
口伝としての『マナス』の生まれた時代は、7世紀から10世紀に生まれた説や、15世紀から18世紀の出来事を表しているとする説など諸説がある。
15世紀の初期に『マナス』について触れた文献があるが、1885年までは書物になることはなかった。
マナスチ編集
『マナス』はマナスチまたはマナスチュ (Манасчы, Manaschi) と呼ばれる語り手によって語られる。
キルギスには多くのマナスチュがおり、有名なマナスチュにはサグムバイ・オロズバコフ (Sagimbai Orozbakov)、サヤクバイ・カララエフ (Sayakbai Karalaev)、シャービ・アズィゾフ (Shaabai Azizov)、カバ・アタベコフ (Kaba Atabekov)、セデネ・モルドコーヴァ (Seidene Moldokova)、ジュスプ・ママイ (Yusup Mamai) などがいる。
命名編集
日本語訳編集
- 訳:若松寛 (全3巻、平凡社)
- 『マナス 少年篇―キルギス英雄叙事詩』(2001年、ISBN 978-4582806946)
- 『マナス 青年篇―キルギス英雄叙事詩』(2003年、ISBN 978-4582807172)
- 『マナス 壮年篇―キルギス英雄叙事詩』(2005年、ISBN 978-4582807400)