マルチメディア英語:multimedia)とは、複数の種類の情報をひとまとめにして扱うメディアのことである。一般的には映像音楽など動的コンテンツを含むイメージで捉えられることが多い。複合媒体と訳す。

類似の言葉でミクストメディアがあり、複数の画材や手法を使い単数の作品を作成する事である。逆にメディアミックスは単数の情報を複数の媒体で展開することである。

歴史編集

前史編集

1945年Memexと呼ばれる人類史上初のハイパーテキストのプロジェクトが立ち上がった。Memexで説明されていた、フィルムを主体とした実現方法には無理があったものの、文書同士の参照関係を辿って情報を参照できるシステムの構想で、今日のWorld Wide Webの基礎となる構想であった。

1960年代、光によるショーや、スライド・ショーとロックンロールを一つにしたものをマルチメディアと呼んだ。複数の種類の媒体を組み合わせる方法論はアナログの媒体でも試みられていた。

1980年代ビデオテックスと呼ばれる、文書と画像をネットワークでダウンロードして表示できる情報閲覧システムが商業展開された。フランス政府が無料で端末を配布して普及させたミニテル以外は、コンテンツ不足から広く普及しなかったが、システム性能が低く表示が質素な事以外は現代のWorld Wide Webで行える事の殆どが実現されていた。

ITによるマルチメディアの歴史編集

1980年代以降、インターネットを実現するための情報スーパーハイウェイGUIを基本とするオペレーティングシステムパーソナルコンピュータにより、様々なメディアから発信されてくる情報データに対し「情報の消費者」であったユーザを、「情報の発信者」にもすることのできる技術が可能になった。「情報収集」と「情報処理」が双方向対話型(Interactive)の「情報伝達方式」と一体となった「技術」がマルチメディアと呼ばれた。その後、マルチメディアを活用した新たなビジネスモデルの構築やベンチャービジネスが活性化し、それら企業に投資するというITバブル時代が到来することになる。

1980年代には制作環境が乏しく、未だ実験段階に過ぎなかったが、1990年代CGワークステーションが普及し始め、CD-ROMなどのパッケージメディアの流通で大きく注目され、2000年以降にインターネットが広く普及してオンラインゲームWebサイトという形で一般化した。工場や医療現場などでも動画やセンサーデータなどの複数の情報を統合して閲覧できるシステムが普及し、状況把握が容易になった。2010年代に入ってVRAIIoTなどが流行し、ゲーム興行デジタルサイネージメディアアートなどという形で実空間を巻き込みながら進化を続けている。

最近は特にコンピュータインターネットを中心とし、文字映像動画音声など従来別個のものとして扱われてきた様々なメディアを、デジタルデータ化することで同一のレベルで処理、既成の概念とは異なる方法で消費者に提供したり、加工して発信したりすることが可能になった。メディア処理には専用のソフトウェアが必要であり、一般にメディアプレーヤーと呼ばれる。またコンピュータそのものをマルチメディアと言うことがある。

転じて、今までコンピュータで扱うのが難しかった映像メディア、音声メディアなどを(単一のメディアとして扱っていても)マルチメディアと呼ぶこともある。

CG-ARTS協会が1996年から実施している「マルチメディア検定」では多様なコンテンツを作成できる能力、多様なメディアを使いこなすことができる能力の評価に重点が置かれている。

かつて「ネオダマ」(ネットワークオープンシステムダウンサイジング、マルチメディア)という言葉が、コンピュータビジネスの世界で成功キーワードとされたことがあった。

ゲームビジネスにおいては、極端にゲーム性の低い作品(本のようにページをめくるだけ、簡単な分岐程度の選択肢など)に「マルチメディア作品」と付けられることが多かったことから、ゲーム業界においては蔑称として用いられることもある。

出版業界を主として、クロスメディアメディアミックスのことをマルチメディアと呼ぶことがある。例えば、漫画や小説などの出版物原作を積極的にアニメ化やゲーム化、ドラマCD化していくことを「マルチメディア展開」や「多メディア展開」と呼ぶなど。これらは、他メディアへ移植する際に原作のデータをそのまま使うことが不適切な場合が多いため一般的な意味でのワンソース・マルチユースとは異なるが、「原作となる著作をソースとした二次著作を多数用いる」という意味でワンソース・マルチユースであると解釈される場合がある。

語源編集

1960年代、光によるショーや、スライド・ショーとロックンロールを一つにしたものをマルチメディアと呼んだ。

代表的な例編集

  • グラフィックと双方向性を多用したWWWによるホームページの発信=マスメディアからの脱却
  • 音楽ダウンロードサービスと携帯音楽プレイヤーの連携=CDメディアからの脱却
  • デジタルカメラで撮影した画像の加工・編集とコンピュータとの連携=紙メディアからの脱却
  • ビデオカメラで撮影した動画の加工・編集とコンピュータとの連携=従来メディアからの脱却
  • CD-ROMによる文字や写真、動画をミックスした媒体 =従来メディア、紙メディアからの脱却
  • インターネットを活用した仮想商店街(e-コマース)の構築=従来ビジネスからの脱却

これらが相互に連携して新たなビジネスモデルを構築している例も多い。

バズワードだった「マルチメディア」編集

1980年代から1990年代にかけて、テレビ受像機などに規格としての普及が不十分なデジタル映像入力端子が付いていたり、パソコンにテレビを受信できる機能やCD-ROMが搭載されているだけでも、「ニューメディア対応テレビ」、「マルチメディアパソコン」という言葉を使って商品を差別化している例が見られた。言葉の意味そのものは2000年代の「マルチメディア」を志向してはいるのだが、技術や規格の成熟度、インフラ、アプリケーションが不十分なままで用いられている為、一種のバズワードになってしまっていた事になる。

1980年代のビデオテックス[1]など、キラーコンテンツに恵まれず空回りに終わった「ニューメディア」の失敗に懲りた人々は、比較的冷静にマルチメディアという新しい言葉を受け止めていた。

1990年代、流行に敏感な情報系あるいはデザイン系の専門学校に、相次いで「マルチメディア科」という名称の学科が設置され、学生数の獲得に成果をあげた。しかしゲーム開発やアニメーション・映像制作には機材整備に多大な費用がかかり、指導カリキュラムも混乱する状態が続き、多くの学校が数年で学科を再編成せざるを得なくなった。その後コンピュータグラフィックスアニメーションゲームコンピュータミュージックといった、より具体的なアプリケーション名が学科の名称となり、マルチメディアは過去の言葉となった。

その他の意味編集

1980年代にはパソコンの宣伝文句として、磁気テープ以外にフロッピーディスクハードディスク記録メディアとして利用できることをマルチメディアと称していた[2]

家電量販店のヨドバシカメラでは、店舗名に「マルチメディア」を冠することで、幅広い品目を取り扱っていることをアピールしている。

脚注編集

  1. ^ 2 発展する画像通信 : 昭和60年版 通信白書”. www.soumu.go.jp. 2021年1月7日閲覧。
  2. ^ Oh!FM TOWNS』(ソフトバンク)1994年8月号、160-161頁。

関連項目編集