ラミル・グリエフRamil Guliyev1990年5月29日 ‐ )は、アゼルバイジャンバクー出身でトルコ国籍の陸上競技選手。専門は短距離走100mで9秒97(トルコ歴代2位)、200mで19秒76(トルコ記録)の自己ベストを持つ。2017年ロンドン世界選手権男子200mの金メダリストである。

ラミル・グリエフ Portal:陸上競技
選手情報
ラテン文字 Ramil Guliyev
国籍 トルコの旗 トルコ
競技 陸上競技 (短距離走)
種目 100m, 200m
大学 トルコの旗 ドゥムルプナル大学 (en
生年月日 (1990-05-29) 1990年5月29日(34歳)
出身地 アゼルバイジャンの旗 バクー
身長 187cm
体重 73kg
成績
オリンピック 200m 8位 (2016年)
4x100mR 予選1組4着 (2016年)
世界選手権 200m 優勝 (2017年)
4x100mR 7位 (2017年)
地域大会決勝 ヨーロッパ選手権
100m 6位 (2016年)
200m 優勝 (2018年)
最高世界ランク 200m 4位 19秒76 (2018年)
自己ベスト
60m 6秒58 (2012年)
100m 9秒97 (2017年)
200m 19秒76 (2018年) トルコ記録
獲得メダル
陸上競技
トルコの旗 トルコ
世界選手権
2017 ロンドン 200m
ヨーロッパ選手権
2018 ベルリン 200m
2016 アムステルダム 200m
地中海競技大会
2013 メルスィン 100m
2013 メルスィン 200m
イスラム諸国連帯競技大会
2017 バクー 100m
2017 バクー 200m
2017 バクー 4x100mR
ユニバーシアード
2015 光州 100m
2015 光州 200m
アゼルバイジャンの旗 アゼルバイジャン
ユニバーシアード
2009 ベオグラード 200m
ヨーロッパジュニア選手権
2009 ノヴィ・サド 200m
2009 ノヴィ・サド 100m
世界ユース選手権
2007 オストラヴァ 200m
ヨーロッパユースオリンピックフェスティバル
2007 ベオグラード 100m
2007 ベオグラード 200m
ヨーロッパ
IAAFコンチネンタルカップ
2018 オストラヴァ 200m
2018 オストラヴァ 4x100mR
編集 テンプレートのヘルプを表示する
2014年デカネーション

200mがメインのスプリンターで、19歳だった2009年にはウサイン・ボルト(19秒93)に次ぐジュニア世界歴代3位の20秒04(+0.1)をマーク[1]ベルリン世界選手権ファイナリストになるなど活躍。その後は充実した陸上の環境を求め、2011年4月5日にトルコの市民権を取得し、2013年4月4日からトルコ代表として競技している[2][3]オリンピック世界選手権の200mでは4回決勝に進出し、2017年ロンドン世界選手権でトルコ初の金メダルを獲得した。

経歴

編集

2009年

編集
 
2009年ヨーロッパジュニア選手権

7月のベオグラードユニバーシアード男子200m決勝において、ジュニア世界歴代2位・ジュニアヨーロッパ記録となる20秒04(+0.1)をマークして金メダルを獲得した[4]

8月のベルリン世界選手権男子200mに出場。過去に世界選手権の200mで予選を突破したアゼルバイジャンの選手はいなかったが、グリエフは1次予選を21秒12(+0.2)の組2着で突破してアゼルバイジャン初の予選突破者となると、2次予選を20秒40(-0.3)の組2着、準決勝を20秒28(+0.3)の組4着で突破し、アゼルバイジャン初のファイナリストとなった。決勝では2次予選や準決勝よりもタイムを落として20秒61(-0.3)の7位に終わった[5]

2015年

編集

8月の北京世界選手権男子200m予選で20秒01(-0.3)のトルコ記録(当時)を樹立し、自身の持つトルコ記録を0秒20更新するとともに、6年ぶりに自己ベストを0秒03更新した。予選を全体トップのタイムで突破すると、準決勝は20秒10(+0.8)で組3着に入り、着順ではなくタイムで拾われて決勝に進出。決勝ではタイムを落とし20秒11(-0.1)の6位に終わったが、2009年ベルリン大会の7位を上回る最高成績となった[6]

9月8日のワールドチャレンジ・ザグレブ大会 (Hanžeković Memorial男子200mで19秒88(-0.4)のトルコ記録を樹立。従来の自己ベストおよびトルコ記録である20秒01を塗り替えて19秒台に突入し、ヨーロッパ歴代6位に名を連ねた[7][8]

2016年

編集

7月のアムステルダムヨーロッパ選手権に出場すると、男子100m準決勝で10秒07(+1.5)をマークし、自己ベストを7年ぶりに0秒01更新して決勝に進出したが、決勝はタイムを落として10秒23(0.0)の6位に終わった。200mでも決勝に進出すると、惜しくも金メダルには0秒06届かなかったが、20秒51(-0.9)の2位で銀メダルを獲得した[9]

8月のリオデジャネイロオリンピックに出場すると、男子200m予選で20秒23(+0.3)、準決勝で20秒09(-0.3)と、両ラウンドでシーズンベストをマークし、タイムで拾われて決勝に進出した。オリンピックの200mでは男女通じてトルコ勢初の決勝となったが、20秒43(-0.5)とタイムを落として8位に終わった[10]。男子4×100mリレーでは予選でアンカーを務め、38秒30のトルコ記録を樹立したものの決勝には進めなかった[11]

2017年

編集

5月のイスラム諸国連帯競技大会 (enに出場すると、男子100m決勝を10秒06(+0.6)の自己ベスト(当時)[12]、男子200m決勝を20秒08(+0.6)でそれぞれ制したが[13]、トルコチームのアンカーを務めた男子4×100mリレー決勝は39秒56で2位に終わり(1位と0秒01差)、生まれ育ったアゼルバイジャンバクーで開催された大会で惜しくも3冠は逃した。

6月13日のワールドチャレンジ・パーヴォ・ヌルミ・ゲームズ (en男子100m決勝で10秒02(+1.5)の自己ベスト(当時)をマーク[14]。約1か月前にマークした自己ベストを0秒04更新し、9秒台に0秒03と迫った。

7月6日のトルコスーパーリーグ(Turkish Super League)男子100mで9秒97(+1.5)の自己ベストをマークし、初めて10秒の壁を破った。これにより、100mの10秒の壁と200mの20秒の壁を破ったヨーロッパ史上6人目の選手となった[15][16]

8月のロンドン世界選手権男子200mでは2大会連続で決勝に進出すると、決勝では男子400mとの2冠がかかっていたウェイド・バンニーキルクをフィニッシュ直前でかわし(0秒02差)、20秒09(-0.1)で優勝を飾った[17]。これは世界選手権の全ての種目を通じてトルコが獲得した初の金メダルであり、トルコの男子選手が獲得した初のメダルという快挙だった[18]。男子4×100mリレーではアンカーを務め、予選をトルコ記録(38秒30)に迫る38秒44で突破したが、決勝は38秒73とタイムを落とし7位に終わった[19]

自己ベスト

編集

記録欄の( )内の数字は風速m/s)で、+は追い風、-は向かい風を意味する。

種目 記録 年月日 場所 備考
屋外
100m 9秒97 (+1.5) 2017年7月6日   ブルサ トルコ歴代2位
200m 19秒76 (+0.7) 2018年8月9日   ベルリン ヨーロッパ歴代2位
トルコ記録
室内
60m 6秒58 2012年1月13日   スームィ
200m 21秒05 2012年2月14日   リエヴァン

アゼルバイジャン記録

編集
種目 記録 年月日 場所
屋外
100m 10秒08 (+1.3) 2009年6月13日   イスタンブール
200m 20秒04 (+0.1) 2009年7月10日   ベオグラード
室内
200m 21秒51 2009年2月4日   タリン
300m 33秒62 2009年2月1日   モスクワ

主要大会成績

編集

備考欄の記録は当時のもの

大会 場所 種目 結果 記録 備考
  アゼルバイジャン
2006 世界ジュニア選手権   北京 100m 予選 10秒91 (+0.6) ジュニアアゼルバイジャン記録
2007 世界ユース選手権 (en   オストラヴァ 200m 2位 20秒72 (-0.2)
ヨーロッパ
ユースオリンピック
フェスティバル
 (en
  ベオグラード 100m 優勝 10秒50 (+2.3)
200m 優勝 20秒98 (+0.1)
2008 世界室内選手権   バレンシア 60m 予選 6秒84
世界ジュニア選手権   ブィドゴシュチュ 200m 5位 21秒00 (-0.9)
オリンピック   北京 200m 2次予選 20秒66 (+0.3)
2009 ヨーロッパ室内選手権 (en   トリノ 60m 7位 6秒67
ヨーロッパジュニア選手権 (en   ノヴィ・サド 100m 2位 10秒16 (+0.2)
200m 優勝 20秒33 (-0.1) 大会記録
ユニバーシアード (en   ベオグラード 200m 優勝 20秒04 (+0.1) アゼルバイジャン記録
ジュニアヨーロッパ記録
世界選手権   ベルリン 200m 7位 20秒61 (-0.3)
  トルコ
2013 地中海競技大会 (en   メルスィン 100m 2位 10秒23 (+0.2) トルコ記録
200m 2位 20秒46 (-0.7) トルコ記録
2014 バルカン選手権 (en   ピテシュティ 100m 優勝 10秒24 (+1.4)
200m 優勝 21秒04 (-3.0)
ヨーロッパ選手権   チューリッヒ 100m 予選 DQ 不正スタート
200m 6位 20秒48 (-1.6) 準決勝20秒38 (-0.4):トルコ記録
4x100mR 予選 39秒83 (4走)
2015 世界リレー (en   ナッソー 4x200mR 予選 1分23秒55 (2走) トルコ記録
ユニバーシアード (en   光州 100m 3位 10秒16 (0.0)
200m 3位 20秒59 (-2.5)
バルカン選手権   ピテシュティ 200m 優勝 20秒59 (-2.4)
4x100mR 優勝 39秒35 (2走)
世界選手権   北京 200m 6位 20秒11 (-0.1) 予選20秒01 (-0.3):自己ベスト・トルコ記録
2016 バルカン選手権   ピテシュティ 100m 優勝 10秒30 (-1.1)
200m 優勝 20秒98 (-2.7)
ヨーロッパ選手権   アムステルダム 100m 6位 10秒23 (0.0) 準決勝10秒07 (+1.5):自己ベスト
200m 2位 20秒51 (-0.9)
4x100mR 予選 39秒58 (4走)
オリンピック   リオデジャネイロ 200m 8位 20秒43 (-0.5)
4x100mR 予選 38秒30 (4走) トルコ記録
2017 イスラム諸国連帯
競技大会 (en
  バクー 100m 優勝 10秒06 (+0.6) 自己ベスト
200m 優勝 20秒08 (+0.6)
4x100mR 2位 39秒56 (4走)
世界選手権   ロンドン 200m 優勝 20秒09 (-0.1) 全ての種目を通じトルコ初の金メダル
4x100mR 7位 38秒73 (4走)
2018 ヨーロッパ選手権   ベルリン 200m 優勝 19秒76 (+0.7) 自己ベスト・トルコ記録
4x100mR 2位 37秒98 トルコ記録
IAAFコンチネンタルカップ   オストラヴァ 200m 2位 20秒28 (-1.6)
4x100mR 2位 38秒96 (4走)

ダイヤモンドリーグ

編集

ダイヤモンドリーグの総合成績を記載。獲得ポイント欄の( )内は出場したポイント対象レースの数を意味する。

種目 総合順位 獲得ポイント
2016 200m 6位 6 (2レース)

優勝したダイヤモンドリーグ個人種目の成績を記載。金色の背景はポイント対象レースを意味する。

大会 場所 種目 記録 備考
2017 ミーティング・ド・パリ   パリ 200m 20秒15 (-0.5)
バーミンガムグランプリ   バーミンガム 200m 20秒17 (-0.1)
2018 ビスレットゲームズ   オスロ 200m 19秒90 (+1.0)
バーミンガムグランプリ   ストックホルム 200m 19秒92 (+0.9)

脚注

編集
  1. ^ 男子200mジュニア世界歴代ランキング”. 国際陸上競技連盟. 2014年12月31日閲覧。
  2. ^ 伏兵グリエフ新王者に=男子200-世界陸上”. 時事通信社 (2017年8月11日). 2017年8月13日閲覧。
  3. ^ Men's 200m biographies ヨーロッパ陸上競技連盟 (PDF, 216 KB) 2014年12月31日閲覧
  4. ^ World Champion Heidler hammers 75.83m, as Games' records highlight World University Games - Day 4”. 国際陸上競技連盟 (2009年7月11日). 2016年3月7日閲覧。
  5. ^ 第12回世界選手権男子200m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟. 2016年3月7日閲覧。
  6. ^ 第15回世界選手権男子200m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟. 2016年3月7日閲覧。
  7. ^ Perkovic banishes her Beijing blues with meeting record in Zagreb”. 国際陸上競技連盟 (2015年9月8日). 2015年9月9日閲覧。
  8. ^ Guliyev is sixth best European”. ヨーロッパ陸上競技連盟 (2015年9月10日). 2016年3月7日閲覧。
  9. ^ Schippers wins second European 100m gold in Amsterdam”. 国際陸上競技連盟 (2016年7月8日). 2016年7月11日閲覧。
  10. ^ 第31回オリンピック男子200m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2016年8月18日). 2016年8月19日閲覧。
  11. ^ 第31回オリンピック男子4×100mリレー予選リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2016年8月18日). 2016年8月19日閲覧。
  12. ^ Guliev and Bass sprint to gold”. 2017年イスラム諸国連帯競技大会・公式サイト (2017年5月16日). 2017年5月18日閲覧。
  13. ^ Guliev secures impressive sprint double”. 2017年イスラム諸国連帯競技大会・公式サイト (2017年5月18日). 2017年5月20日閲覧。
  14. ^ パーヴォ・ヌルミ・ゲームズ男子100m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2017年6月13日). 2017年6月14日閲覧。
  15. ^ Guliyev joins exclusive club with 9.97 clocking”. ヨーロッパ陸上競技連盟 (2017年7月7日). 2017年7月8日閲覧。
  16. ^ Ramil Guliyev tarihe adını yazdırdı”. トルコ陸上競技連盟 (2017年7月7日). 2017年7月8日閲覧。
  17. ^ 2017年世界選手権男子200m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2017年8月11日). 2017年8月11日閲覧。
  18. ^ グリエフが男子200mで金、バンニーキルクの2冠阻む 世界陸上”. フランス通信社 (2017年8月11日). 2017年8月11日閲覧。
  19. ^ 2017年世界選手権男子4×100mリレー決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2017年8月13日). 2017年8月13日閲覧。

外部リンク

編集