レベル表現
物理量に対するレベル表現(レベルひょうげん、英語: level)とは、基準となる量との比の対数で表す指標である[疑問点 ]。単位はデシベル(記号: dB)がよく用いられる。
レベル level | |
---|---|
量記号 | |
次元 | 無次元量 |
種類 | スカラー |
SI単位 | 併用単位 ベル(B)、ネーパ(Np) |
レベル表現が必要とされる場面は数十桁という範囲でかけ離れた物理量を扱うときである。通常の単に単位量の何倍かだけで表す方法では非常に大きな(あるいは小さな)数を扱うことになり、非常に扱いづらい。しかし対数を取ることで扱いやすい(たかだか2~3桁の)数となる。
レベル表現は一つの表現形式であり、(物理量の大きさ については)物理量の単位での表現と同一の情報を持つ(ただし厳密な0は表現できない)。 分野によっては、もっぱらレベル表現が使用される。
定義編集
物理量 A の基準量 A0 に対するレベル L は次のように定義される。
基準量 A0 は A と同種の量で同じ次元をもつ。従って、対数の中の比 A/A0 は無次元の量となり、冪級数として解析的に定義される対数関数との次元は整合している。 国際量体系においては係数 c に次元が与えられていないので、レベル L も無次元量である。
係数 c のベル(記号: B)、デシベル(記号: dB)及びネーパ(記号: Np)に対する値は
である。係数 c は対数の底を取り換える働きをして
となる。つまりベルなら底が10の常用対数、ネーパは底がeの自然対数で表した値である。デシベルで表した数値はベルで表した数値を10倍すれば得られるが、101/10 ≒ 1.259 が底と考えることもできる。
各分野において基準量 A0 には標準的な設定がされている。また A や A0 には任意の物理量を選ぶことができる[疑問点 ]が、(変位でなく)エネルギー的な量を選ぶことが標準であり、音圧など変位的な量には (a/a0)2 と二乗する。 A は一定時間に亘る実効値(エネルギー的平均値)であることが多いが、瞬時値であっても同様にレベルを定義できる。
性質編集
基準量とレベルシフト編集
商の対数は対数の差に等しい( )ので、基準量 A0 の変更はレベル L のシフトすなわち零点の変更に相当する。
基準量とレベル差編集
同じ基準量を持つレベル L1 と L2 の差は次の式で求められる。
ゆえにレベル差は基準量に依らず一定である。基準量の変更はレベルのシフトにあたるため、2つのレベルが同量シフトされても差が変わらない(=基準量に依らない)とも説明できる。
例えば のとき で差は20dBであり、 に変更しても となり差は20dBで一定になっている。
この性質は対数の差は商の対数に等しい性質からも直接求められる(基準値を基準値で割る計算が商の中に現れる)。
特殊な単位編集
dBなど物理量を問わず使えるレベル表現の単位を使うほか、特定の物理量に対しレベル表現をする指標がある。身近な表現としては「桁」があり、巨大な数を簡潔に表せる点など本質的にレベル表現と同じである。
これらは定数倍することでデシベルやネーパに換算できる(デシベルなどを使うのは慣習に反するが)。なお、底が1より小さい場合、指標が大きいほど実際の物理量は小さくなる。
Aの物理量 | 指標 | 底 |
---|---|---|
任意 | 桁 | 10 |
水素イオン濃度 | 水素イオン指数 (pH) | 1 / 10 |
地震のモーメント | マグニチュード (M) | 101.5 ≒ 31.623 |
天体の光度 | 等級 | 10−0.4 ≒ 1 / 2.512 |
周波数 | ディケード | 10 |
音の周波数 | オクターブ | 2 |
音の周波数 | 半音 | 21/12 ≒ 1.059 |