ローランド(Roland)[1]は、ドイツ(当時は西ドイツ)とフランスによって共同開発された短距離防空ミサイル・システム、およびこれで使用されるミサイル弾体である。

ローランド
初期型のXMIM-115A
種類 短距離防空ミサイル
(SHORADミサイル/短SAM)
製造国 西ドイツの旗 西ドイツドイツの旗 ドイツ
フランスの旗 フランス
製造 EADS
性能諸元
ミサイル直径 16cm
ミサイル全長 2.40m
ミサイル重量 67kg
弾頭 HE破片効果(9.1kg)
射程 8,500メートル
射高 6,000メートル
推進方式 二段式固体ロケット・モーター
誘導方式 半自動指令照準線一致誘導方式(SACLOS)
飛翔速度 620メートル毎秒
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概要 編集

本システムは、フランスアエロスパシアル社とドイツメッサーシュミット・ベルコウ・ブローム[2]1964年から共同開発を始めた野戦機動が可能な対空ミサイルシステムで、両社の合弁会社であるユーロミサイル社の製品である。1977年には最初のシステムがフランス陸軍で運用を始めた。

システムは、砲塔型の発射機を中心にコンパクトにまとめられており、搭載する車両をある程度自由に選ぶことができる。

ローランド対空ミサイルシステムは、全世界で650基を越える発射機が販売されており、フォークランド紛争アルゼンチン軍)、湾岸戦争イラク軍)での実戦使用例がある。

構成 編集

誘導システムを備えた旋回式砲塔の両脇に俯仰可能なミサイルランチャーを一基ずつ備えている。ミサイルは保管・運搬可能なキャニスターに装填されたままランチャーに装填され発射される。発射後はキャニスターが自動的に投棄され、車体の弾倉から新しいミサイルを納めたキャニスターがせりあがり、ランチャーが回転して自動的にキャニスターを拾い上げてミサイルを装填する。

6.5キログラムの高性能爆薬弾頭を備えたミサイルは、固体燃料を用いた二段式ロケットでM1.6まで加速され、射程500メートル以上、6,300メートル以下の高度3,000メートルまでの目標を攻撃することができる。目標へは指令照準線一致(Command to Line Of Sight、CLOS)にて誘導される。

基本的には発射機単独で運用が可能で、発射機車両のみで1システムが構成されるが、レーダーによる追跡・誘導システムに対応したローランドII以降はレーダーと射撃管制装置を単独で車両に搭載した捜索管制システム(ローランドFGR:Flugabwehrgefechtsstand Roland)と複数の発射機車両で構成されるタイプのシステムも用意されている。

各型 編集

ローランドは、いくつかのバージョンが製造されている。

ローランドI
手動による光学追跡・誘導システムを備える昼間迎撃型。1977年より実戦配備された。
ローランドII
レーダーによる全自動追跡・誘導システムを備える全天候迎撃型。1981年より配備された。
ローランドIII
より強力(9.1キログラム)な弾頭と熱線映像シーカーを備える射程延長型(8km)。1988年より配備。
ローランドVT1(RM5)
ユーロミサイル社とフランスのマトラ社[3]、トムソンCSF社(現在のタレス社)が共同で1990年から開発している速度M5の超高速ミサイル。クロタル・システムと共通のVT1 ミサイルを使用する。

現行システムではローランド2、ローランド3、ローランドVT1ミサイルを発射することができる。

US ローランド(XMIM-115A)
ボーイング社とヒューズ社が独自に赤外線/SARH方式に改良したアメリカ陸軍向け型。1979年より少数が生産・配備された。

搭載車両 編集

ローランド対空ミサイルシステムは、以下に示す様々なプラットフォーム上に装備されている。

装軌車
装輪車
  • ACMAT 6x6
  • MAN 6x6, 8x8

この他、"CAROL"(Cabine aérotransportable Roland)と命名された空輸可能なシェルターが1995年に開発されている。CAROLは、7.8トンコンテナにローランドの砲塔を装備した地上に固定配備する拠点防空兵器で、空港、物資集積所のような重要拠点を防衛するために地上に配備することができ、トラック輸送することができる。

配備 編集

ローランド対空ミサイルシステムは、現在、フランスアルゼンチンブラジルナイジェリアカタールスロベニア(9x Roland II)、スペインベネズエラで運用されている。共同開発国の一方であるドイツではローランド対空ミサイルシステムはすでに運用されていない。

アメリカにおけるローランド 編集

ローランドは、アメリカ陸軍によって調達された数少ない外国製対空ミサイルシステムのひとつである。

アメリカ軍は、1974年にローランドIIの導入を決定、ボーイング社とヒューズ社がライセンスを購入、独自に光学/SARH方式を赤外線/SARH方式に改良したものをXMIM-115Aとして1978年に採用した。当初はM109自走砲の車体にシステムを搭載したものがXM975として開発・採用された。しかし、照準/誘導方式の変更により開発費用が予定額を大幅に超過したために計画は見直され、議会が本格導入のための予算案を承認しなかったため、本格運用に入る前に計画は中止された。

結果、既に発注された先行量産分、発射機27基およびミサイル575発のみが搭載車台をM812A1トラックに変更されて納入され、ニューメキシコ州州兵部隊に1個防空大隊が編成されたのみに終わった。1989年には予備兵器に指定されて部隊も改編され、アメリカにおけるローランドの運用は終了した。

登場作品 編集

FUTURE WAR 198X年
マルダー歩兵戦闘車に搭載されたモデルが登場する。

脚注 編集

  1. ^ いずれも綴りは同じだが、英語読みでは"ローランド"、ドイツ語読みでは"ローラント"、フランス語読みでは"ロラン"となる
  2. ^ 現在は両者ともにEADS社として合併
  3. ^ 現在は1998年にアエロスパシアル社と合併してアエロスパシアル・マトラ社となっている

関連項目 編集