数学において、三次曲線(さんじきょくせん、:cubic plane curve)とは以下のような三次方程式によって定義される代数曲線である。

三次曲線の種類

ここで射影平面上の斉次座標、またはアフィン空間の非斉次座標でz = 1とした座標で、Fは三次の斉次多項式、すなわち以下のような0でない三次単項式の線形結合とする。

これら10個の項から成ることより、三次曲線は任意の可換体K 上で9次元の射影空間を成す。また三次曲線Cを満たす1点Pは1つの線形条件を課す。したがって9つの点を通る三次曲線はただ一つに決定される。 5つの点で決定する円錐曲線と比較してみると、2つの三次曲線が9つの点を通るならば、それらはを成し、さらなる性質を持つこととなる(英語版:Cayley–Bacharach theorem)。

特異的な三次曲線 y2 = x2 ⋅ (x + 1). 媒介変数表示 t ↦ (t2 – 1, t ⋅ (t2 – 1)).

三次曲線には特異点を持つものもあり、射影直線におけるパラメトリック方程式となる。一方、 特異点を持たない三次曲線は複素数のような代数的閉体上に9つの変曲点を持つ[1]。これは、三次曲線を再定義するヘッセ行列の同次座標をCと交差させることにより示すことができる(ベズーの定理)。しかし、これらの点のうちは実射影平面上にあるのは3点だけであり[2]、他の点は実射影平面上で曲線を描いても見ることはできない。特異点を持たない三次曲線の9つの変曲点は、そのうちの2つを通るすべての直線がちょうど3つの変曲点を含むという性質を持っている。

実射影平面上にある変曲点はニュートンによって研究され、非特異な三次曲線の実点が1つか2つの「オーバル」を通ることが発見された。 これらのオーバルのうちの1つは、すべて射影直線を横切るので、ユークリッド平面に描いたときには見ることができず、3つの実変曲点を含む、1本または3本の無限の分岐として現れる。もう1つのオーバルは、存在するとしても、変曲点を含まず、オーバルか2つの無限の分岐のように見える。 円錐曲線の断面の様に直線はオーバルを最大2点で切断する。

非特異な三次曲線はK上の楕円曲線でもある。楕円曲線は普通、ワイエルシュトラスの楕円関数を変形したもので研究されており、三次関数の平方根で作られた有理関数上で定義されている。これはワイエルシュトラス標準形の無限遠点としてはたらくK-有理点に依存する。K有理数体のとき多くの三次曲線はそのような点を持たない。

尖点二重点など、特異的な三次曲線の特異点は限られている。 そのような3次曲線は、2次曲線と直線、または3つの直線に退化する。したがって2次曲線と直線の場合は、2つのニ重点または 二重尖点(en)、3つの直線の場合はまたは3つのニ重点か1つの三重点(共点)を持つ。

三角形の三次曲線 編集

ABCの辺について       とする。ABCの有名な三次曲線は様々な三角形の中心を通る。以下は斉次座標である三線座標と重心座標を用いる。

三線座標から重心座標への変換は以下の様に行われれる。

 

重心座標から三線座標への変換は以下の様に行われれる。

 

三次曲線の多くは以下の形式で表される。

 

この式は下記のような上の式を略した表記を用いることもある。

 .

またX等角共役点(en)をX*, とする。このとき三線座標において   ならば  が成り立つ。

ノイベルグ三次曲線 編集

詳しくは「ノイベルグ三次曲線」を参照

 
ABCのノイベルグ三次曲線 Xを辺BC, CA, ABで鏡映した点をXA, XB, XCとしAXA, BXB, CXCが一点で交わるようなXの軌跡である。

三線座標:  

重心座標:  

ノイベルグ三次曲線X*が直線EX上(Eはオイラー無限遠点X(30),オイラー線方向の無限遠点)にあるような点Xの軌跡、つまりXX*がオイラー線と平行になるような点の軌跡である。Xを辺BC, CA, ABで鏡映した点をXA, XB, XCとし、XAXBXCABC配景的(en)なXの軌跡とも定義される。

ノイベルグ三次曲線は頂点、内心と傍心外心垂心フェルマー点等力点、オイラー無限遠点などを通る。

Berhard GibertのCubics in the Triangle PlaneではK001と登録されている。

トムソン三次曲線 編集

詳しくは「トムソン三次曲線」を参照

 
トムソン三次曲線(黒い線)トムソン三次曲線上のX ,X*,X(2)(重心)は共線である。

三線座標:  

重心座標:  

トムソン三次曲線はX*が直線GX(G重心)上にあるような点Xの軌跡である。

トムソン三次曲線は頂点、内心と傍心、重心、外心、垂心、類似重心、辺の中点などを通る。

Berhard GibertのCubics in the Triangle PlaneではK002 として登録されている。

ダルブー三次曲線 編集

 
ダルブー三次曲線、 XBC, CA, ABに対する垂足三角形が元の三角形と配景的であるようなXの軌跡

三線座標: 

重心座標:  

ダルブー三次曲線はX*が直線LX上(Lド・ロンシャン点)にあるような点Xの軌跡である。ダルブー三次曲線上のX垂足三角形チェバ三角形で、チェバ三角形の元の点はルーカス三次曲線を成す。また、X の垂足三角形はXの反チェバ三角形と配景的で、その配景の中心はトムソン三次曲線を成す。

ダルブー三次曲線は頂点、内心と傍心、外心、垂心、ドロンシャン点、頂点の外接円に対する対蹠点などを通る。

Berhard GibertのCubics in the Triangle Planeでは K004 として登録されている。

ナポレオン-フォイエルバッハ三次曲線 編集

三線座標:  

重心座標:  

ナポレオン-フォイエルバッハ三次曲線はX*が直線NX 上(N = X(5),九点円の中心)にある点Xの軌跡である。

ナポレオン-フォイエルバッハ三次曲線は頂点、内心と傍心、外心、垂心、ナポレオン点などを通る。

Berhard GibertのCubics in the Triangle Planeでは K005 として登録されている。

ルーカス三次曲線 編集

 
ルーカス三次曲線 、 Xののチェバ三角形 がダルブー三次曲線上の点の垂足三角形となるような点Xの軌跡。

三線座標:  

重心座標:  

ルーカス三次曲線はX のチェバ三角形がダルブ―三次曲線上の点の垂足三角形となるような点Xの軌跡である。

ルーカス三次曲線は頂点、反中点三角形の頂点、シュタイナー外接楕円の焦点、重心、垂心、ジェルゴンヌ点ナーゲル点、ド・ロンシャン点 などを通る。

Berhard GibertのCubics in the Triangle PlaneではK007 として登録されている。

第一ブロカール三次曲線 編集

 
第一ブロカール三次曲線、第一ブロカール三角形A'B'C' とし、XA', XB', XC'BC, CA, CB,のそれぞれの交点が共線であるような点Xの軌跡。

三線座標: 

重心座標:  

A'B'C' を第一ブロカール三角形XA, XB, XC.をそれぞれXA′, XB′, XC′BC, CA, AB,の交点とする。このときXA, XB, XCが共線となるような点Xの軌跡を第一ブロカール三次曲線と言う。

第一ブロカール三次曲線は頂点、第一,第三ブロカール点の頂点、重心、類似重心、シュタイナー点などを通る。

Berhard GibertのCubics in the Triangle Planeでは K017として登録されている。

第二ブロカール三次曲線 編集

三線座標:  

重心座標:  

第二ブロカール三次曲線は直線XX*の、X,X*を通る外接円錐曲線に対する極がブロカール軸上にあるような点Xの軌跡である。頂点、重心、類似重心、フェルマー点、等力点、パリー点、第二,第四ブロカール三角形の頂点を通る。

Berhard GibertのCubics in the Triangle Planeでは K018として登録されている。

第一等積三次曲線 編集

 
第一等積三次曲線:X のチェバ三角形とX*のチェバ三角形の面積が等しくなるような点Xの軌跡。

三線座標:  

重心座標:  

第一等積三次曲線はX のチェバ三角形とX*のチェバ三角形の面積が等しくなるような点Xの軌跡である。X*が直線S*X 上(S = X(99),シュタイナー点)にあるような点Xの軌跡とも定義される。

第一等積三次曲線は内心と傍心、シュタイナー点 、第一,第二ブロカール点を通る。

Berhard GibertのCubics in the Triangle Planeでは K021として登録されている。

第ニ等積三次曲線 編集

三線座標:  

重心座標: 

第ニ等積三次曲線は三線座標で   ,  ,   とし、XYXZのチェバ三角形の面積が等しくなるような点Xの軌跡である。

第ニ等積三次曲線は内心、重心、類似重心 X(31), X(105), X(238), X(292), X(365), X(672), X(1453), X(1931), X(2053)などを通る

Berhard GibertのCubics in the Triangle Planeでは K155として登録されている。

注釈 編集

  1. ^ Bix 2006, p. 228, Exercise 12.24.
  2. ^ Bix 2006, p. 224, Exercise 12.8.

関連 編集

参考文献 編集

  • Bix, Robert (2006), Conics and Cubics: A Concrete Introduction to Algebraic Curves (Second ed.), New York: Springer, ISBN 978-0387-31802-8, MR2242725, Zbl 1106.14014 .
  • Cerin, Zvonko (1998), “Locus properties of the Neuberg cubic”, Journal of Geometry 63 (1–2): 39–56, doi:10.1007/BF01221237 .
  • Cerin, Zvonko (1999), “On the cubic of Napoleon”, Journal of Geometry 66 (1–2): 55–71, doi:10.1007/BF01225672 .
  • Cundy, H. M. & Parry, Cyril F. (1995), “Some cubic curves associated with a triangle”, Journal of Geometry 53 (1–2): 41–66, doi:10.1007/BF01224039 .
  • Cundy, H. M. & Parry, Cyril F. (1999), “Geometrical properties of some Euler and circular cubics (part 1)”, Journal of Geometry 66 (1–2): 72–103, doi:10.1007/BF01225673 .
  • Cundy, H. M. & Parry, Cyril F. (2000), “Geometrical properties of some Euler and circular cubics (part 2)”, Journal of Geometry 68 (1–2): 58–75, doi:10.1007/BF01221061 .
  • Ehrmann, Jean-Pierre & Gibert, Bernard (2001), “A Morley configuration”, Forum Geometricorum 1: 51–58 .
  • Ehrmann, Jean-Pierre & Gibert, Bernard (2001), “The Simson cubic”, Forum Geometricorum 1: 107–114 .
  • Gibert, Bernard (2003), “Orthocorrespondence and orthopivotal cubics”, Forum Geometricorum 3: 1–27 .
  • Kimberling, Clark (1998), “Triangle Centers and Central Triangles”, Congressus Numerantium 129: 1–295 . See Chapter 8 for cubics.
  • Kimberling, Clark (2001), “Cubics associated with triangles of equal areas”, Forum Geometricorum 1: 161–171, https://www.researchgate.net/publication/241067469 .
  • Lang, Fred (2002), “Geometry and group structures of some cubics”, Forum Geometricorum 2: 135–146 .
  • Pinkernell, Guido M. (1996), “Cubic curves in the triangle plane”, Journal of Geometry 55 (1–2): 142–161, doi:10.1007/BF01223040 .
  • Salmon, George (1879), Higher Plane Curves (3rd ed.), Dublin: Hodges, Foster, and Figgis, https://books.google.com/books?id=pYGj2xY5Le4C .

外部リンク 編集