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光波ホーミング誘導

本項では、光波を媒体としたホーミング誘導について述べる[1]

目標から返ってくる光波をシーカーで検知し、その方向に操舵することで、目標を捉える方式である。操舵においては、ほとんどが比例航法(PN)あるいは増強比例航法(APN)を採用している。

電磁波のなかでも、光波は電波(特にマイクロ波)と比して、より小さな装置で運用できる一方、周波数としての特性上から大気圏内の透過性が低く、従って目標を探知できる距離がより短いという欠点がある。このことから、光波ホーミング誘導方式の兵器は、電波ホーミング誘導よりも短い射程で、より軽便なものとして運用される傾向にある。また検知が困難という特性もあり、短距離での交戦には有効でアメリカ軍の過去25年間の被撃墜の90%は赤外線誘導ミサイルによる撃墜とされる[2]

目次

パッシブ方式編集

赤外線誘導編集

K-13空対空ミサイルのシーカー部。第1世代のIRH誘導システムである。
IRIS-T空対空ミサイルのシーカー部。第4世代のIRH誘導システムである。

赤外線誘導英語: Infrared homing guidance, IRH誘導)は、目標が発する赤外線(InfraRed, IR)を赤外線センサによって捉え、目標を追尾して命中させる誘導方式[3]

発射後の誘導プロセスがミサイル内で完結するためにファイア・アンド・フォーゲット能力を備えており、誘導装置が比較的小型・軽量であることからミサイルの小型化も可能で、誘導プロセスが簡略であるため母機のレーダーが貧弱でも問題なかった。目標が大きな熱源となるエンジンを持つ対空ミサイルで主用されている。また、検知波長の変化や誘導システムの進歩に伴い、対艦ミサイル対戦車ミサイルへの採用例も出始めている[1]

赤外線は、周波数の特性上、電波よりも大気圏内での透過性が低い。このことから、旧西側諸国においては、視程外射程のAAMにはレーダー誘導を、視程内射程のミサイルにはIRH誘導を採用していることが多い。一方、旧東側諸国においては、標的の回避を困難にして命中確率を向上させるために、レーダー誘導と赤外線誘導の2種のミサイルを同時に発射する戦法をとることから、視程外射程のAAMにもIRH誘導を採用している場合がある[4]

目標の特性編集

黒体からの輻射のピークの波長が温度に反比例するという法則(ウィーンの変位則)があることから、目標から放射される赤外線の周波数は、その温度に規定される[5]

車両艦艇
数度程度高い車体/船体と、やや高温の機関部から構成されており、約10µmをピークとする放射がある。アスペクト角によって放射強度が大きく変化するほか、特に長距離での捕捉においては地球の曲率の影響を強く受ける[1]
背景は地表、海面等から構成されており、コントラストが比較的小さく、クラッターの影響が大きい[1]
航空機巡航ミサイル
航空機では、多くの場合、機体の後部において高温のジェットエンジンやその排気による放射が、また前縁を中心に機体全体において空力加熱(空気に機体がぶつかることで断熱圧縮される)による放射がある。
  • 排気によるもの: 機体後部の排気口の3マイクロメートル(µm)程度をピークとして、後方に排出されるジェット排気(プルーム)においては、加熱された二酸化炭素ガスを中心として、5µm程度までの赤外線が放射される。
  • 空力加熱によるもの: ほぼ10µm帯(波長8〜12µm)に相当する。
背景は空や雲、地平線/水平線などにより構成されており、比較的大きなコントラストがある。
弾道ミサイル
大気圏再突入時、再突入体は極超音速(IRBMでも秒速2km程度、ICBMであれば秒速約7km程度)となることから、空力加熱により数千度以上に加熱され、短い波長の放射を多く出す。

世代ごとの特性編集

IRH誘導システムは、技術進歩に伴い、下記のように発展してきた。

第1世代
もっとも初期のIRH誘導システムは、硫化鉛(PbS)焦電素子による、非冷却型の赤外線センサを採用していた。検知波長はおおむね1〜3マイクロメートル(µm)の近・短波長赤外(N/SWIR)帯域であり、これは、ジェット排気口の赤外線放射帯域におおむね相当する。このため、第1世代IRH誘導システムは空対空射撃時、それもジェット排気口そのものを視界に捉えることができる後方象限からしか目標を捕捉することができなかった。また、その捕捉は非常に不安定なものであり、目標が機動していた場合、比較的容易に捕捉が解除されてしまった。
このため、後には、熱雑音を低減して感度を向上させるため、センサーを冷却する措置が導入されるようになった。ただしそれでも、攻撃のためには後方象限に位置している必要があった[5]。冷却システムとしては、小型ミサイルではジュール=トムソン効果を利用したものが主流だが、大型ミサイルでは冷媒を循環させるクローズドサイクル式が採用されることもある[1]
第2世代
硫化鉛(PbS)焦電素子に続いて実用化されたのが、アンチモンインジウム(InSb)やセレン化鉛フォトダイオードなどを受光素子とした量子型(冷却型)赤外線センサであった。この赤外線センサは、PbSによるものより波長が長い中波長赤外(MWIR)帯域を検知することができた[1][5]
これによって、排気口そのものではなく、ここから排出されたプルームの探知が可能となった。プルームへの探知はアスペクト依存性が大きいとはいえ、機体のほぼ全周に渡って捕捉でき、全方位交戦能力を実現できた[5]。また、フレアへの耐性も優れていた[1]
また続いて実用化されたテルル化カドミウム水銀(HgCdTe)を用いた赤外線センサであれば、中波長赤外線に加えて、長波長赤外線にも対応できた。この2波長センサは空気力学的に加熱された航空機外板や常温の目標を追尾できたほか、赤外線妨害技術への抗堪性向上(IRCCM能力の増強)効果もあった[5]
第3世代
1980年代より、集積回路マイクロプロセッサの技術進歩による赤外線センサの多素子化によって、赤外線画像(Imaging InfraRed, IIR)誘導システムが出現しはじめた。画像認識技術の導入により、IRCCM能力は飛躍的に向上し、誘導精度も向上した。また上記の通り、常温目標にも対応できる赤外線センサが登場したこともあり、対空以外にも、対艦・対地・対戦車などへの応用も広がった[1]
この時期には、オフボアサイト射撃能力も重視されるようになった。オフボアサイトとは正面から大きく逸れた位置に存在する敵性機に対し、照準もしくは攻撃を行う事で、ミサイルシーカー探知角度の拡大や中間誘導の導入による発射後に目標を捕捉する(LOAL)の実現によりこれを可能とした。オフボアサイト射撃能力を十分に発揮するためには、機体側にヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装備するなど、アビオニクスの変更が必要となる。

画像誘導編集

画像英語: electro-optical, TV)誘導とは、ミサイル先端に搭載されたビデオカメラで終末誘導を行う誘導方式である。

画像誘導は、

  • 命中精度がCEP3~6mと高い
  • GPSと違って移動目標にも使える
  • レーザー誘導と違って母機は発射後に現場を離脱できる
  • 対艦・対地の2つの場面で使用できる
  • 命中の瞬間を画像で確認できるので戦果確認の手間を省ける
  • レーダー誘導よりも電波妨害に強い

などの長所を持つ。一方で、

  • GPSと違いロックに手数がかかり多数の同時発射に向かない
  • GPS・レーザー誘導より高価である
  • 視野が狭くレーダー式より中間誘導に精度が求められる
  • 超音速ミサイルには使いにくい

などの短所を持つ。

また可視光・赤外線のいずれであれ、画像認識誘導では、単に目標に命中させるというだけでなく、着弾位置の指定が可能となりうるというメリットがある。これは、例えば対艦攻撃に使用した場合は敵艦の舵機室などを攻撃したり、航空阻止攻撃においては橋の任意の場所を爆破することにより、効果的に無力化しうるということを意味する。

AGM-62 ウォールアイのような初期の機種は、センサーこそ可視光画像方式であったとはいえ、誘導には手動指令が必要であった。その後、一旦画像内の目標像を人間が指示すればコンピューターが画像認識してロックし、以後、目標と背景をコンピューターが自動的に識別して目標を自律追尾する画像認識誘導へと改良された。これによって母機は発射後にすぐ離脱可能になった。また当初は、母機が発射前に目標に接近してロックオン作業をする必要があったが、その後、母機が目標に接近せずにロックできるようになった。この場合、ロックせずに発射したミサイルが、GPSやINSによる中間誘導で目標に近づき、目標付近で光学センサーを起動、画像を無線で後方の母機へ伝送し、遠隔操作でロックオン作業を行うことになる。この種の方式を採用した機種としては、西側ではSLAMがもっとも初期のものであるが、その後実用化されたタクティカル・トマホークでは、画像情報の伝送経路として衛星データリンクを使用することにより、発射母体とミサイルとの距離が1,000km以上離れていても、遠隔操作による目標捕捉が可能となっている。

セミアクティブ方式編集

セミアクティブ・レーザー・ホーミング編集

セミアクティブ・レーザー・ホーミング英語: Semi-Active Laser Homing, SALH)は、発射母体(あるいは他の照射機)のレーザー目標指示装置から目標に対してレーザー光を照射し、目標からの反射光をミサイルのシーカーで捉えることで、その方向へミサイルを誘導する方式である。

光波を使用して弾体を誘導するという概念はアメリカ合衆国特許第2,015,670号アメリカ合衆国特許第2,309,329号のように1930年代から既に存在していたが、初期の研究はおおむね赤外線ホーミング誘導に注力していた。1950年代にベル研究所レーザーが開発された事により、実現性が高まった。1962年よりアメリカ陸軍レッドストーン兵器廠においてレーザー誘導技術の開発が開始されており[6]、この研究は、後にアメリカ空軍に移管され、1967年には航空システム部(Aeronautical Systems Division)において、ペイヴウェイ計画(Project Paveway)としてレーザー誘導爆弾の開発へと繋がっていった[6]。アメリカ軍においては、第二次世界大戦時より無線誘導爆弾を使用していたが、レーザー誘導爆弾は命中精度及び信頼性が高く、水平飛行のみならず降下中からの投下も可能であるなど、柔軟度が高い利点があった[6]。1968年には、量産発注が行われている[6]

レーザー誘導方式は、ミサイルの誘導方式としては比較的古典的なものであるが、初期においては、指令誘導の一種である半自動指令照準線一致誘導方式(SACLOS)などのビームライディング方式(LOSBR)が採用されているものが多かった。しかしこの場合、指令誘導という原理上、射程が長くなるのに伴って誘導誤差が増加し、特に移動目標に対する射撃精度において問題があった。これに対し、SALH方式は、比例航法(PN)ないし増強比例航法(APN)によるホーミング誘導であるため、ミサイルが目標に近接すればするほど誘導精度が向上するという長所があるが、一方で、操舵のための演算はミサイル側で行なうことから、技術的にはより高度で、高価となる欠点もある。

なお、LOSBR方式と同様に、SALH方式においても、照射機はレーザー誘導兵器が命中するまでレーザーの照射を続ける必要がある。これは電波ホーミング誘導におけるセミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)方式とも通底する問題である。このことから、発射母体の生残性を向上させるため、発射母体とは別に、レーザー照射機を無人航空機に搭載したり、あるいは地上の特殊部隊に配備する場合もある。

命中するまで常にピンポイントで照射し続けなければならないので高速で移動する目標や濃霧や豪雨のような悪天候下で視界が悪い場合には適さない。

対抗策編集

パッシブ式、セミアクティブ式共にフレアAN/ALQ-144英語版汎用赤外線妨害計画英語版の一環としてDirectional Infrared Counter Measures英語版や民間航空機用では民間航空機ミサイル防衛システム英語版フライトガード英語版Northrop Grumman Guardian英語版のような光波妨害技術によって無力化が可能。

脚注編集

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注釈編集

出典編集

  1. ^ a b c d e f g h 防衛技術ジャーナル編集部 2006, pp. 23-55.
  2. ^ Large Aircraft Infrared Countermeasures-LAIRCM 
  3. ^ 防衛省 1971, p. 46.
  4. ^ ガンストン & スピック 1985, pp. 19-28.
  5. ^ a b c d e アダミー 2018, pp. 368-411.
  6. ^ a b c d Peter deleon (1974年). “THE LASER-GUIDED BOMB: CASE HISTORY OF A DEVELOPMENT”. UNITED STATES AIR FORCE PROJECT RAND. 2016年8月6日閲覧。

参考文献編集

  • 防衛技術ジャーナル編集部 「第6章 搭載電子機器技術」『兵器と防衛技術シリーズ1 航空機技術のすべて』 防衛技術協会、2005年ISBN 978-4990029821
  • 防衛技術ジャーナル編集部 「第2章 光波ホーミング誘導」『兵器と防衛技術シリーズ3 ミサイル技術のすべて』 防衛技術協会2006年、23-55頁。ISBN 978-4990029821
  • ガンストン, B、スピック, M 『図解 現代の航空戦―エア・パワー最前線』 原書房、1985年ISBN 978-4562016273
  • 防衛省 (1971年). “防衛省規格 弾薬用語 (PDF)”. 2018年7月8日閲覧。
  • アダミー, デビッド 『電子戦の技術 拡充編』 東京電機大学出版局、2014年ISBN 978-4501330309
  • アダミー, デビッド 『電子戦の技術 新世代脅威編』 東京電機大学出版局、2018年ISBN 978-4501332907