八雲町都市間高速バス正面衝突事故
八雲町都市間高速バス正面衝突事故(やくもちょうとしかんこうそくばすしょうめんしょうとつじこ)は、2023年(令和5年)6月18日[1]に北海道八雲町野田生の国道5号[2]で発生した交通事故である。この事故で5人が死亡、12人が重軽傷を負った。
八雲町都市間高速バス正面衝突事故 | |
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場所 |
日本・北海道八雲町野田生 (国道5号) |
座標 | |
日付 |
2023年(令和5年)6月18日 正午ごろ |
原因 | 家畜運搬車のセンターラインはみ出し、はみ出した原因は不明 |
死亡者 | 5人(都市間高速バスの運転手1人、家畜運搬車の運転手1人、乗客3人) |
負傷者 | 12人(乗客12人) |
謝罪 | 日本クリーンファーム(家畜運搬車所有会社)が翌日の19日午後に報道陣の取材に対し謝罪 |
賠償 | 死亡した乗客の遺族2人が日本クリーンファームに対しそれぞれ約5800万円の損害賠償を求め提訴 |
概要 編集
2023年(令和5年)6月18日正午ごろ、北海道八雲町野田生の国道5号で、乗客15人[注釈 1]が乗る北都交通の都市間高速バス「高速はこだて号[3]」(いすゞ・ガーラ)にセンターラインをはみ出してきた豚30頭を積む家畜運搬車(いすゞ・フォワード)が速度を落とさず正面衝突した[4]。
都市間高速バスは札幌市を出発し、函館市に向かっていた最中で[5]、家畜運搬車は森町を出発し、七飯町で豚を積み込み八雲町に向かっていた最中であった[4]。
この事故で都市間高速バス運転手の男性(64)、家畜運搬車運転手の男性(65)、乗客の男性(33)、乗客の女性(57)、乗客の女性(55)の5人が死亡、1人が入院治療中、11人が軽傷を負った[6]。都市間高速バス運転手の男性は、乗務歴15年のベテランドライバーで、一度も重大事故を起こしたことのない「優良乗務員」でもあった。死亡した乗客3人は共に運転席の後席3列に乗車していたとみられる[6]。
都市間高速バス運転手の男性の元同僚は「誰よりも早く出勤されて、運行前のバスの点検や、車両の状況なども、細かく、くまなく点検される方。タイヤの溝までチェックする方でした。あんな恐ろしい、凄まじい衝撃と、あれだけ余裕のない道幅で、よくあれだけピタッとまっすぐ止まれたなと。あれが彼が精一杯できた思いなのかなと」と話した[4]。
家畜運搬車に積まれていた豚は道路上に投げ出され、日本クリーンファームの親会社、日本ハムによると30頭のうち12頭が事故の衝撃で死亡、17頭は生存したという。その後食肉処理場に運ばれ通常通り処理されたが、内出血などがひどく出荷は控えられた[7]。残る1頭は26日に発見されたが、かなり衰弱した状態で捕獲後、安楽死処分された[8]。
現場は函館市から北西に約60kmの地点[3]、片側1車線の緩やかなカーブで、ドライブレコーダーの映像や車両の損傷状態などから、家畜運搬車がカーブを直進して都市間高速バスの運転席側[3]に衝突したものとみられる[6]。また、両車の車体半分が衝突する「オフセット衝突」も事故を拡大させた要因と考えられる[9]。
原因 編集
事故の原因は家畜運搬車がセンターラインを越え反対車線の都市間高速バスに正面衝突したことで、現場にブレーキ痕がなく、事故現場までの道路は約50kmに渡りほぼ直線だったことから、運転手の男性の人為的なミスが原因と考えられたが、運転手の男性は事故当時心筋梗塞を発症した可能性が浮上した[10]。
そして、事故前に運転手の男性が「熱があり、体調が悪い」などと周囲に体調不良を訴えていたことも判明。なお、事故前日に風邪薬を服用しており、運転ができないほどではなかったという。
持病などはなく、運転歴30年のベテランで、これまでに重大事故はなかったという[4]。日本クリーンファームは取材に対し、「事故当日の運転手の体調については答えられない」と回答した。昨年の健康診断では目立った異常は確認されておらず、直近3ヶ月の勤務状況は過重労働ではなかったとしている。
親族は「原因が分かって、それが本人のせいではないと証明されたらいいなと思っているよ。落ち着いて一生懸命仕事する真面目なヤツだったよ」と話した[4]。
交通事故鑑定人の澁澤敬造は「今回の現場では、左側にガードロープといって路外に落ちないようにするための構造物がありました」「運転手さんの人為的なエラーが事故に繋がったと考えるのが自然。ぼうっとしてしまうということですね。単調な運転になっていたでしょうから」「今回の事故は本当に防ぎようのない事故だなっていう感じはしますよね」と話した[4]。
その後 編集
2024年1月17日、死亡した乗客の男性(33)の妻と長女が民法の使用者責任に基づき日本クリーンファームにそれぞれ約5800万円の損害賠償を求め、函館地方裁判所に提訴したことが判明した。提訴は妻が2023年12月5日、長女は同12日。日本クリーンファームは「訴状が届いたばかりでコメントできない」としている。妻の代理人を務める弁護士は「請求に従い、会社側が支払うものと考えている」と話している[11]。
2024年(令和6年)3月22日、北海道警察は日本クリーンファーム道南事業所の道南生産管理部長と安全運転管理者を業務上過失致死傷の疑いで書類送検した。家畜運搬車の運転手も自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で容疑者死亡のまま送検した。捜査関係者によると、運転手は事故前日、運転業務終了後に体調不良を安全運転管理者に伝え、情報は道南生産管理部長にも共有された。2人は事故当日に運転手の体調を確認しなかったという[12][13]。
脚注 編集
注釈 編集
- ^ 出発時の乗客数は18人であったが、事故前に八雲停留所で3人が降車したという。
出典 編集
- ^ “センターライン越えたトラックがバスに…5人死亡 死亡した乗客3人は先頭から3番目までの座席に 過失運転致死傷も視野に捜査”. UHB:北海道文化放送 (2023年6月19日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “5人死亡の北海道バス事故、衝突のトラック運転手に過重労働など確認されず”. 読売新聞オンライン (2023年7月17日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ a b c “トラックが車線をはみ出したか バスと衝突、5人死亡 北海道八雲町:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年6月19日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g “バスは「事故避けられなかった」鑑定人が見た現場 ほとんどの原因は『人為エラー』約50キロの"ほぼ直線道路"が事故誘発か”. UHB:北海道文化放送 (2023年6月20日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2023年6月18日). “バス衝突、5人死亡 ブタ輸送のトラックと 北海道”. 産経ニュース. 2024年3月7日閲覧。
- ^ a b c “死亡したバス乗客3人、運転席の後ろ3列に乗車か 北海道の衝突事故:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年6月19日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “トラックから逃げ出した豚1頭、なお行方不明 捜索続く 北海道事故:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年6月22日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “【速報】衝突事故を起こしたトラックから逃走したブタ1頭を発見…衰弱ひどく"安楽死処分"に 北海道・八雲町”. UHB:北海道文化放送 (2023年6月26日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “北海道バス事故、トラック側にブレーキ痕確認されず…「オフセット衝突」で被害拡大か”. 読売新聞オンライン (2023年6月20日). 2024年3月7日閲覧。
- ^ “運転手は心筋梗塞を起こしていたか“八雲5人死亡事故”安全運転管理者らを書類送検”. STV. (2024年3月22日)
- ^ “北海道高速バス事故、遺族が提訴 トラック雇用主に賠償請求(共同通信)”. Yahoo!ニュース. 2024年3月7日閲覧。
- ^ “トラックによる死傷事故、会社の管理者も書類送検 識者「意義ある」”. 朝日新聞. (2024年3月22日) 2024年3月22日閲覧。
- ^ “トラック運転手の体調管理怠った疑い 幹部ら書類送検 北海道バス事故”. 毎日新聞. (2024年3月22日) 2024年3月22日閲覧。
関連項目 編集
- バス事故
- 自家用自動車 - 事故を起こした当該車両は養豚会社所属の自家用車両(白ナンバー)であった。
- ランブルストリップス - 現場は長い直線が続くことから正面衝突が多発しており、近隣住民から陳情が出されていた。