幾何学で、六円定理(ろくえんていり、英語: six circles theorem)は、三角形と6つのに関する定理である[1]ABCについてAB,BC接するO1をつくる。O1,BC,CAに接する円O2O2,CA,ABに接する円O3と、循環的にO6まで定義したとき、O6O1は接する(chainが閉じる)[2][3][4]。この定理は1974年以降に発見された。2016年、円が三角形の内部にある場合だけでなく、外部にもある場合、6円以上の連鎖になることが発見された[5]

最初の円の半径を変えた六円定理の例。右下は、最初の円が内接円になっている。

三角形の辺を互いに接する円英語版の弧に変えたもの(curvilinear triangles)でも同様の定理がなりたつ(九円定理[2]。また多角形へも一般化されている(その場合周期が異なる)[5]

円の半径

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半周長が1であるA1A2A3について、線分AiAi-1, AiAi+1Ci-1,Ci+1に接する円をCiとする(A4=A1)。また、Aiと、その対辺と内接円の接点の距離をaiとして

 

とする。すると

 

を得る。このとき内接円の半径rについて

 

が成り立つ。Ci-1AiAi-1, AiAi+1の接点と、Aiの距離をxiとして

 

とすると、

 

が成り立つ[6]。このことと円の中心が角の二等分線上にあることから、円の半径を求めることができる。また、計算していくと、

 

が分かるので、連鎖が6であることが分かる。

証明

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s=1とした場合。

C1C2がそれぞれD1,D2で接しているとする。また、Ciの半径をriとすると、

 

また、三角形と比の定理英語版より

 

なので

 

である。これを用いれば

 

を得る。この式をcosφ2について解くと

 

となる。0<φ2<π/2に注意すれば

 

となる。よって、円の半径の項で見たようにこの式を循環的に使えば、証明される[6]

特別な場合

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内接円

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最初の円を内接円にすると、奇数回目の操作で得られる円は常に内接円となる。特に

 

が成り立つので、

 

が従う。これは1814年算額の書物や1781年のHukugawaの書籍でも示されている[7][8]

The Ladies' Diary英語版では以下の形で紹介されている[9]

 

マルファッティの円

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4つ目の円と1つ目の円を一致させると円の周期は3になりマルファッティの円となる。特に

 

が従う。

出典

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  1. ^ Weisstein, Eric W.. “Six Circles Theorem” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年6月30日閲覧。
  2. ^ a b Evelyn, C. J. A.、Money-Coutts, G. B.、Tyrrell, John Alfred『The Seven Circles Theorem and Other New Theorems』Stacey International、London、1974年、49–58頁。ISBN 978-0-9503304-0-2https://www.cambridge.org/core/journals/mathematical-gazette/article/abs/seven-circles-theorem-and-other-new-theorems-by-c-j-a-evelyn-g-b-moneycoutts-and-j-a-tyrrell-pp-viii-68-280-1974-sbn-0-950-3304-ox-stacey-international/0D651BCF5B021542D4A4BAA4FCA3BDA1 
  3. ^ Wells, DavidThe Penguin Dictionary of Curious and Interesting Geometry』Penguin Books、New York、1991年、231頁。ISBN 0-14-011813-6https://archive.org/details/ThePenguinDictionaryOfCuriousAndInterestingGeometry 
  4. ^ SERGETABACHNIKOV (2000). “Going in Circles: Variations on the Money-Coutts Theorem”. GeometriaeDedicata (Vol 80): 201-209. https://web.archive.org/web/20170809092542/http://www.math.psu.edu/tabachni/prints/circles.pdf. 
  5. ^ a b Ivanov, Dennis; Tabachnikov, Serge (2016). “The six circles theorem revisited”. American Mathematical Monthly 123 (7): 689–698. arXiv:1312.5260. doi:10.4169/amer.math.monthly.123.7.689. MR3539854. https://arxiv.org/pdf/1312.5260. 
  6. ^ a b Christoph Soland. “Configuration de Malfatti et théorème des six cercles”. 2024年6月30日閲覧。
  7. ^ Géry Huvent,, Dunod, 2008, p. 125
  8. ^ H. Fukagawa, Daniel Pedoe, , Winnipeg: Charles Babbage Research Centre,
  9. ^ 『Géométrix,d'Euclide à Einstein, la magie d'une science surprenante,』Flamarion、2021年、184,269-270頁。 

関連項目

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外部リンク

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