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18世紀の百科事典の幾何学図形の表。
最先端の物理学でも用いられるカラビ-ヤウ多様体の一種。現代幾何学では図も書けないような抽象的な分野も存在する。
20世紀における初等幾何学の授業風景。

幾何学(きかがく、古代ギリシア語: γεωμετρία)は、図形空間の性質について研究する数学の分野である[1][2]

もともと測量の必要上からエジプトで生まれたものだが、人間に認識できる図形に関する様々な性質を研究する数学の分野としてとくに古代ギリシャにて独自に発達し[3]、これらのおもな成果は紀元前300年ごろユークリッドによってユークリッド原論にまとめられた[2]。その後中世以降のヨーロッパでユークリッド幾何学を発端とする様々な幾何学が登場した[3]

単に幾何学と言うと、ユークリッド幾何学のような具体的な平面や空間の図形を扱う幾何学をさすことが多く、一般にも馴染みが深いが[3]、対象や方法、公理系などが異なる多くの種類の幾何学が存在し[1]、現代においては微分幾何学代数幾何学位相幾何学などの高度に抽象的な理論に発達・分化している[2][3]

「幾何学」という語は、イエズス会マテオ・リッチによる geometria の中国語訳である。以前は geometria の冒頭の geo- を音訳したものであるという説が広く流布していたが、近年の研究により否定されている[4]

目次

歴史編集

以下では様々な幾何学の発展とその概要を、歴史にのっとって時系列順に述べることとする。

起源編集

幾何学(ジオメトリー)の語源は「土地測量」であり[注釈 1]、起源は古代エジプトにまで遡ることができる[5]

古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの記録[5][6]では、エジプトでは毎年春になるとナイル川が氾濫し、エジプトの砂漠に農耕を可能にする河土を運んでくるが、去年の畑の境界線はすべて流れてしまう。古代エジプト人は死ぬと神前で「私は、隣人の土地を盗んだことはない」と誓わなければ冥界行きが許されなかったので、土地境界の正確な決定は重大問題であった。そのため、印をつけた縄でまっ平らになった土地を元どおり区割りする「縄張り師」と呼ばれた測量専門家集団が現れ、土地測量術が発達した。現在、ピタゴラスの定理として知られている数学定理が、古代エジプトではすでに5000年前に経験則として知られ、縄張り師たちは3:4:5の比率で印をつけた縄を張って、畑の角の直角を取ったという[3]

古代ギリシャの幾何学編集

幾何学が大きな進歩を遂げた最初は、他の数学の分野と同じように古代ギリシアにおいてであった。

初期のギリシャ幾何学編集

人物としては、タレスピタゴラスなどが有名である[5]。タレスは三角形の合同を間接測量に応用し、ピタゴラスらはこれらを証明により厳密に基礎づけた[5]。彼らはそこで多くの定理を発見し、幅広くそして深く図形を研究したが、特に注記すべきなのは、彼らが証明という全く新しい手法を発見したことである。

数学的意味での証明の誕生と原論の成立編集

とくにピタゴラスは後のギリシャ数学者達に影響を与え、ユークリッドもその一人であった[3]。自明な少数の原理(公理など)から厳密に演繹を積み重ねて当たり前とは思えない事柄を示していくやり方は、ユークリッドの手により『原論[7]』において完成され、後の数学の手本となった。ユークリッドの手により証明をもとに体系化されたギリシャ数学は、曖昧さが残るエジプトやバビロニアのものより圧倒的に優位であったといえる[3]

曖昧な経験の集積ではなく、それらを体系化された理論にまとめあげ少数の事実から全てを演繹するという手法は長らく精密科学の雛型とされ[6]、後世ではニュートンの古典力学なども同様の手法で論じられている。このような手法は古代ギリシャにのみ誕生したが、それは何故かという問題は科学史の重大な問題である[6]

ユークリッド原論はB.C.300年ごろに出版され、全13巻からなり、幾何学以外にも数の理論なども記述があるが、これらも幾何学的に取り扱われた[5]。また原論は幾何学のバイブルとしてその後2000年以上にも渡って愛読され続けた[3]

後期のギリシャ幾何学編集

その後前三世紀ごろにアポロニウスによって円錐曲線論(コニカ)がまとめられ[9]天文学の発達により前一、二世紀ごろに三角法も誕生した。パップスは300年ごろに幾何学を中心とする古代ギリシャの数学の成果を「数学集成(Synagoge)」にまとめあげた[5]

とくにアポロニウスは初歩的な座標の概念をも導入し、二点からの距離の和・差・積・商が一定である曲線の集合を研究した[6]。彼の円錐曲線の理論は、カッシーニの卵形線は17世紀に入ってから開拓されたものの他の分野のほぼ全てはアポロニウスの手によって研究された[6]


ヨーロッパにおける幾何学編集

ヨーロッパでは長く、「幾何学的精神」という言葉が厳密さを重んじる数学の王道ともいうべきあり方とされた。「幾何学的精神」という用語はパスカルによって導入された哲学用語であり、ユークリッド幾何学に見られるように、少数の公理形から全てを演繹するような合理的精神をさし、逆に全体から個々の原理を一挙に把握するという意味の「繊細の精神」の対義語として与えられた[10]

また、エジプト王プトレマイオスが幾何学を学ぶのに簡単にすます道が無いかという問いに対しユークリッドはそんな方法はなく、「幾何学に王道無し」と言ったことからより一般に「学問に王道なし」との言葉も生まれた[11]。ここで王道とは王のみが通れる近道の意である[11]

中世ヨーロッパのユークリッド幾何学編集

 
中世ヨーロッパでユークリッド幾何学が教えられている様子。

ヨーロッパにおいては19世紀初等までは、幾何学といえばユークリッド原論から発達した三次元以下の図形に関する数学をさしていた[5]。ヨーロッパではルネッサンス以降はカルダノフェラリに見られるように代数学が盛んであり、17世紀以降はニュートンやライプニッツらによって開かれた解析学も急激に発達したため、幾何学はこれらの分野とよく対比されることとなった[5]。しかしルネサンス期においてはこれらに比べ幾何学の成果は乏しく[6]、当時の目立った成果を上げれば15世紀に透視図の考えを応用し射影幾何学の元となる概念が登場したり[6]、古代ギリシャでは砂に図を書いていたためか[6]運動はタブーであったが、14世紀ごろより図形を直接動かしてその変化考察するという後に解析学へと繋がる考え方も登場した[6]などが上げられる。

解析幾何学誕生編集

ユークリッド原論にも見られるように、数は図形として対応させて考えることもできる。デカルトはこの考えを拡張してデカルト座標を導入し、解析幾何学を導入した[5][12]。解析幾何学は平面や空間に座標を定めて数と図形との関係を与え、逆に数を幾何学的に扱うことをも可能とした[5]。それまでは幾何学的証明に限られた幾何学の問題を代数的に解くことも可能となったのである[5]。座標の概念はフェルマーも研究していたが、欧米ではgéométrie cartésienne(デカルト幾何学、cartésienneは「デカルトの」の意)と呼ばれるようにデカルトの影響が極めて強い[6]

例えば直交座標平面上の任意の点の原点からの距離はピタゴラスの定理によって与えられるが、これは解析幾何学においては公理である[13][14]

解析幾何学はデカルトの哲学体系では数と図形の統一を目指したものであるが、アポロニウスの残した未解決問題、例えば三定点からの和が一定の曲線の研究なども目的とされていた[6]。現代においてはコンピュータの画面表示などにも座標の概念が応用されている[6]。また、幾何学の問題は現代では線形代数すら応用されて解かれることも多い[6]

解析幾何学の方法はヨーロッパ数学において同時期に発達した代数学や解析学においても盛んに用いられ、とくに17世紀解析学の発達は解析幾何学抜きには語れないであろう[5]。18世紀にはオイラーによって解析幾何学は急激に発達させられその成果がまとめられた[15]。オイラーの手によってアポロニウスによる古典的円錐曲線論は二次曲線や二次曲面論として解析幾何的手法を用いて代数的に書き換えられることとなった[5]

トポロジー・グラフ理論の起源編集

 
当時のケーニヒスベルグの橋の配置

またオイラーは当時のケーニヒスベルグの橋を、一度渡った橋は二度と渡らないで、全ての橋を一度だけ渡ることは可能であるか?という問題より、今日のトポロジーグラフ理論の起源となる概念が生まれた[6]

微分幾何学の黎明編集

 
ガウスも当時の数学関連分野全般に業績があるが、幾何学においては微分幾何学や非ユークリッド幾何学の初歩概念等に業績がある。とはいえ非ユークリッド幾何学については論争を恐れ公表しなかった。
 
初歩的な微分幾何学では微積分が幾何学へ応用された。

さらに18世紀末には微積分や変分学といった解析学の成果も幾何学へ応用され、モンジュによる曲線と曲面の微分幾何学の開拓が行われた[5]。19世紀初頭にはガウスによって曲面の曲率などが求められ、微分幾何学が本格的に研究された[5]

総合幾何学、射影幾何学編集

 
射影幾何学で重要なデザルグの定理に関する図。

このようにデカルトによってその基礎を打ち立てられ、代数的・解析的に取り扱えるという強力な手法を提供した解析幾何学であるが、解析幾何学が幾何学研究において絶対的な方法であったかといえば必ずしもそうではなかった。解析幾何学のように座標を導入せずに、ユークリッド幾何学のように直接図形を研究する手法も解析幾何学ほどはメジャーではなかったが行われていた。このような手法を総合幾何学(synthetic geometry)、あるいは純粋幾何学(pure geometry)という[5]

純粋幾何学における新概念は、遠近法を発端として17世紀にデザルグパスカルらによって始められた射影幾何学が挙げられる。18世紀にはモンジュ(画法幾何学で有名である)とポンスレらにより、射影幾何学は更に研究され、19世紀に入ってもシュタイナーは総合幾何学を重視している[5]。20世紀に入っても総合幾何学を重視した者としてコクセターが挙げられる[16][17]。ほかにも、ラングレーの問題などは20世紀に入ってから出された問題である。

非ユークリッド幾何学編集

長らく原論の平行線公理は幾何学において問題となったが、この公理を他の公理から導出しようとする試みは全て頓挫した[5]。もし平行線公理が公理でなければ、ほかの公理系から導出できるはずだと試みられて失敗したわけである。19世紀に入ってようやく、他の公理はそのままに平行線公理のみをその否定命題に置換してもユークリッド幾何学に似た幾何学が成立することがボヤイロバチェフスキーらによって示され、非ユークリッド幾何学が誕生した[5]

非ユークリッド幾何学の無矛盾性はユークリッド幾何学の無矛盾性に依存し、後者が無矛盾であれば前者も無矛盾であるとされ、両者の差異は単なる計量の違いに過ぎないことが明らかにされた[5]

幾何学基礎論編集

 
幾何学基礎論を研究したヒルベルト。これ以外にも広い業績がある。

幾何学は人間の図形的直感に基づいて研究されるが、直感のみに基づいて研究するわけにはいかない。そのためあいまいな直感ではなく明確に言葉や定義によって言い表された定義や公理に基づいて幾何学を体系化する試みは既にユークリッドによってなされたのだが、現代からみればこれは不完全なものであった[18]

19世紀に入って、批判的精神や数学そのものの発達によりユークリッド幾何学の公理系が実は論理的に不完全であることが指摘された[18]。平行線公理問題や非ユークリッド幾何学の誕生などもそのような流れの一つとしてあげられるだろう[18][19]。数学者にとって公理系が論理的に不完全であれば、正しい方法で証明したはずの定理からも矛盾が出てしまうため、これが恐れられ一時期盛んに矛盾しない理想の公理系の探求が行われたわけである。その探求の目的は幾何学を公理系から建設するための無矛盾な公理系の発見とその公理系によって構成される幾何学の構造、更にはそのような複数の公理系間の関係(ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学との関係のような)であった[19]

19世紀後半よりその様々な代価案が提出されてきたが[18]、最も決定的であったのが19世紀後半から20世紀初頭にはヒルベルトによって提唱されたものであり[18]、その成果は著書「幾何学の基礎[20][21][22]」にその成果はまとめられた[5]

ヒルベルトは論理的整合性のために感覚から完全に分離された幾何学を唱え[3]、この本では点や線といった専門用語を机や椅子などに置換してすら成立するとまで言われたが、それにしては図が沢山あるため小平邦彦などによって批判された。図すら一切存在しない初等幾何の基礎付けはジャン・デュドネの「線形代数と初等幾何」を待たねばならないだろう。デュドネの本には図すら存在せず、ある意味専門用語ですら無意味であるというヒルベルトの精神を体現しているといえる。

このような限界までの考察によって、公理とは「誰もが認めうる真理」ではなく、「理論を構成するための根本的要請」という考えにシフトしていった[6]

このような極端に具体例を軽視し形式主義に走る手法は今日の公理主義的数学の先駆けと見ることができる[5]岡潔や小平邦彦などは極端な抽象化に警鐘を鳴らし、岡などは数学の冬の時代とまで称した。しかし具体例や数学的直感を軽視するのが悪いことではなく、あくまで公理系の無矛盾性が大多数の数学者にとって問題であり、そのため数学の基礎や証明などの根本的部分にその批判が差し向けられたのである。公理系が矛盾していたら正しくはじめたのにおかしな結果が出てくるかもしれないことが問題視され、この方法は幾何学基礎論から発端となったが同時期に問題となった集合論のパラドクスもあいまって[19]、幾何学にとどまらず数学基礎論としてヒルベルトらにより研究が継続されることとなる[3]

高次元幾何学編集

 
リーマン : 複素解析の幾何学的概念(リーマン球面など)や一般相対論の元になる微分幾何学の基礎を確立。

解析幾何学では三次元ユークリッド空間の幾何学は空間幾何学(space geometry)、または立体幾何学(solid geometry)と呼ばれ、二次元ユークリッド空間の幾何学は平面幾何学(plane geometry)と呼ばれる[5]。これを一般化し、n個の実数の組からn次元空間の点を定義し、それらの任意の二点間の距離を定めてn次元ユークリッド空間を構成することができる[5]。同様にn次元空間は非ユークリッド幾何学や射影幾何学についても定めることができる。

これらのような様々な空間の研究は19世紀中頃に本格的に行われ、リーマンはn次元の曲がった空間から多様体の概念を導入し、計量として接ベクトル間の内積曲率を定義した[5]。このような様々な幾何学はアインシュタイン一般相対性理論の研究を行った際に数学的道具を提供した[5]。より一般的には、P・フィンスラーは接ベクトルのノルムを計量とするフィンスラー空間の概念を提唱した。

現代の幾何学編集

 
幾何学と群論との関係を見いだしたクライン。
 
トポロジーの基礎を確立したポアンカレ。
 
トポロジーにおける連続的変化の一例。
 
代数幾何学に登場する図。

クラインは幾何学に群論を応用することによって、空間Sの変換群Gによって、変換で不変な性質を研究する幾何学を提唱した。これをエルランゲン・プログラム[21]というが、この手法で運動群がユークリッド幾何学を定めるように、射影幾何学、アフィン幾何学共形幾何学を統一化することができる[5]

更に19世紀末にはポアンカレによって、連続的な変化により不変な性質を研究する位相幾何学が開拓された[5]

代数曲線・曲面や代数多様体が起源である代数幾何学[5]は高度に発達し、日本でもフィールズ賞受賞者も多く盛んに研究されている。

またミンコフスキーによる凸体の研究は数論幾何学の道を開いた[5]

20世紀前半には多様体は数学的に厳密に定式化され、ワイルE・カルタンらにより多様体上の幾何学や現代微分幾何学が盛んに研究された[5]リーによって導入されたリー群によって、これらの様々な幾何学を不変にする変換群が与えられたが、カルタンはリー群を応用して接続の概念を導入し接続幾何学を完成させ[3]、これらの幾何学を統一化することに成功した[5]。これはリーマンによる多様体と、クラインによる変換群の考えを統一化したとも理解できる[5]。これは現代では素粒子物理学などの物理学の諸分野でも常識となっている。

また、代数学や解析学の発展もともなって、多様体の代数構造位相構造との関係を研究する大域微分幾何学複素解析と関係する複素多様体論、古典力学力学系と関連したシンプレクティック幾何学や接続幾何学、測度論と関連して積分幾何学や測度の幾何学的研究である幾何学的測度論の研究などもこのころにはじまった[5]

20世紀後半になると多様体上の微分可能構造や力学系、微分作用素なども上記の幾何学とも関係しながら研究が進められた[5]。他にも幾何構造をなすモジュライ空間や特異点を含む空間の研究、物理学と関連した研究や四色問題に見られるようにコンピューターを用いた研究も行われた[5]

凸体の幾何学や組み合わせ幾何学の手法は現代ではオペレーションズ・リサーチなどの応用数理の分野でも用いられている[5]

現代数学と幾何学編集

現代数学では幾何学は代数学や解析学などの数学全般に広範囲に浸透しているため、これらと明確に区別して幾何学とはなにかということを論ずるのは難しいが、しかしながら図形や空間の直感的把握やそのような思考法は先端分野の研究においても重要性を失っていないといえる[5]

幾何学の諸分野編集

現在では、幾何学の諸分野は数千にのぼり、そのすべてを列挙することは到底不可能である。また、日本語の翻訳がないものがほとんどである。ここでは、比較的よく知られた邦訳のある幾何学のみ紹介する。なお、arXivへ1日に投稿される幾何学に関連する論文の数は、100を超えている。その中で示される定理の総数は数百に達する。

この節では、いくつかの大分野に仮に分けて紹介する。

古典幾何学・初等幾何学編集

現代幾何学に対して呼ばれる。

ユークリッド幾何学編集

非ユークリッド幾何学以前の幾何学。

円錐の幾何学編集

初等幾何学編集

平面幾何学のことを言うことが多い。

定規とコンパスによる作図編集

多面体の幾何学編集

射影幾何学編集

画法幾何学編集

アフィン幾何学編集

非ユークリッド幾何学編集

双曲幾何学編集

ロバチェフスキー・ボヤイ幾何学編集

楕円幾何学編集

球面幾何学編集

解析幾何学編集

ベクトル解析編集

テンソル解析編集

位相幾何学編集

位相多様体を研究対象とする。

組合せ位相幾何学編集

モース理論編集

結び目の幾何学編集

代数的位相幾何学編集

代数トポロジーとも。ホモロジー、コホモロジー、ホモトピー、ボルディズム等の理論を使った幾何学。

微分位相幾何学編集

多様体の微分可能構造を研究する幾何学。ミルナーによって発見された異種7次元球面が発端。

ループ空間の幾何学編集

多様体上の基点をもつループ全体の空間を調べる。

ホモトピー論編集

ホモトピー群のなす空間を研究する。

ボルディズムとコボルディズム編集

境界性のこと。

微分幾何学編集

可微分多様体を研究対象とする。

アファイン微分幾何編集

計量微分幾何学編集

ミンコウスキー幾何学編集

ヘッセ幾何学編集

リーマン幾何学編集

リーマン幾何学では、滑らかな多様体に線素の長さの概念を付け加えてごく微小な範囲ではユークリッド空間のような構造をあたえられたリーマン多様体が主要な研究対象となる。リーマン多様体上では関数の勾配、ベクトル場の発散や曲線の長さなど様々なユークリッド幾何の概念が(大域的な対称性を落とすことによって)一般化される。リーマン曲率テンソルがリーマン多様体の各点に対して定まり、これによって多様体がどれだけ平坦かをはかることができる。

双曲幾何学編集

曲率が負の状態のリーマン幾何学。

フィンスラー幾何学編集

リーマン幾何学で、各点での接ベクトル空間にノルムが定義されている状況を考える幾何学。これはバナッハ空間の各余接空間を定義するフィンスラー距離をもつ可微分多様体である。リーマン多様体はより一般的なフィンスラー多様体の特殊な例である。

サブリーマン幾何学編集

リーマン多様体の任意の分布にヘルマンダー条件を加える。

擬リーマン幾何学編集

リーマン幾何学の一般化で、距離テンソルが正定値であることを強要しないもの。

シンプレクティック幾何学編集

シンプレクティック形式(つまり、非退化で反対称な2次閉形式)があたえられたシンプレクティック多様体(偶数次元でなければならない)が主要な研究対象になる。リーマン幾何学と異なり、次元が同じシンプレクティック多様体の局所的な構造はすべて同じになり(ダルブーの定理)、したがって本質的に問題になるのは大域的な構造だということになる。

ケーラー幾何学編集

複素多様体 (M, J) に対し、さらにリーマン計量g で概複素構造 J と両立するものを考え、g の「ねじれ」ω(X, Y) = g(JX, Y) が閉形式になっているならば (M, J, g) はケーラー多様体とよばれる。ケーラー多様体は特に複素多様体であり、またシンプレクティック多様体にもなっている。滑らかな複素代数多様体として様々なケーラー多様体の例があたえられる。例えば、カラビ-ヤウ多様体は超弦理論との間にミラー対称性があるため、物理学でも注目される。

ハイパーケーラー幾何学編集

CR幾何学編集

複素多様体の定義域の境界の内在的幾何学の研究である。

葉層の理論編集

滑らかな多様体 M の接束の可積分な部分束 F を考えることによって M 上の葉層構造が定まる。これは幾何学的には、F が接束になるような dim F 次元の多様体の単射埋め込み(考えている葉層構造の葉とよばれる)による M の分割に対応している。一次元の葉層構造は零点を持たないベクトル場、または固定点を持たない一径数変換群によって与えられる。全体の空間 M がコンパクトであっても葉はコンパクトだとは限らないし、M 上で同じ葉に属する点を同一視して得られる葉の空間は複雑な構造を持ち、非可換幾何学の発展に対する動機付けを与えた。

接触幾何学編集

シンプレクティック幾何学の類似として、ある種の奇数次元多様体に対して接触幾何学とよばれる理論を考えることが可能になる。おおざっぱにいえば接触構造はどこでも可積分にならないような超平面場によって与えられる。これは が消えないような微分形式αによって定義される超平面場を考えるということになる。

ローレンツ幾何学編集

相対性理論から発展した。ローレンツ多様体を研究対象とする。

スペクトル幾何学編集

リーマン多様体上のラプラス作用素の固有値全体と、多様体の幾何学的性質の関係を調べる。

スペシャル幾何学編集

スペシャルホロノミー群を持つリッチ平坦リーマン多様体(カラビヤウ、ハイパーケーラー、G2、Spin(7) 等)を調べる。通常のリーマン幾何学よりも対称性が高い。

共形幾何学編集

反転幾何学、メビウス幾何学とも。メビウス変換 (円に対する反転) によって不変な性質を研究する。

積分幾何学編集

非可換微分幾何学編集

主に微分方程式の非可換性に由来する。

リーマン・カルタン幾何学編集

接続の概念を導入した幾何学。

複素幾何学編集

複素多様体が研究される。概複素構造とよばれる接ベクトル場準同型(つまり(1, 1) 型のテンソル)J: TM → TM でその自乗が -1 倍作用であるようなものを持つ実多様体 M は概複素多様体とよばれる。概複素多様体のうちで概複素構造 J の「ねじれ」を表すNijenhuisテンソル NJ が消えているようなものは複素多様体とよばれる。この条件は正則なアトラスの存在と同値になる。

マキシム・コンツェビッチによるミラー対称性の定式化からはシンプレクティック幾何学と複素幾何学の間に対応がつくことが予想されている。

シンプレクティック幾何学編集

解析力学に関連あり。

ケーラー幾何学編集

複素多様体 (M, J) に対し、さらにリーマン計量g で概複素構造 J と両立するものを考え、g の「ねじれ」ω(X, Y) = g(JX, Y) が閉形式になっているならば (M, J, g) はケーラー多様体とよばれる。ケーラー多様体は特に複素多様体であり、またシンプレクティック多様体にもなっている。滑らかな複素代数多様体として様々なケーラー多様体の例があたえられる。

共形幾何学編集

積分幾何学編集

等質空間編集

対称空間編集

粗幾何学編集

平均曲率流の幾何学編集

リッチ流の幾何学編集

ハミルトンが創始、ポアンカレ予想解決へ導いた。

アダマール幾何学編集

曲率が零以下の空間の幾何学。

ファイバーバンドル編集

ファイバー束とも。ゲージ理論の数学的定式化。K理論等が有名。

カタストロフィー理論編集

ルネ・トムが提唱。生物の形態発生や言語の構造などのあらゆる現象のモデルとして、力学系を土台とした構造安定性とその不連続な分岐(これをカタストロフという)を用いることで普遍的な説明を行う理論を言う。

スピン幾何学編集

リーマン幾何学の拡張、スピン接続を定義。指数定理、ディラック作用素等。

グラスマン幾何学編集

代数幾何学編集

代数多様体を研究対象とする。

アーベル幾何学編集

連接層の幾何学編集

非可換幾何学編集

アラン・コンヌが提唱した。

アラケロフ幾何学編集

数論幾何学方面。

ディオファントス幾何編集

これも数論幾何学方面。

タイヒミュラー空間論編集

ホッジ理論編集

可微分多様体上の微分形式のリーマン計量に付随する、一般化されたラプラス作用素に関する偏微分方程式を用いて得られる実係数コホモロジー群を見る。ドラム理論の拡張。

トロピカル幾何学編集

足し算を掛け算に置き換え、掛け算を大きい方の数をとる操作に変更したトロピカル半体を構成し、幾何学を展開する。アメーバと呼ばれる現象が起こる。

高次元代数多様体の幾何学編集

極小モデル理論(MMP)により、高次元代数多様体の分類を目指す。

双有理幾何学編集

イタリア学派によるアフィン幾何学編集

19世紀後半から20世紀のイタリアで研究された、証明を2流の学者にさせる直感的な幾何学。

射影代数幾何学編集

アフィン幾何学と共に、スキーム論の誕生に繋がる。

モジュライ幾何学編集

解析的な現象の背後にある空間を研究する。近年物理学でゲージ理論に代わって注目される。

遠アーベル幾何学編集

代数多様体上の代数的基本群等の記述。アーベル群から遠いという意味。

導来代数幾何学編集

代数幾何学とホモトピー論の融合を目指す幾何学。

高次元ホモトピー論編集

ルーリーが創始、数学そのものの拡張を目指す。

圏の幾何学編集

望月新一が展開した、射影空間を圏論に移植した幾何学。

宇宙際幾何学編集

望月新一が提唱。都合の良い宇宙で計算をし、宇宙同士の誤差を解消して元の宇宙で定理を復元する。

数論幾何学編集

幾何学を使い、整数論の研究をする。エタールコホモロジー、クリスタリンコホモロジー。

リジッド幾何学編集

アフィノイド代数を基礎とする。

スタック編集

層の理論の拡張。

複素解析空間編集

GAGAが発端。

数え上げ幾何学編集

例えばシューベルト計算、交叉理論等で幾何学的な数え上げをする。

離散幾何学・その他編集

通常の実数ではなく、とびとびの値を持つ空間の幾何学の総称。

情報幾何学編集

双対幾何学とも言われる。双対計量を入れた多様体を研究する。数理統計学との関連が深い。

エントロピーの幾何学編集

くりこみを用いてエントロピーを導入、情報幾何学との関連がある。

組合せ幾何学編集

グラフ理論編集

フラクタル幾何学編集

計算幾何学編集

ドルネイ三角形分割、ボロノイ図、OR等。

凸幾何編集

有向マトロイドの一般化。

注釈編集

  1. ^ 術語「幾何」は古代ギリシア語: "γημετρεω" に由来し、その語義は土地測量(「古代ギリシア語: "γη"(ゲー):土地」および「"μετρεω"(メトレオ):測定」)である。この構成は 英語: "geometry" でも同じ("geo":土地、"metry":測量)。

参考文献編集

  1. ^ a b 広辞苑第六版「幾何学」より
  2. ^ a b c デジタル大辞泉『幾何学』 - コトバンク
  3. ^ a b c d e f g h i j k ブリタニカ国際大百科事典2013小項目版「幾何学」より。
  4. ^ http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/47614/1/1444-4.pdf 満洲語資料からみた「幾何」の語源について On the etymology of ‘ji-he’ from the viewpoints of Chinese and Manchu linguistics 東京学芸大学教育学部 渡辺 純成
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al 日本数学会編、『岩波数学辞典 第4版』、岩波書店、2007年、項目「幾何学」より。ISBN 978-4-00-080309-0 C3541
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o この説は古代ギリシャ末期のプロクロスによるユークリッド原論の注釈集の冒頭にあるが、近年では批判もある。一松信、『現代に活かす初等幾何入門』、岩波書店、〈岩波講座 応用数学〉、2003年、第1章。ISBN 4-00-005454-6
  7. ^ 邦訳は「中村 幸四郎・寺阪 英孝・伊東 俊太郎・池田 美恵訳・解説、『[1]ユークリッド原論 追補版』、共立出版、2011年。ISBN 978-4-320-01965-2」など。
  8. ^ 小林昭七、『円の数学』、裳華房、1999年。ISBN 978-4-7853-1516-0
  9. ^ アポッロニオス 『円錐曲線論』 ポール・ヴェル・エック仏訳、竹下貞雄和訳、大学教育出版、2009年1月。ISBN 978-4-88730-880-0
  10. ^ 大辞林「幾何学的精神」より
  11. ^ a b 大辞林「学問に王道なし」より
  12. ^ R. Descartes, Géométrie, Paris, 1637 (Œuvres, IV, 1901)
  13. ^ 遠山啓、『関数を考える』、岩波書店、〈岩波現代文庫〉、2011年、149頁。ISBN 978-4-00-603215-9
  14. ^ 朝永振一郎著、江沢洋編、『物理学への道程』、みすず書房、〈始まりの本〉、2012年、349頁。ISBN 978-4-622-08365-8 C1342
  15. ^ レオンハルト・オイラー著、高瀬正仁訳『オイラーの解析幾何』、海鳴社、2005年。ISBN 4-87525-227-7
  16. ^ シュボーン・ロバーツ著、糸川洋訳、『多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者』、日経BP社、2009年。ISBN 978-4-8222-8382-7
  17. ^ コクセター著、銀林浩訳、『幾何学入門上・下』、筑摩書房、〈ちくま学芸文庫Math&Science〉、2009年。上巻ISBN 978-4-480-09241-0、下巻ISBN 978-4-480-09242-7
  18. ^ a b c d e 日本数学会編、『岩波数学辞典 第4版』、岩波書店、2007年、項目「幾何学基礎論」より。ISBN 978-4-00-080309-0 C3541
  19. ^ a b c ブリタニカ国際大百科事典2013小項目版「幾何学基礎論」より。
  20. ^ D. Hilbert, Grundlagen der Geometrie, Teubner, 1899, 第 13 版 1987
  21. ^ a b D・ヒルベルト、F・クライン著、寺阪英孝・大西正男訳、解説・正田建次郎、吉田 洋一監修、『ヒルベルト幾何学の基礎、クライン・エルランゲン・プログラム』、共立出版、〈現代数学の系譜 7巻〉、1970年。ISBN 978-4-320-01160-1
  22. ^ D・ヒルベルト著、中村幸四郎訳、『幾何学基礎論』、筑摩書房、〈ちくま学芸文庫 Math&Science 〉、2005年。ISBN 978-4-480-08953-3
  23. ^ 小平邦彦著、上野健爾解説、『幾何への誘い』、岩波書店、〈岩波現代文庫〉、2000年。ISBN 4-00-600007-3 C0141

関連項目編集

外部リンク編集

  • Geometric ArtsAesthetic Geometry Site
  • Weisstein, Eric W. "Geometry". MathWorld(英語).
  • Geometry - PlanetMath.(英語)
  • Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), "Geometry", Encyclopaedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4