千葉セクション(ちばセクション、: Chiba section)は、千葉県市原市田淵養老川沿いの露頭で見られる、約77万年前の地層。この地層は、更新世の前期と中期の境界を示すものである[1]。2017年11月に国際標準模式層断面及び地点 (Global Boundary Stratotype Section and Point, 略称:GSSP) に内定し、2018年には「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」の名称で国の天然記念物に指定された[2]

千葉セクション
年代: 約77万年前
養老川 - panoramio.jpg
GSSPより約1.5km南方の国本層が露出する養老渓谷 (2008年2月)
種別 地層
所在地
所在地 千葉県市原市田淵
座標 北緯35度17分40秒 東経140度8分47秒 / 北緯35.29444度 東経140.14639度 / 35.29444; 140.14639
日本の旗 日本
プロジェクト:地球科学Portal:地球科学

概要編集

「千葉セクション」は上総層群国本層中の地層である[3][4]。更新世の前期と中期の境界は、地球史上これまでで最後の地磁気逆転松山‐ブリュンヌ逆転)が起きた時期である[3]。田淵の露頭で見られる地層は、この時期に海底で堆積した地層で、逆磁極期から過渡期(磁極遷移帯)を経て正磁極期に移っていく様子が、連続して分析・観察できる[5]。77万年前に起こった御嶽山噴火による火山灰層(白尾火山灰)があり、ちょうど地磁気逆転の時期の目印となっている[5]

本件地層は「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」の名称で、2018年に国の天然記念物に指定された[2]

沿革編集

国際標準模式層断面及び地点 (Global Boundary Stratotype Section and Point, 略称:GSSP) として認められるためには、いくつかの推奨条件が示されている。とくに「海底下で連続的に堆積した地層であること」、「地層中に、これまでで最後の磁場逆転が記録されていること」、「地層の堆積した当時の環境変動が詳しく分かること」の3点が重要であり[3][6]、また「誰でも見られる場所にあること」も重視される[6]。「千葉セクション」はこれらを満たす有力な地層である(ほかにイタリアの2地層が候補に挙げられた)。

日本の科学者は、国際標準模式層断面及び地点推薦に当たって、過去70年にわたって発表された(日本語で発表されたために海外の研究者が利用できなかった)研究論文をまとめた論文を国際学術誌に発表[3]、また千葉セクションから見つかった白尾火山灰層の年代測定を行い、地磁気逆転の年代を高精度で決定する[3](それまでの定説(約78万年前)を見直すものとなった[7])など、2017年11月に国際標準模式層断面及び地点として適していることを示すための布石を打った。

地質時代編集

77万年前から12万6000年前にかけての地質時代(中期更新世)が「チバニアン」(千葉時代)と命名される見通しであると報じられた[8][9]

他方では、楡井久茨城大学名誉教授)らが、国際標準模式層断面及び地点としての登録申請に不適切な部分があり認められないと国際地質科学連合に提訴したが[10]、国際地質科学連合はGSSPとして認めた。しかし楡井は2018年に現地の民有地の所有者から前年の内から借地権を取得し、認定の要件のひとつである現地への自由な立ち入りを認めないことを2019年5月に公表したため、登録は極めて困難になったと報道された[11]

これに対し市原市は6月、研究を目的とした現地への立ち入りを拒否することを禁じる条例を9月の市議会に提案すると発表し、現地周辺[注 1]に市長の許可を得て試料採取のため立ち入る研究者への妨害行為を禁じる内容の条例案を9月5日に提出[12]、19日に可決成立した[13][14]

なお、市原市が7月1日~31日に上記の条例案に対するパブリックコメントを募集したところ、市内外から57件の意見が寄せられ、賛否を明確にした意見の94%にあたる51件が「賛成」であった[15]。これに対し市長の小出譲治は「最低限の私権の制限について、大きな反対意見は無かった」と見解を述べている[15]

関係各所のこうした努力も実を結び、2020年1月17日、釜山で開かれていた国際地質科学連合の会合において、チバニアンの名称が最終承認された[16]

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 楡井が借地権を取得した土地も含まれている。

出典編集

  1. ^ 田淵の地磁気逆転期地層がGSSPに申請されました”. 市原市 (2017年6月8日). 2018年2月6日閲覧。
  2. ^ a b 史跡等の指定等について(文化庁サイト、2018年6月15日発表)、平成30年10月15日文部科学省告示第191号
  3. ^ a b c d e 千葉県市原市の地層を地質時代の国際標準として申請 認定されれば地質時代のひとつが「チバニアン」に”. 国立極地研究所 (2017年6月7日). 2018年2月6日閲覧。
  4. ^ 国際標準模式地の審査状況について ~地層「千葉セクション」の認定へ向けて~”. 国立極地研究所 (2017年11月14日). 2018年2月6日閲覧。
  5. ^ a b 市原市田淵の地磁気逆転地層 (PDF)”. 市原市 (2017年12月). 2018年2月6日閲覧。
  6. ^ a b 「千葉時代(チバニアン)」誕生なるか 日本の研究チームが市原市の地層を国際機関に申請へ”. 高校生新聞 (2016年9月10日). 2018年2月6日閲覧。
  7. ^ (プレスリリース)地球最後の磁場逆転は従来説より1万年以上遅かった 千葉県市原市の火山灰層の超微量・高精度分析により判明”. 国立極地研究所 (2015年5月20日). 2018年2月6日閲覧。
  8. ^ “チバニアン 地質年代に 77万年前、磁場逆転の痕跡”. 毎日新聞. (2017年11月13日). https://mainichi.jp/articles/20171114/k00/00m/040/038000c 2018年2月6日閲覧。 
  9. ^ 市原市田淵の地磁気逆転期地層のGSSPへの認定について”. 市原市 (2017年11月27日). 2018年2月6日閲覧。
  10. ^ 小宮山亮磨; 小林舞子 (2018年5月19日). “「チバニアン」に異議 国際学会の審査中断”. 朝日新聞・朝刊・ちば首都圏: p. 34  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  11. ^ 首都圏 NEWS WEB “チバニアン”の登録に支障も”. 日本放送協会 (2019年5月27日). 2019年5月27日閲覧。
  12. ^ 千葉)「チバニアン」認定を後押し 市原市が条例案提出 - 朝日新聞
  13. ^ チバニアン研究妨害禁じる条例成立、千葉・市原市 - 共同通信
  14. ^ 市原市養老川流域田淵の地磁気逆転地層の試料採取のための立入り等に関する条例
  15. ^ a b 市原市のチバニアン条例案 研究者の立ち入り妨害禁止 募集意見の9割「賛成」 - 東京新聞
  16. ^ “地球史の地質年代名に「チバニアン」 国際学会が決定”. 日本経済新聞. (2020年1月17日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54509170X10C20A1I00000/?n_cid=BMSR2P001_202001171427 2020年1月17日閲覧。 

関連項目編集

外部リンク編集