巡視艇(じゅんしてい)は、海上保安庁が運用する船舶のうち、基地周辺海域で警備・救難などの任務に従事する小型のもの[1]。当初は港内艇と称されていたが[1]1957年1月1日付けで現在の名称に変更された[2][3][4]

20メートル型「こまかぜ」。同型は海保史上最多の建造数を誇る。
30メートル型「わかづき」。領海警備用の高速巡視艇である。
35メートル型「あおたき」。高い消防能力を備える。

概要 編集

創設当初の海上保安庁は、極東委員会の意向を受けて、巡視船の性能と保有量について厳しい制限が課せられていた[5]。しかし港内艇であればその制限を受けないことから、名称は「港内艇」としつつも港内に限らず沿海海域の哨戒を担わせて、巡視船の不足を補うことが構想された[5]。新造艇として、まず昭和24年度より、基地周辺の制限沿海海域で哨戒を担う15メートル型そよかぜ型)の建造が開始された[5]。当初は一括してH (Harbor boat) と種別されていたが、1949年10月15日付けで、15メートル型以上の新造艇はCL (Craft large)、これに満たない艇はCS (Craft small) と種別され、従来艇の除籍に伴って1950年7月1日にHの種別は廃止された[3][4]。続いて昭和25年度から、一回り大きく、局地哨戒の根幹を成すものとして23メートル型はつなみ型)の建造が開始され[5]1951年4月1日にPC (Patrol craft) の種別が新設された[3][4]

これらのうち15メートル型CLについて、船質や艤装を変更しつつも、基本設計はそよかぜ型と同一のままで昭和50年度計画まで39隻が建造された。はるかぜ型やかぜ型ちよかぜ型のげかぜ型[5]1970年代に入ると流石に設計改訂も限界に達し、新しい規則類や民間船の高速化への対応も兼ねて、昭和52年度計画以降の建造分は新設計のやまゆり型に移行し、非公式に18メートル型と称された。平成3年度計画以降の建造分は更に大型のすずかぜ型に移行し、公称船型も20メートル型となった[6]

PCは、通常の23メートル型のほか、昭和48年度のあきづき型を端緒として航路哨戒用の特23メートル型が[7]、昭和52年度からはむらくも型を端緒として領海警備用の30メートル型とが分化して整備されることになった。特23メートル型の運用実績を踏まえて、平成4年度計画では、航路哨戒用としてさらに大型の35メートル型であるはやなみ型の建造が開始された[6]

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ a b 「海上保安庁告示第三十六号」『海上保安庁公報』号外其の十三、1949年10月19日。NDLJP:9646276/1 
  2. ^ 「海上保安庁告示第六十八号」『海上保安庁公報』356号、1957年1月9日。NDLJP:9646566 
  3. ^ a b c 海上保安庁 1979, pp. 284–285.
  4. ^ a b c 真山 2003.
  5. ^ a b c d e 徳永 & 大塚 1995, pp. 56–60.
  6. ^ a b 徳永 & 大塚 1995, pp. 120–141.
  7. ^ 徳永 & 大塚 1995, p. 100.

参考文献 編集

  • 海上保安庁 編『海上保安庁30年史』海上保安協会、1979年。 NCID BN0418998X 
  • 徳永陽一郎; 大塚至毅『海上保安庁 船艇と航空』成山堂書店〈交通ブックス205〉、1995年。ISBN 4-425-77041-2 
  • 真山良文「海上保安庁船艇整備の歩み」『世界の艦船』第613号、海人社、193-205頁、2003年7月。 NAID 40005855317 

関連項目 編集

外部リンク 編集