日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎
日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎(にってつこうはんエスジーエルスタジアムあまがさき)は、阪神タイガース(プロ野球のセントラル・リーグに加盟する球団)が2025年シーズンから二軍の専用球場(本拠地)として使用することを前提に、親会社の阪神電気鉄道(阪神電鉄)が兵庫県尼崎市の「ゼロカーボンベースボールパーク」(旧小田南公園)内で建設中の野球場。同年2月の開場を予定している。
日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎 | |
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施設データ | |
所在地 | 兵庫県尼崎市杭瀬南新町三丁目15-10 |
座標 | 北緯34度42分57.1秒 東経135度25分51.1秒 / 北緯34.715861度 東経135.430861度座標: 北緯34度42分57.1秒 東経135度25分51.1秒 / 北緯34.715861度 東経135.430861度 |
起工 | 2023年5月18日 |
所有者 | 尼崎市 |
管理・運用者 | 阪神電気鉄道 |
グラウンド |
内野 - 黒土 外野 - 天然芝 |
スコアボード | LED |
ダグアウト |
ホーム - 一塁側 ビジター - 三塁側 |
照明 | LED - 6基 |
設計者 | 久米設計 |
建設者 | 熊谷組 |
使用チーム • 開催試合 | |
収容人員 | |
約3,600人(+800人収容の臨時外野席) | |
グラウンドデータ | |
球場規模 |
グラウンド面積 - 約13,000 m2 両翼 - 95 m(約311ft) 中堅 - 118 m(約387ft) 左右中間 - 118 m(約387ft) |
概要
編集建設に至るまでの経緯や、球場の周囲に併設される二軍施設については「ゼロカーボンベースボールパーク」で詳述。
旧・小田南公園(1983年開園)が日本で初めての「防災公園」であった一方で、公園一帯が左門殿川に近いことから、「津波による浸水対策」として地盤を平均で40センチメートル嵩上げした後に建設。阪神電鉄は、球場や二軍施設を完成後に尼崎市へ寄附することや、土地の使用料を同市へ支払うことを条件に(寄附施設を含めた)園内での40年にわたる営業権を同市から与えられている[1][2]。
熊谷組による野球場建設は同社によると2か所目[注 1]でプロ野球に関する球場・二軍付帯施設としては初建設となったため、より詳細なイメージやプロ野球の育成施設として専門的な設備などを調査するために、二軍施設や甲子園球場・付帯施設を予め見学した[3]。
この球場は阪神甲子園球場(阪神タイガースの一軍本拠地)と同様の規格や設備(グラウンドサイズ、方位、内外野の黒土・天然芝、LEDを使用した照明設備など)を可能な限り再現させた球場[4][5]で、トラックマンやホークアイを甲子園球場に続いて導入[6]。スタンドに常設される観客席は3,600席で、選手の引退試合などを開催する場合には、800人まで収容できる外野場外のスペースを「立ち見席」扱いで開放する。球場の設計を手掛けた久米設計大阪支社設計本部の上席主査によれば、球場の形状は左右非対称で、タイガースファンをより多く収容できるように設計。この方針に沿って、一塁側のスタンドが三塁側のスタンドより場外へ大きく膨れるように配置したうえで、一塁側のスタンドに極力多くの座席を設けているという[7]。
また、「タイガースショップ」(阪神タイガースの公式グッズショップ)をスタンドの1階、売店を2階に配置。「タイガースショップ」では当球場限定のグッズ(サステナビリティの推進に関する製品など)も扱う予定で、公園のみの利用者も立ち寄れるように、出入口をスタンドの外側に設ける[8]。
球場の最寄り駅は大物駅(阪神本線・阪神なんば線)で、球場の敷地は駅の北側(徒歩5分圏内)に当たるものの、両方の路線の高架橋に挟まれている。スタンドの建設や防球ネットの設置に際しては、このような環境を踏まえて、阪神本線や阪神なんば線を走行中の電車の窓から場内の様子を望めるように高さなどを調整している[9]。実際には、最高で55メートル[注 2]の防球ネットを設置[11]。さらに、浸水対策の一環として、電気関連の主な設備をスタンドの2階に集約させている[12]。
球場名
編集旧・小田南公園の隣接地に生産拠点を構える日鉄鋼板が、開場に先駆けて球場の命名権を取得した。阪神タイガースとの間で二軍本拠地移転プロジェクトに関するパートナーシップ契約を熊谷組と共に締結したことに伴う取得で、契約期間中は「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」という名称を使用している[注 3][15]。
施設概要
編集球場データ
編集構造・施設面積と機能[4]
- 地上3階建て、三塁側の構造物は一塁側と非対称
- エレベーター2基、津波一時避難場所
- 面積
- 建築面積 - 6,690 m2
- 延べ床面積 - 10,812 m2
- グラウンド面積 - 13,000 m2
- グラウンド
- スコアボード - LED
- 照明塔 - LED 6基
- 防球ネット - 最高 55 m
- 収容能力 - 最大 4,400席(常設3,600席とそのうちの18席は車いす専用、外野臨時席は800人。)
施設設備
編集- 座席
甲子園球場で回収したポリエステル製ビールカップ(帝人フロンティア製造)の再生繊維をクッション材に配合した、コクヨ製造の特別仕様の座席「Centura」(センチュラ)を、客席の全座席および1塁側・3塁側のベンチに使用[16]。
- 内野席区分
- 「コクヨプレミアムシート」(バックネット裏前方の約150席)
脚注
編集注釈
編集- ^ 滋賀県の皇子山球場に次ぐ。
- ^ 当初の計画では、外野部分の高さを55メートルより低く抑えることも検討されていた。しかし、設計期間中の2021年に阪神へ入団した佐藤輝明が同年4月9日の対横浜DeNAベイスターズ戦(横浜スタジアム)で推定飛距離140メートルの本塁打を右中間の場外へ放ったことを受けて、外野部分の設計を急遽見直した[10]。
- ^ 「SGL」とは、ガルバリウム鋼板のメッキ(三次元網目構造)にマグネシウムを2%添加した鋼板の名称である。日鉄鋼板によれば、このような改良を施したSGLでは、(ガルバリウム鋼板を含めた)従来品の3倍以上の耐食性を擁することが各種の性能試験で実証されているという[13]。阪神タイガースの二軍施設の建設に際しては、以上の特性などを踏まえて、日鉄鋼板製のSGL鋼板を室内練習場などの壁面に用いている[14]。
出典
編集- ^ "小田南公園整備事業に関する基本協定の締結について" (PDF) (Press release). 阪神電気鉄道・阪神タイガース. 21 May 2021. 2024年3月10日閲覧。
- ^ “阪神二軍本拠地、尼崎移転へ 球場整備などで市と協定”. 朝日新聞デジタル. (2021年5月21日) 2024年3月10日閲覧。
- ^ “新球場からスター選手巣立って 阪神2軍施設「ゼロカーボンベースボールパーク」建設キーマン・遠藤孝治工事所長を直撃”. デイリースポーツ (2024年9月3日). 2024年10月12日閲覧。
- ^ a b 『阪神タイガースファーム施設(二軍本拠地)の尼崎市への移転が正式に決定』(プレスリリース)阪神タイガース、2021年12月22日 。2024年3月4日閲覧。
- ^ “タイガースの新二軍本拠地、甲子園と同方位、同サイズに 内野は黒土、外野は天然芝 神戸新聞”. 神戸新聞. (2021年11月29日) 2024年3月4日閲覧。
- ^ “尼崎の二軍新球場建設現場に阪神OBが集結「すごい施設ができるんやな」と糸井SA 藤川、岩田氏も来年3月の会場を心待ちに”. デイリースポーツ. (2024年3月1日) 2024年3月4日閲覧。
- ^ 『月刊タイガース』2024年5月号「新ファーム本拠地 ゼロ カーボン ベースボール パーク通信」第2回(pp.38 - 39に掲載されている岩田稔との対談記事)
- ^ 『月刊タイガース』2024年9月号「新ファーム本拠地 ゼロ カーボン ベースボール パーク通信」第6回(p.39)
- ^ “【阪神】二軍新施設で起工式 25年3月完成予定、電車内から無料観戦もできる?”. 日刊スポーツ. (2023年5月18日) 2024年3月4日閲覧。
- ^ “「新虎の穴」に輝ネット誕生!阪神佐藤輝明の打球飛距離に合わせ設計見直し”. (2021年12月23日) 2024年3月4日閲覧。
- ^ “阪神二軍の新本拠地は甲子園そっくりなグラウンド 25年2月から使用へ”. (2021年11月26日) 2024年3月10日閲覧。
- ^ "阪神タイガースファーム施設(二軍本拠地)の尼崎市への移転が正式に決定" (Press release). 阪神タイガース. 22 December 2021. 2024年3月10日閲覧。
- ^ “日鉄鋼板 2%マグネシウム添加 アルミ・亜鉛合金めっき鋼板「エスジーエル」”. 日鉄鋼板. 2024年3月2日閲覧。
- ^ “阪神二軍新球場は脱炭素化&新素材使用で若虎躍動をアシスト 百北球団社長「SGLと呼んで」”. スポーツニッポン. (2023年2月22日) 2024年3月2日閲覧。
- ^ "ゼロカーボンベースボールパークパートナー契約に合意しました。~環境に優しい持続可能な社会の実現と新たなベースボール文化の創出~" (PDF) (Press release). 阪神電気鉄道株式会社、株式会社阪神タイガース、日鉄鋼板株式会社、株式会社熊谷組. 22 February 2023. 2024年3月2日閲覧。
- ^ 『阪神甲子園球場で回収したビールカップの再生繊維をクッション材に使用した特別仕様の座席を導入します』(プレスリリース)阪急阪神ホールディングス、2024年9月26日 。2024年10月12日閲覧。
外部リンク
編集- ゼロカーボンベースボールパーク - 阪神電気鉄道(特設サイト)