武富礼衣

日本将棋連盟所属の女流棋士

武富 礼衣(たけどみ れい、1999年5月25日 - )は、日本将棋連盟所属の女流棋士。女流棋士番号は60。佐賀県佐賀市出身。中田功八段門下。龍谷高等学校卒業[1]立命館大学総合心理学部卒業[2][3]。立命館大学OIC総合研究機構客員研究員[4]

 武富礼衣 女流初段
平成30年11月、姫路市で行われた人間将棋にて
名前 武富礼衣
生年月日 (1999-05-25) 1999年5月25日(24歳)
プロ入り年月日 2018年2月7日(18歳)
女流棋士番号 60
出身地 佐賀県佐賀市
所属 日本将棋連盟(関東)
師匠 中田功八段
段位 女流初段
女流棋士DB 武富礼衣
2018年3月9日現在
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佐賀県出身の将棋棋士・将棋女流棋士は、戦前と戦後を通じて武富が初となる[5][6][7]

棋歴 編集

女流棋士になるまで 編集

幼稚園の頃、将棋を父と兄が指しているのを見て興味を抱き、将棋を始めた[8][9]。兄も後年(2023年)のアマチュア名人戦の全国大会に出場するアマ強豪となった。ちなみに兄の得意戦法も穴熊である。

小学1年であった2006年、佐賀市で開催された「将棋の日」イベントに参加し、谷川浩司に6枚落ちの指導対局を受けたのをきっかけに将棋に熱中した[10]。のちに師匠となる中田功が師範を務める福岡市の将棋道場に佐賀市から通い、棋力を磨いた[10]

中学生選抜将棋選手権全国大会に佐賀県代表として3年連続出場[11]。また、第28回全国高等学校将棋竜王戦で佐賀県代表に入り、第51回全国高等学校将棋選手権大会で女子個人3位に入った[8]

2015年9月[8]、中田功門下となり[12]関東研修会へD1入会[8][注釈 1]。2016年2月28日に行われた2月第2例会で4連勝し、直近12局で9勝3敗としてC1に昇級したが、女流棋士3級となるには研修会入会後の対局数が48に達している必要があり[14]、同年4月8日の4月第1例会で規定の対局数を満たし、女流棋士3級となる権利を得た。その後、九州研修会(2016年1月に発足していた[13])への移籍を経て、17歳の誕生日である2016年5月25日付で、関東所属の女流棋士3級となった[8]。2年以内に女流2級に昇級すると正式な女流棋士と認定される。

女流3級1年目の成績は5勝7敗で、規定には届かなかった。これによって2年目での規定達成のためには、期限までに6勝して「2年間で参加公式棋戦数の4分の3以上の勝星(11勝)を得る」を満たすか、女流1級昇級の条件を満たすことが必要となった。

2年目に入り、第11期マイナビ女子オープン予選では初戦敗退。第29期女流王位戦予選では2回戦で敗退。第40期女流王将戦では予選2回戦で敗退。上記3棋戦で2勝を挙げたのみで、本戦進出(女流1級昇級の条件)は果たせなかった。

第45期女流名人戦予選では1回戦と2回戦で勝利し、予選準決勝進出を決めると同時に(女流名人戦予選決勝進出で、女流1級昇級の条件を満たす)、公式戦通算勝ち数を9とした。

女流3級の仮資格(2年間)の期限が2018年5月に迫っており、武富は厳しい立場にあった[15]。正式な女流棋士となり、さらに女流初段への飛付き昇段・女流名人挑戦者決定リーグ入りを果たした後の3月14日、佐賀県知事を表敬訪問した武富は、仮資格の期限が迫っていた当時の心境を語った[16]

「3級から2級になかなか上がれず精神的に追い込まれましたが、下向きなことを考えないよう割り切ったら、自然と結果がついてきました。今後も、一局一局全部勝つつもりで頑張ります」 — 武富礼衣、[16]

しかし、武富は2018年2月7日、第45期女流名人戦予選1組準決勝で岩根忍に勝利し、「女流名人戦予選決勝進出(女流1級への昇級条件)」とし、「『女流棋士昇段級規定』の女流1級に該当した場合」を満たして、同日付で女流2級に昇級し、正式な女流棋士となった[7][17]。岩根はタイトル挑戦3回の実績を持ち、この前日、2月6日の第11期マイナビ女子オープン準決勝で、2017年度の女流棋戦で圧倒的な強さを見せている伊藤沙恵[18]を破った強豪である。武富は、その岩根との対局を制して、正式な女流棋士となる念願を叶えたことについて、対局後に

「実感ないです…。対局前は生きた心地がしませんでした」 — 武富礼衣、[7]

と語っている。

女流棋士として 編集

正式な女流棋士となってからの初対局は、2018年3月9日、第45期女流名人戦予選1組決勝、対戦相手は親友であり、同日に女流2級に昇級した小高佐季子で、勝った方が女流初段に飛付き昇段する一戦であった[19]。武富は得意戦法の居飛車穴熊でこの対局を制して女流名人挑戦者決定リーグ入りを決め、「女流名人リーグ入り」の昇段規定により、同日付で女流2級から女流初段に飛付き昇段した[5][19][20]

2018年4月に立命館大学に進学[21]したことに伴い、所属を関東から関西に移した[22][23]

2022年10月1日付で再び所属を関東に移した[24]

棋風 編集

居飛車党で[8]、得意戦法は居飛車穴熊[19]

人物 編集

  • 趣味はピアノ[8]。4歳でピアノを始め[12]、ピアノ講師を目指して練習に打ち込んでいた時期もあり[25]、女流棋士になってからもピアノを弾いて気分転換している[25]
  • 2018年2月7日、同日に同棋戦(第45期女流名人戦予選)で女流2級に昇級した小高佐季子(関東所属、小高が3学年下)は、同じく関東所属(研修会時代 - 高校卒業まで)であった武富が、佐賀から対局などで上京するたびに練習将棋を指し、何でも話し合える親友[25]。女流2級昇級を決めた日は、東京・将棋会館の近くのカフェで共にお祝いをした[7]。なお、普段から頻繁に連絡を取り合っている二人であるが、2月7日の時点で、次は女流名人挑戦者決定リーグ入り・女流初段昇段をかけた大勝負を戦うことが決まっていたため、3月9日の対局まで一切連絡を取らなかった[19]
  • 2021年12月20日提出期限の卒業論文執筆中に「ぎっくり首」に罹った。卒論期限まで3日しかなく首の凝りの激しさ、痛みを我慢しながら書き上げることに集中していたら、呼吸できないほどの痛みに襲われ、どうにか提出した後、タクシーで病院に行って、ぎっくり首(頸部筋筋膜炎)と診断された[26]。次対局日が迫っていて連盟に問い合わせたところ、その事情では不戦敗になる旨を告げられ、コルセットを巻いて対局に臨んだとのこと。首を曲げて前傾姿勢ができないため、盤面全体を対局中に眺め続けなければなかったが、対局に勝利した[27]
  • 将棋と平行して母校の客員研究員に就任し、「脳内将棋盤」の研究を行っている[4]

昇段・昇級履歴 編集

  • 2015年9月 関東研修会入会(D1)
  • 2016年5月25日 女流3級(関東研修会C1昇級)
  • 2018年2月7日 女流2級(女流名人戦予選決勝進出 - 『女流棋士昇段級規定』の女流1級に該当した場合)
  • 2018年3月9日 女流初段(女流名人リーグ入り)※飛付き昇段

主な成績 編集

非公式戦

出演 編集

テレビ 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 福岡市の九州研修会が2016年1月に発足する前であり[13]、武富の父が東京に単身赴任していたため[12]、関東研修会入りを選択した[12]。研修会例会(毎月2回、日曜)の前日の土曜日に飛行機で上京して東京の父の家に泊まり、次の日の例会に出席していた[12]

出典 編集

  1. ^ 武富礼衣 @ReiShogi のツィート」『Twitter』、2018年3月1日。2018年4月5日閲覧。オリジナルの2018年4月5日時点におけるアーカイブ。
  2. ^ 武富礼衣 @ReiShogi のツィート」『Twitter』、2018年4月2日。2018年4月2日閲覧。オリジナルの2018年4月2日時点におけるアーカイブ。
  3. ^ 武富礼衣 (2022年3月21日). “ツイート”. Twitter. 2022年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月24日閲覧。
  4. ^ a b 女流プロ棋士の武富礼衣初段が講演 母校の龍谷高校の教え「対局中に心がけ」 龍谷高時代や将棋の楽しみ方紹介 | まちの話題 | 佐賀新聞ニュース”. 佐賀新聞 (2023年11月3日). 2023年11月3日閲覧。
  5. ^ a b 女流プロ棋士・武富さん初段に 知事に報告”. 朝日新聞 (2018年3月15日). 2018年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月15日閲覧。
  6. ^ 龍谷高3年武富さん、県内初のプロ棋士に”. 佐賀新聞 (2018年2月8日). 2018年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月8日閲覧。
  7. ^ a b c d 高校3年と中学3年女流棋士が新たに誕生!終局後にカフェで祝福”. スポーツ報知 (2018年2月6日). 2018年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月7日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g 武富礼衣さんが女流棋士3級に”. 日本将棋連盟 (2016年5月25日). 2018年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月15日閲覧。
  9. ^ 待ち望んだ夢の対決 武富礼衣女流初段が語る王将戦と将棋への思い”. 毎日新聞. 2023年3月11日閲覧。
  10. ^ a b 田丸昇「盤上盤外一手有情」、『将棋世界』(2016年11月号)、日本将棋連盟 pp. 132-140
  11. ^ 本大会出場のプロ棋士”. 全国中学生選抜将棋選手権大会. 2020年10月8日閲覧。
  12. ^ a b c d e 母からの“将棋ネックレス”支えに…19歳女流棋士の挑戦」『女性自身』、2018年6月23日。2018年6月24日閲覧。オリジナルの2018年6月24日時点におけるアーカイブ。
  13. ^ a b 日本将棋連盟九州研修会開設のお知らせ”. 日本将棋連盟 (2015年9月9日). 2018年6月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月24日閲覧。
  14. ^ 山根ことみ研修会員が女流棋士3級の資格を取得」『日本将棋連盟』、2013年9月10日。2018年6月24日閲覧。オリジナルの2018年7月23日時点におけるアーカイブ。
  15. ^ 大川慎太郎「公式棋戦の動き - 第40期霧島酒造杯女流王将戦」、『将棋世界』(2018年3月号)、日本将棋連盟 pp. 180-189
  16. ^ a b 県内初プロ女流棋士が意気込み”. 日本放送協会佐賀放送局 (2018年3月14日). 2018年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月16日閲覧。
  17. ^ 武富礼衣女流3級が女流2級に|将棋ニュース|日本将棋連盟”. 日本将棋連盟 (2018年2月7日). 2018年2月8日閲覧。
  18. ^ 相崎修司「里見、挑戦者を圧倒 - 第44期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局」、『将棋世界』(2018年3月号)、日本将棋連盟 pp. 124-130
  19. ^ a b c d 武富女流2級が女流初段昇段と女流名人リーグ入り”. スポーツ報知 (2018年3月9日). 2018年3月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月9日閲覧。
  20. ^ 武富礼衣女流2級が女流初段に昇段”. 日本将棋連盟 (2018年3月12日). 2018年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月15日閲覧。
  21. ^ TIMES, ABEMA (2020年7月25日). “将棋女流棋士のリモートな大学ライフ WEB授業&テストなしで連日の「レポート地獄」 | ABEMA TIMES”. ABEMA TIMES. 2021年10月17日閲覧。
  22. ^ 武富礼衣 @ReiShogi Twitter のプロフィール(2018年6月24日現在)”. Twitter. 2018年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月24日閲覧。
  23. ^ 関西本部所属棋士-現役棋士-女流棋士-女流初段”. 関西将棋会館 公式サイト. 2018年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月24日閲覧。
  24. ^ https://twitter.com/reishogi/status/1563090686534381571”. Twitter. 2022年11月3日閲覧。
  25. ^ a b c 【王手報知】女子高生・武富礼衣、女子中学生・小高佐季子の親友2人が女流2級へ同時昇級”. スポーツ報知 (2018年2月19日). 2018年2月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月20日閲覧。
  26. ^ 『3/12(土) 武富礼衣女流初段 オンライン「トークライブ!」(卒論発表スペシャル)前編』にて明かされた卒論との格闘. YouTube. コマラボ. 12 March 2022. 2022年11月4日閲覧
  27. ^ 2021年12月の対局結果”. 日本将棋連盟. 2022年11月4日閲覧。
  28. ^ 武富礼衣のポスト”. X(旧Twitter) (2024年2月7日). 2024年2月8日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集