ハイパーマーケット(Hypermarket)とは、衣食住全てを扱う郊外立地の倉庫型・集中レジ方式の総合スーパーの1つの形態であり[1]フランスカルフールの主力業態となるなど主にヨーロッパで広く見られる小売業態で、米国ではスーパーセンターの名称で呼ばれている。

ハイパーマーケット最大手のカルフールの外観

フランスでは、ハイパーマーケットは売り場面積2,500m2以上、スーパーマーケットは 400〜2,500m2、そして400m2未満をミニマーケットとしており、広い売場面積を持つ店舗形態とされている[2]

概要 編集

 
ハイパーマーケットの店内

世界に先駆け、フランスのカルフールがハイパーマーケット形態の店舗を出店したことで知られる[3]

ハイパーマーケットでは総合食品・日用品を中心に据え、その他に衣料、DIY用品、書籍、玩具などを含めた多岐にわたる商品を倉庫をそのまま店舗として使用しているような大きなスペースに陳列する。顧客は購入希望の商品を用意されているショッピングカートに乗せて集め、出口ゲートを兼ねたレジにおいて決済手続きをする[4]。専門の売り場ごとに決済をするゼネラルマーチャンダイズストアとはこの点が大きく異なる部分である。

そうしたセルフサービスの導入の一方で、精肉などの生鮮食料品については店内に売場から見える加工場を設けてビジュアル的なインパクトや新鮮さを演出する工夫が当初から為されている[5][6]

この業態は典型的な郊外型の店舗であり、屋上または周囲に大規模な駐車場を設けてあり[7]、まとめ買いをする顧客をターゲットにしている[8]。建物の外装には余りコストをかけず天井がむき出し(配管などが見える状態)であることが多く[9]、ショッピングカートで移動しやすいことに着眼点のある売り場設計がなされていて、1階から多くても3階建ての建物で各フロアの面積が広い。加えてエスカレータはショッピングカートをそのまま乗せることができる斜度が低くステップが段差にならないものが使用される。

衣料品でプライベートブランドノーブランド品が多くするなどほとんどの商品で大量仕入れを活用してコストダウンを図っている[10]ほか、店舗外装にコストをかけないようにしているため、スーパーマーケットなど他の形態の店舗の販売価格よりは商品が15 - 20%安く売られている場合が多い[11]、まとめ買いをする顧客をターゲットにしている[12]

カルフールはアメリカ・日本進出も図ったが撤退した。特に日本に関しては冷蔵庫代わりに利用できるほど食品スーパーが発達し、狭い商圏で成立しているという事情から、まとめ買いを狙った商圏の大きな業態であるハイパーマーケットという業態は競争力に欠け、成功し難いとされる[13]。事実、カルフールのほか過去にダイエーも「ハイパーマート」の名で展開していたが、やはり経営不振となり、撤退している[14]

衣料品や家電製品などの非食品分野についても、日本では家電量販店ホームセンターしまむらユニクロのような専門チェーン店(いわゆるカテゴリーキラー)に比べ、品揃えや品質・サービス面などで劣るため成立し難い業態という意見がある[15]

脚注 編集

  1. ^ 「郊外立地の倉庫型店舗、レジの集中化など…セルフサービス販売方式の利点を最大限に活用し、同時にディスカウントストアから習得した最低のマージンおよび高い回転率を実現することは、「一つの屋根の下であらゆる部門の商品を取扱う(toutsouslemimetoit)」というハイパーマーケットの基本的な考え方を支えることになった。」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会2004年9月
  2. ^ 「ハイパーマーケットは売り場面積 2,500m2以上、スーパーマーケットは 400 - 2,500m2、そして400m2未満をミニマーケットと呼ぶ。」「平成19年度農林水産物貿易円滑化推進事業のうち品目別市場実態調査(結果)」 農林水産省食料産業局産業連携課海外展開・輸出促進室
  3. ^ 「1963年、サント=ジュヌヴィエーヴ=デ=ボワ(Sainte-Geneviève-des-Bois)にカルフールの店舗名で世界初のハイパーマーケットをオープンした。」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会 2004年9月
  4. ^ 「倉庫型店舗、レジの集中化など…セルフサービス販売方式の利点を最大限に活用し…「一つの屋根の下であらゆる部門の商品を取扱う」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会 2004年9月
  5. ^ 「店から見える精肉のバックヤードは、その当時、インパクトの大きいイノベーションであった」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会 2004年9月
  6. ^ 「生鮮5品(鮮魚・精肉・青果・ベーカリー・デリカ)を中心に対面の市場方式を基本とし…作業場・加工場をオープンにすることにより、加工・調理している雰囲気を製造小売の新鮮さ(つくりだての商品)とオリジナル性(当店の独自商品)を「ビジュアル的に演出」「流通とSC・私の視点(214)ハイパーマーケット業態とは(その1)!!」 六車秀之 2000年12月29日 ウェブサイト
  7. ^ 「大きな売場と駐車場、低価格政策や郊外型立地などに特徴づけられるハイパーマーケット」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会2004年9月
  8. ^ 「ハイパーマーケットは、「ロット志向」(大規模単位売り)、「ボリューム志向」(同一商品の山積型陳列)」「流通とSC・私の視点(214)ハイパーマーケット業態とは(その1)!!」 六車秀之 2000年12月29日 ウェブサイト
  9. ^ 「倉庫型店舗…m2当たりの建設費用も既存の伝統的小売商の4分の1」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会2004年9月
  10. ^ 「衣料品は自社開発のPB商品、ノーブランド商品で構成されている。殆どの製品はスケールメリットを生かした廉価製品で、製品は低コスト」「フランスの毛織物市場調査報告書」日本貿易振興機構市場開拓部 2004年8月
  11. ^ 「大型店は「流通工場(usineEtdistribuer)」と呼ばれていたが、それは大量生産丁場に対応するということで、セルフサービス方式の大量流通を意味していた。初期投資費用においても、土地代が80万フランで、m2当たりの建設費用も既存の伝統的小売商の4分の1に相当する1000フランに制限することにした。…このような新しい業態の低費用構造は、伝統的食料品店より15-20%安い価格で販売できる仕組みを可能にしたのである」「フランス的小売業態の国際移転プロセス - 取り込み型国際移転から持ち込み型国際移転へ -」 白貞壬 フランスESCp-EAPLECERIDICE客員研究員 季刊マーケティングジャーナル第24巻第2号 日本マーケティング協会2004年9月
  12. ^ 「ハイパーマーケットは、「ロット志向」(大規模単位売り)、「ボリューム志向」(同一商品の山積型陳列)」「流通とSC・私の視点(214) ハイパーマーケット業態とは(その1)!! 」 六車秀之、2000年12月29日
  13. ^ 「アメリカではウォルマートがハイパーマーケットUSA、Kマートはアメリカンフェアを開発しその後業態転換し、また、フランスからアメリカへ進出したカルフールも撤退して一時的な話題で終焉しました。…冷蔵庫代わりの食料品業態が確立されていると、マトメ買い型の食料品業態は成立困難」「流通とSC・私の視点(215) ハイパーマーケット業態とは(その2)!!― 視点214より続く ―」 六車秀之、2000年12月29日 ウェブサイト
  14. ^ 「わが国でもダイエーがハイパーマーケットを真似して二見店を中心にハイパーマートを全国展開しましたが完全に失敗しました。」「流通とSC・私の視点(215) ハイパーマーケット業態とは(その2)!!― 視点214より続く ―」 六車秀之、2000年12月29日 ウェブサイト
  15. ^ 「衣料品ではニューファミリー層への品揃えの限定が目立ち、婦人衣料等、ヤングや団塊世代、シニア層は買うものが無い。婦人衣料ではテイストも絞られており、品揃えのバラエテイは極めて限られる。子供衣料はまだましだが、全体では最近の大型化した“しまむら”ほどもスペースがあるのに、品揃えのバラエテイはその三分の一もない。数パーセント含まれるオリジナルの“TEX”は素材や縫製は許容ギリギリ…ハウスウエアについても、HCの方が遥かに品揃えが豊富だし、GMSでついで買いする方が便利だ。アプライアンスに関しても、品揃えもともかく商品説明やアフターサービスのインフォメーションをあれだけ欠いては、家電のカテゴリーキラーの敵とはなり得ない。」「早くも撤退が危ぶまれるカルフールに学ぶべきこと」(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔 ファッション販売、2001年3月号

外部リンク 編集