フィラデルフィア市庁舎

フィラデルフィア市庁舎(フィラデルフィアしちょうしゃ、英語: Philadelphia City Hall)はアメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア市庁舎である。市役所の他にもフィラデルフィア市議会フィラデルフィア市長の事務室としても機能している[5][6]

フィラデルフィア市庁舎
フィラデルフィア市庁舎
フィラデルフィア市庁舎の位置(フィラデルフィア内)
フィラデルフィア市庁舎
フィラデルフィア市庁舎
フィラデルフィア市庁舎の位置(ペンシルベニア州内)
フィラデルフィア市庁舎
フィラデルフィア市庁舎
フィラデルフィア市庁舎の位置(アメリカ合衆国内)
フィラデルフィア市庁舎
フィラデルフィア市庁舎
フィラデルフィアにおける位置
高さ記録
世界一高い建築物 (1894年から1908年まで)[I]
先代 ウルム大聖堂
次代 シンガー・ビルディング
概要
現状 完成
所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア
トッピングアウト 1894年[1]
完成 1901年[1]
高さ
最頂部 548 ft (167 m)[1]
技術的詳細
階数 9階[2]
フィラデルフィア市庁舎
1899年撮影のフィラデルフィア市庁舎
所在地ペンシルベニア州フィラデルフィア
座標北緯39度57分08秒 西経75度09分50秒 / 北緯39.95225度 西経75.16389度 / 39.95225; -75.16389
面積58,222 m2 (630,000 ft2)[4]
建設1871年から1901年
建築家ジョン・マッカーサー・ジュニア
トーマス・ウォルター
建築様式第二帝政期建築
NRHP登録番号76001666[3]
NRHP指定日1976年12月8日
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フィラデルフィア市庁舎は、レンガ、白い大理石、そして石灰岩で作られており、世界最大の独立石積み建造物である。1976年には国定歴史建造物に指定され、2006年には米国土木学会によって歴史的土木工学ランドマークに指定された[7]

歴史と説明 編集

 
建設中の市庁舎。1881年撮影

市庁舎はスコットランド出身の建築家であるジョン・マッカーサー・ジュニアトーマス・ウォルターによって第二帝政期建築で設計された[8]。建築は1871年から1901年まで2400万ドルをかけて進められ、外観は1894年に完成したものの[1]、内装の完成は1901年までかかった。当初、市庁舎は世界で最も高い建築物になるように設計されたが、建設中にワシントン記念塔エッフェル塔が上回ったため、完成したときには世界で最も高い「居住可能な」建築物になった[9][10]。また、今までの世界で最も高い建物は、ヨーロッパの大聖堂やギザの大ピラミッドのように全て宗教的な建物だったため、市庁舎は初の世俗的な世界で最も高い建物となった。

市庁舎の所在地として選ばれた場所は、ペンシルベニアの建設者であるウィリアム・ペンによって造成された5つの都市型公園のうちの1つで、他の4つのちょうど中心にあたる公園だった。これは後にペン・スクエアと改称される。マッカーサーとトーマスは第二帝政様式で設計したため市庁舎は石積みの建物となり、最大6.7mものレンガの壁で自重を支えている。

市庁舎の高さは、天辺にそびえるウィリアム・ペンの銅像も含めて167mであり、これは1894年から1908年までの間、世界で最も高い「居住可能な」建築物であった。世界一の座を失ってからも、ペンシルベニア州内では1932年にガルフ・タワーが出来るまで、フィラデルフィア市内では、1986年にワン・リバティ・プレイスが出来るまでは最も高い建築物だった。

市庁舎は1871年から1901年の長きにわたって建設されており、8,800万個のレンガ、数千トンもの大理石と花崗岩が用いられた。部屋は700室以上あり、これは米国内はおろか世界で最も巨大な市庁舎のうちの一つである[11]。この市庁舎内には3つの機関があり、それぞれフィラデルフィア市長室をトップとする市の行政機関、立法機関たるフィラデルフィア市議会、司法機関たるペンシルベニア裁判所である。

目を引く巨大な塔の両側には、ウォーレン・ジョンソンの設計で1898年に設置された直径7.9mの時計があり[12][13]、これはビッグ・ベンの直径7mよりも大きい[14]

1992年のはじめ、市庁舎には歴史的保存建築家であるハイマン・マイヤーズらが率いる団体による外観修復が施された[15]。修復は2007年までに大部分が完了したが、2015年12月には元の建築図案に基づいて4つの新しい中庭の門を設置するなど、作業が継続されている[16][17][18]

ウィリアム・ペン像 編集

 
地上に置かれたウィリアム・ペン像

市庁舎の頂点には11mのウィリアム・ペンの銅像が直立している[1]。これは市庁舎の彫刻を手掛けたスコットランド出身の芸術家アレクサンダー・ミルン・カルダーによって作られたものである。この像は北東フィラデルフィアのタコニー製鉄所で鋳造され、1894年に塔の頂上に設置された[1]。この像は建物の頂上にあるものとしては世界で最も高い[1][19]。市は風化による劣化を軽減するためにおおよそ10年ごとに銅像を掃除することを義務付けている。像は中空で、その中には帽子に繋がる狭いトンネルがある[20]

この銅像より高い建物を建てないという紳士協定によって市庁舎は1986年にワン・リバティ・プレイスが建てられるまでフィラデルフィアで最も高い建物だった[21]。この協定の廃止は地元のプロスポーツチームに呪いをもたらしたとされている。像には地元のプロスポーツチームのグッズが付けられることがあるが、1993年にはフィラデルフィア・フィリーズのキャップが、1997年にはフィラデルフィア・フライヤーズのジャージが付けられたが、両チームとも敗北した[22]。2017年に別のウィリアム・ペン像が、フィラデルフィアで最も高い建物であるコムキャスト・テクノロジーセンターに設置されると、その数か月後、フィラデルフィア・イーグルススーパーボウルで優勝した[23]

ギャラリー 編集

脚注 編集

注釈 編集

I 高層ビル・都市居住協議会は「居住可能な」の定義として「構造的に完全に覆われ、ビジネスに開放されているか少なくとも部分的に占有可能か」と示している[24]。フィラデルフィア市は1889年に入居し[9]、ペンシルベニア最高裁判所は1891年に入居[10]。建物は1894年にトッピング・アウトした[1]

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h "National Register of Historic Places Inventory - Nomination Form". (archive) National Park Service. pp. 2, 10. Retrieved November 9, 2017. "The tower rising 548 feet, City Hall was the highest occupied building in America…Construction lasted for thirty years (1872-1901); the building was occupied in stages over a period of twenty-two years (1877-1898)…The statue was…hoisted to the top of the tower in fourteen sections in 1894."
  2. ^ "City Hall virtual tour room directory". phila.gov. City of Philadelphia. Retrieved December 2, 2018.
  3. ^ National Park Service (15 March 2006). "National Register Information System". National Register of Historic Places. National Park Service. {{cite web}}: Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明)
  4. ^ Philadelphia City Hall”. 2016年11月12日閲覧。 Technical specs of City Hall
  5. ^ Visit City Council” (英語). Philadelphia City Council. 2020年10月16日閲覧。
  6. ^ Office of the Mayor” (英語). phila.gov. City of Philadelphia. 2020年4月29日閲覧。
  7. ^ asce_news_Philadelphia City Hall Named as Historic Landmark” (英語). 2007年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年4月3日閲覧。
  8. ^ "National Register Digital Assets - Philadelphia City Hall". nps.gov. National Park Service. December 8, 1976. Retrieved March 9, 2018.
  9. ^ a b ""History of City Hall: 1886-1890". (archive) Retrieved November 9, 2017. "1889: Mayor Fitler moves into completed offices on west side."
  10. ^ a b "History of City Hall: 1891-1901". (archive) Retrieved November 9, 2017. "1891: State Supreme Court opens in permanent courtroom."
  11. ^ Philadelphia City Hall, Philadelphia”. Emporis (2011年). 2011年3月3日閲覧。
  12. ^ City Hall Virtual Tour”. phila.gov. City of Philadelphia. 2018年5月21日閲覧。
  13. ^ City Hall: Trivia & Fun Facts: The Tower: The Clock (four faces)”. 2010年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月21日閲覧。
  14. ^ "Big Ben:The Clock Dials". parliament.uk. イギリス議会. Retrieved May 21, 2018.
  15. ^ Fish, Larry (1999年4月15日). “City Hall Sets Up Eight-year Plan To Clean Up Its Act $130 Million Project To Restore Building's Luster”. philly.com. Philadelphia Media Network (Digital), LLC. 2016年3月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月17日閲覧。
  16. ^ Adams, Jennifer (2012年). “Reviving A National Landmark”. 2016年2月17日閲覧。
  17. ^ Marsh, Bill (2006年7月25日). “People Stop Fighting Philadelphia City Hall”. www.nytimes.com. 2016年2月17日閲覧。
  18. ^ Harris, Linda K. (2015年9月9日). “First of Four Monumental Portal Gates Installed at City Hall”. centercityphila.org. Center City District | Central Philadelphia Development Corporation | Center City District Foundation. 2016年2月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月17日閲覧。
  19. ^ Trinacria, Joe (May 17, 2017). "William Penn Is Getting a Facelift" (archive). phillymag.com. Philadelphia Magazine. Retrieved November 13, 2017.
  20. ^ "William Penn Statue". (archive) Retrieved November 13, 2017.
  21. ^ “Billy Penn no Longer the High Spot”. The Philadelphia Inquirer: pp. B01. (1986年9月11日) 
  22. ^ Witmer, Ann (April 26, 2013). "Philadelphia's City Hall Tower offers a stunning 500-foot view: Not far by car". pennlive.com. Retrieved December 8, 2017.
  23. ^ Bergman, Jeremy (2018年2月4日). “Eagles QB Nick Foles wins Super Bowl LII MVP”. National Football League. オリジナルの2018年2月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180205084920/http://www.nfl.com/news/story/0ap3000000914463/article/eagles-qb-nick-foles-wins-super-bowl-lii-mvp 2018年2月4日閲覧。 
  24. ^ "CTBUH Height Criteria: Building Status - Complete" (archive.org). ctbuh.org. Council on Tall Buildings and Urban Habitat. Retrieved November 27, 2018.

外部リンク 編集