共和党 (アメリカ)

アメリカ合衆国の政党

共和党(きょうわとう、英語: Republican Party)は、アメリカ合衆国の政党民主党と並ぶ現代のアメリカ合衆国二大政党の一つである。 別名でGOP(Grand Old Party)とも呼ばれる[23]

アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国政党
共和党
Republican Party
GOP logo.svg
全国委員長 ロナ・マクダニエル
合衆国大統領 ドナルド・トランプ
下院院内総務 ケビン・マッカーシー
上院院内総務 ミッチ・マコーネル
成立年月日 1854年3月20日(166年前)[1]
前身政党 ホイッグ党[2]
自由土地党[3][4][5]
本部所在地 ワシントンD.C.の旗 ワシントンD.C.
北緯38度53分7.5秒 西経77度0分20.1秒 / 北緯38.885417度 西経77.005583度 / 38.885417; -77.005583
合衆国下院議席数
199 / 435   (46%)
(2019年1月3日現在)
合衆国上院議席数
53 / 100   (53%)
(2019年1月8日現在)
党員・党友数
3045万人(有権者登録届出数)[6]
(2016年2月)
政治的思想・立場

保守主義[注 1][8][9]
ネオリベラリズム[10]
財政保守主義[11]
社会保守主義[12]
経済的自由主義[13]
連合主義[14][15]
中道右派

党派:
 • 旧保守主義[16]
 • 新保守主義[17]
 • 中道主義[18]
 • リバタリアニズム[17]
 • 自由放任主義[19]
 • 右派ポピュリズム[20][21]
公式サイト Republican・National・Committee
シンボル Republican Disc.svg
ゾウ
公式カラー    
国際組織 国際民主同盟[22]
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1854年南部奴隷制に反対する北部の運動の連合体として結党。1860年大統領選挙リンカーンを同党最初の大統領に当選させて以降、第三政党制第四政党制の間に民主党を圧倒して支配的立場にあった。現在の第五政党制下では民主党と拮抗して政権交代を繰り返している。

初期は進歩主義的だったが20世紀半ばまでに保守政党化した[24]。現在では一般に民主党を「リベラル」、共和党を「保守」に分類する[23]市場経済を重視し、政府の市場介入を最小限にする「小さな政府」を党の基本理念としている[23]

支持基盤は当初は北部の商工業者や農民だったが[25]、保守政党化とともに変動し、現在は民主党が都市部を基盤としているのに対し、共和党は中西部や南部の農村地帯を基盤としている[23]

これまでに19人の共和党大統領(2016年大統領選挙で選出された現大統領ドナルド・トランプを含む)が誕生しており、この数はどの政党よりも多い。2020年現在、同党は大統領職、上院の過半数、州知事職の過半数、州議会の過半数(29)、21の州政府のトライフェクタ(知事職と両議会)を支配している。現職の合衆国最高裁判所判事9人のうち6人は、共和党の大統領によって指名された。

党のイメージカラーはで共和党が強い州を「赤い州(red state)」と呼ぶ[23]。党のシンボルはゾウ1860年大統領選挙においてリンカーンが党の強さの象徴としてゾウを新聞に掲載したのが始まりとされており、その後風刺画家トーマス・ナストが共和党をゾウになぞらえたことで広まり[23]、1870年代に党のシンボルとして採用された[19]

党史編集

米共和党が誕生する1850年代のアメリカでは、南部においては黒人奴隷を使役してのプランテーション経営が行なわれていたのに対し、急速に工業化する北部においては「自由な労働」という理念が広がっていた。しかし当時の北部の人々の意識は依然として農本主義的であり、安価で豊富な土地が残されていた西部への進出を望む人が多かった。そのため北部では、南部農場主が西部に進出するのを防ぐ目的で「自由な労働」理念と結びついた「自由な土地」(「奴隷制に汚染されていない土地」という意味)理念が盛んに唱えられるようになり、奴隷制をめぐる北部と南部の対立が深まった(北部の反奴隷制の理念は現代的な人道主義の観点から生まれたわけではなく、あくまで北部による西部の土地獲得が目的だった点に注意)[26]

当時(第二政党制期)の二大政党民主党ホイッグ党は共に南部選出議員を抱えていたので南部の利害に配慮し、北部の支持を失って衰退(特にホイッグ党は解党に向かう)、自由土地党などの第三政党の党勢拡大がみられるようになった[27]

1854年5月に民主党政権はカンザス準州ネブラスカ準州の組織を定めたカンザス・ネブラスカ法を制定したが、同法は南部選出議員に配慮し、奴隷制の是非について当該準州の住民の決定に委ねるとした条文を含んでおり、これはミズーリ妥協の原則だった三十六度三十分以北への奴隷制の拡大禁止の合意を破棄するに等しい内容だった[28]

 
共和党の最初の大統領エイブラハム・リンカーン

そのため北部では同法への激しい反対闘争が展開され、その闘争の中から民主党やホイッグ党、自由土地党などの元党員も含んで反奴隷制、反民主党の連合勢力として結成されたのが共和党だった[29]。1854年5月にウィスコンシン州リポン英語版において新党結成が提言され、同年7月にミシガン州ジャクソンの党大会で正式に共和党が発足した[19]。共和党は全州にまたがっていた民主党と違い、北部のみを地盤とする「地域政党」だったが[30]、成立から4年にしてホイッグ党に取って代わる民主党の対抗勢力に成長し[19]1860年大統領選挙では民主党が奴隷制問題をめぐって北部と南部に分裂したのを機として、党候補エイブラハム・リンカーンが北部と西部の州を押さえて当選を果たした[31]。リンカーンの当選に南部諸州は強く反発し、南北戦争の発端となった[32]1865年南北戦争が北軍の勝利に終わった後、リンカーンと議会共和党の主導で制定された憲法修正13条によって奴隷制は禁止された[33]

南北戦争後も北部の商工業者や農民[25]、あるいは北部の福音主義敬虔主義プロテスタント(アメリカ生まれの市民の多数を占める)は、「改革」の党である共和党を支持し続け[34]世界大恐慌までのほとんどの期間を共和党が政権を担当した[35]。南北戦争後の共和党は資本家政党の性格を強め、大企業の利益を擁護し、外交面においては対外積極策を展開した[35]。特に大陸内のフロンティア征服が完了した19世紀末からは積極的な帝国主義外交・対外膨張政策をとり、アメリカを列強国家へと導いた[36]

もともと共和党は進歩主義政党だったが、20世紀前半に革新主義が離脱。特に1929年の世界大恐慌後はニューディール政策をとった民主党が都市部や革新層を掌握するようになり、結果フランクリン・ルーズベルトハリー・トルーマンの20年以上にわたる民主党政権を許すことになった[37]。民主党の左傾化と入れ替わるように共和党は保守化を強めていった[24]

第二次世界大戦後、反共主義が高まり、1952年大統領選挙では民主党人気の凋落と当時NATO司令官だったドワイト・アイゼンハワーの担ぎ出しに成功したことが功を奏し、アイゼンハワーを当選させて久しぶりの共和党政権が誕生した[38]。アイゼンハワーは2期8年を全うした。

1960年から1968年にかけて民主党に政権を奪われたが、黒人公民権運動の高まり以降、共和党は「法と秩序の回復」をスローガンにしたり、黒人公民権に否定的な立場を取ることによって、長年民主党の地盤であった南部に本格的に進出するようなった。1968年の大統領選挙で当選したリチャード・ニクソン以降は南部を地盤に大統領を輩出するようになった[39]。南部保守主義や軍需産業、キリスト教右派が共和党の支持基盤となっていき[24]ベトナム戦争後の1970年代には「強いアメリカ、小さな政府」を掲げて次第に勢力を回復していった[35]

 
共和党の小さな政府路線を決定づけたロナルド・レーガン

1974年にニクソンがウォーターゲート事件で辞職した後、副大統領ジェラルド・R・フォードが大統領に昇格したが、1976年大統領選挙で民主党のジミー・カーターに敗北。しかし1980年大統領選挙ではカーターの再選を阻止して党候補ロナルド・レーガンを当選させた。以降レーガン政権2期8年、父ブッシュ政権1期4年の計12年にわたる長期の共和党政権が続く[37]。レーガン政権期には「レーガノミクス」と呼ばれる大規模な規制緩和と減税政策が行われ、「小さな政府」が強力に推進された[23]

1992年大統領選挙で現職の父ブッシュがビル・クリントンに敗れて政権を失い、1996年大統領選挙でも政権奪還に失敗したが、2000年大統領選挙では党候補子ブッシュがクリントン政権の副大統領だった民主党候補アル・ゴアを破って当選、2004年大統領選挙でも子ブッシュが再選した。しかし2006年の中間選挙では上下両院の過半数を民主党に奪われた[37]

2008年大統領選挙では党候補ジョン・マケインが民主党候補バラク・オバマに敗れて政権を失った。しかし2010年の中間選挙では共和党が下院の過半数を獲得した。2012年大統領選挙ではミット・ロムニー候補を立てて現職オバマに挑むも「白人・富裕層寄り」という評価を覆せず敗北。だが同時に行われた下院選は議席を増して過半数を維持し、政権チェック機能を残した。2014年の中間選挙では下院の議席をさらに伸ばして247議席を獲得し、第二次世界大戦後最多の勝利を得た。上院でも過半数を獲得した[37]

2016年大統領選挙では党候補ドナルド・トランプが、民主党候補の元ファーストレディ(米大統領夫人)ヒラリー・クリントンに対して得票数で劣るも獲得選挙人数で勝利して当選。これにより8年ぶりに政権復帰。しかし2018年中間選挙では上院で過半数を維持したものの、下院の過半数は失った[40]。 2020年の大統領選挙には再選を目指すトランプが党候補として出馬したが、主要メディアによって落選が報じられている[41]

共和党の傾向と民主党との差異編集

当初の共和党は、南部保守主義の影響を受ける民主党に相対する存在として、北部進歩主義の影響を受けて古典的自由主義を支持し、奴隷制の拡大に反対し、経済改革を支持した[42][43]。しかし1912年以降、党はイデオロギー的に右にシフトした[44]。特に世界恐慌後、民主党がフランクリン・ルーズベルトと彼のニューディール政策によって左傾化すると、ルーズベルトへの対抗から南部民主党勢力英語版とともに保守化を強めていった[45]1964年の公民権法1965年の投票権法の後、党の中核的な基盤はシフトし、南部の州は大統領政治においてより確実に共和党州となった[46]。21世紀の党の支持基盤には、農村部に住む人々、男性、サイレント・ジェネレーション、白人アメリカ人、福音派キリスト教徒などが含まれている[47][48][49][50]

大恐慌以降の民主党が経済・社会政策において「大きな政府」を志向するのに対し、共和党は「小さな政府」志向がより強く、法人税減税、自由市場資本主義の擁護、民営化規制緩和の推進といった路線を取ることが多い。また移民の制限、軍事費の増加、銃の権利の擁護、中絶の制限労働組合の制限などの傾向も持つ。1973年のロー対ウェイド訴訟での最高裁判決後、共和党は党綱領で中絶に反対し、福音主義者の間で支持を伸ばした[51]

医療保険について国民皆保険につながりそうな動きには反対する傾向を持つ。民主党のビル・クリントン政権下でファースト・レディヒラリー・クリントンが提唱した国民皆保険制度(ユニバーサルヘルスケア)に関しては、当初から一貫して反対し阻止に動いてきた。また民主党のバラク・オバマ政権下で発効された民間保険会社が販売する健康保険の購入を公的補助のもと国民に義務付けた医療保険制度改革(オバマケア)にも強く反対し、2017年ドナルド・トランプ共和党政権に政権交代した後にはオバマケアの廃止が目指され、「個人の加入義務を巡る条項は違憲」として提訴、裁判で係争中となっている[52]

環境問題については、国内環境の保全に積極的に取り組む議員もいるが、地球温暖化問題には懐疑的な議員が多く、省エネルギーよりも短期的な経済効率を優先する傾向が目立つ。内外の批判を浴びる中で、2001年3月には子ブッシュ政権が京都議定書から[53]、2020年11月にはトランプ政権がパリ協定からそれぞれ離脱している[54]

通商政策については、共和党は初期には保護主義関税に強くコミットしていたが、20世紀中期以降に保守政党化してからは自由貿易への支持を強めている。現在は北米自由貿易協定(NAFTA)などの自由貿易協定を積極的に支持する立場である。民主党内は自由貿易について意見が分かれているため[55]、一般に共和党の方が自由貿易に積極的であると言われる[56]

外交政策は単独行動主義の傾向が強いとされ、国際協調を重視するとされる民主党との対比で「タカ派」とされることが多い。福音派の支持を受ける共和党の中東政策は、民主党以上に親イスラエル外交が顕著である[57][58]台湾については2016年の綱領で「我々は台湾海峡の将来に関する全ての問題は対話を通じて解決され、台湾の人々に同意されなければならないという原則に基づき、台湾海峡の現状を変える一方的な措置に反対する。もし中国がこれらの原則に違反するなら、米国は台湾関係法に従って、台湾が自国を防衛するのを援助するであろう」としている[59]

党の大統領候補編集

当落 候補と当選者 大統領
肖像 大統領 肖像 副大統領 任期
1856年   ジョン・フレモント   ウィリアム・デイトン英語版    
1860年   エイブラハム・リンカーン1   ハンニバル・ハムリン 16代 1861年
- 1865年
1864年   アンドリュー・ジョンソン2
1868年   ユリシーズ・グラント   スカイラー・コルファクス 18代 1869年
- 1877年
1872年   ヘンリー・ウィルソン3
1876年 6   ラザフォード・ヘイズ   ウィリアム・ウィーラー 19代 1877年
- 1881年
1880年   ジェームズ・ガーフィールド1   チェスター・アーサー 20代 1881年
暗殺昇格   チェスター・アーサー 不在 21代 1881年
- 1885年
1884年   ジェイムズ・G・ブレイン   ジョン・ローガン    
1888年 6   ベンジャミン・ハリソン   リーヴァイ・モートン 23代 1889年
- 1893年
1892年   ベンジャミン・ハリソン   ホワイトロー・リード英語版    
1896年   ウィリアム・マッキンリー1   ギャレット・ホーバート3 25代 1897年
- 1901年
1900年   セオドア・ルーズベルト
暗殺昇格   セオドア・ルーズベルト 不在 26代 1901年
- 1909年
1904年   チャールズ・フェアバンクス
1908年   ウィリアム・タフト   ジェームズ・シャーマン3 27代 1909年
- 1913年
1912年   ウィリアム・タフト   ニコラス・バトラー    
1916年   チャールズ・ヒューズ   チャールズ・フェアバンクス  
1920年   ウォレン・ハーディング4   カルビン・クーリッジ 29代 1921年
- 1923年
病死昇格   カルビン・クーリッジ 不在 30代 1923年
- 1929年
1924年   チャールズ・ドーズ
1928年   ハーバート・フーヴァー   チャールズ・カーティス 31代 1929年
- 1933年
1932年   ハーバート・フーヴァー   チャールズ・カーティス    
1936年   アルフ・ランドン   フランク・ノックス  
1940年   ウェンデル・ウィルキー   チャールズ・マクナリー英語版  
1944年   トーマス・デューイ   ジョン・ブリッカー英語版  
1948年   アール・ウォーレン  
1952年   ドワイト・アイゼンハワー   リチャード・ニクソン 34代 1953年
- 1961年
1956年
1960年   リチャード・ニクソン   ヘンリー・ロッジ    
1964年   バリー・ゴールドウォーター   ウィリアム・ミラー  
1968年   リチャード・ニクソン5   スピロ・アグニュー5 37代 1969年
- 1974年
1972年
辞任交替   ジェラルド・フォード
辞任昇格   ジェラルド・フォード   ネルソン・ロックフェラー 38代 1974年
- 1977年
1976年   ジェラルド・フォード   ボブ・ドール    
1980年   ロナルド・レーガン   ジョージ・H・W・ブッシュ 40代 1981年
- 1989年
1984年
1988年   ジョージ・H・W・ブッシュ   ダン・クエール 41代 1989年
- 1993年
1992年   ジョージ・H・W・ブッシュ   ダン・クエール    
1996年   ボブ・ドール   ジャック・ケンプ  
2000年 6   ジョージ・W・ブッシュ   ディック・チェイニー 43代 2001年
- 2009年
2004年
2008年   ジョン・マケイン   サラ・ペイリン    
2012年   ミット・ロムニー   ポール・ライアン
2016年 6   ドナルド・トランプ   マイク・ペンス 45代 2017年
- 2021年
2020年   ドナルド・トランプ   マイク・ペンス    
  1. ^ 暗殺
  2. ^ リンカーンは民主党員のアンドリュー・ジョンソンを副大統領候補として1864年の選挙に出馬
  3. ^ 在任中に死去
  4. ^ 病死
  5. ^ 辞任
  6. ^ 得票数では負けたものの、選挙人団を過半数確保し勝利した
  7. ^ CNNNBCFOXニュース ABCニュースニューヨークタイムスワシントンポストウォールストリートジャーナルなど大手メディアによる民主党候補バイデンが選挙人数過半数を超えたとする報道に基づく。

支援団体編集

現在編集

過去編集

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ 初期は奴隷制の廃止など進歩的な政策を掲げていたが、民主党が左傾化を始めた20世紀中盤より保守化した[7]
出典
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参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集