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精度保証付き数値計算[1](せいどほしょうつきすうちけいさん、Validated Numerics, Rigorous Computation, Reliable Computation, Verified Computation, Numerical Verification)とは数学的に厳密な誤差(前進誤差、後退誤差、丸め誤差、打切り誤差、離散化誤差)の評価を伴う数値計算のことであり、数値解析の一分野である[2]。演算では区間演算を使用し、結果はすべて区間で出力する。精度保証付き数値計算はウォリック・タッカーによって14番目のスメイルの問題を解くのにも活用されており(Tucker (1999)を参照)、力学系の研究では重要なツールとして位置づけられている[3][4]

目次

精度保証付き数値計算の必要性編集

精度保証付き数値計算ではない通常の数値計算だと誤差によって不都合な事象が生じてしまう。いくつかのその例を挙げる。

Rumpの例題編集

1980年代にRumpは次のような例を提示した(Rump (1988)を参照)。

 

という関数を考え、この関数に という値を与えて数値計算をしたときにどういう結果が得られるか実験した。計算機はIBMのメインフレームS/370を使用して、単精度、倍精度、拡張精度で実験を行い、それぞれ

  • 単精度(10進約8桁):  
  • 倍精度(10進約17桁):  
  • 拡張精度(10進約34桁):  

の結果を得た。この結果を見ると、それぞれの精度に応じて途中の桁まで正しい値が得られているように思えたが、実は真の値は であり、真の値とは符号さえ合わないような結果が得られていた。これは、「ある演算精度で計算してそれよりも高い演算精度で計算したときに双方の結果が近ければある程度は結果の正しさを確認できる」とは限らないことを示す例である。[2]

幻影解編集

Breuer-Plum-McKennaはEmden方程式の境界値問題をスペクトル法によって離散化して解き、非対称な近似解が得られると報告した。しかしGidas-Ni-Nirenbergの理論的な解析手法によって非対称な解が存在しないことが証明されていた。つまりBreuer-Plum-McKennaが得た近似解は離散化誤差による幻影解だったのだ。これは珍しい例だが、微分方程式の解の存在を厳密に検討するには数値解法によって得られた近似解を検証しなければいけないことが分かる。

商用ソフトウェアの限界編集

ローレンツ方程式を精度保証付き数値計算とMATLABのode45(ODEソルバ)において最高精度を指定した場合で比較を行うと、ある程度時刻が進むと得られる解が違ってくるという実験例がある[5]

数値計算の誤差による事故編集

数値計算の誤差によって生じた事故として次の2つが挙げられる。

主な研究分野編集

精度保証付き数値計算は主に以下の分野に分かれて研究がなされている[2][8]

主な精度保証付き数値計算ライブラリ編集

  • INTLAB MATLAB/Octaveを使用するライブラリである[17]
  • kv C++によるライブラリである。
  • Arb C言語によるライブラリであり、様々な特殊関数の精度保証に対応している。

関連する研究集会編集

関連項目編集

出典編集

  1. ^ 山本哲郎によって発案された用語である
  2. ^ a b c 大石、他 (2018)
  3. ^ 荒井迅. 精度保証付き数値計算の力学系への応用について. 数理解析研究所講究録, 1485.
  4. ^ 荒井迅. 精度保証付き数値計算の応用:カオス : 渾沌を殺さず七竅を鑿つために
  5. ^ 精度保証付き数値計算の必要性
  6. ^ スカッドミサイルの追撃・阻止の失敗による兵舎の被爆”. 失敗知識データベース. 特定非営利活動法人 失敗学会 (2018年1月30日). 2019年4月20日閲覧。
  7. ^ アリアン5型ロケットが制御不能で40秒後に爆発”. 失敗知識データベース. 特定非営利活動法人 失敗学会 (2018年1月30日). 2019年4月20日閲覧。
  8. ^ 大石進一:「精度保証付き数値計算」、コロナ社、(1999年)
  9. ^ ガンマ関数の精度保証付き計算メモ
  10. ^ 大石進一(2008): 電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題, 108, 55-57.
  11. ^ N. Yamamoto and N. Matsuda (2005): Trans. Jap. Soc. Indust. Appl. Math., 15, 347-359.
  12. ^ 杉原正顯, & 室田一雄. (1994). 数値計算法の数理. 岩波書店.
  13. ^ 非線形方程式に対する解の精度保証付き数値計算
  14. ^ 中尾充宏, & 山本野人. (1998). 精度保証付き数値計算 チュートリアル: 応用数理最前線.
  15. ^ 中尾充宏, & 渡部善隆. (2011). 実例で学ぶ精度保証付き数値計算, サイエンス社.
  16. ^ 尾崎克久(2011). 誤らない計算幾何学アルゴリズム (特集 計算の品質--精度・誤差・効率), 数学セミナー 47(11), 36-39, 2008-11.
  17. ^ S.M. Rump: INTLAB - INTerval LABoratory. In Tibor Csendes, editor, Developments in Reliable Computing, pages 77-104. Kluwer Academic Publishers, Dordrecht, 1999.

参考文献編集

外部リンク編集