自己批判(じこひはん, Self-criticism)とは、自分の誤りを自分で批判することである[1]。これは個人が自分自身をどう評価しているかに関することであり、心理学においては、典型的には人が自己アイデンティティ(self-identity)を崩壊させる否定的なパーソナリティ特性として研究・議論されている[2] 。自己批判の反対は、一貫性があり、完全であり、一般的にポジティブなアイデンティティである。

自己批判はしばしば大うつ病と関連付けられている。いくつかの論者はある種のうつ病(病的うつ病、introjective depression)の兆候として自己批判を挙げており、一般的にうつ病患者は一般市民よりも自己批判的な傾向がある[2][3]。 うつ病患者は、一般市民よりもより自己批判的であり、患者らはうつ病エピソード後も引き続き自己批判的パーソナリティを示し続ける[4] 自己批判に対して多くの科学的焦点が当てられるのは、うつ病との関連性によるものである[5][6]

また共産主義においては、自分の「誤り」を「自発的」に認め、公開の場で自分自身を批判する事を指す。各国の共産党や当初の武装革命を支持した革新組織などで行われ、日本では自己批判に加えて、集団で糾弾して吊し上げることを総括と呼ばれた[7]

目次

精神病理学への示唆編集

うつ病へのリスクファクター編集

自己批判は、いくつかのネガティブな変数と関連している[8][9].[10][11]。あるサンプルでは、自己批判的パーソナリティは知覚視点の違い、負の影響、自己イメージ目標、明白な自己批判と関連があった[12]。これらはすべてうつ病の経験に関係する特性であり、自己批判がうつ病に影響を及ぼすことが明らかとなった。パーソナリティ特性として自己批判が継続していることは、うつ病発症に対して脆弱な人々を発生しうる。シドニー・ブラットは、自己批判的で、目標達成について常に懸念を持つ人々らは、特定のタイプのうつ病を発症する可能性が高いと理論付けた[2]。ブラットとベックの両者は、自己批判とうつ病の経験を評価するためのスケールを開発した。多くの人格理論家が、ある種のうつ病のタイプを分類において自己批判を挙げた事実があり[2][3]、自己批判はうつ病発症の危険因子であることが示されている。

宗教編集

いくつかの宗教文化においては、自己批判が生涯満足(ifetime satisfaction)のため、肯定的で不可欠な慣行であると考える。

共産国家編集

 
自己批判させられるチベット人女性(1958年)

いくつかの共産主義国では、ノーメンクラトゥーラに賛成していない党員らは、時に「自己批評」セッションによって自らのイデオロギーの誤りを書かせたり口頭で声明を出すことで、党内の新たな信念を肯定することとなった。

これはソ連で誕生し、その後共産主義国家・各国共産主義を掲げる組織の主流派によって、所属を問わず分派言動など反党行為をしたと見なした人物らへ行わされた行為。党員だった場合は組織からの除名処分、軽いと自己批判のみで済む場合もあるが、場合によって自己批判させられた後に粛清処分がされた。ソ連では大粛清モスクワ裁判、中国では文化大革命紅衛兵による被害者が有名である。共産主義組織で産まれ、共産主義を標榜する組織などでは集団での糾弾と吊し上げと共に好まれていた[13]

自己批判をさせられた人物編集

共産主義体制下および政党内では、指導層を含むすべての構成員が平等であるという建前の下、個人の過ちを明らかにする原則唯一の方法であるとされる。そのため、ソ連などでは権力闘争の勝者が敗者に自己批判を強要し、左遷や粛清を正当化することがあった。

自己批判を行った指導者編集

出典編集

  1. ^ 自己批判(じこひはん)とは デジタル大辞泉・大辞林 第三版、コトバンク、2018年6月11日閲覧。
  2. ^ a b c d Blatt, S.J. (2008). Polarities of experience: Relatedness and self-definition in personality, development, psychopathology, and the therapeutic process. Washington, DC: American Psychological Association.
  3. ^ a b Beck, A.T. (1983). Cognitive therapy of depression: New perspectives. In P.J. Clayton & J.E> Barrett (Eds.), Treatment of Depression: Old Controversies and New Approaches (265-290). New York: Raven Press.
  4. ^ Enns, M.W. & Cox, B.J. (1997). Personality dimensions and depression: Review and commentary. Canadian Journal of Psychiatry, 42(3), 274-284.
  5. ^ Clark, L.A., Watson, D., & Mineka, S. (1994). Temperament, personality, and the mood and anxiety disorders. Journal of Abnormal Psychology, 103, 103-116. DOI: 10.1037//0021-843X.103.1.103
  6. ^ Ehret, A.M., Joormann, J., & Berking, M. (2015). Examining risk and resilience factors for depression: The role of self-criticism and self-compassion. Cognition and Emotion, 29(8), 1496-1504. DOI: 10.1080/02699931.2014.992394
  7. ^ 「共産主義黒書〈ソ連篇〉」ステファヌ・クルトワ, ‎ニコラ・ヴェルト
  8. ^ Mongrain, M. (1998). Parental representations and support-seeking behaviors related to dependency and self-criticism. Journal of Personality, 66(2), 151-173. DOI: 10.1111/1467-6494.00007 Moroz, M. & Dunkley, D.M. (2015). Self-critical perfectionism and depressive symptoms: Low self-esteem and experiential avoidance as mediators. Personality and Individual Differences, 87, 174-179. DOI: 10.1016/j.paid.2015.07.044
  9. ^ Mongrain, M. & Zuroff, D.C. (1995). Motivational and affective correlates of dependency and self-criticism. Personality and Individual Differences, 18(3), 347-354. DOI: 10.1016/0191-8869(94)00139-J
  10. ^ Santor, D.A., Pringle, J.D., & Israeli, A.L. (2000). Enhancing and disrupting ooperative behavior in couples: Effects of dependency and self-criticism following favorable and unfavorable performance feedback. Cognitive Therapy and Research, 24(4), 379-397. DOI: 10.1023/A:1005523602102
  11. ^ Powers, T.A. & Zuroff, D.C. (1992). A measure of overt self-criticism – Validation and correlates. Psychological Reports, 70(2), 562-562.
  12. ^ Zuroff, D.C., Sadikaj, G., Kelly, A.C., & Leybman, M.J. (2016). Conceptualizing and measuring self-criticism as both a personality trait and a personality state. Journal of Personality Assessment, 98(1), 14-21.
  13. ^ 「共産主義黒書〈ソ連篇〉」ステファヌ・クルトワ, ‎ニコラ・ヴェルト
  14. ^ “正恩氏 新年演説で異例の自己批判=「能力不足」”. 聯合ニュース. (2017年1月1日). http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2017/01/01/0300000000AJP20170101002100882.HTML 2017年4月21日閲覧。 

関連項目編集