WISE J085510.83-071442.5

褐色矮星

WISE J085510.83-071442.5、或いは省略してWISE 0855-0714は、地球から7.27光年(2.23pc)離れたところにある(褐色矮星である[7][4]広域赤外線探査衛星(WISE)のデータから発見され、2014年4月に発表された[7]

WISE J085510.83-071442.5
WISE 0855-0714の天球上の運動を捉えたWISEとスピッツァーによる継時取得画像[1]
WISE 0855-0714の天球上の運動を捉えたWISEスピッツァーによる継時取得画像[1]
星座 うみへび座
視等級 (V) 25.0 +0.53
−0.35
(Jバンド)[2]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α) 08h 55m 10.83s[3]
赤緯 (Dec, δ) -07° 14′ 42.5″[3]
固有運動 (μ) 赤経: -8,118 ± 8ミリ秒/[4]
赤緯: 680 ± 7 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 449 ± 8ミリ秒[4]
(誤差1.8%)
距離 7.3 ± 0.1 光年[注 1]
(2.23 ± 0.04 パーセク[注 1]
物理的性質
半径 1.17 RJ[5]
質量 1.5 - 8 MJ[6]
表面重力 3.2 - 20 G[6][注 2]
スペクトル分類 Y2[2]
光度 ~5 ×108 L[6]
表面温度 250 ± 10 K[6]
金属量[Fe/H] -0.2 - 0.2(太陽比)[6]
年齢 0.3 - 6.0 ×109[6]
別名称
別名称
WISEA J085510.74-071442.5[3]
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発見された時点で、WISE 0855-0714は全ての既知の恒星と褐色矮星の中で、固有運動が3番目に大きく、かつ年周視差が4番目に大きい天体である[7]。これは即ち、既知の星系の中で4番目に太陽系に近いということでもある[7][8]。また、WISE 0855-0714が褐色矮星であるとすれば、表面温度も既知の褐色矮星の中で最も低いことになる[7][8]

目次

発見編集

WISE 0855-0714は、2010年5月4日の観測データで初めて検出され、2013年3月に最初の報告がなされた[7][1]。その後、スピッツァー宇宙望遠鏡ジェミニ北望遠鏡によって追観測が行われ、スピッツァーでは2013年6月21日と2014年1月20日に検出されている[7]

WISE J085510.83-071442.5という名称は、WISEが初検出したことと、その座標から付与されたもので、この座標はうみへび座の方角にある天体であることを示す。

特徴編集

 
WISE 0855-0714を含む太陽に非常に近い恒星褐色矮星の図[1]。距離測定年も併せて示してある。

距離・固有運動編集

発見された時点では、WISE 0855-0714の固有運動は、8.1/で、バーナード星(10.3秒/年)、カプタイン星(8.6秒/年)に次いで3番目に大きい天体である[7]。同様に、年周視差も0.454秒で、4番目に大きい天体であり、そこから計算した距離は2.20pcで、これよりも太陽系に近い既知の星系は、ケンタウルス座α星系(1.338pc、プロキシマ・ケンタウリは1.296pc)、バーナード星(1.834pc)、WISE J104915.57-531906.1系(2.02pc)だけである[7][1]

その後、WISE 0855-0714の年周視差は修正され、449±8ミリ秒、そこから計算した距離は、約7.27±0.13光年(2.23±0.04pc)となっている[4]。年周視差がとても大きく、それに対して誤差が小さいことから、距離は精度良く求まっている。

WISE 0855-0714の固有運動も、時間経過とともに移動する様子が直接観測され、その動きがとても大きいことから発見につながった。固有運動そのものは、見かけ上の測定値なので、太陽系との真の相対速度の大きさだけでなく、太陽系からの距離も総合して決まってくる。WISE 0855-0714のように、固有運動がとても大きい天体は、太陽系からの距離が近い上に、相対速度も大きく、しかもその運動が視線方向よりも天球面寄りである。

スペクトル編集

赤外線の複数の波長帯での明るさから、スペクトルエネルギー分布を求め、またわかっている距離を基に絶対等級を計算するなどして、WISE 0855-0714の特徴が調べられている。明るさが最もよく決まっているのは、中心波長4.5μmの波長帯で、その見かけ等級は13.89±0.02であり、波長が長い程明るくなる傾向にある[7][4]

色及び絶対等級は、WISE 0855-0714が既知のどの褐色矮星よりも赤く低温であることを示している[5][9][4]。また、理論的な大気の予想と観測結果を比較すると、(氷)を含む雲が存在することが示唆されている[2][10]。一方で、明るさの時間変化を調べた観測からは、雲の性質が他の褐色矮星と似ており、水の雲ではない可能性が指摘されている[11]

物理的特徴編集

褐色矮星の理論に基づいて、WISE 0855-0714の物理的性質を推定すると、質量は木星質量の1.5倍から8倍、有効温度は250Kと推定される[6]

2003年時点で、国際天文学連合は、木星質量の13倍以上の天体を、重水素核融合が可能だとして、褐色矮星に分類している[12]。それより質量が小さく、他の天体の周りを周回しているものは、惑星と考えられる。WISE 0855-0714は、質量が褐色矮星の下限より小さく、かつ単独で存在するので、自由浮遊惑星の可能性もあるが、発見者グループは惑星質量褐色矮星の方が可能性があるとしている[7]

脚注編集

注釈編集

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 出典での表記は、 

出典編集

  1. ^ a b c d Clavin, Whitney; Harrington, J. D. (2014年4月25日). “NASA's Spitzer and WISE Telescopes Find Close, Cold Neighbor of Sun”. NASA. http://www.nasa.gov/jpl/wise/spitzer-coldest-brown-dwarf-20140425/ 
  2. ^ a b c Faherty; C. G.; et al. (2014-09), “Indications of Water Clouds in the Coldest Known Brown Dwarf”, Astrophysical Journal Letters, arXiv:1408.4671, Bibcode 2014ApJ...793L..16F, doi:10.1088/2041-8205/793/1/L16 
  3. ^ a b c WISEA J085510.74-071442.5 -- Brown Dwarf (M<0.08solMass)”. SIMBAD. CDS. 2017年12月26日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g Luhman, Kevin L.; Esplin, Taran L. (2016-09), “The Spectral Energy Distribution of the Coldest Known Brown Dwarf”, Astronomical Journal 152 (2): 78, arXiv:1605.06655, Bibcode 2016AJ....152...78L, doi:10.3847/0004-6256/152/3/78 
  5. ^ a b Beamín, J. C.; et al. (2014-10), “Temperature constraints on the coldest brown dwarf known: WISE 0855-0714”, Astronomy & Astrophysics 570: L8, Bibcode 2014A&A...570L...8B, doi:10.1051/0004-6361/201424505 
  6. ^ a b c d e f g Leggett, S. K.; et al. (2017-06), “The Y-type Brown Dwarfs: Estimates of Mass and Age from New Astrometry, Homogenized Photometry, and Near-infrared Spectroscopy”, Astrophysical Journal 842 (2): 118, Bibcode 2017ApJ...842..118L, doi:10.3847/1538-4357/aa6fb5 
  7. ^ a b c d e f g h i j k Luhman, Kevin L. (2014-04-21), “Discovery of a ~250 K Brown Dwarf at 2 pc from the Sun”, Astrophysical Journal Letters 786 (2): L18, arXiv:1404.6501, Bibcode 2014ApJ...786L..18L, doi:10.1088/2041-8205/786/2/L18 
  8. ^ a b 7光年彼方に氷点下の褐色矮星”. AstroArts. 2017年12月26日閲覧。
  9. ^ Schneider, Adam C.; et al. (2016-06), “The Collapse of the Wien Tail in the Coldest Brown Dwarf? Hubble Space Telescope Near-infrared Photometry of WISE J085510.83-071442.5”, Astrophysical Journal Letters 823 (2): L35, Bibcode 2016ApJ...823L..35S, doi:10.3847/2041-8205/823/2/L35 
  10. ^ Skemer, Andrew J.; et al. (2016-08), “The First Spectrum of the Coldest Brown Dwarf”, Astrophysical Journal Letters 826 (2): L17, Bibcode 2016ApJ...826L..17S, doi:10.3847/2041-8205/826/2/L17 
  11. ^ Esplin, T. L.; et al. (2016-11), “Photometric Monitoring of the Coldest Known Brown Dwarf with the Spitzer Space Telescope”, Astrophysical Journal 832 (1): 58, Bibcode 2016ApJ...832...58E, doi:10.3847/0004-637X/832/1/58 
  12. ^ Working Group on Extrasolar Planets: Definition of a "Planet"”. Working Group on Extrasolar Planets of the International Astronomical Union (2003年2月28日). 2014年4月28日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集