松会三四郎
沿革
編集正本屋、草紙屋と号す[1]。村田氏。江戸出版業の初期(17世紀半ば)から享保年間(1716~36)かそれ以降の百数十年間にわたり約200点を刊行した江戸の有力書肆[2][3]。元禄期には江戸の長谷川町横町[1][4]、後に通油町で営業しており[1][4]、江戸最古の書肆のひとつである松会市郎兵衛の後嗣と思われる[2]。貞享ころから松会三四郎の代にかわる。慶安から享保期に江戸に45軒あった御書物所(幕府お抱えの書物方御用書肆)のうちの1軒でもあった[5]。元禄までに200点に上る典籍を開版している[2]。この版元の刊行物は「松会本」と呼ばれており著名である。
『江戸図鑑綱目』には「地本屋長谷川町の松会三四郎板錦絵の始」とあると『日本出版文化史』で著者の小林善八は述べている[6]。三四郎は菱川師宣の絵本を出版したことで著名であり[3]、貞享4年の『江戸鹿乃子』には浄瑠璃本屋[7][1]、元禄5年の『万買物調方記』には浄瑠璃草紙屋[8][1]、元禄11年の『元禄十一年武鑑』には御書物所の御書物師として載っている[9][1]。『和国三女』などにみられる「松会朔旦」の「朔旦」とは三四郎の号かとされる。
出版作品
編集菱川師宣絵本
編集- 『源氏伽羅枕』、延宝4年
- 『小むらさき』艶本、初刻 延宝5年正月、松会市郎兵衛・松会三四郎版
- 『恋の息うつし』初刻 延宝6年孟春、鱗形屋三左衛門版、(再刻?)貞享2年松会三四郎版
- 『絵本上々御の字』、延宝6年
- 『伊勢物語歌書抄二巻』、初刻 延宝7年3月(24 12三巻)松会市郎兵衛・松会三四郎版
- 『千代の友つる』、初刻 天和2年正月 松会市郎兵衛・松会三四郎版
- 『このころくさ』、初刻 天和2年正月 松会市郎兵衛・松会三四郎版
- 『古今好色男』、貞享元年
- 『やまとすみ』、元禄7年
- 『和国三女』 絵本 元禄8年
- 『好色五れいこう』、元禄8年
- 『和国百女』、元禄8年
草紙
編集以下は、矢島玄亮『徳川時代出版者出版物集覧』徳川時代出版者出版物集覧刊行会、1976年、110頁 。に拠る。
- 松田一楽『武者物語』(承応3年)。
- 松田一楽『武者物語』(承応3年)。
- 一もときく 三巻、明暦2年、(12 29)
- 明暦武鑑、明暦4年、(12 17六)
- 紋尽、明暦4年、(35)
- 三人ほうし二巻、万治2年、(12)
- 両仮名雑字尽、万治2年、(12)
- 廿三問答、万治2年、(7 12)
- 心学五倫書、寛文5年、(7)
- 小町歌あらそい二巻、寛文6年、(10)
- しんきよく二巻、寛文7年、(10)
- いそさき二巻、寛文7年、(7)
- 仏説善悪因果経、寛文9年、(12)
- さくらの中将二巻、寛文10年、(29)
- 和名集並異名製剤記二卷、寛文11年、(12)
- 都案内者五巻、寛文11年、(10)
- 新刊畫引和玉篇三巻、延宝2年、(4)
- 信玄軍記四冊、延宝3年、(17七)
- 一心功徳鑑、延宝7年、(7)
- 自己問答三巻、延宝8年、(28)
- おさな源氏一〇巻、延宝9年、(10)
- 唐船来朝図 長崎図、延宝中年、(15)
- 十四経諷、延宝貞享頃年、(12 17七 十)
- 新編塵劫記三冊、吉田光由編、貞享3年、(8)
- 曾我物語一二巻、貞享4年、(12)
- つぼのいしふみ一五巻、元禄11年、(10 12 23十三巻)
- 大明津三二巻、荻生観訓点、享保8年、(30合)
- 物茂卿『度量衡考 二冊』(享保19年、8合、相板)。
- あみだかんきん抄、(7)[10]
- あみたはたか物語 上・下
- 異国人物鑑三巻、(12)
- 歌仙金玉杯 山雲子編、(12)
- 尊円流江戸往来、(12)
- さるげんじ二巻、(10)
- 実語教童子教二巻、釈空海、安然、(12)
- 十番切二巻、(12)
- 女鏡秘伝書三巻(12)
- 水鳥記三巻、(10 12 35)
- たかだち二巻(12)
- 七夕二巻、(12 35)
- 日用食性三巻、曲直瀬玄朔、(12)
- 花のおもかけ二巻、(10)
- 松風むらさめ二巻、(12 29)
- 万病妙薬集、益田良継、(12)
- 水鏡註目無草二巻、釈無相、(12)
- 武者さくら、菱川吉兵ェ、(10)
- 迷悟問答集、(12)
- 名女くらべ五巻、(10)
- 銘尽秘伝抄(古刀銘鑑)、(12 22)
- 理窟物語六冊、(35)
武鑑
編集- 癸亥江戸鑑、天和3(15)
- 己己江戸鑑、元禄2(15)
- 甲子江戸鑑、貞享1(12)
- 御紋尽、明暦4(15)
- 丙寅江戸鑑、貞享3(15)
- 戊辰江戸鑑、貞享5(12、17五)
- 本朝武鑑二冊、貞享25(15)
- 本朝武系当鑑二巻、元禄3序(12 15)
- 本朝武林系統図鑑四冊、元禄中(15)
- 本朝武林長鑑三冊、元禄7(15)
脚注
編集- ^ a b c d e f 井上隆明『近世書林板元総覧』、304頁 。
- ^ a b c 柏崎順子. “松会三四郎”. 言語文化 32: 133 .
- ^ a b 朝日日本歴史人物事典『松会三四郎(読み:しょうかい・さんしろう)』 - コトバンク
- ^ a b 石川俊之『江戸図鑑綱目 乾』1689年 。
- ^ 小林善八『日本出版文化史』1978年、370頁 。
- ^ 小林善八『日本出版文化史』1978年、564頁 。
- ^ 釈敬順『十方庵遊歴雑記 江戸惣鹿子名所大全 : 増補. 巻の4-6 2編 上・中・下 (江戸叢書 ; 巻の4)』(藤田理兵衛 作、菱川師宣 画)江戸叢書刊行会、1916年、106頁 。
- ^ 『万買物調方記』(元禄5年) 。
- ^ 『元禄武鑑』(元禄11年)松会三四郎、65丁表頁 。
- ^ 『あみだかんきん抄』 。「国会図書館の解題・抄録参照のこと」
参考文献
編集- 柏崎順子. “松会三四郎”. 言語文化 32 .
- 柏崎順子. “松会三四郎 其二”. 言語文化 45 .
- 尾崎久弥「菱川師房の絵本類」『浮世絵』第43巻、浮世絵社、1918年12月、19頁。
- 吉田漱『浮世絵の基礎知識』雄山閣出版、1987年 。
- 日本浮世絵協会 編『原色浮世絵大百科事典』(第3巻)大修館書店、1982年。
- 藤田理兵衛『江戸鹿子 6巻』(貞享4年版)小林太郎兵衛。
- 吉田漱 『浮世絵の基礎知識』 雄山閣、1987年
- 石川俊之 作・画『江戸図鑑綱目 乾』相模屋太兵衛、1689年 。(元禄2年)
- 石川俊之 作・画『江戸図鑑綱目 坤』相模屋太兵衛、1689年 。(元禄2年)
- 小林忠、大久保純一『浮世絵の鑑賞基礎知識』至文堂、1994年。
- 小林善八『日本出版文化史』(弥吉光長 解説)青裳堂書店〈日本書誌学大系1〉、1978年 。
- 東京書籍商組合 編『東京書籍商伝記集覧』青裳堂書店〈日本書誌学大系2〉、1978年 。
- 井上隆明『近世書林板元総覧』青裳堂書店〈日本書誌学大系14〉、1981年 。
- 井上和雄 編『慶長以来書賈集覧』彙文堂書店、1916年 。
- 井上和雄 編『慶長以来書賈集覧 書籍商名鑑 増訂版』(坂本宗子 増訂)高尾書店、1970年 。
- 井上和雄『慶長以来書賈集覧』(井上和雄三十三回忌特別出版)原論社、1978年 。
- 奥野彦六『江戸時代の古版本』東洋堂、1944年 。102 - 104ページには出版業者101人があげられている。
- 矢島玄亮 編『徳川時代出版者出版物集覧 : 準備版 (参考資料 ; 第75号)』東北大学附属図書館、1968年7月 。
- 矢島玄亮 編『徳川時代出版者出版物集覧』徳川時代出版者出版物集覧刊行会、1976年 。
- 矢島玄亮 編『徳川時代出版者出版物集覧 : 続編』徳川時代出版者出版物集覧刊行会、1976年 。
- 『江戸本屋出版記録 上巻』ゆまに書房〈書誌書目シリーズ 10〉、1980年4月 。
- 『江戸本屋出版記録 中巻』ゆまに書房〈書誌書目シリーズ 10〉、1980年6月 。
- 『江戸本屋出版記録 下巻(書名・人名索引)付録:江戸絵図株帳』ゆまに書房〈書誌書目シリーズ 10〉、1982年9月 。
- 朝倉亀三『日本古刻書史』文化図書、1984年8月 。