メキシコグランプリは、1963年から1970年1986年から1992年2015年からメキシコ合衆国首都メキシコシティ近郊のエルマノス・ロドリゲス・サーキットで開催されるF1のレースの一つである。2019年以前はメキシコグランプリとして開催されていたが、後述の理由により、2020年以降はメキシコシティグランプリ(メキシコシティGP, : Mexico City Grand Prix, 西: Gran Premio De La Ciudad De México[1])という名称へ変更された[2]

Mexico City Grand Prix
Mexican Grand Prix
エルマノス・ロドリゲス・サーキット
レース情報
周回 71
コース長 4.304 km (2.674 mi)
レース長 305.354 km (190.846 mi)
開催回数 24[注 1]
初回 1962年
最多勝利
(ドライバー)
オランダの旗 マックス・フェルスタッペン (5)[注 1]
最多勝利
(コンストラクター)
オーストリアの旗 レッドブル (5)[注 1]
最新開催(2023年):
ポールポジション モナコの旗 シャルル・ルクレール
フェラーリ
1:17.166
決勝順位 1. オランダの旗 マックス・フェルスタッペン
レッドブル-ホンダRBPT
2:02:30.814[注 2]
2. イギリスの旗 ルイス・ハミルトン
メルセデス
+13.875s
3. モナコの旗 シャルル・ルクレール
フェラーリ
+23.124s
ファステストラップ イギリスの旗 ルイス・ハミルトン
メルセデス
1:21.334

概要 編集

高地 編集

サーキットが2300メートルを超える高地にあるため空気が薄く、NAエンジンの場合エンジン出力が15%程度落ち、更にマシンの空力効果も落ちるためにチーム力が試されるサーキットであった。そのため、ターボとNAエンジンの混走期には、ターボエンジンにとって有利なサーキットであった。1992年のレース後に観客がコースになだれ込む事件が起き、安全上の観点から問題視された上、主催者の資金不足もあり中止された。

ホンダ初優勝の地 編集

1965年の最終戦メキシコGPではホンダRA272改をドライブしたリッチー・ギンサーが初勝利。これは後年隆盛を誇ったタイヤメーカーのグッドイヤーとホンダにとっても初勝利となり、記念すべきものとなった。当時のチーム力では優勝どころか入賞すらままならない状態であったが、当GPより監督に復帰した中村良夫が戦時中に中島飛行機航空用エンジンの開発に関わっていたため、ガソリン混合比など低気圧環境下でのエンジンセッティングにおいて有利であったことが、優勝を獲得できた要因であった。そのアドバンテージは、レース終了後にギンサーが「終始マシンをセーブしていた」とコメントを残すほど大きなものであった。

復活へ 編集

カンクンヘルマン・ティルケ設計のサーキットを新設し、2007年から再びグランプリを開催する計画が持ち上がったが、一旦立ち消えとなったものの、2011年8月にカルロス・スリム・ドミット氏が近い将来メキシコグランプリ開催に向けて動き出していることを明らかにした。そして2014年シーズンより22年ぶりにメキシコシティで復活開催される予定だったが、サーキットの改修工事が間に合わないため2015年シーズンに延期となった。

メキシコシティGPとして開催開始 編集

開催契約が切れる2019年にメキシコ政府が財政援助の打ち切りを示唆したため、2020年以降の開催が危ぶまれていたが[3]、メキシコ出身のドライバーであるセルジオ・ペレスの存在もあって民間からの支援が集まり、加えてメキシコシティ市からのサポートもあり、新たに2022年までの開催契約が結ばれた。併せてメキシコシティ市のサポートを強調することから正式名称を「メキシコシティグランプリ」に改めることになった[2]。しかし、初年度の2020年新型コロナウイルス感染症の世界的流行のため中止となり[4]、翌2021年に持ち越された初の「メキシコシティGP」でペレスが3位に入賞し、メキシコ人ドライバー初の母国GP表彰台を達成した[5]。翌2022年もペレスが3位表彰台を獲得し、チームメイトのマックス・フェルスタッペンがF1史上最多となる年間14勝目を挙げた[6]。また、同年の開催終了後に2025年まで契約が延長された[7]2023年もフェルスタッペンが制してシーズン16勝目を挙げ、自身が持つ年間最多勝利記録を更新した[8]。 

カンクンでの開催構想 編集

ペレスの父で政治家のアントニオ・ペレス・ガリベイと投資家グループは、メキシコシティに加えて2024年からカンクンでの開催についてFIA及びF1との交渉を進めている[9]が、同年の開催カレンダーには組み込まれていない[10]

過去の結果と開催サーキット 編集

メキシコグランプリ (1962年-2019年) 編集

決勝日 ラウンド サーキット 勝者 コンストラクター 結果
1962 11月04日 非選手権 メキシコシティ   トレバー・テイラー
  ジム・クラーク
ロータス-クライマックス 詳細
1963 11月03日 9 メキシコシティ   ジム・クラーク ロータス-クライマックス 詳細
1964 10月25日 10 メキシコシティ   ダン・ガーニー ブラバム-クライマックス 詳細
1965 10月24日 10 メキシコシティ   リッチー・ギンサー ホンダ 詳細
1966 10月23日 9 メキシコシティ   ジョン・サーティース クーパー-マセラティ 詳細
1967 10月22日 11 メキシコシティ   ジム・クラーク ロータス-フォード 詳細
1968 11月03日 12 メキシコシティ   グラハム・ヒル ロータス-フォード 詳細
1969 10月19日 11 メキシコシティ   デニス・ハルム マクラーレン-フォード 詳細
1970 10月25日 13 メキシコシティ   ジャッキー・イクス フェラーリ 詳細
1971
-
1985
開催されず
1986 10月12日 15 メキシコシティ   ゲルハルト・ベルガー ベネトン-BMW 詳細
1987 10月18日 14 メキシコシティ   ナイジェル・マンセル ウィリアムズ-ホンダ 詳細
1988 05月29日 4 メキシコシティ   アラン・プロスト マクラーレン-ホンダ 詳細
1989 05月28日 4 メキシコシティ   アイルトン・セナ マクラーレン-ホンダ 詳細
1990 06月24日 6 メキシコシティ   アラン・プロスト フェラーリ 詳細
1991 06月16日 6 メキシコシティ   リカルド・パトレーゼ ウィリアムズ-ルノー 詳細
1992 03月22日 2 メキシコシティ   ナイジェル・マンセル ウィリアムズ-ルノー 詳細
1993
-
2014
開催されず
2015 11月01日 17 メキシコシティ   ニコ・ロズベルグ メルセデス 詳細
2016 10月30日 19 メキシコシティ   ルイス・ハミルトン メルセデス 詳細
2017 10月29日 18 メキシコシティ   マックス・フェルスタッペン レッドブル-タグ・ホイヤー 詳細
2018 10月28日 19 メキシコシティ   マックス・フェルスタッペン レッドブル-タグ・ホイヤー 詳細
2019 10月27日 18 メキシコシティ   ルイス・ハミルトン メルセデス 詳細

メキシコシティグランプリ (2020年-) 編集

決勝日 ラウンド サーキット 勝者 コンストラクター 結果
2020 新型コロナウイルス感染症の世界的流行により中止
2021 11月07日 18 メキシコシティ   マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ 詳細
2022 10月30日 20 メキシコシティ   マックス・フェルスタッペン レッドブル-RBPT 詳細
2023 10月29日 20 メキシコシティ   マックス・フェルスタッペン レッドブル-ホンダ・RBPT 詳細
2024 10月27日 20 メキシコシティ 詳細

開催されたサーキット 編集

初開催された1962年から現在までエルマノス・ロドリゲス・サーキットのみが使用されている。

優勝回数 編集

ドライバー 編集

(2勝以上)

回数 ドライバー 優勝年
5   マックス・フェルスタッペン[注 1] 2017, 2018, 2021, 2022, 2023
3   ジム・クラーク 19621, 1963, 1967
2   アラン・プロスト 1988, 1990
  ナイジェル・マンセル 1987, 1992
  ルイス・ハミルトン 2016, 2019
  • 太字2024年のF1世界選手権に参戦中のドライバー。
  • ピンク地はF1世界選手権以外で開催された年。
  • ^1 トレバー・テイラー英語版と車両をシェアして優勝した。

コンストラクター 編集

(2勝以上)

回数 コンストラクター 優勝年
5   レッドブル[注 1] 2017, 2018, 2021, 2022, 2023
4   ロータス 1962, 1963, 1967, 1968
3   マクラーレン 1969, 1988, 1989
  ウィリアムズ 1987, 1991, 1992
  メルセデス 2015, 2016, 2019
2   フェラーリ 1970, 1990
  • 太字2024年のF1世界選手権に参戦中のコンストラクター。
  • ピンク地はF1世界選手権以外で開催された年。

エンジン 編集

(2勝以上)

回数 メーカー 優勝年
5   ホンダ * [注 1] 1965, 1987, 1988, 1989, 2021
3   クライマックス 1962, 1963, 1964
  フォード ** 1967, 1968, 1969
  メルセデス 2015, 2016, 2019
2   フェラーリ 1970, 1990
  ルノー 1991, 1992
  タグ・ホイヤー *** 2017, 2018
  RBPT / ホンダ・RBPT * 2022, 2023

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ a b c d e f 回数はメキシコGPとメキシコシティGPの合算。
  2. ^ ケビン・マグヌッセンのアクシデントによる25分の赤旗中断時間を含む。 フェルスタッペンが圧巻の今季16勝目! リカルドが大金星の7位。角田裕毅は入賞圏内走行も無念の接触で無得点|F1メキシコシティGP決勝”. motorsport.com (2023年10月30日). 2023年10月30日閲覧。

出典 編集

  1. ^ Mexico City Grand Prix 2021 - F1 Race”. formula1.com. 2021年11月8日閲覧。
  2. ^ a b メキシコでのF1開催契約が2022年まで延長。正式名称はメキシコシティGPに”. motorsport.com (2019年8月9日). 2019年8月11日閲覧。
  3. ^ メキシコGP主催者、開催継続に必要な財政を保証できず。2019年限りでカレンダー脱落の可能性が浮上”. www.as-web.jp (2019年3月5日). 2021年11月9日閲覧。
  4. ^ F1、ニュルブルクリンク/ポルティマオ/イモラでの開催を発表。アメリカ大陸でのグランプリは断念”. autosport web (2020年7月24日). 2021年11月9日閲覧。
  5. ^ ペレス、母国での初表彰台も”ちょっぴり残念”「ワンツーフィニッシュを狙えるペースはあった」”. motorsport.com (2021年11月8日). 2021年11月8日閲覧。
  6. ^ 止める者なしフェルスタッペン、歴代最多の年間14勝。メルセデス力及ばず……角田裕毅は接触DNF|F1メキシコシティGP”. motorsport.com (2022年10月31日). 2022年11月1日閲覧。
  7. ^ F1メキシコシティGP、3年の開催契約延長を締結。少なくとも2025年まではカレンダー残留へ”. motorsport.com (2022年10月28日). 2023年10月27日閲覧。
  8. ^ 観客絶句の5台DNF、フェルスタッペンが年16勝の新記録!角田は接触で8位入賞逃す / F1メキシコGP《決勝》結果とダイジェスト”. Formula1-Data (2023年10月30日). 2023年10月30日閲覧。
  9. ^ F1、2024年にカンクンGP追加開催の可能性…一枚噛むのはセルジオ・ペレスの父”. Formula1-Data (2021年8月4日). 2021年11月8日閲覧。
  10. ^ 2024年F1カレンダー:鈴鹿日本GPは4月開催…史上最多24戦でトリプルヘッダー3回、ダブル5回”. Formula1-Data (2023年7月6日). 2023年10月27日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集