おとめ座δ星英語: Delta Virginis)は、地球からおとめ座の方向に約190光年離れた位置にある3等星の恒星である。

おとめ座δ星[1]
Delta Virginis
仮符号・別名 ミネラウバ[2], Minelauva[1][3][4]
星座 おとめ座
見かけの等級 (mv) 3.38[1]
3.32 - 3.40(変光)[5][6]
変光星型 疑わしい[5]
分類 赤色巨星分枝 (RGB)[1]
位置
元期:J2000.0[7]
赤経 (RA, α)  12h 55m 36.2086242158s[7]
赤緯 (Dec, δ) +03° 23′ 50.888053980″[7]
赤方偏移 -0.000063[1]
視線速度 (Rv) -18.87 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -469.714 ミリ秒/年[7]
赤緯: -53.710 ミリ秒/年[7]
年周視差 (π) 17.4065 ± 0.2513ミリ秒[7]
(誤差1.4%)
距離 187 ± 3 光年[注 1]
(57.4 ± 0.8 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -0.4[注 2]
おとめ座δ星の位置(丸印)
物理的性質
半径 48 R[8]
65.8 R[9]
質量 1.4 ± 0.3 M[10]
表面重力 (logg) 1.0[8]
自転速度 8.1 km/s[11]
自転周期 4,200 [11]
スペクトル分類 M3+III[1]
光度 468 L[8]
502.59 L[12]
表面温度 3,999 K[8]
3,657 K[9]
色指数 (B-V) +1.58[3]
色指数 (U-B) +1.78[3]
色指数 (R-I) +1.33[3]
金属量[Fe/H] -0.16[8]
他のカタログでの名称
おとめ座43番星[1]
BD +04 2669[1]
FK5 484[1], HD 112300[1]
HIP 63090[1]
HR 4910[1]
SAO 119674[1]
LTT 13714[1]
NSV 6026[1]
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特徴

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ヒッパルコス衛星による観測から得られた、1989年末から1993年初頭までのおとめ座δ星の光度曲線

おとめ座δ星は赤色巨星分枝 (RGB) の段階にある恒星である[1][13]質量太陽の1.4倍しかないが、2008年に公表された研究によると半径は太陽の48倍、光度は468倍に達している[10]。より最近では、おとめ座δ星の半径と光度はさらに大きいと推定している研究も存在している[12][9]。おとめ座δ星の外殻では半規則型変光星で見られるような脈動が複数の異なる周期で発生しており、視等級が3.32等級から3.40等級の間で変光している[6]変光星である可能性がある恒星が記載されているカタログである New Catalogue of Suspected Variable Stars (NSV) にも「NSV 6026」という名称で登録されている[1][5]

地球から観測して80離れた位置に見える11等星は、おとめ座δ星の伴星である可能性があるとされる[13]。仮にこの恒星が伴星であった場合、少なくとも 5,000 au 離れた軌道を20万年以上の公転周期で公転しているK型主系列星であると推測される[13]。その場合、主星の位置から見た伴星は金星の2倍の明るさに見え、伴星の位置から見た主星は満月の4倍の明るさに見える[13]

伴星

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2005年から2022年の期間に渡って普賢山天文台で行われた、おとめ座δ星の視線速度変化の観測の結果、約467日の公転周期で周囲を公転している天体が発見されたと2023年に公表され、HD 112300 b と呼称されている。この天体の下限質量木星の15.8倍に達しており、惑星というよりは褐色矮星のような亜恒星天体であるとされる[11]

おとめ座δ星の惑星[11]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b ≥15.83+2.33
−2.74
 MJ
1.33+0.08
−0.11
466.63+1.47
−1.28
0.36+0.06
−0.11

名称

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固有名の ミネラウバ [2](Minelauva[1][3][4]) または ミネラウヴァ [14] は、アラビアの月宿で第13番目 al-ʿawwāʾ に関係するものと考えられている[15][16]が、この al-ʿawwāʾ が何を指すのかは定かではない[17]。一説には「吠える犬」を指すともされている[15]。2017年6月30日、国際天文学連合の恒星の固有名に関するワーキンググループは、Minelauva をおとめ座δ星の固有名として正式に承認した[4]

中国では、おとめ座δ星を含む5個の恒星は太微左垣 (Tài Wēi Zuǒ Yuán) と呼ばれる星官を構成しており[18]、おとめ座δ星はその3番目の恒星とされていることから 太微左垣三 (Tài Wēi Zuǒ Yuán sān) と呼ばれており[19]、また、東藩の2番目の恒星という意で 東次相 (Dōngcìxiāng) とも呼称される[20]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s Result for del Vir”. SIMBAD Astronomical Database. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年9月22日閲覧。
  2. ^ a b 山田卓『新装版 ほしぞらの探訪』(新装版)地人書館、2017年4月13日、92頁。ISBN 978-4805209080 
  3. ^ a b c d e 輝星星表第5版
  4. ^ a b c IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合 (2017年6月30日). 2017年8月4日閲覧。
  5. ^ a b c Result for NSV 6026”. VizieR. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年9月22日閲覧。
  6. ^ a b Tabur, V.; Bedding, T. R.; Kiss, L. L. et al. (2009). “Long-term photometry and periods for 261 nearby pulsating M giants”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 400 (4): 1945–1961. arXiv:0908.3228. Bibcode2009MNRAS.400.1945T. doi:10.1111/j.1365-2966.2009.15588.x. 
  7. ^ a b c d e f Vallenari, A. et al. (2022). “Gaia Data Release 3. Summary of the content and survey properties”. Astronomy & Astrophysics. arXiv:2208.00211. doi:10.1051/0004-6361/202243940  Gaia DR3 record for this source at VizieR.
  8. ^ a b c d e Massarotti, Alessandro; Latham, David W.; Stefanik, Robert P.; Fogel, Jeffrey (2008). “Rotational and Radial Velocities for a Sample of 761 HIPPARCOS Giants and the Role of Binarity”. The Astronomical Journal 135 (1): 209–231. Bibcode2008AJ....135..209M. doi:10.1088/0004-6256/135/1/209. 
  9. ^ a b c McDonald, I.; Zijlstra, A. A.; Watson, R. A. (2017). “Fundamental parameters and infrared excesses of Tycho-Gaia stars”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 471 (1): 770-791. arXiv:1706.02208. Bibcode2017MNRAS.471..770M. doi:10.1093/mnras/stx1433. 
  10. ^ a b Tsuji, T. (2008). “Cool luminous stars: the hybrid nature of their infrared spectra”. Astronomy and Astrophysics 489 (3): 1271–1289. arXiv:0807.4387. Bibcode2008A&A...489.1271T. doi:10.1051/0004-6361:200809869. 
  11. ^ a b c d Lee, Byeong-Cheol; Do, Hee-Jin; Park, Myeong-Gu; et al. (29 July 2023). "Long-period radial velocity variations of nine M red giants: The detection of sub-stellar companions around HD 6860 and HD 112300". arXiv:2307.15897v1 [astro-ph.EP]。
  12. ^ a b Anderson, E.; Francis, Ch. (2012). “XHIP: An extended hipparcos compilation”. Astronomy Letters 38 (5): 331. arXiv:1108.4971. Bibcode2012AstL...38..331A. doi:10.1134/S1063773712050015. 
  13. ^ a b c d Jim Kaler. “DELTA VIR”. STARS. 2017年7月6日閲覧。
  14. ^ 『ステラナビゲータ11』(11.0i)AstroArts 
  15. ^ a b 近藤二郎『アラビアで生まれた星の名称と歴史 - 星の名前のはじまり』(初版)誠文堂新光社、2012年8月30日、32頁。ISBN 978-4-416-21283-7 
  16. ^ Richard Hinckley Allen. “Virgo,”. Star Names - Their Lore and Meaning. 2017年8月4日閲覧。
  17. ^ Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Pub. Corp.. p. 60. ISBN 978-1-931559-44-7 
  18. ^ (中国語) 中國星座神話, written by 陳久金. Published by 台灣書房出版有限公司, 2005, ISBN 978-986-7332-25-7.
  19. ^ 香港太空館 - 研究資源 - 亮星中英對照表” (中国語). Hong Kong Space Museum. 2010年8月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月22日閲覧。
  20. ^ English-Chinese Glossary of Chinese Star Regions, Asterisms and Star Name” (中国語). Hong Kong Space Museum. 2010年8月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月22日閲覧。

外部リンク

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