もう帰らない

1977年に発表されたフリートウッド・マックの楽曲

もう帰らない」(もうかえらない、原題: Never Going Back Again)は、イギリスのロックバンドであるフリートウッド・マックの楽曲。1977年2月に発売された11作目のスタジオ・アルバム『』に収録された[4]リンジー・バッキンガムが作詞作曲を手がけた本作は[5][6]、仲たがいについて歌ったアコースティック形式のバラードとなっている[7]。演奏はバッキンガムが1人で行なっている[7]

もう帰らない
フリートウッド・マック楽曲
収録アルバム
英語名Never Going Back Again
リリース
  • アメリカ合衆国の旗 1977年6月
  • イギリスの旗 1977年9月
A面
録音サウンド・シティ・スタジオ英語版[1]
ジャンル
時間2分2秒
レーベルワーナー・ブラザース・レコード
作詞者リンジー・バッキンガム
作曲者リンジー・バッキンガム
プロデュース
フリートウッド・マック シングル アメリカ合衆国の旗 年表
フリートウッド・マック シングル イギリスの旗 年表
収録曲
ドリームス
(A2)
もう帰らない
(A3)
ドント・ストップ
(A4)

その後アメリカで発売されたシングル『ドント・ストップ』やイギリスで発売されたシングル『ユー・メイク・ラヴィング・ファン』のB面にも収録され、1992年に発売のボックス・セット『25イヤーズ・ザ・チェイン』や、2002年に発売のコンピレーション・アルバム『ヴェリー・ベスト・オブ・フリートウッド・マック』にも収録されたほか[8][9]コリン・リード英語版マッチボックス・トゥエンティらによってカバーされている。

制作背景

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音楽史家であるジョージ・ケースは、本作を「人間関係にまつわる陽気な南カリフォルニアの哲学」を取り入れた「極めて美しい」楽曲と説明した[10]。本作はバッキンガムがバンドメイトであるスティーヴィー・ニックスとの破局に着想を得て書いた楽曲となっている[6][3]。バッキングガムがアルバムのために書いた最後の楽曲の1つで、別の女性とリバウンド交際を始めた後に書かれた[11][12]。また、バッキングガムは本作を「心地よくて素朴な楽曲」とし、歌詞は深く考えなかったと述べた[12]。楽曲には「過去の過ちを繰り返さないように」という願望が反映されている[13]

本作においてバッキンガムはアコースティック・ギターの伴奏でトラヴィスピッキングを使用した[14]。この奏法はセッションギタリストのライ・クーダーから着想を得たもの[12]。プロデューサーのケン・キャレイ英語版は、楽曲に最適なサウンドを得るためにバッキンガムに対して20分ごとにギターの弦を張り替えるように提案した[15]。仕上げには丸1日を要し、スタッフは1時間ごとに3度もギターの弦を張り直すこととなったため、キャレイは「たぶんスタッフたちは僕を殺したかったと思う」と語っている[15]ボーカルの録音時、バッキンガムはアコースティック・ギターの伴奏における演奏ミスに気がづき、翌日に最初から録り直した[15]

本作のキーはFメジャーで、テンポは88BPM、4分の4拍子で演奏される[16]。ギターは4フレットにカポタストが付けられ、ドロップDにチューニングされている[16]。ボーカルの声域はC4からA5[16]

制作当時のタイトルは、本作の録音時にバンドメイトのミック・フリートウッドブラシスネアドラムを叩いていたことから「Brushes」とされていた[17]。このスネアドラムのパートは完成版では削除されたが[17][18]、2001年の再発盤に付属のDVD-Audioボーナス・トラックとして削除されたスネアドラムとエレクトリック・ギターのパートを含んだ別バージョンが収録された[18][19]。音楽雑誌『ビルボード』の批評家であるクリストファー・ウォルシュは、これらのパートが「曲の感情に訴えかける力を増加させる嬉しい驚き」を象徴すると述べた[19]

評価

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ポップカルチャー情報誌『ローリング・ストーン』の批評家であるジョン・スウェンソンは、本作を「(アルバム『噂』における)最高に美しい作品」と説明し、「不愉快なテーマ」とは裏腹に「愉快な」ボーカルに注目した[20]。オンラインマガジン『スタイラス・マガジン英語版』の批評家であるパトリック・マッケイは、アルバム『噂』の「最強の楽曲」の1つと見なした[21]。一方で音楽ジャーナリストのチャック・エディは、本作を「芸術品まがいのトランス」と見なした[22]。フリートウッド・マックの伝記作家であるキャス・キャロルは、本作を「わずかな優雅な言葉ですべてを語り、簡素なコーラスとはっきりとした意思を持った旋律的に整然とした楽曲」と称賛した[23]

オンラインマガジン『ペースト』のマット・ミッチェルは、18番目に優れたフリートウッド・マックの楽曲として本作を挙げた[24]

クレジット

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※出典[15]

チャートと認定

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チャート成績

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週間チャート
チャート (2011年) 最高位
US Rock Digital Songs (Billboard)[25] 35

認定

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国/地域 認定 認定/売上数
イギリス (BPI)[26] Platinum 600,000 

  認定のみに基づく売上数と再生回数

他のアーティストによるカバー

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ロックバンドのマッチボックス・トゥエンティは、1998年に発売のトリビュート・アルバム『Legacy: A Tribute to Fleetwood Mac's Rumours』で、マイナーコードでカバー[27]。音楽雑誌『ビルボード』の批評家であるスティーヴ・ノッパーは、「陰鬱な」カバーと称した[28]。同じく『ビルボード』のチャック・テイラーは「わずかに攻撃的でゆったりとしたロックの律動で名曲の控えめなたたずまいを作り替えた」と評した[29]。マッチボックス・トゥエンティのドラマーであるポール・ドゥセットは、ドゥセットいわく「考えてみれば悲しい」暗いアレンジにする前から、マッチボックス・トゥエンティのメンバーは楽曲に手を加えることを考えていた[28]。ドゥセットは、地元紙『ボカラトン・ニュース英語版』の取材でバンドのカバー版の仕上がりついて「うまくいった」と語っている[30]。同バンドのリード・シンガーであるロブ・トーマスは、ドラムのパートは「タスク英語版」や「ザ・チェイン英語版」から引用し、マイナーコードを使用することで「実に不気味な」アレンジに仕上げたと語っている[29]

ギタリストのコリン・リード英語版は、2001年に発売のアルバム『Tilt』で、エディ・リーダー英語版をボーカルに迎えてカバー[31]。『オールミュージック』のロニー・D・ランクフォード・ジュニアは、「可愛らしい」バージョンとし、「おそらく過剰な頻度で演奏された名曲の新しい解釈を提示している」と評した[31]

2014年に放送されたバンク・オブ・アメリカのテレビCMでは、原曲よりも低いキーで演奏されたインストゥルメンタル(演奏者不明)が使用された[32]

デンマークのバンドであるスラッフェランド英語版は、フリージャズの形式や楽器編成の変更などを加えたカバー版を発表している[33]

脚注

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出典

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  1. ^ Q staff (May 1997). “The recording of Fleetwood Mac's Rumours (February 1976 - February 1977)”. Q magazine (128). 
  2. ^ Goldsmith, Melissa Ursula Dawn (2019). Listen to Classic Rock!: Exploring a Musical Genre. London: Bloomsbury Publishing. p. 1870. ISBN 979-8-216-11193-1 
  3. ^ a b Curtis-Horsfall, Thomas (1 March 2024). "Fleetwood Mac's 25 greatest songs, ranked". www.goldradiouk.com. Global. 2024年4月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月18日閲覧
  4. ^ 25 Top Acoustic Songs: Tab+ = Tab + Tone + Techniue. Milwaukee, Wisconsin: Hal Leonard Corporation. p. 14. ISBN 978-1-480-35937-6 
  5. ^ Rumours (LP liner notes). Fleetwood Mac. Warner Bros. Records. 1977. K56344。
  6. ^ a b Taysom, Joe (8 December 2023). "The Fleedwood Mac song Lindsey Buckingham called "naive"". Far Out. 2023年12月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月17日閲覧
  7. ^ a b "11. "Never Going Back Again" – Fleedwood Mac's 50 Greatest Songs". Rolling Stone. 2 May 2022. 2022年5月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月18日閲覧
  8. ^ 25 Years – The Chain (CD liner notes). Fleetwood Mac. Warner Bros. Records. 1992. 9362-45129-2。
  9. ^ Unterberger, Richie (2017). Fleetwood Mac: The Complete Illustrated History. Voyageur Press. pp. 197-198. ISBN 9781627889759 
  10. ^ Case, George (2010). Out of Our Heads: Rock 'n' Roll Before the Drugs Wore Off. Milwaukee, Wisconsin: Hal Leonard Corporation. p. 189. ISBN 9780879309671 
  11. ^ Classic Albums - Fleetwood Mac - Rumours. Eagle Rock. (2005). ASIN B0007GADZE 
  12. ^ a b c DeMain, Bill (2004). In Their Own Words: Songwriters Talk about the Creative Process. Santa Barbara, California: Greenwood Publishing Group. p. 102. ISBN 9780275984021 
  13. ^ "Know Your 'Rumours': 'Glee' vs. Fleetwood". Rolling Stone. 2022年8月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月19日閲覧
  14. ^ 25 Top Acoustic Songs - Tab. Tone. Technique. Milwaukee, Wisconsin: Hal Leonard Corporation. (2013). ISBN 9781480359376 
  15. ^ a b c d Bosso, Joe (14 December 2022). ""Christine started playing something she had written on the piano one day, and it floored me" – Fleetwood Mac Rumours track-by-track with co-producer Ken Caillat". MusicRader. Future Publishing. 2022年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月20日閲覧
  16. ^ a b c Buckingham, Lindsey. "Never Going Back Again". Musicnotes.com. MusicNotes, Inc. 2024年8月22日閲覧
  17. ^ a b Caillat, Ken; Stiefel, Steve (2012). Making Rumours: The Inside Story of the Classic Fleetwood Mac Album. Wiley & Sons. pp. 144-145. ISBN 9781118218082 
  18. ^ a b Walsh, Christopher (December 23, 2000). “Surround Sound Demonstrations Impress Confab Attendees”. Billboard (Nielsen Business Media) 112 (52): 44. ISSN 0006-2510. https://books.google.co.jp/books?id=TxEEAAAAMBAJ&q=%22never+going+back+again%22+fleetwood+mac&pg=PA44-IA20&redir_esc=y#v=snippet&q=%22never%20going%20back%20again%22%20fleetwood%20mac&f=false. 
  19. ^ a b Walsh, Christopher (June 30, 2001). “DVD Video”. Billboard (Nielsen Business Media) 113 (26): 19. ISSN 0006-2510. https://books.google.co.jp/books?id=-BMEAAAAMBAJ&q=%22never+going+back+again%22+fleetwood+mac&pg=PA19&redir_esc=y#v=snippet&q=%22never%20going%20back%20again%22%20fleetwood%20mac&f=false. 
  20. ^ Swenson, John (21 April 1977). "Fleetwood Mac: Rumours : Music Reviews". Rolling Stone. 2008年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月22日閲覧
  21. ^ McKay, Patrick (14 August 2007). "Fleetwood Mac - Rumours - The Diamond". Stylus Magazine. 2007年11月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月22日閲覧
  22. ^ Eddy, Chuck (August 1992). “Blue Light Special”. SPIN (SPIN Media) 8 (5): 86. ISSN 0886-3032. https://books.google.co.jp/books?id=Jlr1EqbQvLgC&q=%22never+going+back+again%22+fleetwood+mac&pg=PT86&redir_esc=y#v=snippet&q=%22never%20going%20back%20again%22%20fleetwood%20mac&f=false. 
  23. ^ Carroll, Cath (2004). Never Break the Chain: Fleetwood Mac and the Making of Rumours. Chicago, Illinois: Chicago Review Press. pp. 128-130. ISBN 9781556525452 
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  25. ^ "Fleetwood Mac Chart History (Rock Digital Songs)". Billboard. 2022年12月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月22日閲覧
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  29. ^ a b Taylor, Chuck (May 9, 1998). “Atlantic's matchbox 20 Accelerates From Zero To Sixty With 'Yourself' Set”. Billboard (Nielsen Business Media) 110 (19): 78. ISSN 0006-2510. https://books.google.co.jp/books?id=UQ0EAAAAMBAJ&q=%22never+going+back+again%22+fleetwood+mac&pg=PA78&redir_esc=y#v=snippet&q=%22never%20going%20back%20again%22%20fleetwood%20mac&f=false. 
  30. ^ Sheffield, Shop (1998年10月2日). “Matchbox 20: Still On The Road”. Boca Raton News (South Florida Media Company): p. 4E. https://news.google.com/newspapers?nid=1291&dat=19981002&id=OyRUAAAAIBAJ&pg=3726,268920&hl=en 
  31. ^ a b Lankford, Jr., Ronnie D.. Tilt Review - オールミュージック. 2024年8月22日閲覧。
  32. ^ Swanson, Dave (19 January 2014). "Fleetwood Mac's 'Never Going Back Again' Featured in Bank Commercial". Ultimate Classic Rock. Townsquare Media. 2015年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月22日閲覧
  33. ^ Corcoran, Nina (4 February 2017). "The Very Best Covers of Fleetwood Mac's Rumours". Consequence.net. Conseuence Holdings. 2021年4月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年8月22日閲覧

外部リンク

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