アラカン・ロヒンギャ救世軍

アラカン・ロヒンギャ救世軍(アラカン・ロヒンギャきゅうせいぐん Arakan Rohingya Salvation Army)は、ミャンマー西方のラカイン州で活動する反政府武装組織。略称ARSA。日本の公安調査庁によって国際テロ組織に指定されている[1]。指導者はアタウラー

概要編集

2012年3月、ミャンマー西部・ラカイン州で発生した仏教徒と少数派のベンガル系イスラム教徒(自称・通称はロヒンギャ)との衝突事件を機に結成された。指導者のアタウラーはパキスタン出身で、サウジアラビアに移住し教職に就き、富裕層の庇護で豊かな生活をしていた。しかし、2012年にミャンマーでロヒンギャ「掃討」により、10万超の難民が発生したのを機に、アタウラーはパキスタンに帰国。ターリバーンをはじめとするアフガニスタン・パキスタンのイスラム武装勢力に資金提供し、ジハードへの協力を求めたが、色よい返事は得られなかった。アタウラーはイスラム武装勢力への不信を強め、「熱心な民族主義者になって」パキスタンを出国し、ARSA結成に携わった[2]

2016年10月に国境検問所など3カ所を約400人で襲撃して、広く内外に活動が知られるようになった。ミャンマー軍は掃討作戦を実施したが、ロヒンギャ側の村々を焼き払うなど過剰な対応を行ったため、結果的に武装組織の拡大を招くこととなった。

2017年8月25日には、再び警察など多数の施設を襲撃。ミャンマー国軍側は6,500人程度が襲撃に関与したと推定している[3]。ARSA側の武器は、刃物や棒などを簡素なものであったが、軍側は徹底な反撃を実行。軍の掃討作戦を避けるために数十万人規模のロヒンギャが、隣国のバングラデシュ難民として流出するきっかけとなった。事態を重く見た救世軍側は、同年9月10日、人道支援の受け入れを目的としてツイッター上で1か月間の一時停戦を一方的に宣言した[4]

武器は乏しく、わずかな銃器の他は、鉈や鋭くとがらせた竹の棒を使っているという[5]

2018年8月25日、ARSAは襲撃から一周年を迎えた節目となる日に、ツイッターでロヒンギャの保護と安全かつ尊厳ある帰還は、正当な権利であるとするコメントを発表している[6]

その後、ロヒンギャの難民キャンプが、バングラデシュ領内のコックスバザール周辺に形成された。2020年、バングラディシュで新型コロナウイルスの感染が拡大してキャンプの警備が手薄になると、アラカン・ロヒンギャ救世軍のメンバーが入り込み、みかじめ料の徴収や兵士への勧誘を行い始めた。バングラディシュ政府はミャンマー側が帰還を拒否する口実とすることを避けるために「難民キャンプにアラカン・ロヒンギャ救世軍のメンバーはいない」としているが、2020年12月現在でキャンプ内に1500人ほどの勢力がいるものと推定されている[7]

脚注編集

  1. ^ 公安調査庁 アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)
  2. ^ 自由の戦士か災いをもたらす者か?ロヒンギャ武装組織指導者 異色の人生 2017年10月1日 19:25 フランス通信社 2017年10月13日閲覧
  3. ^ アングル:膨張するロヒンギャ難民、無人島計画に救いはあるか ロイター通信(2017年9月20日)2017年10月4日閲覧
  4. ^ ロヒンギャ衝突、武装集団が「停戦」声明 日本経済新聞(2017年9月10日)2017年10月4日閲覧
  5. ^ 【ロヒンギャ危機】 ロヒンギャ武装勢力の真実 - BBC ジョナサン・ヘッド
  6. ^ 大弾圧から1年、警察襲撃のロヒンギャ武装組織が声明 難民らはデモ”. AFP (2018年8月25日). 2018年8月25日閲覧。
  7. ^ ロヒンギャ難民武装組織が勧誘 バングラのキャンプ治安悪化『読売新聞』2020年(令和2年)12月29日夕刊13版、8面

関連項目編集

  • アラカン軍英語版 - 仏教徒のラカイン族(アラカン族)からなる民兵組織。元来はカチン独立軍の分派(ラカイン族部隊)だったが、アラカン・ロヒンギャ救世軍に対抗する形で急成長。また、ミャンマー軍との武力衝突も発生している。