アルバニア語

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アルバニア語(アルバニアご、Shqip、[ʃcip])はインド・ヨーロッパ語族に属する言語であり、アルバニア語のみでアルバニア語派を成す。ルーマニア語ブルガリア語と共通の特徴をもつバルカン言語連合をなす。

Albanian
shqip
gjuha shqipe
発音 IPA: [ʃcip]
話される国 アルバニア, コソボ, ギリシャ, イタリア, モンテネグロ, 北マケドニア, セルビア
民族 アルバニア人
話者数
  • 600万 (2018) (バルカン半島)[1]
  • 750万 (2017/2018)(全世界)[2][1]
言語系統
初期形式
方言
表記体系 ラテン文字 (アルバニアアルファベット英語版)
アルバニア点字英語版
公的地位
公用語 アルバニアの旗 アルバニア
コソボの旗 コソボ
北マケドニア共和国の旗 北マケドニア共和国[注釈 1]
モンテネグロの旗 モンテネグロ[3]
少数言語としての承認 イタリアの旗 イタリア[4]
セルビアの旗 セルビア[5]
クロアチアの旗 クロアチア[6]
ルーマニアの旗 ルーマニア[7]
言語コード
ISO 639-1 sq
ISO 639-2 alb (B)
sqi (T)
ISO 639-3 sqiマクロランゲージ
個別コード:
aae — アアルバレイシュ語
aat — アアルヴァニティック語
aln — ゲグ・アルバニア語
als — トスク・アルバニア語
Glottolog alba1267[8]
Linguasphere 55-AAA-aaa to 55-AAA-ahe (25 varieties)
 
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系統編集

 
印欧語族内におけるアルバニア語の系統的位置の一説

アルバニア語がインド・ヨーロッパ語族に属することが証明されたのは1850年代である。アルバニア語は、基本的には古代のイリュリア語ダキア語のどちらかを祖先とすると考えられている。この二つの言語は、2000年前に東南ヨーロッパで話されていた。

長い歴史の中で、アルバニア人はたくさんの語彙を周辺から借用した。主なものにはラテン語スラヴ諸語ギリシャ語そしてイタリア語がある。

下位方言編集

アルバニア語の方言は、大きくトスク・アルバニア語ゲグ・アルバニア語の2つに分けられる。シュクンビン川はトスクとゲグの境界線とされており、それより南のアルバニアとマケドニア共和国、ギリシャ、イタリアのアルバニア人コミュニティではトスク・アルバニア語が優勢である。シュクンビン川より北のアルバニア、およびモンテネグロ、コソボ、マケドニア共和国とセルビアではゲグ・アルバニア語が優勢である。

現在の標準アルバニア語は、トスク・アルバニア語をベースに整えられたものであり、この系統に分類される。

   

話者分布編集

アルバニア語は約600万人によって話されており、そのうち350万人がアルバニア国内で、それ以外では主にコソボマケドニア共和国モンテネグロセルビアギリシャ北西部で話されている。また南イタリアシチリア島においては約25万人によって話されている[9]。これらのイタリア領では15世紀頃に移住したアルバニア人であるアルベレッシュが中心となってアルバニア語のコミュニティーがかたちづくられた。現代では国外移住者によってブルガリアルーマニアウクライナ[10]をはじめアメリカオーストラリアにも幾つかの小規模な話者グループが形成され、アルバニア語が話されている。

文字編集

アルバニア語が文字として表現されたのは比較的遅く、アルバニア語で記された現存最古の文献、テクスト群は15世紀の半ばに記された短い語句である。現存する最古の印刷文献は、ローマ・カトリック教会の聖職者、ジョン・ブズク (Gjon Buzukuにより1555年に書かれたものである。アルバニア語を教えた最初の学校は、1638年フランシスコ会により設立された。

アルバニアは当初はラテン文字で表記されたが、1478年の完全征服から1912年の独立宣言までオスマン帝国による支配下にあり、その間にアルバニア人の多くがイスラム教への改宗を行った事もあって、アルバニア本土ではアルバニア語が政治的・宗教的理由により当時のオスマン帝国の公用文字であったアラビア文字で綴られた事もある。しかし、独立回復後は再びラテン文字表記へと変更され、現在の標準的な書き言葉でもラテン文字が使用される。

下表にアルバニア語アルファベットを示し、さらに最下段にてそれぞれの字母の発音をIPAで表しておく。

新旧記法対応表編集

現在のラテン文字 (1912-) イスタンブール式 (1879) Bashkimi式 ギリシャ文字 アラビア文字 キリル文字 IPA
A a A a A a Α آ А [ɑ]
B b B b B b Б ب Б [b]
C c C c Ts ts ΤΣ تس Ц [ts]
Ç ç Ç ç Ch ch ΤΣ̈ چ Ч [ʧ]
D d D d D d D د Д [d]
Dh dh Б δ Dh dh Δ ذ ? [ð]
E e E ε É é Ε ا َ Е [e]
Ë ë e E e Ε̰ ? Ъ [ə]
F f F f F f Φ ف Ф [f]
G g G g G g Γ غ Г [g]
Gj gj Γ γ Gh gh Γ̇ ك Ђ,ГЇ [ɟ]
H h H h H h Χ̇ هـ Х [h]
I i I i I i Ι ِ ا Ї, И [i]
J j J j J j J ى Ѣ,Ј [j]
K k K k K k Κ ق К [k]
L l L l L l Λ ل Љ,Л [l]
Ll ll Λ λ Ll ll Λ̇ لل Л [ɫ]
M m M m M m Μ م М [m]
N n N n N n Ν ن Н [n]
Nj nj И ŋ Gn gn Ν̇ نى Њ,НЇ [ɲ]
O o O o O o Ο ? О [o]
P p Π p P p Π ٻ П [p]
Q q Q q C c Κ̇ كـ Ћ,КЇ [c]
R r R r R r Ρ ر Р [ɾ]
Rr rr Ρ ρ Rr rr Ρ̇ رر РР [r]
S s S s S s Σ س С [s]
Sh sh Σ σ Sh sh Σ̈ ش Ш [ʃ]
T t T t T t Τ ت Т [t]
Th th Θ θ Th th Θ ث Ѳ [θ]
U u U u U u   او У [u]
V v V v V v Β و В [v]
X x X x Z z دس ДС [dz]
Xh xh X̦ x̦ Zh zh DΣ̈ ج Џ [ʤ]
Y y Y y Y y Υ َ و ЈУ [y]
Z z Z z X x Ζ ز З [z]
Zh zh Z̧ z̧ Xh xh Ζ̇ ژ Ж [ʒ]

脚注編集

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脚注
  1. ^ a b Klein, Jared; Brian, Joseph; Fritz, Matthias (2018). Handbook of Comparative and Historical Indo-European Linguistics. Walter de Gruyter. pp. 1800. ISBN 9783110542431. https://books.google.com/books?id=SuR8DwAAQBAJ&pg=PA1548 
  2. ^ Rusakov 2017, p. 552.
  3. ^ “Language and alphabet Article 13”. Constitution of Montenegro. WIPO. (19 October 2007). http://www.wipo.int/wipolex/en/text.jsp?file_id=187544#LinkTarget_1506. "Serbian, Bosnian, Albanian and Croatian shall also be in the official use." 
  4. ^ Franceschini 2014, pp. 533–534 [1]
  5. ^ Application of the Charter in Serbia”. European Charter for Regional or Minority Languages. pp. 4–5, 9. 2013年6月11日閲覧。
  6. ^ Franceschini, Rita (2014). “Italy and the Italian-Speaking Regions”. In Fäcke, Christiane. Manual of Language Acquisition. Walter de Gruyter GmbH. pp. 546. ISBN 9783110394146. https://books.google.com/books?id=zM_mBQAAQBAJ&q=Manual+of+Language+Acquisition&pg=PA1 
  7. ^ Reservations and Declarations for Treaty No.148 – European Charter for Regional or Minority Languages”. Council of Europe. Council of Europe. 2015年12月3日閲覧。
  8. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Albanian”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/alba1267 
  9. ^ ALBANIANS - World Directory of Minorities and Indigenous Peoples[リンク切れ](英語)、2012年11月28日閲覧。
  10. ^ The Albanian Language(英語)、2012年11月28日閲覧。
注釈
  1. ^ Co-official language.

関連項目編集

  • プリズレン連盟
  • Zotero - 名称はアルバニア語で「極める、使いこなす」という意味の動詞に由来する。

外部リンク編集