イエス・ファースト・アルバム

イエスのアルバム

イエス・ファースト・アルバム[注釈 1]Yes)は、イギリスプログレッシブ・ロックバンドイエスが1969年に発表したデビュー・アルバムである。

イエス・ファースト・アルバム
イエススタジオ・アルバム
リリース
録音 1969年春
ジャンル プログレッシブ・ロック
サイケデリック・ロック
時間
レーベル アトランティック・レコード
プロデュース ポール・クレイ
専門評論家によるレビュー
イエス アルバム 年表
イエス・ファースト・アルバム
(1969年)
時間と言葉
(1970年)
ミュージックビデオ
「Looking Around」 - YouTube
「Survival」 - YouTube
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解説 編集

イエスはイギリスのロック・バンドとしては初めて、アメリカのR&Bの老舗レコード会社であるアトランティック・レーベルと契約を交わした。1969年の7月に発表された本作のライナー・ノートで、『メロディ・メイカー』誌のコラムニストは最も有望な新人バンドとしてレッド・ツェッペリン[注釈 2]とイエスを挙げている。このことからも、彼らが当時いかに注目されていたかが窺い知れる。

イエスは70年代にプログレッシブ・ロック・バンドの代表の一つと称されたが、このデビュー・アルバムでは、サイケデリックなフォーク・ロックといった趣の音楽を披露している。ジョン・アンダーソンクリス・スクワイアピーター・バンクスの厚みのあるコーラス[注釈 3]トニー・ケイのグルーヴ感のあるオルガンジャズの影響が顕著なバンクスのギター・ソロなどが印象的である。スクワイアとビル・ブルーフォードのリズム・セクションは既にバンドのトレード・マークとなるほどの個性があり、バンクスのギターウェス・モンゴメリーからピート・タウンゼントまでを自由に往来するような振幅の広さがある。

全8曲の収録曲のうち、2曲がカバー作品。「アイ・シー・ユー」の原曲はバーズが1965年に発表したアルバム『霧の五次元』に収録された。「エヴリ・リトル・シング」の原曲はビートルズが1964年に発表したアルバム『ビートルズ・フォー・セール』に収録された。これらの曲では、大胆なアレンジでの再構築が聴ける[注釈 4]

6曲のオリジナル曲の作者には、アンダーソンかスクワイア、もしくは両者が記されている。「ハロルド・ランド」とはジャズ・サックス奏者の名前であり、ブルーフォードのアイデアで曲名になった[1]。「ビヨンド・アンド・ビフォア」「スウィートネス」では、イエスの前身「メイベル・グリアーズ・トイショップ」のギタリストクライヴ・ベイリーが共作者に記されている。「ビヨンド・アンド・ビフォア」はスクワイアがメイベル・グリアーズ・トイショップに在籍中にベイリーと共作したサイケデリック・ソングである[2]

アルバム・ジャケットのロゴ案はバンクスによる[3][注釈 5]。アメリカ盤のジャケットにはバンドの集合写真が使われている。

本作は概ね好意的な評価を得た[4]。しかし、業界内での期待とは裏腹に大きなリアクションもなく、売り上げも華々しいと呼ぶには程遠く[4]、レッド・ツェッペリンのデビュー・アルバムに大きく水をあけられた。

収録曲 編集

A面
  1. ビヨンド・アンド・ビフォア - "Beyond and Before" (スクワイア、ベイリー)
  2. アイ・シー・ユー - "I See You" (マッギン、クロスビー)
    バーズのカバー曲。
  3. 昨日と今日 - "Yesterday and Today" (アンダーソン)
  4. ルッキング・アラウンド - "Looking Around" (アンダーソン、スクワイア)
B面
  1. ハロルド・ランド - "Harold Land" (アンダーソン、スクワイア、ブルーフォード)
  2. エヴリ・リトル・シング - "Every Little Thing" (レノン、マッカートニー)
    ビートルズのカバー曲。
  3. スウィートネス - "Sweetness" (アンダーソン、スクワイア、ベイリー)
  4. サヴァイヴァル - "Survival" (アンダーソン)

レコーディング・メンバー 編集

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ Morse (1996), p. 14.
  2. ^ Morse (1996), p. 13.
  3. ^ Morse (1996), p. 8.
  4. ^ a b Morse (1996), p. 11.

注釈 編集

  1. ^ 旧邦題は『イエスの世界』(1969年、Atlantic MT-1098)。
  2. ^ レッド・ツェッペリンは、アトランティック・レコードと契約を交わしたのはイエスの後であったが、デビュー作を発表したのは1969年1月とイエスの前であった。
  3. ^ アンダーソンは、当時人気が高かったアメリカのコーラス・グループのザ・フィフス・ディメンションをよく聴いていた
  4. ^ エヴリ・リトル・シング」では「デイ・トリッパー」のリフが演奏されている。
  5. ^ バンクスはイエスというバンド名の生みの親である。メイベル・グリアーズ・トイショップは、彼の提案でイエスと改名した、

参考文献 編集

  • Morse, Tim (1996), Yesstories: Yes in Their Own Words, St. Martin's Press, ISBN 0-312-14453-9