イッツ・オンリー・ロックン・ロール (曲)

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イッツ・オンリー・ロックン・ロール」(It's Only Rock'n'Roll (But I Like It))は、ローリング・ストーンズの楽曲。作詞・作曲はミック・ジャガーおよびキース・リチャーズ1974年リリースのアルバムイッツ・オンリー・ロックン・ロール』収録曲で、同アルバムからの先行シングルとして初登場した。

イッツ・オンリー・ロックン・ロール
ローリング・ストーンズシングル
初出アルバム『イッツ・オンリー・ロックン・ロール
B面 スルー・ザ・ロンリー・ナイト
リリース
規格 7インチ・シングル
録音 1973年 (1973)、1974年1月14日 (1974-01-14) - 31日
ジャンル ロック
時間
レーベル ローリング・ストーンズ・レコード
作詞・作曲 ジャガー/リチャーズ
プロデュース グリマー・ツインズ
チャート最高順位
ローリング・ストーンズ シングル 年表
ドゥー・ドゥー・ドゥー… (ハートブレイカー)
(1974)
イッツ・オンリー・ロックン・ロール
(1974)
エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ
(1974)
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解説 編集

元々この曲は、当時フェイセズのギタリストだったロン・ウッドの1stソロ・アルバム『俺と仲間[1]の製作にミック・ジャガーが参加したことから生まれている。アルバムはウッドのリッチモンドにある自宅の地下室で制作されたが、そこで2つの曲を一緒に作ったという。そのうちの1曲が本作で、もう一方の「俺の炎」は、そのまま『俺と仲間』の冒頭を飾った[2]。そこにはウッド、ジャガーの他、ケニー・ジョーンズ(ドラム)、ウィリー・ウィークス(ベース)、そしてデヴィッド・ボウイ(バックヴォーカル)が参加していたという[2][3]。尚、このアルバムにはストーンズからはキース・リチャーズやミック・テイラーも参加している。

作者クレジットはジャガー/リチャーズとなっているが、曲の原型はウッドが作ったという[4]。このため、クレジットには"Inspiration by Ronnie Wood"と注釈がつけられることがある。「たかがロックンロール、でもそれが大好きなんだ」というフレーズは、ジャガーとケニー・ジョーンズが起こしたちょっとした口論から生まれたものだという[5]。こうして原型が出来上がったものをストーンズのセッションに持ち帰り、ミュンヘンのミュージックランド・スタジオに於いて更に練り上げた結果としてできたのが本作である。ミュンヘンに持ち帰ったセッションテープには幾つかの改変が為されており、イアン・スチュワートピアノが追加されている[6]。歌詞にはデヴィッド・ボウイの「ロックン・ロールの自殺者」(1972年のアルバム『ジギー・スターダスト』収録)からの影響が見られるとする指摘がある[7]

シングル盤のジャケットには大きなペンを自分の胸部に突き刺すジャガーのイラストが描かれている。このイラストの意味についてジャガーは「まぁ、気楽なアンチ・ジャーナリズムってやつかな」と説明している[8]マイケル・リンゼイ=ホッグの監督によるプロモーション・ビデオも制作され、水兵隊の衣装を着たメンバーが船内をイメージしたセットの中で演奏するシーンが中心となって収められているが、後半からセット内にシャボン玉が充満していくシーンで、シャボン玉の勢いが強すぎて泡が見る見るうちに充満してしまい、後方でドラムを叩いていたチャーリー・ワッツが逃げ遅れる場面も映されている。この映像はYouTubeのストーンズ公式ページで視聴できる。

1974年7月26日に英米同時にリリースされ、イギリスでは何とか10位につけたものの[9]アメリカでは最高位16位(ビルボード[10]に甘んじている。ストーンズの先行シングルがアメリカでトップ10に入らなかったのは1968年の「ストリート・ファイティング・マン」(48位)以来であるが[11]、この曲の場合は全米中のラジオ局で放送禁止の措置をとられたという背景もある[12]。この結果にストーンズの商業的スランプの端緒と見る向きも多かった。しかしその一方、後述の通りコンサートに採り上げられる機会は多く、また多くのベスト・アルバムコンピレーション・アルバムに収録されるなど、ストーンズの代表作の一つという評価を得ている。

尚、シングルのB面に収録された「スルー・ザ・ロンリー・ナイト」は、アルバム『イッツ・オンリー・ロックン・ロール』からの曲ではなく、1973年のアルバム『山羊の頭のスープ』のアウトテイクである。この曲にはジミー・ペイジが参加したとする説がある[13]。この曲は以後、ストーンズのアルバムには全く収録されず、レア・トラックとなっていたが、2005年リリースのコンピレーション・アルバムレアリティーズ 1971-2003』で初めて公式アルバムに収録されている。

コンサート・パフォーマンス 編集

1975年の全米ツアーから直近の2016年のツアーまで、1980年代前半を除く全てのツアーで披露され続けている[14]。しかし、ストーンズの公式ライブアルバムには『ラヴ・ユー・ライヴ』と『ライヴ・リックス』にしか収録されていない。なお、基本的にライブテイクはアレンジがスタジオテイクと大幅に違っている。

参加ミュージシャン 編集

脚注 編集

  1. ^ 後に再発された際には『Cancel Everything』とタイトルが変更されたこともあった。
  2. ^ a b 俺と仲間』日本盤CD(WPCR-96) ライナーノーツ (越谷政義 1994年
  3. ^ 『改訂版ローリング・ストーンズ大百科』 越谷政義・著(ソニーマガジンズ) P118
  4. ^ 『イッツ・オンリー・ロックン・ロール』日本版リマスターCD(1994年)の越谷政義による解説より。
  5. ^ ベストアルバム『フォーティ・リックス』日本版(2002年)の寺田正典による解説より。
  6. ^ 『ローリング・ストーンズ/レコーディング・セッション』 マーティン・エリオット著、渡辺淳・訳 (シンコーミュージック) P171
  7. ^ 『ザ・ローリング・ストーンズ全曲解説』 ジェイムス・ヘクター著、山崎智之・訳 (シンコーミュージック) P194 - P195
  8. ^ ベスト・アルバムジャンプ・バック〜ザ・ベスト・オブ・ザ・ローリング・ストーンズ』(1993年)付属のライナー・ノーツより。
  9. ^ ROLLING STONES | full Official Chart History | Official Charts Company:
  10. ^ The Rolling Stones - Chart history | Billboard:
  11. ^ The Rolling Stones - Chart history | Billboard:
  12. ^ 公式写真集『The Rolling Stones 50』(ローリング・ストーンズ著、佐藤志緒訳、ヤマハミュージックメディア刊、2012年ISBN 978-4-636-88707-5) 175頁
  13. ^ アーカイヴシリーズvol.4「ザ・ローリング・ストーンズ['69-'74]」(シンコーミュージック刊、2002年、ISBN 4-401-61774-6)111頁
  14. ^ a b c d e f It's Only Rock 'n' Roll:” (英語). 2016年12月25日閲覧。