ウイルスの分類(ウイルスのぶんるい)は、生物の分類と同様に常に議論が続けられていくものである。これまでに宿主や症状、伝染方法、ウイルス粒子の形状などを基準に分類されてきたが、今日ではウイルスに含まれる核酸の型と、その発現形式に重点を置く分類が広く用いられるようになっている。これはウイルスによる逆転写を発見した功績でノーベル賞を受賞したデビッド・ボルティモア (1938 - ) によって提案され、現在では国際ウイルス分類委員会の定める分類体系の基本骨格となっている。

ボルティモア分類編集

通常の細胞性の生物は2本鎖DNA遺伝情報を保存しているが、2本のうちの1本は冗長である。ウイルスの場合にはゲノムは1本鎖であったり2本鎖であったりする。またDNAではなくRNAを用いている場合もある。1本鎖RNAを用いる場合には、さらに+鎖(mRNAと同様に遺伝子が5'→3'方向に読み取られる)を用いる場合と、-鎖(遺伝子が相補鎖を使って3'→5'方向に読み取られる)を用いる場合がある。ボルティモア分類とは、こうしたゲノムの種類と発現様式によってウイルスを以下の7群に分類するものである。

  1. 2本鎖DNA
  2. 1本鎖DNA
  3. 2本鎖RNA
  4. 1本鎖RNA +鎖
  5. 1本鎖RNA -鎖
  6. 1本鎖RNA逆転写
  7. 2本鎖DNA逆転写

分類階級編集

国際ウイルス分類委員会 (ICTV) による分類体系では、まずボルティモアによる7群に分けた上で、その中を通常の生物のものと似た分類階級を用いて階層的に分類している。またウイロイドなどについても同様の階層分類を行っている。

ウイルスの分類階級は以下で、それぞれの学名は括弧内に示す統一語尾を与えられる。生物種の学名とは異なり、ウイルス種の学名は属名を含む必要がなく、単語数にも制約がない[要出典]

(order; -virales)

(family; -viridae)
亜科 (subfamily; -virinae)
(genus; -virus)
(species)

(strain) — 2003年,ICTV

このうちICTVが取り仕切るのは、2003年時点では、「科」から「種」までである[1]。「株名」は発見機関、発見者が独自に決めてよい[1]

「科名」「属名」「種名」は正式名称として確立したときに「大文字で始まるイタリック体」で記述する[1]

目が使われるようになったのはごく最近のことである[要出典]。国際ウイルス分類委員会の報告書第8版(2005年)では73科約2000種のうち、10科が3目に所属しているだけで、それ以外のほとんどの科は目に所属していなかった。

その後、目から上位のレルムまで使用されるようになり、2019年のICTV発表では4レルム(realm)、9(kingdom)、16(phyla)、8亜門(subphyla)、36(class)、55(order)、8亜目(suborder)、168(family)、103亜科(subfamily)、1421、68亜属(subgenera)、6590である[2]

レルム(realm; -viria)
(kingdom; -virae)
(phyla; -viricota)
亜門(subphyla)
(class; -viricetes)
(order; -virales)
亜目(suborder)
(family; -viridae)
亜科(subfamily; -virinae)
(genus; -virus)
亜属(subgenera)
(species; -virus)

(strain) — 2019年,ICTV[2]

国際ウイルス分類委員会の分類体系編集

国際ウイルス分類委員会の報告書第8版(2005年)の体系を示す。第1群と第2群はDNAウイルスとして考えられており、その他はすべてRNAウイルスである。また、第1群に分類されている階層不明の巨大核質DNAウイルス (Nucleocytoplasmic large DNA viruses) は、真の生物であり、それも新たなドメインを構成するものである可能性も示唆されている[3]

第1群 (Group I) - 2本鎖DNA編集

第2群 (Group II) - 1本鎖DNA編集

第3群 (Group III) - 2本鎖RNA編集

第4群 (Group IV) - 1本鎖RNA +鎖(mRNAとして作用)編集

第5群 (Group V) - 1本鎖RNA -鎖編集

(mRNAの相補鎖。鋳型として使用。)

第6群 (Group VI) - 1本鎖RNA+鎖逆転写編集

(複製によるDNA中間体を含む。)

第7群 (Group VII) - 2本鎖DNA逆転写編集

(複製によるRNA中間体を含む。)

出典および参考文献編集

  1. ^ a b c 国立感染症研究所ウイルス第二部、武田直和、白土東子、岡智一郎、片山和彦、宇田川悦子、名取克郎、宮村達男「カリシウイルスの命名変更について」病原微生物検出情報(IASR)Vol.24(12)No.286, p 311-312.2003年
  2. ^ a b Virus Taxonomy: 2019 ReleaseICTV
  3. ^ Glimpses of the Fourth Domain? Discover
  4. ^ 表記例[1],[2],[3]
  5. ^ HTLV−1感染症とはNIID
  6. ^ その他の分野|ヒトTリンパ向性ウイルス1型(HTLV-1)感染に関連する、成人T細胞白血病(ATL)・脊髄症(HAM)以外の希少疾患(平成24年度)

外部リンク編集