カジカエデ(梶楓[3]学名: Acer diabolicum)はムクロジ科[注 1]カエデ属落葉高木雌雄異株。山地に生える。別名、オニモミジ[2]。葉は大型で形が美しいカエデであるが、知名度は低い[3]。翼果の翼があまり開かないのも特徴である。

カジカエデ
雄花序 福島県 御薬園植栽 2012年5月
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: ムクロジ目 Sapindales
: ムクロジ科 Sapindaceae
: カエデ属 Acer
: カジカエデ A. diabolicum
学名
Acer diabolicum Blume ex K.Koch (1864)[2]
和名
カジカエデ(梶楓)
英名
Horned Maple

名称 編集

和名は、葉がクワ科カジノキ(梶の木)に似ることによる[4][5]。オニモミジとは、カエデとしては葉が分厚く果実に剛毛があるため、「鬼」を冠したもの[5]

分布と生育環境 編集

日本固有種[1]本州宮城県以南、四国および九州に分布し、暖帯および温帯の山地の肥沃な谷間や緩やかな傾斜地の中腹に生育する[4]。東北地方の日本海側、新潟県、長野県北部、富山県にはなく[6]、近畿地方、中国地方には少ない[4]。人為的に植栽されることは稀である[3]

特徴 編集

落葉広葉樹高木[3]。樹高は10 - 15メートル (m) [4]、高いものは20 m [6]に及ぶ。樹皮は灰色から灰褐色で、生長しても樹皮は滑らかである[7]。一年枝は淡褐色や赤褐色で皮目が多い[7]。枝は短枝ができやすく、節間が詰まる[7]冬芽は淡褐色から褐色の鱗芽で、鱗片は8 - 12対あり、瓦重ね状に4列並び、縁に短毛が生える[7]、褐色の短毛が生えるが、のちに落ちる。頂芽は頂生側芽を伴い、枝の側芽は対生する[7]。葉痕はV字形た倒松形で、維管束痕が3個つく[7]。鱗片葉は長さ2.5 - 3センチメートル (cm) になる広線形で、背面に淡黄褐色の絹毛を密生させ、葉が展開した後落ちる。

は1 - 4対、対生する[3]葉身は、長さ4 - 12 cm、幅5 - 15 cmの五角形で、掌状に3 - 5浅・中裂し、基部は心形になり、縁は大きく粗い鋸歯がある。鋸歯の形が独特で、葉の形の印象はカナダ国旗に使われている北米原産のサトウカエデの葉に似ている[3]。葉の表面の葉脈上と裏面に短伏毛があり、縁に短毛が密生し、表面の細脈は隆起する。葉柄は長さ1.5 - 10 cmあり、葉身と同じ長さかまたは短く、短毛がある。秋には紅葉し、黄色に色づくことが多いが、日当たりのよい場所では橙色から赤色に色づくこともある[3]

花期は4 - 5月[7]。葉が展開する前に、長さ3 - 5 cmの散房花序 [4]を前年枝の側芽から出す。はふつう暗紅色[4]で、雄花と比べ雌花の方が色が淡い[8]。雄花序は花が5 - 15個垂れ下がり、花柄は長さ1 - 3 cm、萼片花弁が部分的に合着した長さ5ミリメートル (mm) になる鐘形の花被筒になり[6]雄蕊は7 - 10個で花被筒より長く、退化雌蕊は微小。雌花序は花が3 - 9個やや上向きにつき、萼片、花弁は5個ときに4個で合着せず[8]、雄蕊はなく、子房は短毛が密生し、花柱は外曲する。

果期は7 - 8月。果実翼果で、黄褐色の長剛毛があり、分果の長さは2.5 - 3 cmになり、翼果は鋭角に開く[6]か、ほとんど開かない[4]

利用 編集

材は、器具材として利用される。また、公園樹として植栽される[4]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 最新の植物分類体系であるAPG体系ではムクロジ科(Sapindaceae)に分類されるが、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではカエデ科(Aceraceae)に分類される[2]

出典 編集

  1. ^ a b Harvey-Brown, Y. (2020). Acer diabolicum. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T193541A2243094. doi:10.2305/IUCN.UK.2020-1.RLTS.T193541A2243094.en. Downloaded on 25 June 2021.
  2. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer diabolicum Blume ex K.Koch カジカエデ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月29日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g 林将之 2008, p. 55.
  4. ^ a b c d e f g h 茂木透・石井英美ほか 2000, pp. 366–367
  5. ^ a b 緒方健 1994, p. 279
  6. ^ a b c d 佐竹義輔ほか編 1989, p. 16
  7. ^ a b c d e f g 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 112
  8. ^ a b 猪狩貴史 2010, pp. 90–91

参考文献 編集

  • 猪狩貴史『カエデ識別ハンドブック』文一総合出版、2010年11月。ISBN 978-4-82991175-4 
  • 緒方健 著「オニモミジ」、朝日新聞社 編『週刊朝日百科植物の世界』 33巻、朝日新聞社、1994年11月27日。 
  • 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本Ⅱ』平凡社、1989年2月。ISBN 4582535054 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、112頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8 
  • 茂木透、石井英美ほか『樹に咲く花(離弁花2)』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑4〉、2000年10月。ISBN 4635070042 

関連項目 編集