レクチン

単糖や糖鎖と可逆的に結合するタンパク質の総称

レクチン: lectin)は、単糖糖鎖と可逆的に結合するタンパク質の総称である。このうち、糖鎖に結合する抗体、糖鎖を触媒する酵素は除く[1]生物およびウイルスから、ぼう大な種類のレクチンが発見されている[2]

歴史

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1888年、エストニア、ドルバト大学(現タルトゥ大学)の 医師Peter Hermann Stillmarkは、博士論文研究[3]として、トウゴマ(Ricinus communis)の種子から毒素タンパク質「リシン」(ricin)と赤血球凝集素「ヘマグルチニン」(HA)を発見した。これがレクチン研究の出発点となる。

後に多種多様な凝集素が植物から探索され、細胞の糖タンパク質や糖脂質の糖鎖と結合することが判明する。白血球が白血病化すると、細胞表面の糖鎖の形が変化し、その糖鎖に結合するコムギ胚芽凝集素英語版の反応が高まり[4]、1950-70年代は沢山の医学者が植物レクチンを研究し、がんと糖鎖の関係が解明された。

アメリカの免疫学者 William C. Boyd とElizabeth Shapleighは、リママメの凝集素がA型の赤血球を凝集する現象を観察した。そして、特定の血液型を「選ぶ (ラテン語: legere )」タンパク質(in)の意味から、一連の凝集素を「レクチン」と命名した[5](1954年)。これにより、ラントシュタイナーが発見したABO式血液型における、型物質の実体が糖鎖であったことも明らかとなった。1960年代、アメリカのがん学者 Peter Nowellは、インゲンマメレクチンPHAを末梢血リンパ球に与えると有糸分裂促進が起き、細胞が増殖する現象を解明した。この発見はヒト染色体の核型観察を容易にした。1980年代は動物レクチンによる細胞死活性が研究され[6]、糖鎖-タンパク質間作用による細胞増殖調節機能が理解された。

機構など

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レクチンの代表的な一次構造ファミリーには、細菌や古細菌含む生物界に広く存在するリシンB鎖関連の『R型レクチン』、真核生物に存在し糖タンパク質のフォールディングに関与する「カルネキシンカルレティキュリン」、多細胞動物に広く存在し「セレクチン」や「コレクチン」などを含むカルシウム要求性の『C型レクチン』、動物と真菌に存在しβ-ガラクトシドに結合する『ガレクチン』、レクチンのファミリー中最大で、マメ科植物種子や動物細胞に含まれる『L型レクチン』、リソソーム酵素の細胞内輸送に関わるマンノース-6-リン酸結合性の『P型レクチン』、グリコサミノグリカンなどの酸性糖鎖と結合する「アネキシン」、免疫グロブリン骨格を持つ「シグレック」を含む『I型レクチン』などが挙げられる。

動物レクチンは、動物進化系統樹の全般に発見されている。植物菌類原生生物レクチンの知見も年々増えている。

ウナギの血中に含まれるレクチンはヒトのO型赤血球を凝集する。1935年に日本のウナギがヒトのO型赤血球を凝集する事が報告された。

脚注

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  1. ^ Varki ら 編『エッセンシャルズ オブ グライコバイオロジー 第4版』用語集 Lectin”. Essentials of Glycobiology 4th edition. 2023年5月5日閲覧。
  2. ^ LectomeXplore”. https://unilectin.unige.ch/.+2023年10月28日閲覧。
  3. ^ Uber Ricin, Hermann Stillmark, 1888, Dissertation of University of Tartu”. 2023年10月28日閲覧。
  4. ^ Reactions of normal and leukemic cell surfaces to a wheat germ agglutinin”. PNAS. 2023年5月5日閲覧。
  5. ^ 『Specific precipitating activity of plant agglutinins (Lectins)』AAAS、1954年3月26日、3091頁。 
  6. ^ Immunology (1985年) vol 56 p351-358. E Duvall, A H Wyllie, R G Morris "Macrophage recognition of cells undergoing programmed cell death (apoptosis)"”. 2023年12月28日閲覧閲覧。

関連項目

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外部リンク

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