ヘラクレスオオカブト属
ヘラクレスオオカブト属(ヘラクレスオオカブトぞく)は、昆虫綱甲虫目カブトムシ亜科に属する代表的な分類群。中南米を中心に分布する。大型の甲虫で、胸角がよく発達し、内側にビロードの毛を有す。この属にはシロカブトと呼ばれるグループが含まれる。属名はギリシャ神話の英雄ヘーラクレースとエラトの子デュナステスにちなむ。
ヘラクレスオオカブト属 Dynastes | |||||||||||||||||||||||||||
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ヘラクレスオオカブト D. hercules
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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種 | |||||||||||||||||||||||||||
本文参照 |
学術名からディナステス属と呼ぶこともある。
分類編集
ネプチューンオオカブト(D. neptunus)とサターンオオカブト(D. satanus)については、前翅が常に黒いなどの違った特徴があり、雄の脚の跗節に明らかな差異が認められることから、カバイロオオカブト属(Theogenes)または亜属とすることもある。この説はもともと1847年にドイツの昆虫学者ヘルマン・バーマイスター(Hermann Burmeister)によって唱えられたものだが、長い間広くは認められておらず、最近になって見直されている。
種類編集
- ヘラクレスオオカブト Dynastes hercules Hercules beetle
- ヘルクレスオオカブトともいう。
- 基本亜種のssp. hercules herculesは角を含めた全長が最大18cmにも達し、世界最大のカブトムシとされる。
- オスの成虫は頭角と胸角が共に長く、内側には毛が生える。前翅は黄褐色だが、稀に水色の個体もあらわれ珍重される。
- 多くの亜種に分かれ、その生息地域によって、同じ種とは思えないほど、大きさと個体変異の差が顕著に出てくるのも本種の特徴である。
- 世界最大のカブトムシだけにペット人気は非常に高く、本属では最も輸入量が多く、それ故に飼育人口も個体数も多いのが本種である。
- ネプチューンオオカブト Dynastes neptunus Neptune beetle
- ヘラクレスオオカブトに次ぐ2番目に大きいカブトムシとされる。
- ヘラクレスオオカブトとは常に黒い前翅の他に、1対の突起が胸角の代わりに胸部両側に付くことから区別できる。脚の跗節の形状からサターンオオカブトとの近縁関係が指摘されている。
- 種小名の由来はローマ神話の海神ネプトゥヌス(ネプチューン)。ベネズエラに生息する亜種D. neptunus rouchei は若干小型で、頭角の最大の突起が基部寄りである。
- サターンオオカブト Dynastes satanas Satanas beetle
- ボリビアの限られた地域に生息する。以前は生息地がはっきりせず、幻とも呼ばれ珍重されてきた。
- ビロード状の毛が胸角の裏のほか翅などに覆われていない柔らかい部分にもびっしり生えている。
- グラントシロカブト Dynastes granti
- アメリカ合衆国アリゾナ州などの砂漠地帯に生息する。カブトムシ類には珍しく、全身が白である。現地での採集は禁止されている。
- 名は南北戦争の北軍最高司令官でアメリカ合衆国第18代大統領となったユリシーズ・S・グラントに由来するという説とアリゾナ州の旧陸軍基地フォート・グラント(Fort Grant)に由来するという説がある。
- ヒルスシロカブト Dynastes hyllus Hyllus beetle
- 中央アメリカに分布する。白に濃い黄色の混じった色合いをしており、時に黄金と形容される。サンタマルタ山脈にはミゲル・アンヘル・モロン=リオス(Miguel Ángel Moron-Ríos)に献名された亜種モロンオオカブト(D. hyllus moroni Nagai)が生息する。
- ティティウスシロカブト Dynastes tityus Unicorn beetle
- アメリカ合衆国東部に分布する。色はヒルスシロカブトに近い。
- マヤシロカブト Dynastes maya
- メキシコのチャパス州、グアテマラ・ホンジュラスに分布する。
- ミヤシタシロカブト Dynastes miyashitai Miyashitai beetle
- メキシコ南部プエブラ州テフアカンにのみ棲息する。