リッスン・ライク・シーヴズ

INXSのアルバム

リッスン・ライク・シーヴズ』(Listen Like Thieves) は、オーストラリアロック・バンドINXSの5枚目のスタジオ・アルバム1985年10月14日にリリースされた。オーストラリアのチャートであるケント・ミュージック・レポートのアルバム・チャートでは2週間にわたって首位に立った。このアルバムは、バンドを広く国際的に認知させたアルバムとされており、アメリカ合衆国Billboard 200 で最高11位となり、カナダの『RPM』100アルバムでは最高24位、全英アルバムチャートではトップ50入りとなった。

リッスン・ライク・シーヴズ
INXSスタジオ・アルバム
リリース
録音 1985年8月
オーストラリアの旗 オーストラリア シドニー
Rhinoceros Studios
ジャンル ニュー・ウェイヴ
オルタナティヴ・ロック
時間
レーベル アトランティック・レコード
マーキュリー・レコード
WEA
プロデュース クリス・トーマス
INXS アルバム 年表
スウィング
(The Swing)
(1984年)
リッスン・ライク・シーヴズ
(Listen Like Thieves)
(1985年)
キック
(Kick
(1987年)
『リッスン・ライク・シーヴズ』収録のシングル
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このアルバムには、バンドにとって初めての全米トップ5入りを果たした「ホワット・ユー・ニード」が収録されており、この曲はカウントダウン音楽・ビデオ賞 (Countdown Music and Video Award) の最優秀ビデオ賞を受賞した。また、このアルバムは、プロデューサークリス・トーマスとバンドとの、その後も断続的に続いた協力関係の最初の作品であった。

日本語では、後年に発売されたCDなどで『リッスン・ライク・シーヴス』と表記されることもある[1]

背景編集

リッスン・ライク・シーヴズ』は、INXSの5枚目のスタジオ・アルバムである。シドニーを拠点とするこのグループは、1977年に結成され、ファリス3兄弟のアンドリューがギターとキーボード、ジョンがパーカッションとドラムス、ティムがギターを担当し、ギャリー・ゲイリー・ビアーズがベース、マイケル・ハッチェンスがリード・ボーカル、カーク・ペンギリーがギターとサクソフォーン、ボーカルという編成であった[2][3][4]。前作『スウィング』(1984年4月)は、地元オーストラリアのケント・ミュージック・レポートのアルバム・チャートで首位に立ち、ニュージーランドオフィシャル・ニュージーランド・ミュージック・チャート英語版でも最高6位まで上昇した[5][6]。各国のチャートにおいても、アメリカ合衆国Billboard 200 で最高52位[7]カナダの『RPM』では最高24位となったが[8]、INXSは更なる衝撃を世界与えたいと思っていた[9]

前作のアルバムをニューヨークオックスフォードシャーで録音したINXSは、シドニーに戻り、かつてセックス・ピストルズプリテンダーズロキシー・ミュージックエルトン・ジョンなどを手がけた音楽プロデューサーであるクリス・トーマスと組み、当時サリー・ヒルズ英語版にあったリノセロス・スタジオ (Rhinoceros Studios) [10]でレコーディングに入った[2][3][4]

録音・制作編集

『リッスン・ライク・シーヴズ』は、オーストラリアニューサウスウェールズ州シドニーにあるリノセロス・スタジオで、3ヶ月の時間をかけて制作された[11]。収録曲の多くは、それまでも楽曲作りを組んでおこなっていたボーカルのハッチェンスと多くの楽器をこなすファリスの2人組によって書かれた[12][13]。制作が大詰めを迎えた頃、トーマスはバンドに、決定的なヒット・シングルになる楽曲が欠けていると告げ、バンドの面々はそれを受けて数日間スタジオを離れ、その間に最後の1曲ができあがった[13]。「クリス・トーマスは僕たちに、まだ「ヒット」がないぞ、と言ったんだ (Chris Thomas told us there was still no 'hit')」とファリスは後に回想している。「僕らはその晩スタジオを離れたんだ、まだ1日余裕があることも、とにかく「ヒット」を生み出さなきゃならないことも分かっていたから。プレッシャーをかけられたわけさ。(We left the studio that night knowing we had one day left and we had to deliver a 'hit'. Talk about pressure.)[13]」ハッチェンスとファリスは、アルバム制作中にファリスが作曲したデモをひと通り聞き直した[13]。まだ使っていなかったデモ素材の中から、残されていたデモの中から、トーマスは「Funk Song no 13」と題されていたデモを選び出し、これを基に曲を書くようふたりを説得した[13]。「それは素晴らしい出来だった。<このグルーヴ感なら10分間は聴き続けられる>と思ったね。そこで、「このグルーヴでやってみよう」と言ったんだ。(It was great. I thought, 'I could listen to that groove for 10 minutes!' I said, 'Let's work with that groove)」とトーマスは述べている[13]。INXSは、その後2日間このデモを基に曲を作り、最終的にこれがヒット・シングル「ホワット・ユー・ニード」となり、バンドにとって初めての全米トップ5入りを果たすことになった[13][14]

評価編集

批評家の反応編集

専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典評価
AllMusic     [15]
Rolling Stone (1985)(favorable)[16]
Rolling Stone (2004)     [17]

オールミュージック (AllMusic) のスティーヴン・トマス・アールワインは、『リッスン・ライク・シーヴズ』によって、バンドは「優れたロックン・ロールのシングルをいくつも生み出すバンドへと変貌を遂げた (completes its transition into an excellent rock & roll singles band)」と述べている。しかし同時に「この新しい編成がうまく機能しているのは3曲しかない (the new configuration only works for three songs)」とも述べており、その3曲とはアルバムからの最初の3枚のシングル曲「ホワット・ユー・ニード」、「リッスン・ライク・シーヴズ」、「キッス・ザ・ダート」だとしている[15]。オーストラリアの音楽学者イアン・マクファーレーン英語版は、この作品について、「それまでのINXSの作品よりもサウンドがよりハードになっているが、その分『スウィング』を魅力的なものにしていたポップなスマートさにはいくらか欠けるところがある (a much harder sound than heard on previous INXS records, but somehow it lacked the pop smarts that had made The Swing so appealing)」と論じている[2]

ローリング・ストーン』誌のパーク・ピューターバウ (Parke Puterbaugh) は、INXSが「ジャングルに迷い込んだか、それとも股間に入ったか? (going for the jugular – or is that the groin?)」と感じたと述べ、トーマスと組んだことで彼らが「レッド・ツエッペリン風のバリバリのロックという過激な音響とディスコ風の活き活きしたステップのビートという、およそあり得ない組み合わせをでっち上げたのだ (forge an unlikely union between the sonic extremism of Led Zeppelin-style crunch rock and the step-lively beat of disco)」と述べ、そのためこのアルバムは、「情熱をもってロックしながら、あなたの足を脅し、バックビートに乗って踊らせまいと封印している (rocks with passion and seals the deal with a backbeat that'll blackmail your feet)」としている[16]

トラックリスト編集

全作詞・作曲: 特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.ホワット・ユー・ニード (What You Need)」特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
2.リッスン・ライク・シーヴズ (Listen Like Thieves)」(Garry Gary Beers, A. Farriss, Jon Farriss, Tim Farriss, Hutchence, Kirk Pengilly)特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
3.キッス・ザ・ダート (Kiss the Dirt (Falling Down the Mountain))」特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
4.「運命の輝き (Shine Like It Does)」特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
5.「グッド・アンド・バッド・タイムズ (Good + Bad Times)」(Hutchence, Pengilly)特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
6.「嘆きの弾丸 (Biting Bullets)」(Hutchence, Pengilly)特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
7.ジス・タイム (This Time)」(A. Farriss)特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
8.「スリー・シスターズ (Three Sisters (Instrumental))」(T. Farriss)特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
9.「セイム・ダイレクション (Same Direction)」特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
10.「ワン・バイ・ワン (One x One)」特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
11.「レッド・レッド・サン (Red Red Sun)」(A. Farriss, J. Farriss)特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]特記のない限り、アンドリュー・ファリスマイケル・ハッチェンス[18]
合計時間:

パーソネル編集

アルバムのライナーノーツの記載による[12]

チャートと認証編集

チャート 最高位 認証
  オーストラリア ケント・ミュージック・レポート 1 AUS: 4× Platinum[19]
  カナダ[20] RPM 100 Albums 24
  ニュージーランド[21] ニュージーランド・レコード産業協会 4 NZ: Platinum[22]
  スイス[23] シュヴァイツァー・ヒットパラーデ 30
  イギリス[24] 全英アルバムチャート 46
  アメリカ合衆国[7] Billboard 200 11 US: 2× Platinum[25]

シングル編集

以上、いずれについても12インチ盤、EP盤などで様々なB面曲が異なるバージョンが存在する。

ビデオ編集

脚注編集

  1. ^ リッスン・ライク・シーヴス”. ユニバーサルミュージック合同会社. 2019年10月18日閲覧。
  2. ^ a b c McFarlane, Ian (1999). “Encyclopedia entry for 'INXS'”. Encyclopedia of Australian Rock and Pop. Allen & Unwin. ISBN 1-86448-768-2. https://web.archive.org/web/20040930213309/http://www.whammo.com.au/encyclopedia.asp?articleid=950 2014年3月9日閲覧。 
  3. ^ a b INXS”. Howlspace – The Living History of Our Music. White Room Electronic Publishing Pty Ltd (Ed Nimmervoll). 2012年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月9日閲覧。
  4. ^ a b INXS”. Australian Rock Database. Passagen (Magnus Holmgren). 2011年12月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月9日閲覧。
  5. ^ Kent, David (1993). Australian Chart Book 1970–1992. St Ives, NSW: Australian Chart Book Ltd. ISBN 0-646-11917-6  - ケント・ミュージック・レポートは、1974年から、1988年半ばにオーストラリアレコード産業協会 (ARIA) が自前のARIAチャートを創始するまで、オーストラリアにおけるシングルやアルバムのチャートとして用いられた。
  6. ^ Hung, Steffen. “Discography INXS”. New Zealand Charts Portal. Hung Medien (Steffen Hung). 2014年3月9日閲覧。
  7. ^ a b INXS | Awards”. Allmusic. 2014年3月9日閲覧。
  8. ^ Item Display – Top Albums/CDs”. RPM. Library and Archives Canada (1984年7月15日). 2014年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月8日閲覧。
  9. ^ O'Donnell, John; Creswell, Toby; Mathieson, Craig (October 2010). 100 Best Australian Albums. Prahran, Vic: Hardie Grant Books. ISBN 978-1-74066-955-9 
  10. ^ Rhinoceros Studiosのディスコグラフィ - Discogs
  11. ^ IN THE STUDIO WITH INXS (recording of Listen Like Thieves) by Neill McCutcheon”. OoCities (Dolly Magazine Australia 1985). 2017年3月16日閲覧。
  12. ^ a b Listen Like Thieves liner notes. Retrieved March 16th, 2017
  13. ^ a b c d e f g The Day INXS Broke Through With 'Listen Like Thieves'”. Ultimate Classic Rock. 2017年3月16日閲覧。
  14. ^ Listen Like Thieves (1985)”. INXS: Online. 2017年3月16日閲覧。
  15. ^ a b Erlewine, Stephen Thomas. “Listen Like Thieves – INXS”. AllMusic. 2014−03−09閲覧。
  16. ^ a b Puterbaugh, Parke (5 December 1985). “INXS: Listen Like Thieves: Music Reviews”. Rolling Stone (Jann Wenner). オリジナルの2008-12−05時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20081205194035/http://www.rollingstone.com/artists/inxs/albums/album/148097/review/5944088/listen_like_thieves 2014−03−09閲覧。. 
  17. ^ Brackett, Nathan; Hoard, Christian, eds (2004). The New Rolling Stone Album Guide. Simon & Schuster. p. 406. ISBN 0-7432-0169-8. https://archive.org/details/newrollingstonea00brac 
  18. ^ 'What You Need' at APRA search engine”. Australasian Performing Right Association (APRA). 2014年3月9日閲覧。 Note: User may have to click 'Search again' and provide details at 'Enter a title:' What You Need; or at 'Performer:' INXS
  19. ^ The ARIA Albums Chart - 03/03/2014 (from The ARIA Australian Top 50 Albums)”. Wayback Machine (original document published by ARIA). 2014年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月21日閲覧。
  20. ^ Item Display – Top Albums/CDs”. RPM. Library and Archives Canada (1986年5月3日). 2014年3月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月9日閲覧。
  21. ^ Hung, Steffen. “Discography INXS”. New Zealand Charts Portal. Hung Medien (Steffen Hung). 2014年3月8日閲覧。
  22. ^ "New Zealand album certifications – INXS". Recorded Music NZ. 2017年3月12日閲覧
  23. ^ Hung, Steffen. “INXS – Listen Like Thieves” (German). hitparade.ch (Swiss Hitparade). Hung Medien (Steffen Hung). 2014年3月9日閲覧。
  24. ^ INXS | Artist | Official Charts”. Official Charts Company. 2014年3月9日閲覧。
  25. ^ "American certifications – INXS". Recording Industry Association of America. 2014年3月9日閲覧
  26. ^ INXS – What You Need - Discogs - オーストラリア盤7インチ
  27. ^ INXS – What You Need - Discogs - UK盤7インチ
  28. ^ INXS – What You Need - Discogs - US盤7インチ
  29. ^ INXS = イン・エクセス* – What You Need = ホワット・ユー・ニード - Discogs - 日本盤7インチ
  30. ^ INXS – What You Need - Discogs (発売一覧)
  31. ^ INXS – This Time - Discogs - オーストラリア盤7インチ
  32. ^ INXS – This Time - Discogs - UK盤7インチ
  33. ^ INXS – This Time - Discogs - US盤7インチ
  34. ^ イン・エクセス* = INXS – ジス・タイム = This Time - Discogs - 日本盤7インチ
  35. ^ INXS – This Time - Discogs (発売一覧)
  36. ^ INXS – Kiss The Dirt (Falling Down The Mountain) - Discogs - オーストラリア盤7インチ
  37. ^ INXS – Kiss The Dirt (Falling Down The Mountain) - Discogs - UK盤7インチ
  38. ^ INXS – Kiss The Dirt (Falling Down The Mountain) - Discogs - US盤7インチ
  39. ^ INXS = イン・エクセス* – キッス・ザ・ダート = Kiss The Dirt - Discogs - 日本盤7インチ
  40. ^ INXS – Listen Like Thieves - Discogs - オーストラリア盤7インチ
  41. ^ INXS – Listen Like Thieves - Discogs - UK盤7インチ
  42. ^ INXS – Listen Like Thieves - Discogs - US盤7インチ
  43. ^ INXS – Listen Like Thieves - Discogs - 日本盤7インチ
  44. ^ INXS – Listen Like Thieves - Discogs (発売一覧)

外部リンク編集